世界情勢判断(ひらがな、一部新字体化、不明文字あり) 世界情󠄁勢判󠄁断 昭和一八、二、二七 連絡会議決定 帝国は昨年十一月決定の世界情勢判断に基き米英側必死の反攻にも拘らす愈々戦争目的の完遂必成を期し独伊と提携して敵戦力の撃滅に邁進しつつあるところ其後に於ける世界情勢の推移に鑑み茲に本年度末を目途とし前世界情勢判断に所要の修正を加へ今後に於ける戦争指導に資する所あらんとす 第一 米英の動向 米英は先つ独伊の崩壊を策しつつ帝国の大東亜建設を破摧し更に進んて帝国中枢部を衝くの準備を整へ今後益々各般に亘る協力を緊密一体化し自己戦力の急速増強を計り逐次其の有力なる兵力を以て攻勢に出て枢軸側を屈伏せしめんことを企図すへく其攻勢は昭和十八年後期以降に於て愈々高潮すへし此の間米は南北米州を其の傘下に収むると共に「アフリカ」、豪州、印度、西亜、重慶等の実質的把握に努め以て戦後の世界の覇者たらんことを企図して政戦略に亘る凡有諸方策を強行するものと判断せらる之か為差当り 一、米英は「ソ」と相携へて極力独伊戦力の消耗並独傘下諸国の脱落を策しつつ主として地中海方面よりする対独包囲構成に努むへく特に「チユニス」作戦の推移は之か成否に影響する所大なり 尚米英は諾威方面及「イベリア」半島西岸に対し新戦線を構成するの公算なしとせす 太平洋、印度洋方面に於て米は英と協力し有力なる兵力を以て西南太平洋方面並「アリウシヤン」方面の我占領地諸島及緬甸奪回作戦を実施しつつ支那方面よりする対日反攻態勢の強化、航空及潜水艦作戦による対日海上交通の破壊に努むへし 尚米英は帝国本土及占領地の致命部に対し空襲を企図する公算少からす 二、米英は為し得る限り援「ソ」物資の供給に努むへし 又米は密かに東部「ソ」領に於ける基地の獲得を策すへし 三、米英は重慶に対し各種の手段を画し極力抗戦を督励すへし 四、米英は西亜及阿弗利加方面を確保し日独伊の連絡阻止の強化に努むへし 五、豪州は愈々戦意を固め実質的に米の勢力下に在りて専ら其の援助に頼り戦力の増強に努め対日抗戦を続行すへし 六、印度に於ける反英運動は対「ガンジー」措置とも関連し相当激化することあるへきも英の弾圧に依り差当り大なる成果を見ることなく印度は依然...