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国力の現状 1945年06月08日

国力の現状(ひらがな化、一部新字体化)   御前会議報告第一号       昭和二十年六月八日      國力ノ現狀 一、要旨  戦局の急迫に伴ひ陸海交通並に重要生産は益々阻害せられ食料の逼迫は深刻を加へ近代的物的戦力の総合発揮は極めて至難となるべく民心の動向亦深く注意を要するものあり 従って之等に対する諸施策は真に一瞬を争ふべき情勢に在り 二、民心の動向 国民の胸底に忠誠心を存し敵の信寇等に対しては抵抗するの気概を有しあるも他面局面の転回を冀求するの気分あり 軍部及政府に対する批判逐次盛となり動もすれば指導層に対する信頼感に動揺を来しつつある傾向あり且国民道義は頽廃の兆あり又自己防衛の懸念強く敢闘奉公精神の昂揚充分ならず庶民層には農家に於ても諦観自棄的風潮あり指導的知識層には焦燥和平冀求気分底流しつつあるを看取す かかる情勢に乗じ一部野心分子は変革的企図を以て蠢動しある形跡あり 沖縄作戦最悪の場合に於ける民心の動向に対しては特に深甚の注意と適切なる指導とを必要とす 尚今後敵の思想撹乱行動は盛となるを予期せざるべからず 三、人的国力 (イ)人的国力は戦争に因る消耗も未だ大ならず物的国力に比すれば尚余裕あり唯其の使用概して効率的ならず動員及配置は生産の推移に即応せず人員の偏在遊休化を見つつある現状にして徹底的配置転換及能率増進を敢行すれば人的国力の部面に於ては戦争遂行に大なる支障なく之が活用の如何に依りては戦力這出の余地ありと認めらる但し今般に於て大規模の兵力動員あるに於ては必ずしも楽観を許さざるものあり (ロ)戦争に基く増殖率低下の微漸く■はれ且■位の低下は特に戒心を要す 四、輸送力及通信 (イ)汽船輸送力に付ては使用船腹量急激に減少して現在約百万総屯なるも而かも燃料の不足、敵の妨害激化及荷役力の低下等の為著しく運航を阻害されあり若し最近に於ける損耗の実績を以て推移すれば本年末に於ては使用船腹量は殆んど皆無に近き状態に立到るべし且大陸との交通を確保し得るや否やは沖縄作戦の如何に懸る処大にして最悪の場合に於ては六月以降殆ど其の計画的交通を期待し得ざるに至るべし 機帆船輸送力も亦燃料不足及敵の妨害に因り急激に減少する処大なり (ロ)鉄道輸送力は最近に於ける車輌は施設等の疲弊に加へ空襲被害に因り逐次低下しつつあり今後敵は交通破壊空襲を激化すべく為に鉄道輸送力は各般...

大本営政府連絡会議第四十一回議事録 1941年07月24日

 大本営政府連絡会議第四十一回議事録(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり)    七月二十四日第四十一囘連絡會議     佛印進駐、對米國交調整、泰國大使館ノ件 一、冒頭参謀総長より、軍隊は二十五日出発、二十八日「ナトラン」二十九日「サンジヤツク」に到着すへきことを述へたり  外  相 「ヴシー」政府から、進駐軍隊か軍紀を守る様、又安南人に対し非合法的の事なき様注意せられ度旨申来れるを以て承知あり度 共同防衛の意味にて進駐するのてあるから、右の如き事なき様、彼等をひきつける様軍隊を指導せられ度希望す  参謀総長 本件は軍司令官に能く通しありて万心配なし。尚今後も十分に留意すへし 二、仏印進駐に関する政府の声明案文を可決す。発表は二十六日正午とし独伊大使に対しては本二十四日支那、満洲、英米大使に対しては二十五日通告することに決定す  外  相 仏印進駐問題は米国に影響を及ほし、重要物資の輸出禁止、資金凍結、金の買入禁止、日本船舶抑留等を実施することあるへし 重要物資中の問題となるへきものは綿花、木材、小麦、石油にして、綿花木材に対しては今迄既に手をうちたり、小麦は支那向けのものなるを以て何んとか手を打ち得へく。石油は懸念せらるる所なるも米か全面的に石油禁輸をやるかどうかは問題だ。 次に資金凍結に就ては、在米現金は二億円、証券三億五千万円にして、之に対し在日米貨は三億円なり。即ち差引二億五千万円か日本側の損失となる。之れは石油を輸入する場合に資金不足となり、帝国として相当困る 金の買入停止は現在米向金を出して居らぬから心配なし 日本船舶抑留に就ては、目下米近海に十隻あるも海軍省より未た港に入らぬものは二、三日入らぬ様司令しあるを以て、全部か抑留せらるることはなからう 資金凍結に関しては小倉蔵相も困ると云ふ意見て、蔵相は蔵相と個人関係ある「モーゲンソウ」米蔵相に手紙を出すと云ひしも、漸く待つてもらつて居る 三、対米国交調整に就て  外  相 野村大使は過般「ハル」長官の「オラルステートメント」を先方に返したが、帝国の修正案は未た「ハル」に通しあらすして之れに就き野村より意見具申あり。外務省としてはN工作を打切るのは具合悪いと思ふ。此度の仏印進駐は軍事占領にあらすして、帝国の必要に基つき仏側と話合の上の事なるを米国に諒解せしめ、資金凍結又は帝国船舶の「パナマ」運...

世界情勢判断 1945年06月08日

 世界情勢判断(ひらがな、一部新字体化、不明文字あり)                   昭和二十年六月八日      世界情󠄁勢判󠄁断 概ね昭和二十年末を目途とする世界情勢の推移を判断し今後の戦争指導に資せんとす 第一 敵側の情勢 主敵米国は出血の累加、「ルーズヴエルト」の死去、欧州戦争の終結に伴ふ戦争倦怠気分等戦争指導上の悩を包蔵しつつも尚豊富なる物力を以て単独にても速かに対日戦争を終結せしめんとする戦意旺盛にして対日作戦強行に邁進すべし英国は欧州戦争終了後なるべく早期に終戦を希望しあるへきも対日戦争指導は米国の主導する所なるを以て大勢を左右し得さるへく結局英国は全世界に於ける米国との協調の必要性並彼の予想する戦後の東亜処分に際する自国の発言権確保の為対日戦争参加を継続し且在東亜兵力を増強すへし重慶は延安との抗争及「ソ」の動向に関し苦悩を蔵し居るも尚米の利用に依る対日戦完遂と其の国際的地位の向上を企図し米の支那大陸又は日本本土作戦に呼応し積極的反攻を展開すへし 以上の大勢に拘らす特に欧州に於ては米英対「ソ」の角逐漸次表面化し来り又米英重慶相互間にも戦争目的の不一致ありて反枢軸側結束は弱化の傾向にあり、然れども妥協に依り当面を糊塗するに努むへく彼等陣営の結束は ■かに崩るることなかるへし但し帝国か毅然として長期戦完遂に邁進し大出血を強要し本年後期に至らは敵側の継戦意志に相当なる動揺を生来せしめ得ることなしとせす 第二 「ソ」の動向 「ソ」は欧州戦の終結に伴ひ欧州に対する戦後処理並自国の復興に勉むると共に大東亜戦争に対しては自主的立場を持続しつつ機に応し東亜就中満支方面に対し勢力の伸張を企図すへし 而して帝国に対しては累次措置により要すれは何時にても敵対関係に入り得る外交態勢を整へ居ると共に東「ソ」の兵備を強化しつつあるを以て益々政略的圧迫を加重し大東亜戦況帝国に甚たしく不利にして自己の犠牲少しと判断する場合に於ては対日武力発動に依る野望達成に出つる算大なり然れとも米の東亜進出に対する牽制的意味合よりして比較的早期に武力行使に出つることなしとせさるへし 其の時期は敵の本土又は中北支方面上陸の時期、北満の作戦的気象条件及東「ソ」兵力集中の状況等より見て本年夏秋の候以降特に警戒を要すへし 尚「ソ」としては米の希望の実現を助けかねて自己の意図達成を目途として...

醤油税則 1885年05月08日

 醤油税則 醤油税則ヲ制定ス  第十号 醤油税則別紙の通制定し明治十八年七月一日より施行す 但東京府管轄伊豆七島小笠原島函館県沖縄県札幌県根室県は当分之れを施行せす 右奉勅旨布告候事(十八年五月八日) (別紙) 醤油税則 第一条 凡そ醤油(溜りを併称す)を製造して営業せんと欲する者は其旨官庁に願出製造場一箇所毎に免許鑑札を受くへし 第二条 免許を受けたる者は左の通営業税及ひ造石税を納むへし   営業税  製造場一箇所に付一箇年 金五円   造石税  製造高一石に付     金一円 第三条 免許鑑札を失却毀損するか或は代替改名転居せしときは官庁に届出を其再渡又は書換を請ふへし 第四条 醤油製造人廃業するときは官庁に届出免許鑑札を還納すへし 第五条 免許鑑札は貸借売買及ひ譲受譲渡を為すことを得す 第六条 営業税は一箇年を二期に分け前半年分は其年一月三十一日限後半年分は同しく七月三十一日限之を納むへし   但新に開業する者は免許鑑札を受くるとき其半年分の営業税を納むへし 第七条 造石税は左の期限に従ひ之を納むへし但廃業する者は具節之を納むへし   第一期  五月三十一日限    一月一日より四月中検査済石数に係る税額   第二期  九月三十日限    五月一日より八月中検査済石数に係る税額   第三期  翌年一月三十一日限    九月一日より十二月中検査済石数に係る税額 第八条 醤油は製成の後五日以内に官庁に届出検査を受くへし 第九条 廃業の際禾製成の醤油を所持する者は其節官庁に届出検査を受け其石数に就き納税すへし但之を同業者に売渡し又は二箇所以上に於て製造する者其一箇所以上を発し尚本存する所の製造場に之れを移す者は其旨届出製成の上其製成者に於て第八条に従ひ検査を受くへし 第十条 検査未済の醤油と検査既済の醤油と混和する者は其混和の日より五日以内に其旨官庁に届出更に総石数を以て検査を受け納税すへし 第十一条 検査既済の醤油其造石税納期内に非常の損害に罹りて廃棄に属し若くは腐敗したるときは直に官庁に中出検査を受け■造石税の免除を請ふことを得 第十二条 外国に輸出する醤油は輸出の節税関に於て検査を受け置輸入港税関の陸揚免状免くは其他の証憑となるへき書類に在留領事の検印を受く之を当初輸出の税関に差出し其造石税に相当する金額の下戻を請ふことを得但造石税の下戻を受けたる醤油...

世界情勢判断 1943年02月27日

 世界情勢判断(ひらがな、一部新字体化、不明文字あり)    世界情󠄁勢判󠄁断                      昭和一八、二、二七                      連絡会議決定 帝国は昨年十一月決定の世界情勢判断に基き米英側必死の反攻にも拘らす愈々戦争目的の完遂必成を期し独伊と提携して敵戦力の撃滅に邁進しつつあるところ其後に於ける世界情勢の推移に鑑み茲に本年度末を目途とし前世界情勢判断に所要の修正を加へ今後に於ける戦争指導に資する所あらんとす      第一 米英の動向 米英は先つ独伊の崩壊を策しつつ帝国の大東亜建設を破摧し更に進んて帝国中枢部を衝くの準備を整へ今後益々各般に亘る協力を緊密一体化し自己戦力の急速増強を計り逐次其の有力なる兵力を以て攻勢に出て枢軸側を屈伏せしめんことを企図すへく其攻勢は昭和十八年後期以降に於て愈々高潮すへし此の間米は南北米州を其の傘下に収むると共に「アフリカ」、豪州、印度、西亜、重慶等の実質的把握に努め以て戦後の世界の覇者たらんことを企図して政戦略に亘る凡有諸方策を強行するものと判断せらる之か為差当り 一、米英は「ソ」と相携へて極力独伊戦力の消耗並独傘下諸国の脱落を策しつつ主として地中海方面よりする対独包囲構成に努むへく特に「チユニス」作戦の推移は之か成否に影響する所大なり  尚米英は諾威方面及「イベリア」半島西岸に対し新戦線を構成するの公算なしとせす  太平洋、印度洋方面に於て米は英と協力し有力なる兵力を以て西南太平洋方面並「アリウシヤン」方面の我占領地諸島及緬甸奪回作戦を実施しつつ支那方面よりする対日反攻態勢の強化、航空及潜水艦作戦による対日海上交通の破壊に努むへし  尚米英は帝国本土及占領地の致命部に対し空襲を企図する公算少からす 二、米英は為し得る限り援「ソ」物資の供給に努むへし  又米は密かに東部「ソ」領に於ける基地の獲得を策すへし 三、米英は重慶に対し各種の手段を画し極力抗戦を督励すへし 四、米英は西亜及阿弗利加方面を確保し日独伊の連絡阻止の強化に努むへし 五、豪州は愈々戦意を固め実質的に米の勢力下に在りて専ら其の援助に頼り戦力の増強に努め対日抗戦を続行すへし 六、印度に於ける反英運動は対「ガンジー」措置とも関連し相当激化することあるへきも英の弾圧に依り差当り大なる成果を見ることなく印度は依然...

対蒙(西北)施策要領 1936年01月??日

 対蒙(西北)施策要領    對蒙(西北)施策要領                     昭和十一年一月                     関東軍参謀部 本書は昭和十年七月二十五日作製対内蒙施策要領に基き軍の行へる施策の成果に因る内蒙の現状を基礎とし向後の施策及将来の目標並此目標に到達せんか為の諸般の企図著想等を蒐録す      第一 方   針 一、軍は帝国陸軍の情勢判断対策に基き対蘇作戦準備の為必要とする外蒙古の懐柔及反蘇分離気運の促進を図ると共に対支工作の進展に資し且満洲国の統治及国防の基礎を鞏固ならしむる目的を以て徳王の独裁する内蒙古軍政府の実質を強化すると共に其勢力を逐次支那西域地方に拡大し北支工作の進展に伴ひ内蒙をして中央より分離自立するに至らしむ   施策の重点は当初現在の軍政府の管轄区域内重要部門の整備鞏化に置き其成果挙かるに従ひ之を根拠として其勢力を綏遠に扶植し次て外蒙古及青海、新疆、西藏等に拡大せんことを期す      第二 一般指導の要領 二、軍は内蒙軍政府を指導し政治、軍事、経済、文化各方面の施策を進むるも初期に於ては内蒙の環境並蒙人の特性に鑑み主力を軍事及蒙古人の教育普及に注く 三、諸施策は日人顧問の指導に依り軍政府をして之を行はしむるを以て本則となす   然れとも同政府当初の実力に鑑み満洲国諸機関、満鉄、善隣協会大蒙公司等をして軍の指導の下に参加せしめ軍政府の実力向上に伴ひ逐次軍政府をして実施せしむる如く指導す 四、一切の施策は之を極秘裡に行ひ一般の耳目を蔽ひ国際情勢特に蘇邦及支那側の神経を刺戟せさることに努む 五、軍政府の実力充実し独立政権たるの実質を備ふるに至らは独立(宗主権に関しては之に触れさるを主旨とす)を宣布せしむ   但し政略上の状況之を要する時機に於ては右に顧慮なく自治を宣言せしむることあり 六、蒙古独立疆域内の民族は日、蒙、漢、回、蔵の五民族を包含するに至るべきに依り之等の人心収攬に関し特に左の諸点に留意すると共に反共産主義を鼓吹し宗教の尊重と各民族固有の信教の自由を認む  (一)在蒙日本人をして総て日本民族の先駆者たる自覚の下に日満両帝国特に日本の国策の徹底に努めしむ    之か為日人顧問以下の徳操並他民族特に蒙古民族に対する態度等に関しては特務機関を通し厳に監視監督せしむ  (二)蒙古民族に対しては  ...

対蒙(西北)施策要領 1936年01月?日

 対蒙(西北)施策要領(ひらがな化、不明文字あり、一部図省略)    對蒙(西北)施策要領                     昭和十一年一月                     関東軍参謀部 本書は昭和十年七月二十五日作製対内蒙施策要領に基き軍の行へる施策の成果に因る内蒙の現状を基礎とし向後の施策及将来の目標並此目標に到達せんか為の諸般の企図著想等を蒐録す      第一 方   針 一、軍は帝国陸軍の情勢判断対策に基き対蘇作戦準備の為必要とする外蒙古の懐柔及反蘇分離気運の促進を図ると共に対支工作の進展に資し且満洲国の統治及国防の基礎を鞏固ならしむる目的を以て徳王の独裁する内蒙古軍政府の実質を強化すると共に其勢力を逐次支那西域地方に拡大し北支工作の進展に伴ひ内蒙をして中央より分離自立するに至らしむ   施策の重点は当初現在の軍政府の管轄区域内重要部門の整備鞏化に置き其成果挙かるに従ひ之を根拠として其勢力を綏遠に扶植し次て外蒙古及青海、新疆、西藏等に拡大せんことを期す      第二 一般指導の要領 二、軍は内蒙軍政府を指導し政治、軍事、経済、文化各方面の施策を進むるも初期に於ては内蒙の環境並蒙人の特性に鑑み主力を軍事及蒙古人の教育普及に注く 三、諸施策は日人顧問の指導に依り軍政府をして之を行はしむるを以て本則となす   然れとも同政府当初の実力に鑑み満洲国諸機関、満鉄、善隣協会大蒙公司等をして軍の指導の下に参加せしめ軍政府の実力向上に伴ひ逐次軍政府をして実施せしむる如く指導す 四、一切の施策は之を極秘裡に行ひ一般の耳目を蔽ひ国際情勢特に蘇邦及支那側の神経を刺戟せさることに努む 五、軍政府の実力充実し独立政権たるの実質を備ふるに至らは独立(宗主権に関しては之に触れさるを主旨とす)を宣布せしむ   但し政略上の状況之を要する時機に於ては右に顧慮なく自治を宣言せしむることあり 六、蒙古独立疆域内の民族は日、蒙、漠、回、蔵の五民族を包含するに至るべきに依り之等の人心収攬に関し特に左の諸点に留意すると共に反共産主義を鼓吹し宗教の尊重と各民族固有の信教の自由を認む  (一)在蒙日本人をして総て日本民族の先駆者たる自覚の下に日満両帝国特に日本の国策の徹底に努めしむ    之か為日人顧問以下の徳操並他民族特に蒙古民族に対する態度等に関しては特務機関を通し厳に監視監...

世界情勢判断 1942年03月07日

 世界情勢判断(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり、附属文書省略)         世 界 情 勢 判 断                     昭和十七年三月七日                     連絡会議決定     イ、米英側の執るへき方策 米英は今後軍事的経済的財政的其他各方面に於ける協力を益々緊密化し一体となりて枢軸側戦力の低下に努めつつ他面自己戦力の急速増強を図り先つ其の対枢軸戦争指導の重点を欧州に置き「ソ」連と相提携して該方面の戦局を有利に展開せしむると共に対日反撃進攻拠点の確保強化に努め優勢なる兵力を保有するに至らは一挙対日反攻を企図すへし 即ち (一)差当り英は米「ソ」と相携へて先つ速に独伊戦力の撃破を図ると共に地中海及西亜方面を確保し日独伊の提携阻止に努むへし   尚英は東洋方面に於ては対日反撃並に英帝国結合保持の為め極力印度洋の制海権及印度並に豪州の確保に努むへし (二)差当り米は英「ソ」と相携へて先つ速に独伊戦力の撃破を図ると共に豪州及印度洋方面に於ては対日反攻拠点の確保強化に努め且有力なる海上及航空兵力を太平洋方面に集中し其の一部を以て我か海上交通の妨害日本の中枢地区に対する奇襲其の他各種「ゲリラ」戦の実施に努むへし (三)米英は援「ソ」援蒋に力を尽すへく他方「ソ」の対日牽制行動乃至に参戦に多大の期待を掛け極力之か実現に努めつつ差当り密かに東部「ソ」領に対日進攻拠点の獲得を策すへし (四)米英は戦力向上の時機を見て対枢軸大規模攻勢に転すへく之か為日本に対しては「ソ」支と提携して大陸方面より直接我中枢部を衝くに努めつつ主力を以て豪州及印度洋方面より逐次戦略要点を奪回反撃し来る算大なり   而して其大規模攻勢を企図し得へき時機は概ね昭和十八年以降なるへし  (一)豪州(新西蘭を含む)の情勢 一、豪州は専ら米及英援助に頼りて戦力の増強に努め執拗に対日抗戦継続を企図すべし 二、豪州戦力増強の程度は豪と米英間の交通路の情況に依存すべく若し交通路の遮断長期に亘らば増強は不可能となるのみか戦力は低下すべし 三、豪州は漸次対英関係に於ては自主的となるべきも対米依存の度を増すべし 四、豪州国防力の隘路は人口の少きこと及工業殊に重工業生産能力貧弱なることに在りて其の強味は衣食に関しては如何なる長期戦にも対処し得る点に在り  (二)印度の情勢...

対英感情は何故に悪化したか 1938年09月01日

 対英感情は何故に悪化したか(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり)      對英感情ハ何故ニ惡化シタカ    (一三、九、一)(改三) 一、間接的原因 (一)世界大戦迄は英国は遺憾なく日本を利用した、帝政露国の支那侵略に対しても、印度の独立抑圧にも、支那の排外行動阻止にも、将た又英国艦隊の北海集中後に於ける自治領の警備にも凡有る機会に日本の兵力と好意とを駆使した、然るに一度講和となるや其の態度は俄然一変して、所謂卓子より零れ落ちる「パン」屑さへも日本の手に落ちるを拒んだ、夫は巴里会議に於ける日本の孤立無援となり、華府会議に於ける五、五、三海軍比率の強要となり、山東の還付となり、日英同盟の廃棄となり、九ケ国条約となり、遂には近年に於ける日本貿易に対する全面的悪性迫害となつて顕はれたのである。 (二)大戦後英国が日本民族の正当なる生存と発展とに対する圧迫は、■に自国領土並に植民地に於てのみでなく、蘭領印度、支那、其の他英国の政治的又は経済的支配勢力を有する全世界各地に於て然りである、近年に於ける支那の排日侮日政策、蘭領印度其の他に於ける傲慢不遜なる対日態度は、何れも背後に英国の援助或は使嗾あるは日本国民の確信する所である、殊に、排日を国策とする蒋介石政権に対する英国の経済的援助は、単に我が国を駆逐して英国勢力の対支進出を意味する許りでなく、支那を傀儡とする軍事的、経済的日本圧迫に外ならぬ、従つて亜細亜に於ける発展は我が民族死活の問題なるだけに、深刻なる対英憤懣を感ずるは当然のことである。 (三)■に外交上、経済上の圧迫のみに止まらず、自国過去の業蹟は全く棚に上げ、日本の為す所行ふ所悉く之を侵略、若くは不正行為呼ばりをなし、「ロイテル」其の他の通信網を総動員して、世界輿論の反日化に狂奔し、諸国を誘つて所謂対日包囲陣を形成し、甚だしきは共産国蘇連迄も一翼として集団的圧迫を加ふるが如き、全く国家利己主義の極端なるものと謂はざるを得ないのである。 二、直接的原因 (イ)支那事変に於ける英国の態度は我に敵意を有するものと断ぜざるを得ない。    是は日本の対英感情悪化の直接原因である。英国自らは中立公正の態度を維持しつつありと称するも、其の然らざる所以は次の如き具体的事実が之を立証する (一)上海戦の初期、日本居留民が最大の危険に瀕したる時機に於て、之が保...

売薬規則 1877年01月20日

 売薬規則(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり) 第七号 賣藥規則    第一章 第一条 此規則に称する処の売薬とは丸薬膏薬煉薬水薬浴剤散薬煎薬等を調製し効能書を附し販売するものを云ふ 第二条 此売薬営業者は薬味分量用法功能を詳記したる書に族籍氏名を記し其管轄庁を経由して内務省に願出免許鑑札を受くへし   但免許を受けたる者二ヶ所以上に於て之を調製する時は其箇所毎に免許鑑札を受くへし 第三条 内務省に於ては願書を検査し其製薬配伍の薬品劇毒微毒に拘はらす取扱上失誤を生し易きもの及ひ毒薬取締に関係するものは之を許ささるへし 第四条 第八条に記したる期限中薬味分量用法服量能書を改正せんと欲するもの其由を届出旧鑑札を返納して更に新鑑札を願受くへし 第五条 売薬を請売せんと欲し其営業者の許諾を得たるものは族籍氏名を記したる願書に営業者所持の免許鑑札写及ひ営業者と取結たる約定書とを添へ其管轄庁へ願出免許鑑札を受け管轄庁は之を内務省へ届出へし 第六条 売薬営業者及ひ請売者共必す免許の看板を掲くへし 第七条 売薬営業者及ひ請売者に於て自ら行商し又は売子を派出して行商を為さしめんと欲する■は其由を管轄庁へ届出行商鑑札を願受け行商する時は必す之を所持すへし 第八条 営業鑑札請売鑑札行商鑑札は其鑑札記載の月より満五年を以て免許の期限とす此期限を過き尚免許を得んと欲するものは旧鑑札を返納し更に新鑑札を願受くへし 第九条 第八条に記したる期限中第四条の改正発売を願出之を免許する時は新鑑札記載の月を以て一期の初月となすへし 第十条 免許期限内と雖も其製薬第三条に掲くる処の有毒品なるを更に発見する時或は営業者製薬を粗悪にする等の事ある時は直に鑑札を取上け発売を禁止する事あるへし 第十一条 営業者廃業するか又は禁止せらるる時は其請売者及ひ売子共其販売を許さす 第十二条 諸鑑札を遺失し又は水火盗難に因て毀失したる時は其仔細を詳記して管轄庁へ届出再ひ之を願受くへし 第十三条 免許鑑札を他人に譲渡さんと欲する者は双方連印の願書を管轄庁に差出し名前書換を請ふへし 第十四条 売薬営業者及ひ請売者免許期限中其相続人に於て之を相続する時は其由を記し管轄庁へ鑑札名前書換を請ふへし 第十五条 売薬営業者廃業し若しくは禁止せられたる■は営業者は勿論其請売者に於ても総て諸鑑札を返納すへし    第二章 第十...

梅津=何応欽協定 1935年07月06日

 梅津=何応欽協定(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり) 一、五月二十九日に於ける日本側の通告並要求 天津郡参謀長酒井大佐は北平補佐官高橋少佐と同行五月二十九日北平政務整理委員会代理■秘書長及軍事委員会北平分会主任何応欽と会見左の通告及要求を発せり 1,通 告 イ、支那側官憲の主動に依る対満陰謀の実行、長城附近支那義勇軍援助、対日「テロ」等は停戦協定の破壊行動にして而も其発動の根拠地は北平、天津に在り斯くの如くんは日本軍は遂に再ひ長城戦を超えて進出するの必要を坐するのみならす北平、天津の両地を実質的に停戦地区に包含せしむるの必要を生すへし ロ、胡、白の暗殺は白等か日本軍の使用人たるに鑑み北清事変、天津還付に関する交換公文を蹂躙するものにして歴然たる排外行動たるのみならす実に我か日本に対する挑戦なり排外的行為を実行する結果の重大なることは北清事変及満洲事変に照し明白なり今後斯かる行為か行はれ或は行はるることを予知するに於ては日本軍は条約の権限に基き自衛上必要と信する行動を執ることあるへし  尚之に関して派生すへき事態に就ては日本軍は其責を負はす 右は既に約一箇月を費し調整せし確実なる根拠に基き通告するものにして証拠に関し論争し或は威嚇を行はんとするにあらす事態を重視し軍の採らんとする態度を予告するものなり 2.要 求 北支に於ける右行動を根絶する為日本軍に於ては蒋介石の対日二重政策の放棄を必要とし最小限右政策の実行機関たる憲兵第三団及類似の団体、軍事委員会北平分会政治訓練所、国民党部及藍衣社の河北省よりの撤退を必要とす 又此等の背景たる第二師、第二十五師等中央軍の一律撤退を希望しあり 尚今回事件の直接間接の関係者たる蒋孝先、丁昌、曽拡情、何一飛等及停戦協定の精神を無視し前記諸機関と通謀し北支に於て日本軍と両立せさる于学忠の罷免及其指揮する第五十一軍の河北省よりの撤退を必要とす 二、六月九日に於ける交渉 六月四日以降数度に亘る接衝の後六月九日に至り酒井参謀長は前項要求条件の全面的承諾を求むると共に更に左記事項を追加せり 1.撤去せし軍隊又は諸機関を再ひ進入し又は対日関係を不良ならしむへき虞ある新しき人又は機関を進入せしめさること 2.省市等職員の任命に方りては日支関係を不良ならしめさる人物を選定せられ度きこと 3.実行を約束したることの実施に関しては我か方に...

満洲事変解決に関する方針 1931年09月30日

 満洲事変解決に関する方針(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり)    満洲事變解決ニ關スル方針 一、満蒙問題解決の対象  (イ)満蒙を支那本部より政治的に分離せしむる為我帝国に■■する独立政権の設定を促し    初期は三、四個所に地方政権を設立せしめ適当の時期に中央政権を樹立せしむ    之を対象として懸案の根本的解決を図り帝国の政治的経済的地位を確立す  (ロ)張学良、南京政府又は現在の儘の広東政権との間に真面目の交渉を進むることは厳に之を避く 二、支那本部に対する策案  第一項の解決■■支那本部諸政権との間に起くへき紛争を憂慮し満蒙問題解決方針を緩和することは絶対に拒否すへきものとす但し支那本部政権をして満蒙に生する新事態を黙認又は是認せしむる■北支及中支■■■■■■■■■■■■■相互■■■■■■■とす  (1)北支那に於ける張学良の勢力を一掃し反蒋勢力又は北洋軍閥を■■■■■■す  (2)広東政府を支持し南京政府の瓦解を策す 三、国民■■■  満蒙問題の解決は必然的に米国の又時として国際連盟の干渉を招来すへきことを予期せさるへからす  之か為 (イ)対外宣伝に力を用ひ (ロ)我国民をして満蒙問題解決の目標として進むへき最少限度を理解認識せしめ且米国又は連盟の干渉に際し挙国一致之を排撃する決意を涵養するの手段を講するを要す (国立公文書館:16.満洲事変解決ニ関スル方針 9月30日 C12120034100)

日露講和条件予定の件 1905年04月21日

 日露講和条件予定の件(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり)  明治三十八年四月二十一日閣議決定  同          日御裁決   日露講和条件予定ノ件 抑も帝国か安危存亡を賭して露国と干戈を交ふるに至りたるは其目的以て満韓の保全を維持し極東永遠の平和を確立するに在り之れ帝国の自衛を全ふし正当利権を擁護する為め緊要欠くへからさるものにして若し此目的を達せすんは帝国の地位は依然として保障を欠き他日再ひ同一部面に於て露国の為めに侵迫を 蒙るへきや必せり故に露国と和を議するに於ては左の条件は絶対に必要なりとす 一、 極東平和の最大禍源たる韓国を全然我自由処分に委することを約せしむること 二、 帝国か従来主張したる満洲保全の主義に基き一定の期限内に同地より露国軍隊を撤退せしむること尤も之と同様に我方に於ても満洲より撤兵すへきは勿論なり 三、旅順大連の経営と東清鉄道哈爾賓支線とは露国か以て南満洲に威力を振ひ進んで韓国々境を脅嚇するに至りたる侵略の利器なり故に遼東半島租借権と前期鉄道支線とは共に之を我手中に収む以て将来の禍根を杜絶すること 右は戦争の目的を達し帝国の地位を永遠に保障する為に絶対的必要の条件にして帝国政府は飽迄之か貫徹を期せさるへからす 次に戦争に附帯して生し若くは我利権拡張の為めに要する条件にして絶対的必要の条件にあらさるも事情の許す限り努めて之か貫徹を図るへきものは左の如し 一、軍費を賠償せしむること 二、戦闘の結果中立港に奔■せる露国艦艇を交付せしむること 三、薩哈嗹及其附近諸島を割譲せしむること 四、沿海州沿岸に於ける漁業権を与へしむること 惟ふに講和の条件は素より今後の戦局如何により変更を免れすと雖も我要求条件は大体上記の如くするを可とすへし尤も我方に於ては連戦連捷の功を奏したるも来る露国の死命を制すること能はさるか故に右等の要求すら之を容れしむるか為めには異常の困難あるを予期せさるへからす (国立公文書館:128.日露講和条件予定ノ件(明治三十八年四月二十一日閣議決定) B04120029300)

世界情勢判断 1945年02月15日

 世界情勢判断(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり) 最高戦争指導会議            昭和二十年二月十五日  世 界 情 勢 判 断 概ね昭和二十年中期を目途とする世界情勢の推移を判断し爾後の戦争指導に資せんとす     目  次 第一節  東亜の情勢 第二節  「ソ」の対日動向 第三節  欧州の情勢 第四節  総合判断      第一節 東亜の情勢 米国は其の兵力重点を東亜に指向し優越せる物量威力を以て戦争早期終結を目途とし重慶を利用しつつ英国と共に東亜に対し強引果敢なる攻勢を続行すると共に極力「ソ」連を対日参戦に導入するに努むへし 尚帝国並に大東亜諸国に対し執拗なる政謀略を併用し其の戦意の喪失を謀るへし 而して東亜戦線に対する補給線の延長は米にとり今後弱点たると共に我出血作戦による人的資源の損耗は米の最も苦痛とするところなり 一、太平洋方面 米は欧州戦況の推移に概ね関はりなく更に対日攻勢を熾烈化放■なる作戦を指導すへし 即ち米軍は比島作戦の早期完了に努力を傾注すへく其の進展に伴ひ「マリアナ」及比島を対日攻勢の策源たらしめ支那大陸沿岸及本土近海諸島に基地を推進し概ね八、九月頃迄に帝国本土に対する包囲進攻態勢の確立を図り益々空襲を激化して極力本土を軟化すると共に大陸と本土との分断を図り且国民の戦意の破摧を図りたる上帝国本土要域に対する上陸を企図すへし 但し帝国国力及戦力の推移に依りては本年六、七月頃に於て本土要域に対する上陸を企図することあるへし 又敵は三、四月の候より其の機動艦隊を本土近海に作戦せしめ空襲及擾乱を企図するの算大なり 尚敵は比較的早期に仏領印度支那方面に対し上陸作戦を実施することあるへし 二、緬甸及印度洋方面 緬甸方面に対しては引続き圧力を加重すへし 又太平洋方面の攻勢と関連し印度洋正面より「アンダマン」「ニコバル」北部「スマトラ」等に基地の推進を図り次て本年春夏の交敵は馬来半島に上陸するの算あり 又引続き「スマトラ」油田地帯等に対する大規模空襲を実施すへし 三、支那方面 重慶は印支地上「ルート」の啓開保持に努め戦力の快復増強特に其の軍隊の米式化に伴ひ米の作戦に策応し対日反攻を実施すへし 米、支空軍の増勢は依然継続すへく、太平洋方面と呼応して陸海交通の遮断、日満支要域に対する爆撃を愈々増大すへし 我占拠地域に対する敵特に延安側の蠢...

物価統制要綱 1939年05月05日

 物価統制要綱(ひらがな化、不明文字あり) 昭和14年5月5日 閣議決定 第一 物価政策の目標 一、戦時物価問題解決の急務 支那事変の推移及長期建設の進展に対応すべき戦時経済の運営上特に現下最大の急務は生産力の拡充と物価問題の解決とに在り就中速に所要の対策を講じて一定の物価基準を確保するに非ずんば、一切の経済国策は其の枢軸を失ひ竟に聖戦の目的達成を期待すべからざるに至るべし、蓋し高物価は イ、輸出を困難ならしめ、軍需及生産力拡充に緊要なる物資の輸入力を著しく減殺すべし ロ、政府予算の執行を阻害し軍備の充足をも至難ならしむべし ハ、国民貯蓄の意念を根底より覆し、公債政策の運行並に生産力拡充資金の調達を不可能ならしむべし ニ、生産力拡充を要する事業の基礎を脆弱にし、其の経営の前途を不安ならしむべし ホ、国民生活を危殆に陥らしめ、社会不安を激成すべし 即チ物価にして一度其の安定を失ひ昂騰の勢を激成するに於ては収拾の途なく、戦時経済は混乱に陥るべきを以て、此の際万難を排し抜本的対策を断行するの要あり 二、総合的物価対策の必要 政府は事変発生以来物価騰貴抑制の為夙に応急的の措置を講じ夫々効果を挙げ来りたるも今後の事態に備ふる為には単に物価現象のみならず根本的に財政経済の全分野に亘り総合的対策を確立せざるべからざるの時機に到達せるものと謂ふべし、蓋し物価は財政経済の凡ゆる部面と密接なる相互関連を有しその総合点として現るゝものなるが故に根本的に財政経済の全分野即チ物資の生産、配給、消費、資金、労力、運輸等の適合並調整等に亘り総合的対策を確立実施せざるべからず、斯かる総合的対策によりてのみ始めて事変所期の目的たる長期建設の大業を達成するを得べきなり而してその実行に付ては政府が全機関を挙げて一層有機的にその機能を発揮すると共に一般国民特に産業に従事する者が戦時物価問題解決の重要性及根本対策の趣旨を深く認識することを緊要とし真に官民一致の全面的努力に俟つの外なし 三、物価基準の決定 (一)現下の物価統制の目的は、現在の為替相場を堅持しつゝ輸出を増進し生産の拡充、軍需の供給に支障なからしむると共に、国民生活の安定を図り、戦時経済の運営を完からしむるに在り、而して之が為には国内物価の安定を急務とし其の基準は国際物価水準に照応して輸出の増進を可能ならしむることを其の目標とす (二)右...

開戦以降物的国力の推移並今後に於ける見通説明資料 1944年08月10日

 開戦以降物的国力の推移並今後に於ける見通説明資料(ひらがな化、一部新字体化、附属資料省略、不明文字あり)    開戰以降物的國力ノ推移竝ニ今後ニ於ケル見透 一、 判  決  大東亜戦争勃発以来物的国力は開戦直前の見透に対し主として敵潜水艦に依る船舶の損害予想外に増大し造船量を遥に突破して保有船腹は大幅に逓減せる上に累次に亘るABの船舶増微に依りC船輸送力の激減せると一方特別及繰上輸入等に依る在庫物資よりの給源涸渇に依り逐年減少せり、然れとも国民生活を中心とする民需部門の犠牲により漸増せる軍需を充足し来れるも既に現状に於て主要食糧は一応確保し得るも爾余の諸産業は全面的に操業を短縮若は中止せられあるの実状にして徹底的に重点を形成せる軍需生産に於ても十九年度初頭を頂点として爾後は低下の傾向にあるを否定し得す又現状程度の国民生活を維持することも逐次困難となる趨勢に在り即ち戦争第四年たる十九年末には国力の弾発性は概ね喪失するものと認めらる  更に二十年度の物的国力を現状見透に依り按ずるに空襲に依る被害を考慮外とするも本年度に比し相当低下すへく直接的戦力の造出も低調とならさるを得す、特に万一南方資源の運送杜絶するか如き事態生起せんか液体燃料の供給不足は輸送生産部門に対し正に致命的打撃を与ふべく、アルミニウム生産亦激減すべし、右窮状打開の為日満支資源利用に依る転換を図らんとするも所要資材捻出の見透より勘案し大規模なる措置は実現不可能にして有効適切なる方策を迅速に案出し得す  即ち南方占領地との連絡確保は物的国力の維持培養の為絶対要件と謂ふへく南方資源特に石油を放棄せは爾後の戦争遂行に重大な影響を与ふへし 二、 説  明  (一) 海上輸送力、開戦以降本年七月迄の間に於ける新造船喪失大破船は(一部推定を含む)左の如く        新 造 船    二○九万総噸        喪失大破船    四五〇 〃        差   引  △ 二四一 〃    損害は造船の約二倍半に達し国力逓減の最大原因を形成しあり     C船輸送力の状況を開戦前見透及年度当初計画と対比するに左の通にして            開戦前見透    年度当初計画(イ)     実 施(ロ)   (ロ)/(イ)     十七年度   五、〇八三万瓲    五、三七五万瓲    四、一三六万瓲  七...

国防に要する兵力 陸軍之部 1907年04月04日

 国防に要する兵力 陸軍之部(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり) 内容見直し:ソース記載なし  陸軍 曩に陸軍大臣と共に内奏せし平時常設の二十五師団完■後十七年(兵役年限)に於て戦時整備し得へき帝国陸軍の諸部隊概ね左の如し     一、野戦部隊 一、軍司令部   若  干 二、野戦師団   二十五個 三、予備師団   二十五個 四、騎兵旅団   五  個 五、野戦砲兵旅団 六  個 六、山砲連隊   六  個 七、重砲兵旅団  四  個 八、野戦電信隊  若  干 九、右に適応する兵站諸部隊    及所要の重架橋縦割     二、攻城部隊 攻城の為めに要する諸機関及■■■隊 若干     三、後備部隊 一、後備歩兵大隊     百  個 二、後備騎兵中隊     二十五個 三、後備野戦砲兵中隊(野砲)二十五個 四、後備工兵中隊     二十五個     四、守備部隊 一、要塞部隊       十五個 二、対馬警備隊 三、台湾守備隊 四、樺太守備隊     五、特殊部隊 一、鉄道旅団       一 個 二、気球隊        一 個 三、軍楽隊        若 干 四、鉄道船舶輸送に関する諸部及野戦軍の被服糧食等の補給を管掌する諸廠     六、留守部隊 野戦部隊及之に附属する諸機関と適応する者     七、国民兵隊 国民兵隊の種類及兵力は■時之を定めたるるものとす 以上の兵力は国防上必須のものなりと雖も財政の現状は一時に此兵力の充実に着手する能はさるの事情あり因て曩に御裁可を得たる如く先つ明治四十年度より十九箇師団及之に伴ふ諸部隊の整備に着手し残余六箇師団の常設は他日財政緩和するの時を待て整備に着手し以て国防に要する兵力先突の完成を期せんとす而して十九箇師団完成後十七年(兵役年限)に於て戦時整備し得へき帝国陸軍の諸部隊概ね左の如し     一、野戦部隊 一、軍司令部 二、野戦師団 三、予備師団 四、騎兵旅団 五、野戦砲兵旅団 六、山砲連隊 七、重砲兵旅団 八、野戦電信隊 九、右に適応する兵站諸部隊及所要の重架橋縦割     二、攻城部隊 攻城の為めに要する諸■■及■■砲兵隊若干     三、後備部隊 一、後備歩兵大隊     七十六個 二、後備騎兵中隊      十九個 三、後備野戦砲兵中隊(野砲) 十九個 四、後備工兵中隊      十九個  ...

国防に要する兵力 海軍之部 1907年04月04日

 国防に要する兵力 海軍之部(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり)  國防ニ要スル兵力 一、帝国の国防方針に従ひ海軍用兵上最重要視すへき想定敵国に対し東洋に在て攻勢を取らんか為には我海軍は常に最新式即ち最精鋭なる一艦隊を備へさるへからす而して其兵力の最低限は左の如くなるを要す 戦艦凡二万噸      八隻 装甲巡洋艦凡一万八千噸  八隻 以上を艦隊の主幹とし其作戦機能を完からしむるに要する他の巡洋艦及ひ大小駆逐艦等各若干隻を附す 右兵力を国防上の第一線艦隊とす 二、列国海軍の趨勢、製造力及技術の進歩等に鑑み且つ已■の経験に徴し装甲艦の有効艦齢二十五ヶ年を三期に区分し竣工後八年迄を第一期第九年より第十六年迄を第二期第十七年以後第二十五年迄を第三期とし而して其第一期に属するものを以て第一線艦隊の編組に充つるものとす  第二期及第三期艦齢に当る軍艦を以て予備隊を編組し必要に応し或は第一線艦隊の増援に充て或は局地の防禦警備等に任せしむるものとす  局地の防禦に充つへき小艦艇の如きは艦齢第二期第三期に属するものを以てするの外尚ほ多少新造補充を要することあるへし 三、軍港、要港、防禦港、主要軍需品の製造所其他諸般の設備は凡て前記第一第二項の要旨に伴ふ如く施設せらるるを要す 四、河川湖航用の砲艦並漁業保護を目的とする軍艦の製造の如きは主として政略上の必要に基き決定せらるへきものとす (附言)本案は列国海軍情勢の変遷に応し改定を要することあるへし 御参考 帝国海軍の主力は現在の軍艦、現に製造中に属するもの及既に製造を予定せるものを悉く計上するときは明治四十六年度の終りに於て概ね左の如くなるへし     戦 艦   十六隻    内   第一期  五隻   第二期  十隻   第三期  一隻     装甲巡洋艦 十七隻   第一期  七隻    但し内三隻は約一万四千噸   第二期  十隻 (国立公文書館:国防に要する兵力 海軍の部 C14061024900)

帝国軍の用兵綱領 1907年04月04日

 帝国軍の用兵綱領(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり)    帝國軍ノ用兵綱領 一、我国防方針に従て作戦する帝国軍は攻勢を以て本領とす乃ち海軍は敵手に対し努めて機先を制し其海上勢力を殲滅することを目的とし陸軍は敵に先ちて所望の兵力を速かに一地方に集合し以て先制の利を占むるを目的として作戦す故に海軍を以てする我沿海都市島嶼及一般商船航路等の防護は此要旨と背馳せさる範囲内に於て実施せらるるものとす但し下関海峡と釜山、馬山浦間は常に確実に之を防護せんことを期す  台湾、樺太に於ては其守備隊をして通常独立の防禦を任せしめ又諸要塞は通常海軍の防備部隊と相待て防禦配備を取るものとす 二、将来衝突の危険最も多き露国を敵とする場合に於て帝国軍の作戦は左の要領に従ふへし 海軍は先つ東亜に在る敵を求めて攻撃し且つ朝鮮海峡を制扼せんことを期す 敵の海上兵力浦塩斯徳方面に引退するときは我は其間接封鎖を励行し以て黄海に実施せらるへき我陸兵の輸送を防護せんとす 黄海方面に於ける陸兵の輸送は開戦の初期より実施せらるるものなり然れも情況に因りては多少の安固を欠くことあるものとす 注意、輸送の安全を謀る為め韓国西岸に於ける避泊地の施設並海陸通信機関の整備を要す 陸軍は満洲、烏蘇利及韓国を作戦地と為し本作戦を満洲に支作戦を烏蘇利方面に誘い之れか為め勉めて速に陸軍の大部を南満洲の一地方と一部を韓国咸鏡道の北部に集合し後敵を求めて之を攻撃す而して如何なる場合に在ても韓国は敵の蹂躙に委せさることを期す 韓国咸鏡道北部に陸兵を輸送することは陸上交通機関の完備せさる間は海戦の進捗を待たさるへからす■■平時より該方面に適当の施設を為し以て敵の進入を防止するの方法を講せさるへからす 作戦の進捗に応し浦塩斯徳を攻略せんとする時は陸海両軍相策応して成効の速かならんことを期す 三、米、独、仏の各一国を敵とする已を得さる場合に遭遇せは先つ敵の海上勢力を撃滅するを主眼とし嗣後の作戦は臨機之を策定す 四、日英同盟協約に基き英国と協同して戦争する場合に在ては共同の敵に対し互に相策応し友軍全体の和を謀るを目的として作戦すへしと雖も相互の計画に於ては直接の連合作戦若くは陸兵或は艦艇等を以てする直接の援助を期待せさるを要す 五、日英同盟協約に依り露国に対して日英互に援助するの作戦は左の要領に従ふものとす 我より英国に年所...

時局収集対策試案 1945年06月??日

 時局収拾対策試案(一部新字体化、不明文字あり) 時局收拾の対策試案 一、沖縄に於ける戦局の推移は遺憾乍ら不幸なる結果に終るの不得止を思はしむ而かも其結果は極めて近き将来に■はるることは略確実なり 二、御前会議々案参考として添付の我国々力の研究を見るにあらゆる面より見て本年下半期以後に於ては戦争遂行の能力を事実上殆んど喪失するを思はしむ 三、敵の今後採るべき作戦は素より此方面の素人なる余の適確に判断し得さるは勿論なるか今日敵の空軍が大量焼夷弾攻撃の威力より見て全国の都市と言はず村落に至る迄虱潰しに焼払ふことは些したる難事にあらず又左迄の時を要せざるべし即ち住居の破壊戦術に出てくる時は之は貯蔵の衣服食糧の喪失を同時に伴ふ殊に農村方面にては従来空襲に慣れ居らざる故不意に此種の攻撃に遭遇するときは予め貯蔵品の疎開等は到底実施困難なるべく結局は殆んど其の全部を喪失するものと見ざるべからず。況んや全国の小町村に至りては対空防禦は皆無と云ふべく地上の民防空の施設も極めて貧弱なるに於ておや 四、以上の想定にして大なる誤なしとせば本年下半期以後の全国に亘る食糧衣料等の極端なる不足は寒冷の候に向ふ季節的関係もあり容易ならざる人心の不安を惹起すべく事実は真に収拾し能はざることとなるべし 五、以上の観点よりして戦局の収拾につき此の際果断なる手を打つことは今日我国に於ける至上の要請なりと信ず  然らば如何なる方法と手段により此の目的を達成すべきや是最も慎重に考究を要するところなり 六、敵側の所謂和平攻勢的の諸発表諸論文により之を見るに我国の所謂軍閥打倒を以て其の主要目的となすは略確実なり 七、従て軍部より和平を提唱し政府之によりて策案を決定し交渉を開始するを正道なりと信ずるも我国の現状より見て今日の段階に於ては殆ど不可能なるのみならず此の機運の熟するを俟たんか恐らくは時機を失し遂に独逸の運命と同一轍を踏み皇室の御安泰国体の護持てふ至上の目的すら達し得ざる悲境に落つることを保障し得ざるべし 八、依つて従来の例より見れば極めて異例にして且誠に畏れ多きことにて恐懼の至りなれども下万民の為め天皇陛下の御勇断を御願ひ申上げ左の方針により戦局の収拾に邁進の外なしと信ず 九、天皇陛下の御親書を奉じて仲介国と交渉す 対手国たる米英と直接交渉を開始し得れば之も一策ならんも交渉上のゆとりを取るためには...