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世界情勢判断 1945年02月15日

 世界情勢判断(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり)


最高戦争指導会議

           昭和二十年二月十五日

 世 界 情 勢 判 断


概ね昭和二十年中期を目途とする世界情勢の推移を判断し爾後の戦争指導に資せんとす


    目  次

第一節  東亜の情勢

第二節  「ソ」の対日動向

第三節  欧州の情勢

第四節  総合判断


     第一節 東亜の情勢

米国は其の兵力重点を東亜に指向し優越せる物量威力を以て戦争早期終結を目途とし重慶を利用しつつ英国と共に東亜に対し強引果敢なる攻勢を続行すると共に極力「ソ」連を対日参戦に導入するに努むへし

尚帝国並に大東亜諸国に対し執拗なる政謀略を併用し其の戦意の喪失を謀るへし

而して東亜戦線に対する補給線の延長は米にとり今後弱点たると共に我出血作戦による人的資源の損耗は米の最も苦痛とするところなり

一、太平洋方面

米は欧州戦況の推移に概ね関はりなく更に対日攻勢を熾烈化放■なる作戦を指導すへし

即ち米軍は比島作戦の早期完了に努力を傾注すへく其の進展に伴ひ「マリアナ」及比島を対日攻勢の策源たらしめ支那大陸沿岸及本土近海諸島に基地を推進し概ね八、九月頃迄に帝国本土に対する包囲進攻態勢の確立を図り益々空襲を激化して極力本土を軟化すると共に大陸と本土との分断を図り且国民の戦意の破摧を図りたる上帝国本土要域に対する上陸を企図すへし

但し帝国国力及戦力の推移に依りては本年六、七月頃に於て本土要域に対する上陸を企図することあるへし

又敵は三、四月の候より其の機動艦隊を本土近海に作戦せしめ空襲及擾乱を企図するの算大なり

尚敵は比較的早期に仏領印度支那方面に対し上陸作戦を実施することあるへし

二、緬甸及印度洋方面

緬甸方面に対しては引続き圧力を加重すへし

又太平洋方面の攻勢と関連し印度洋正面より「アンダマン」「ニコバル」北部「スマトラ」等に基地の推進を図り次て本年春夏の交敵は馬来半島に上陸するの算あり

又引続き「スマトラ」油田地帯等に対する大規模空襲を実施すへし

三、支那方面

重慶は印支地上「ルート」の啓開保持に努め戦力の快復増強特に其の軍隊の米式化に伴ひ米の作戦に策応し対日反攻を実施すへし

米、支空軍の増勢は依然継続すへく、太平洋方面と呼応して陸海交通の遮断、日満支要域に対する爆撃を愈々増大すへし

我占拠地域に対する敵特に延安側の蠢動は益々激化せらるへし

四、大東亜諸邦の動向

大東亜諸邦は満洲国を除き大東亜戦局の推移と敵側政謀略の激化と相俟つて対日非協力的態度を漸次表面に露呈し遂には敵性化するものあるに至るへし

又偽政権の樹立を見ることあるへし


     第二節 「ソ」の対日動向

「ソ」は本春中立条約の破棄を通告する公算相当大なるも依然対日中立関係を保持すへし 但し帝国国力就中対「ソ」弾撥力著しく弱化せりと判断せる場合に於ては欧州情勢の如何に拘らす東亜の将来に対する発言権を確保せんか為対日武力戦を発動するに至るの算あり

     第三節 欧州の情勢

東部戦線に於ける「ソ」の攻勢は極めて激烈にして彼此の戦力比就中独の決勝戦力増勢の困難性よりして大勢は独に不利に推移すへし

本年中期頃迄に独にとりて最悪の事態となることあるを予期し■くの要あるへし

此の間欧州政戦局の転換に関し注意の要あり

而して欧州戦場に於ける人的資源の損耗相当大なること並に欧州戦局将に終結せんとするに方り米英「ソ」の間に一致し難きものあることとは米英の悩みとする所なり

     第四節 総合判断

今や戦局は日独にとりて急迫しありと雖も敵国も亦夫々深刻なる苦悩を包蔵しありて正に彼我の根比への段階に到達しあり

従つて今後愈々加重すへき如何なる苦難にも堪へ毅然として必勝の闘魂を堅持し飽く迄戦ひ抜く者に最後の勝利か帰するものと謂うへし

(国立公文書館:最高戦争指導会議 報告第10号 世界情勢判断 昭和20年2月15日 C14061060400) 

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