スキップしてメイン コンテンツに移動

日清修好条規 1871年09月13日

内容見直し点:口語訳中途

修好条規(口語訳、前文署名省略)

第一条 この条約締結のあとは、大日本国と大清国は弥和誼を敦うし、天地と共に窮まり無るべし。又両国に属したる邦土も、各礼を以て相待ち、すこしも侵越する事なく永久安全を得せしむべし。
第二条 両国好を通ぜし上は、必ず相関切す。若し他国より不公及び軽藐する事有る時、其知らせを為さば、何れも互に相助け、或は中に入り、程克く取扱い、友誼を敦くすべし。
第三条 両国の政事禁令各異なれば、其政事は己国自主の権に任すべし。彼此に於て何れも代謀干預して禁じたる事を、取り行わんと請い願う事を得ず。其禁令は互に相助け、各其商民に諭し、土人を誘惑し、聊違犯あるを許さず。
第四条 両国秉権大臣を差出し、其眷属随員を召具して京師に在留し、或は長く居留し、或は時々往来し、内地各処を通行する事を得べし。其入費は何れも自分より払うべし。其地面家宅を賃借して大臣等の公館と為し、並びに行李の往来及び飛脚を仕立書状を送る等の事は、何れも不都合がないように世話しなければならない。
第五条 両国の官位何れも定品有りといえども、職を授る事各同じからず。因彼此の職掌相当する者は、応接及び交通とも均く対待の礼を用ゆ。職卑き者と上官と相見るには客礼を行い、公務を辨ずるに付ては、職掌相当の官へ照会す。其上官へ転申し直達する事を得ず。又双方礼式の出会には、各官位の名帖を用う。凡両国より差出したる官員初て任所に到着せば、印証ある書付を出し見せ、仮冒なき様の防ぎをなすべし。
第六条 今後両国を往復する公文について、清国は漢文を用い、日本国は日本文を用いて漢訳文を副えることとする。あるいはただ漢文のみを用い、その記載に従うものとする。

(これ以下まだ)
第七条 両国好みを通ぜし上は、海岸の各港に於て彼此し共に場所を指定め、商民の往来貿易を許すべし。猶別に通商章程を立て、両国の商民に永遠遵守せしむべし。
第八条 両国の開港場には、彼此何れも理事官を差置き、自国商民の取締をなすべし。凡家財、産業、公事、訴訟に干係せし事件は、都て其裁判に帰し、何れも自国の律例を按して糾辨すべし。両国商民相互の訴訟には、何れも願書体を用う。理事官は先ず理解を加え、成丈け訴訟に及ばざる様にすべし。其儀能わざる時は、地方官に掛合い双方出会し公平に裁断すべし。尤盗賊欠落等の事件は、両国の地方官より召捕り吟味取上げ方致すのみにして、官より償う事はなさざるべし。
第九条 両国の開港場に若し未だ理事官を置ざる時は、其人民貿易何れも地方官より取締世話すべし。若し罪科を犯さば、本人を捕て吟味を遂げ、其事情を最寄開港場の理事官へ掛合い律を照して裁断すべし。
第十条 両国の官吏、商人は諸開港場に於て、何れも其地の民人を雇い雑役、手代等に用ゆる事、勝手に為べし。尤其雇主より時々取締を為し、事に寄せ人を欺く事なからしめ、別して其私言を偏聴して事を生ぜしむべからず。若し犯罪の者有らば、其地方官より召捕り糾辨するに任せ、雇主より庇う事を得ず。
第十一条 両国の商民、諸開港場にて彼此往来するに付ては互に友愛すべし。刀剣類を携帯する事を得ず。違う者は罰を行い、刀剣は官に取上ぐべし。又何れも其本分を守り、永住暫居の差別無く、必ず自国理事官の支配に従うべし。衣冠を替え改め、其地の人別に入り官途に就き、紛わしき儀有る事を許さず。
第十二条 此国の人民、此国の法度を犯せし事有て、彼国の役所、商船、会社等の内に隠れ忍び或は彼国各処に遁げ潜み居る者を、此国の官より査明して掛合越さば、彼国の官にて早速召捕え、見遁す事を得ず。囚人を引送る時は、途中衣食を与え、凌虐すべからず。
第十三条 両国の人民、若し開港場に於て兇徒を語合い、盗賊悪事をなし、或は内地に潜み入り、火を付け、人を殺し、劫奪を為す者有らば、各港にては地方官より厳く捕え、直に其次第を理事官へ知らすべし。若し兇器を用て手向いせば、何れに於ても挌殺して論無かるべし。併し之を殺せし事情は、理事官と出会して一同に査験すべし。若し其事内地に発りて理事官自ら赴き査験する事届きかぬる時は、其地方官より実在の情由を理事官に照会して査照せしむべし。尤縛して取りたる罪人は、各港にては地方官と理事官と会合して吟味し、内地にては地方官一手にて吟味し、其事情を理事官に照会して査照せしむべし。若し此国の人民、彼国に在て一揆徒党を企て十人以上の数に及び、並びに彼国人民を誘結通謀し害を地方に作すの事有らば、彼国の官より早速査拿し、各港にては理事官に掛合い会審し、内地にては地方官より理事官に照会して査照せしめ、何れも事を犯せし地方に於て法を正すべし。
第十四条 両国の兵船開港場に往来する事は、自国の商民を保護する為めなれば、都て未開港場及び内地の河湖支港へ乗入る事を許さず。違う者は引留て罰を行うべし。尤風に遇い難を避るために乗入りたる者は此例にあらず。
第十五条 此後両国若し別国と兵を用ゆる事有るに付、防禦致すべき各港に於て布告をなさば、暫く貿易並に船隻の出入を差止め、誤て傷損を受けざらしむべし。亦平時に於て大日本人は大清の開港場及び最寄の海上、大清人は大日本の開港場及び最寄の海上にて、何れも不和の国と互に争闘愴劫する事を許さず。
第十六条 両国の理事官は、何れも貿易を為す事を得ず。亦条約無き国の理事官を兼勤する事を許さず。若し事務の計い方、衆人の心に叶わざる実拠有らば、彼此何れも書面を以て秉権大臣に掛合い、査明して引取らしむべし。一人事を破るに因て両国の友誼を損傷するに至らしめず。
第十七条 両国の船印は各定式あり。万一彼国の船、此国の船印を仮冒して私に不法の事を為さば、其船並に荷物をも取上ぐべし。若し其船印、官員より渡したる者ならば、其筋に申立、官を罷めしむべし。亦両国の書籍は、彼此誦習わんと願わば互に売買する事を許すべし。
第十八条 両国議定せし条規は、何れも預め防範を為し、偶嫌隙を生ずるを免れしめ、以て講信修好の道を尽す所なり。是に因て両国欽差全権大臣、証拠の為め先ず花押調印を為し置き、両国御筆の批准相済み互に取替わせし後に、即ち版刻して各処に通行し、彼此の官民に普く遵守せしめ、永く以て好みを為すべし。


修好条規(原文、ひらがな化)

大日本國と大淸國は古來友誼敦厚なるを以て今般一同舊好を修め益邦󠄈交󠄄を固くせんと欲し
大日本國 欽差全權大臣從二位大藏卿伊達󠄃
大淸國欽差全權大臣 辨理通󠄃商事務 太子太保協辨大學士兵部尙書直隸總督部堂一等肅毅伯 李
各奉したる
上諭󠄄の旨に遵󠄅ひ公󠄃同會議して修好條規を定め以て雙方信守し久遠󠄃替らさる事を期す其議定せし各條左の如し
第一條 此後 大日本國と大淸國は彌和誼を敦くし天地と共に窮まり無るへし又兩國に屬したる邦󠄈土も各禮を以て相待ち聊侵󠄃越する事なく永久安全を得せしむへし
第二條 兩國好を通󠄃せし上は必す相關切す若し他國より不公󠄃及ひ輕藐する事有る時其知らせを爲さは何れも互に相助け或は中に入り程克く取扱ひ友誼を敦くすへし
第三條 兩國の政事禁令各異なれは其政事は己國自主󠄃の權に任すへし彼此に於て何れも代謀干預して禁したる事を取り行はんと請ひ願ふ事を得す其禁令は互に相助け各其商民に諭󠄄し土人を誘惑し聊違󠄄犯有るを許さす
第四條 兩國秉權大臣を差出し其眷屬隨員を召具して京師に在留し或は長く居留し或は時々往󠄃來し內地各處を通󠄃行する事を得へし其入費は何れも自分より拂ふへし其地面家宅を賃借して大臣等の公󠄃館と爲し並に行李の往󠄃來及ひ飛脚を仕立書狀を送󠄃る等の事は何れも不都合なき樣世話いたすへし
第五條 兩國の官位何れも定品有りと雖も職を授る事各同からす因て彼此の職掌相當する者は應接及ひ文󠄃通󠄃とも均く對待の禮を用ふ職𢌿き者と上官と相見るには客禮を行ひ公󠄃務を辨するに付ては職掌相當之官へ照會して其上官へ轉申し直達󠄃する事を得す又雙方禮式の出會には各官位の名帖を用ふ凡兩國より差出したる官員初て任所󠄃に到着せは印證ある書付を出し見せ假冐なき樣の防きをなすへし
第六條 此後兩國往󠄃復する公󠄃文󠄃大淸は漢文󠄃を用ひ大日本は日本文󠄃を用ひ漢譯文󠄃を副ふへし或は只漢文󠄃のみを用ひ其便󠄃に從ふ
第七條 兩國好みを通󠄃せし上は海岸の各港󠄃に於て彼此共に場所󠄃を指定め商民の往󠄃來貿易を許すへし猶󠄄別に通󠄃商章程を立て兩國の商民に永遠󠄃遵󠄅守せしむへし
第八條 兩國の開港󠄃場には彼此何れも理事官を差置き自國商民の取締をなすへし凡家財產業公󠄃事訟󠄃訴に干係せし事件は都て其裁判に歸し何れも自國の律例を按して糺辨すへし兩國商民相互の訴訟󠄃には何れも願書體を用ふ理事官は先つ理解を加へ成丈󠄃け訴訟󠄃に及はさる樣にすへし其儀能はさる時は地方官に掛合ひ雙方出會し公󠄃平󠄃に裁斷すへし尤盜賊欠落等の事件は兩國の地方官より召捕り吟味取上け方致す而已にして官より償ふ事はなさゝるへし
第九條 兩國の開港󠄃場に若し未た理事官を置さる時は其人民貿易何れも地方官より取締り世話すへし若し罪科を犯さは本人を捕て吟味を遂󠄅け其事情󠄃を最寄開港󠄃場の理事官へ掛合ひ律を照して裁斷すへし
第十條 兩國の官吏商人は諸開港󠄃場に於て何れも其地の民人を雇ひ雜役手代等に用ふる事勝手に爲へし尤其雇主󠄃より時々取締を爲し事に寄せ人を欺く事なからしめ別して其私言を偏聽して事を生せしむへからす若犯罪の者有らは其地方官より召捕り糺辨するに任せ雇主󠄃より庇ふ事を得す
第十一條 兩國の商民諸開港󠄃場にて彼此往󠄃來するに付ては互に友愛すへし刀劍類を携帶する事を得す違󠄄ふ者は罰を行ひ刀劍は官に取上くへし又何れも其本分を守り永住暫居の差別無く必す自國理事官の支配󠄃に從ふへし衣冠を替へ改め其地の人別に入り官途󠄃に就き紛󠄃はしき儀有る事を許さす
第十二條 此國の人民此國の法度を犯せし事有て彼國の役所󠄃商船󠄄會社等の內に隱れ忍󠄄ひ或は彼國各處𛂌遁け潛み居る者を此國の官より査明して掛合越さは彼國の官にて早速󠄃召捕へ見遁す事を得す囚人を引送󠄃る時は途󠄃中衣食󠄃を與へ凌虐󠄃すへからす
第十三條 兩國の人民若し開港󠄃場に於て兇徒を語合盜賊惡事を爲し或は內地に潛み入り火を付け人を殺し劫奪を爲す者有らは各港󠄃にては地方官より嚴く捕へ直に其次󠄄第を理事官へ知らすへし若し兇器を用て手向ひせは何れに於ても挌殺して論無かるへし併し之を殺せし事情󠄃は理事官と出會して一同に査驗すへし若し其事內地に發りて理事官自ら赴き査驗する事屆きかねる時は其地方官より實在の情󠄃由を理事官に照會して査照せしむへし尤縛󠄃して取りたる罪人は各港󠄃にては地方官と理事官と會合して吟味し內地にては地方官一手にて吟味し其事情󠄃を理事官に照會して査照せしむへし若し此國の人民彼國に在て一揆徒黨を企て十人以上の數に及ひ並に彼國人民を誘結通󠄃謀し害を地方に作すの事有らは彼國の官より早速󠄃査挐し各港󠄃にては理事官に掛合ひ會審し內地にては地方官より理事官に照會して査照せしめ何れも事を犯せし地方に於て法を正すへし
第十四條 兩國の兵船󠄄開港󠄃場に往󠄃來する事は自國の商民を保護する爲めなれは都て未開港󠄃場及ひ內地の河湖支港󠄃へ乘入る事を許さす違󠄄ふ者は引留て罰を行ふへし尤風に遇󠄄ひ難を避󠄃るために乘入りたる者は此例に在らす
第十五條 此後兩國若し別國と兵を用ふる事有るに付防禦致すへき各港󠄃に於て布告をなさは暫く貿易並に船󠄄隻の出入を差止め誤󠄄て傷損を受けさらしむへし又平󠄃時に於て大日本人は大淸の開港󠄃場及ひ最寄の海上大淸人は大日本の開港󠄃場及ひ最寄の海上にて何れも不和の國と互に爭鬪搶劫する事を許さす
第十六條 兩國の理事官は何れも貿易を爲す事を得す亦條約無き國の理事官を兼󠄄勤する事を許さす若し事務の計ひ方衆人の心に協はさる實據有らは彼此何れも書面を以て秉權大臣に掛合ひ査明して引取らしむへし一人事を破るに因て兩國の友誼を損傷するに至らしめす
第十七條 兩國の船󠄄印は各定式あり萬一彼國の船󠄄此國の船󠄄印を假冐して私に不法の事を爲さは其船󠄄並󠄃に荷物とも取上くへし若し其船󠄄印官員より渡したる者ならは其筋に申立官を罷めしむへし又兩國の書籍は彼此誦習󠄃はんと願はゝ互に賣買する事を許すへし
第十八條 兩國議定せし條規は何れも預め防範を爲し偶嫌󠄃𨻶を生するを免れしめ以て講信修好の道󠄃を盡す所󠄃なり是に因て兩國欽差全權大臣證據の爲め先つ花押調印をなし置き兩國
御筆の批准相濟み互に取替はせし後に即ち版刻して各處に通󠄃行し彼此の官民に普󠄁く遵󠄅守せしめ永く以て好みを爲すへし
明治四年辛未七月二十九日 花押
同治十年辛未七月二十九日 花押
(国立公文書館)

コメント

このブログの人気の投稿

ダンバートン・オークス提案(一般的国際機構設立に関する提案) 1944年10月09日

 ダンバートン・オークス提案(一般的国際機構設立に関する提案)(訳文)     一般的国際機構設立に関する提案 (「ダンバートン、オークス」会議の結果「ソ」連邦、米国、英国及重慶政権に依り提案せられ千九百四十四年十月九日発表せられたるもの) (本提案の英文は千九百四十四年十月十一日附「モスコー、ニュース」より之を採り「ストックホルム」電報等に依り長短相補ひたるものなり) 「国際連合」なる名称の下に一の国際機構設立せらるべく其の憲章は左の提案を具現するに必要なる規定を掲ぐべし    第一章 目的 本機構の目的は左の如くなるべし 一、国際平和及安寧を保持すること、右目的の為平和に対する脅威の防止及除去並に侵略行為又は他の平和侵害行為の抑圧を目的とする効果的且集団的措置を執ること及平和の侵害に至るの虞ある国際紛争を平和的方法に依り調整又は解決すること 二、各国間の友好関係を発展せしめ且世界平和を強化すべき他の適当なる措置を執ること 三、各国間の経済的、社会的及他の人道上の問題の解決の為国際協力を完成すること及 四、右共同目的完成の為各国の行動を調整すべき中心たるべきこと    第二章 原則 第一章に掲げたる目的を遂行せんが為本機構及其の締盟国は以下の原則に従ひ行動すべし 一、本機構は一切の平和愛好国の主権平等の原則に其の基礎を置くものとす 二、本機構の一切の締盟国は締盟国全部に対し締盟国たるの地位に基く権利及利益を保障する為憲章に従ひ負担したる義務を履行することを約す 三、本機構の一切の締盟国は其の紛争を国際平和及安寧を危殆ならしめざるが如き平和的方法に依り解決すべきものとす 四、本機構の一切の締盟国は其の国際関係に於て本機構の目的と両立せざる如何なる方法に於ても脅威又は兵力の行使を避くるものとす 五、本機構の一切の締盟国は本機構が憲章の規定に従ひ執るべき如何なる行動に於ても之に対し有らゆる援助を与ふるものとす 六、本機構の一切の締盟国は本機構が防遏的又は強制的行動を執行中なる如何なる国家に対しても援助を与ふることを避くるものとす 本機構は、国際平和及安寧保持に必要なる限り本機構の非締盟国が右原則に従ひ行動することを確実ならしむべし    第三章 締盟国 一切の平和愛好国は本機構の締盟国たり得べし    第四章 主要機関 一、本機構は其の主要機関として左記を有すべし  イ

第二次近衛声明(東亜新秩序建設の声明) 1938年11月03日

 第二次近衛声明(東亜新秩序建設の声明)                     (昭和十三年十一月三日)  今や 陛下の御稜威に依り帝国陸海軍は、克く広東、武漢三鎮を攻略して、支那の要域を戡定したり。国民政府は既に地方の一政権に過ぎず。然れども、尚ほ同政府にして抗日容共政策を固執する限り、これが潰滅を見るまで、帝国は断じて矛を収むることなし。  帝国の冀求する所は、東亜永遠の安定を確保すべき新秩序の建設に在り。今次征戦究極の目的亦此に存す。  この新秩序の建設は日満支三国相携へ、政治、経済、文化等各般に亘り互助連環の関係を樹立するを以て根幹とし、東亜に於ける国際正義の確立、共同防共の達成、新文化の創造、経済結合の実現を期するにあり。是れ実に東亜を安定し、世界の進運に寄与する所以なり。  帝国が支那に望む所は、この東亜新秩序建設の任務を分担せんことに在り。帝国は支那国民が能く我が真意を理解し、以て帝国の協力に応へむことを期待す。固より国民政府と雖も従来の指導政策を一擲し、その人的構成を改替して更生の実を挙げ、新秩序の建設に来り参ずるに於ては敢て之を拒否するものにあらず。  帝国は列国も亦帝国の意図を正確に認識し、東亜の新情勢に適応すべきを信じて疑はず。就中、盟朋諸国従来の厚誼に対しては深くこれを多とするものなり。  惟ふに東亜に於ける新秩序の建設は、我が肇国の精神に淵源し、これを完成するは、現代日本国民に課せられたる光栄ある責務なり。帝国は必要なる国内諸般の改新を断行して、愈々国家総力の拡充を図り、万難を排して斯業の達成に邁進せざるべからず。  茲に政府は帝国不動の方針と決意とを声明す。 (国立公文書館:「近衛首相演述集」(その二)/1 第一章 「声明、告諭、訓令、訓辞」 B02030031600)