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帝国軍の用兵綱領 1907年04月04日

 帝国軍の用兵綱領(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり)


   帝國軍ノ用兵綱領

一、我国防方針に従て作戦する帝国軍は攻勢を以て本領とす乃ち海軍は敵手に対し努めて機先を制し其海上勢力を殲滅することを目的とし陸軍は敵に先ちて所望の兵力を速かに一地方に集合し以て先制の利を占むるを目的として作戦す故に海軍を以てする我沿海都市島嶼及一般商船航路等の防護は此要旨と背馳せさる範囲内に於て実施せらるるものとす但し下関海峡と釜山、馬山浦間は常に確実に之を防護せんことを期す

 台湾、樺太に於ては其守備隊をして通常独立の防禦を任せしめ又諸要塞は通常海軍の防備部隊と相待て防禦配備を取るものとす

二、将来衝突の危険最も多き露国を敵とする場合に於て帝国軍の作戦は左の要領に従ふへし

海軍は先つ東亜に在る敵を求めて攻撃し且つ朝鮮海峡を制扼せんことを期す

敵の海上兵力浦塩斯徳方面に引退するときは我は其間接封鎖を励行し以て黄海に実施せらるへき我陸兵の輸送を防護せんとす

黄海方面に於ける陸兵の輸送は開戦の初期より実施せらるるものなり然れも情況に因りては多少の安固を欠くことあるものとす

注意、輸送の安全を謀る為め韓国西岸に於ける避泊地の施設並海陸通信機関の整備を要す

陸軍は満洲、烏蘇利及韓国を作戦地と為し本作戦を満洲に支作戦を烏蘇利方面に誘い之れか為め勉めて速に陸軍の大部を南満洲の一地方と一部を韓国咸鏡道の北部に集合し後敵を求めて之を攻撃す而して如何なる場合に在ても韓国は敵の蹂躙に委せさることを期す

韓国咸鏡道北部に陸兵を輸送することは陸上交通機関の完備せさる間は海戦の進捗を待たさるへからす■■平時より該方面に適当の施設を為し以て敵の進入を防止するの方法を講せさるへからす

作戦の進捗に応し浦塩斯徳を攻略せんとする時は陸海両軍相策応して成効の速かならんことを期す

三、米、独、仏の各一国を敵とする已を得さる場合に遭遇せは先つ敵の海上勢力を撃滅するを主眼とし嗣後の作戦は臨機之を策定す

四、日英同盟協約に基き英国と協同して戦争する場合に在ては共同の敵に対し互に相策応し友軍全体の和を謀るを目的として作戦すへしと雖も相互の計画に於ては直接の連合作戦若くは陸兵或は艦艇等を以てする直接の援助を期待せさるを要す

五、日英同盟協約に依り露国に対して日英互に援助するの作戦は左の要領に従ふものとす

我より英国に年所を与ふる場合に在ては帝国軍は第二項の要領に従て作戦するものとす

英国より我に援助を与ふる場合に在ては其陸軍をして印度方面より土耳其斯担方面に向て牽制の作戦を為さしむることを期待し其海軍に向ては第四項の要領に従て作戦すへきことを要求す

六、日英同盟を以て露独、露清若しくは露仏連合に対する時は左の要領に従ふものとす

我海軍は第二第四項の要領に従ひ敵の東洋艦隊に対して攻勢を取るを期すと雖も黄海に於ける陸兵の輸送は常に為し得へきものと期待すへからす

我陸軍は概ね第二項の要領に従て作戦すへしと雖も咸鏡道方面にて作戦する兵力を減して他に使用することあるへし

七、帝国陸海両軍は本綱領に基き毎年作戦に関する計画を策定し参謀総長、軍令部長相互協議して案を具し裁可を奏請す

   附 言

本綱領は将来形勢の変遷に応し改定せらるへきものとす

(国立公文書館:帝国軍の用兵綱領 C14061025000)

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