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醤油税則 1885年05月08日

 醤油税則


醤油税則ヲ制定ス

 第十号

醤油税則別紙の通制定し明治十八年七月一日より施行す

但東京府管轄伊豆七島小笠原島函館県沖縄県札幌県根室県は当分之れを施行せす

右奉勅旨布告候事(十八年五月八日)

(別紙)

醤油税則

第一条 凡そ醤油(溜りを併称す)を製造して営業せんと欲する者は其旨官庁に願出製造場一箇所毎に免許鑑札を受くへし

第二条 免許を受けたる者は左の通営業税及ひ造石税を納むへし

  営業税  製造場一箇所に付一箇年 金五円

  造石税  製造高一石に付     金一円

第三条 免許鑑札を失却毀損するか或は代替改名転居せしときは官庁に届出を其再渡又は書換を請ふへし

第四条 醤油製造人廃業するときは官庁に届出免許鑑札を還納すへし

第五条 免許鑑札は貸借売買及ひ譲受譲渡を為すことを得す

第六条 営業税は一箇年を二期に分け前半年分は其年一月三十一日限後半年分は同しく七月三十一日限之を納むへし

  但新に開業する者は免許鑑札を受くるとき其半年分の営業税を納むへし

第七条 造石税は左の期限に従ひ之を納むへし但廃業する者は具節之を納むへし

  第一期  五月三十一日限

   一月一日より四月中検査済石数に係る税額

  第二期  九月三十日限

   五月一日より八月中検査済石数に係る税額

  第三期  翌年一月三十一日限

   九月一日より十二月中検査済石数に係る税額

第八条 醤油は製成の後五日以内に官庁に届出検査を受くへし

第九条 廃業の際禾製成の醤油を所持する者は其節官庁に届出検査を受け其石数に就き納税すへし但之を同業者に売渡し又は二箇所以上に於て製造する者其一箇所以上を発し尚本存する所の製造場に之れを移す者は其旨届出製成の上其製成者に於て第八条に従ひ検査を受くへし

第十条 検査未済の醤油と検査既済の醤油と混和する者は其混和の日より五日以内に其旨官庁に届出更に総石数を以て検査を受け納税すへし

第十一条 検査既済の醤油其造石税納期内に非常の損害に罹りて廃棄に属し若くは腐敗したるときは直に官庁に中出検査を受け■造石税の免除を請ふことを得

第十二条 外国に輸出する醤油は輸出の節税関に於て検査を受け置輸入港税関の陸揚免状免くは其他の証憑となるへき書類に在留領事の検印を受く之を当初輸出の税関に差出し其造石税に相当する金額の下戻を請ふことを得但造石税の下戻を受けたる醤油を再輸入したるときは更に其金額を納むへし

第十三条 醤油製造人は左の帳簿を調製すへし

  醤油製造原品買入帳

  醤油仕込帳

  醤油売上帳

第十四条 醤油製造用の容器は使用以前官庁に届出検査を受くへし

第十五条 醤油搾り器械には主任官の封緘を受け置使用するときは其旨申出開封を請ふへし但過誤等にて封緘を毀損したるときは直に官庁に届出更に封緘を請ふへし

第十六条 醤油製造人は毎年一月三十一日迄に其年製造見込の石数並に其製造方法を官庁に届出へし新に開業せし者は免許を受けたる翌日より十五日以内に之を届出つへし但見込石数の増減並に製造方法の変換は其時々届出つへし

第十七条 醤油製造に属する倉庫納屋並に諸器械は営業免許を受けたるとき直に之れを官庁に届出へし但増減は其時々届出へし

第十八条 醤油製造人は他の依托を受けて醤油を代造し又は同業者に非さる者に醤油を製造する為め製造場を貸すことを許さす

第十九条 醤油製造人は自家用料に充る醤油と雖も此規則に従ひ検査を受け其造石税を納むへし

第二十条 醤油卸売又は小売を以て営業とする者は自家用料の醤油を製造することを得す

第二十一条 醤油営業人に非すして自家用料の醤油を製造する者は同居の家族雇人一人に付一箇年一斗五升の割合を超ゆることを得す

第二十二条 醤油製造人の醤油仕込高並に仕込に属する豆麦其他の原品及ひ営業に関する諸帳簿は主任官随時之を検査することあるへし

第二十三条 主任官に於て此規則に関し犯罪ありと認知し又は思料するときは其場所に立入り証憑取調の処分を為すことを得但其主任たるの証票を携帯すへし

第二十四条 第一条に違ひ免許鑑札を受けすして醤油を製造したる者は五円以上五十円以下の罰金に処し仍ほ現在の醤油及ひ製造器械を没収す既に売捌きたる者は其代金を追徴す

 第二十条に違ひ卸売人小売人に於て醤油を製造したる者亦本条に拠り処分す

第二十五条 醤油を隠蔽したる者は製成と未製成とに拘はらす其石数に相当する造石税三倍の罰金に処し仍ほ其犯罪に係る醤油及ひ容器を没収す既に売捌きたる者は其代金を追徴す但検査既済の醤油と検査未済の醤油とを混和して隠蔽したる者は其総石数に就て論す

第二十六条 第八条第九条第十条の検査を受けすして醤油を売捌貸渡譲渡又は自用したる者は其造石税の三倍に相当する罰金に処し仍ほ其代金を追徴す

第二十七条 第十八条に違ひ他の依託を受けて醤油を代造し又は製造場を貸したる者又は第二十一条の制限を超へて醤油を製造したる者は三円以上三十円以下の罰金に処し仍ほ其醤油及ひ容器を没収す

第二十八条 第五条に違ひ免許鑑札を売買貸借及譲受譲渡したる者第十三条に違ひ帳簿を調製せす若くは帳簿の登記を詐りたる者第十四条に違ひ検査を受けすして容器を使用したる者又は第十五条に違ひ開封を為したる者は二円以上二十円以下の罰金に処す

第二十九条 第三条第四条第八条第九条第十条第十五条第十六条又は第十七条の届出を怠りたる者は一円以上一円九十五銭以下の科料に処す

第三十条 此規則を犯したる者には刑法の不論罪及ひ減軽再犯加重数罪倶発の例を用ひす

第三十一条 醤油製造人の家族雇人にして其営業に係り此規則を犯したるときは其営業者を処罰す

(国立公文書館 醤油税則ヲ制定ス A15111056000)

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