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対蒙(西北)施策要領 1936年01月?日

 対蒙(西北)施策要領(ひらがな化、不明文字あり、一部図省略)


   對蒙(西北)施策要領

                    昭和十一年一月

                    関東軍参謀部


本書は昭和十年七月二十五日作製対内蒙施策要領に基き軍の行へる施策の成果に因る内蒙の現状を基礎とし向後の施策及将来の目標並此目標に到達せんか為の諸般の企図著想等を蒐録す

     第一 方   針

一、軍は帝国陸軍の情勢判断対策に基き対蘇作戦準備の為必要とする外蒙古の懐柔及反蘇分離気運の促進を図ると共に対支工作の進展に資し且満洲国の統治及国防の基礎を鞏固ならしむる目的を以て徳王の独裁する内蒙古軍政府の実質を強化すると共に其勢力を逐次支那西域地方に拡大し北支工作の進展に伴ひ内蒙をして中央より分離自立するに至らしむ

  施策の重点は当初現在の軍政府の管轄区域内重要部門の整備鞏化に置き其成果挙かるに従ひ之を根拠として其勢力を綏遠に扶植し次て外蒙古及青海、新疆、西藏等に拡大せんことを期す

     第二 一般指導の要領

二、軍は内蒙軍政府を指導し政治、軍事、経済、文化各方面の施策を進むるも初期に於ては内蒙の環境並蒙人の特性に鑑み主力を軍事及蒙古人の教育普及に注く

三、諸施策は日人顧問の指導に依り軍政府をして之を行はしむるを以て本則となす

  然れとも同政府当初の実力に鑑み満洲国諸機関、満鉄、善隣協会大蒙公司等をして軍の指導の下に参加せしめ軍政府の実力向上に伴ひ逐次軍政府をして実施せしむる如く指導す

四、一切の施策は之を極秘裡に行ひ一般の耳目を蔽ひ国際情勢特に蘇邦及支那側の神経を刺戟せさることに努む

五、軍政府の実力充実し独立政権たるの実質を備ふるに至らは独立(宗主権に関しては之に触れさるを主旨とす)を宣布せしむ

  但し政略上の状況之を要する時機に於ては右に顧慮なく自治を宣言せしむることあり

六、蒙古独立疆域内の民族は日、蒙、漠、回、蔵の五民族を包含するに至るべきに依り之等の人心収攬に関し特に左の諸点に留意すると共に反共産主義を鼓吹し宗教の尊重と各民族固有の信教の自由を認む

 (一)在蒙日本人をして総て日本民族の先駆者たる自覚の下に日満両帝国特に日本の国策の徹底に努めしむ

   之か為日人顧問以下の徳操並他民族特に蒙古民族に対する態度等に関しては特務機関を通し厳に監視監督せしむ

 (二)蒙古民族に対しては

  (イ)王侯喇嘛を把握して之を通し人心の収攬に努むるも究極に於ては封建制度は之を打破し喇嘛教は之を改革すへきものなるを以て反面に於て彼等の反省と自覚を促しつつ把握に努む

  (ロ)一般民衆に対しては王侯喇嘛を通する外教育制度の確立と経済生活の改善に依り人心を収攬す、就中教育には最も力を注くを要す

 (三)漢民族に対しては同民族か農商に従事し且先天的個人主義者たるの本質に鑑み生命財産の擁護換言すれは彼等をして安居楽業せしむるを主眼として其人心収攬に努む

 (四)回教徒に対しては満洲国内回教徒及蒙古領域内の有力者を把握し之を通して人心の収攬に努む

   要すれは内蒙内の漢民族地帯に回教寺院を建設す

 (五)西蔵族に対しては蒙古人中の有力喇嘛を通して帝国の実情並帝国の対満蒙政策の本義を知らしむると共に反英反支反蘇、日満依存に導く

七、政治指導の工作は左の諸項に拠る

  (イ)軍政府中心主義を徹底せしむ之か為特に軍政府をして民利民福領域防衛の善政を布かしむ

  (ロ)蒙政会は対外的考慮の下に直に撤消することなく主として対支交渉機関たるの実質を以て所要の時期迄之を残存せしむ

  (ハ)軍政府、各地方庁及各公共機関に軍政府側の招聘依嘱による日人顧問を置く

    顧問は少数にして軍の厳選する気魄人格共に前掲国策の遂行に適する人物を以て充当す

  (ニ)軍特務機関長は最高顧問として軍の方針に則り前項顧問団を統轄指導す

  (ホ)政治の形態は蒙古政権の国防上に及す影響の重大性に鑑み将来究極に於て満洲国に準するものたらしむるものとす

  (ヘ)勢力範囲の拡大に伴ひ軍特務機関を推進して先つ徳王中心の政治及其他の工作を行はしめ確固たる地盤の獲得を策す

八、軍事指導の工作は左の諸項に拠る

  (イ)当初先つ騎兵四ヶ師の編成を整へ之か錬成に努む

  (ロ)政権の実力向上に伴ひ逐次之を拡充す

  (ハ)当初軍隊の充実に要する兵器及経費は日満側に於て其大部を負担す

  (ニ)軍隊の編成、整備及訓練のため日人顧問及同軍官を介在せしめ之を特務機関長の統轄指導下に置くこと政治指導に同し

  (ホ)顧問の人数及選定の主義に関しては政治指導のものに同し

九、文化指導の工作は左の諸項に拠る

 (一)宗教

反宗教を鼓吹する蘇邦の対外蒙政策と対抗して蒙古民族、回教徒等の人心を収攬せんか為宗教に関する工作に深甚なる考慮を払ふ

  (イ)対喇嘛教

喇嘛教従来の弊害に鑑み究極に於て政治及経済と直接的関係を絶たしめ之を近代的宗教の形態既て単なる精神生活の糧たらしむることを目的とするも当初に在りては之を尊重し之を通して人心の収攬に努む而して其改革は政治工作の進展と相俟て徐ろに之を行ひ人心に急激なる衝動を与へさることに注意す

喇嘛教の改革に依り職を失ふへき喇嘛は之を軍人或は他の生業に転職せしむる如く爾他の工作を進む

  (ロ)回々教

回々教は現状の儘大なる改革を加ふることなくして之を利用す従つて回教徒の習俗を審にし彼等の好感を求め更に所要の援助を与へ遂に領域内の回教徒の団結を促進し之を蒙古政権内に包含せしむ

団結促進のため将来綏遠(北支政権にして真に日満依存の実を具現する場合には北平にも)等に中央回教寺院の建設を考慮す

 (二)教 育

蒙古民族か永く愚民政策の治下に置かれたる結果の現状に鑑み軍政府統治区内に於ける武力の養成に次て一般教育に対する指導に努力す従て教育は当初主として蒙古人を対象とし二、三年の課程を以て初等の普通教育の普及を図り将来序を逐て程度を向上し満洲国と概ね同一水準に到らしむ

素質優秀にして将来指導階級たるものは善隣協会の小学校に学はしめ次て満洲或は日本に留学せしむ

 (三)衛 生

人畜の保育衛生を図るは蒙古現時の社会を良化し民利を促進すると共に人心を収攬し蘇邦の対蒙施策に対抗する良手段なるに鑑み当分の内善隣協会及軍隊の衛生機関を主体として之に努力し政府の実力向上に伴ひ之をして各種の施設を為なさしむる如く指導す

十、交通通信等の諸工作は将来に亘り左の諸方針に拠る

 (一)航 空

航空に関しては先つ対内蒙工作上必要なる基礎的航空路の開拓に努む

之か為満洲航空会社をして多倫、西「ソニト」、張北等の飛行場を根拠とし百霊廟、綏遠、包頭、寧夏、阿拉善王府等に其航空路を保有せしめ為し得れは機を看て之を青海に延伸せんことを図る而して之か為には欧亜連絡航空会社の実権を収得するの要あるを以て満航会社対欧亜会社の交渉を支援促進す

航空路の拡大延伸に伴ひ新疆又は外蒙内部に対し合法的進出に努む

 (二)鉄道及港湾

常時的確なる連絡を保持し経済開発に資するの外戦略的意義を有する満蒙連絡の鉄道及之に有利に作用し得る港湾の迅速なる完備を促進す

之か為■赤線の多倫への延長を促進し更に将来成るへく速に之を平地泉に延伸し同地に於て平綏線に連絡せんことを図る

蒙古自治勢力の強化拡大に伴ひ鉄道敷設の目標は平綏線を甘粛、蘭州を経て新疆及西蔵に又其支線を■倫方面に延長し以て実質的強力なる対蘇工作上の幹線を築くにあり

北支に於ける帝国の確乎たる勢力扶植せられさる場合は勿論、せられたる場合に於ても熱河及其近隣接壌の蒙古地帯に対する海外貿易の根拠地として胡蘆島築港の速なる完成を促進せんことを図る

叙上当初の諸工作は満鉄の資力に待つ如く指導す

 (三)自動車交通

鉄道未完成の期間又は鉄道敷設を行はさる地方に在りては自動車交通の為其幹線たるものにつき速に改修を加ふる如く指導す即ち先つ赤峰及承徳より多倫、阿巴嗄、東、西烏珠■泌に至る道路を速に完成する外、多倫-西「ソニト」-百霊廟-阿拉善王府道及多倫-西「ソニト」-張北の三角運行道を整備し更に所謂新綏自動車営業権の接収工作を促進し又張庫道上に於ける徳華洋行の交通営業を実質的に奪取して対外蒙及対蘇支進展の自由を獲得せんことを期す

右当初の諸工作は国際運輸会社、大蒙公司其他を利用して之を実施す

 (四)郵便、通信

当初に於ては満洲国政府に委託し同国交通部及電信電話株式会社をして経営せしむるも将来軍政府に移管し政府直営とす

十一、経済指導の工作は次の方針に則る

経済工作の為には先つ満洲国と蒙古政権間の交通を整備し経済資源の流通に便ならしむると共に逐次蒙古の産業を助長せしむ

 (一)産業助長

産業は蒙民の現状に即応し急激の変化を避け逐次に之を向上せしむ

初期蒙古民族側に在りては牧畜業の改良発達を図り漢民族側に在りては農業の改良に力を注き政権の実力拡大と交通の発達に伴ひ石油、鉄、石炭等の開発に努む

本工作は当初に在りては大蒙公司及善隣協会をして之に任せしめ軍政府の実力拡大に伴ひ逐次政府に管掌せしむ

 (二)貿易促進

貿易は当初に在りては内蒙物資の搬出日本品の進出及対外蒙貿易の復活に重点を置き軍政府の勢力伸張に伴ひ之を西方に拡大す

当初に在りては大蒙公司をして之に当らしめ逐次政府の管掌に移す

外蒙貿易に従事しある徳華洋行は当初に在りては之を利用す

     第三 当初に於ける施策の概要

十二、前述一般指導の要領に基き現下及近き将来に於ける施策の概要次の如し

 (一)軍政府の組織概要左の如し

           ┌秘書処

           │  兼(徳王) ┌─民政庁

           │ ┌─政務部──┼─財政庁

      (徳王) │ │      └─教育庁

 軍政府─┬─長 官─┴─┤

     │       │(李守借) ┌─第一課(編成、人事)

     │       ├─軍政部──┼─第二課(作戦)

     │       │      ├─第三課(軍需)

     │       │      └─軍官学校

     │       └─各盟

     └────日人顧問部

日人顧問は各部各庁各課に配置す

軍政府の管轄区域当初に於ては錫林郭勒、察哈爾、伊克昭の各盟及阿拉善とし錫、伊、阿拉善の行政組織は漸を追て察哈爾盟に準せしむ

 (二)内蒙軍政府の武力を成るへく速に次の程度に至らしむ

     政 府 軍 内 蒙 第 一 軍

(図 省略)

     内 蒙 第 二 軍

(図 省略)

外蒙独立軍司令官「テルワホトクト」

軍の編成は「テルワ」の任意とし当初約五百名の騎兵部隊とす

保安隊 各盟定員二千名

盟長の指揮に属す予備軍となり盟内の治安の維持に任す

右武力の充実に当りては政府管轄区域内特に察哈爾盟の収入及満洲国軍政部よりの支出軍費を以てし不足は軍より補給す

兵器及弾薬は為し得る限り軍より無償を以て交付するものとす

右諸部隊の経費は編成費を除き年額経常費約四百万円とす

 (三)阿拉善及青海に特務機関を設置す(昭和十一年度初頭)

 (四)外蒙古に対しては呼倫貝爾方面よりする日満の工作に呼応し先つ■里崗涯の帰属問題に関し蒙政会若は軍政府の名に於て交渉を開始し内蒙政権と外蒙古の間に外交関係を成立せしむることに努む

情況有利なるとき前記外蒙独立軍を■里崗涯に進入せしむ

 (五)軍政府成立の後適当なる時期に臨み蒙政会の名に於て綏遠傳作義に対し左記事項の実行に関し交渉を開始せしむると共に軍政府の強化と軍備充実を図り交渉の迫力を増援す

1蒙政会成立当初に於て南京政府蒙政会間に締結せられたる綏遠省の収入の半部を蒙政会に交付するの件

2民国二十三年八月何応欽蒙政会間に締結せられたる阿片特税に関する五項弁法の実現に関する件

3開墾土地税を過去に遡り蒙政会に交付する件

4民国十八年綏遠省内に包含せられたる察哈爾四期の帰属問題

 (六)傳作義にして反軍政府の態度を堅持する場合には軍政府の武力充実し自信を得るに至れは好機を捕へ断乎として傳作義及其軍隊を綏遠省外に駆逐せんことを図る

本施策は支那駐屯軍の北支工作と密接に連繋す

 (七)蒙古政権確立するに至れは満洲国と親交関係を結はしむるは勿論冀東政権をして之を承認せしめ相互親善関係に入らしむる如く指導す

冀東政権にして中央より実質的完全に南京政権より分離するに至れは蒙古政権との間に親善関係を保有せしむる如く指導す

 (八)蒙古政権の確立に伴ひ日本との軍事協定(駐兵、軍隊の行動等概ね日満軍事協定に準す)の締結を考慮す

 (九)内外蒙に使用すへき帝国作戦兵団の研究を進む

 (十)善隣協会の拡張を図る其概要左の如し

   (イ)診療所は 阿巴嗄、西蘇尼特の外西烏珠穆沁、察哈爾盟内一ヶ所、百霊廟に増設し機を見て阿拉善王府に推進す

   (ロ)小学校  阿巴嗄の外西蘇尼特、察哈爾盟内に一ヶ所、烏蘭札布盟(百霊廟)に設置し機を見て阿拉善王府に推進す

右に要する経費は協会基本金の外外務省、満鉄及軍よりの補助金に依る協会本部は新京若は多倫に推進す

 (十一)大蒙公司の一躍進を促進す之か為左の如く指導す

   (イ)支店を多倫の外、西烏珠穆沁、阿巴嗄、張北、西蘇尼特、百霊廟、綏遠等に推進し対蒙貿易の進展を図る

   (ロ)将来成立すへき蒙古各盟の産業組合を指導し之と相提携して産業の開発を図る

   (ハ)張北に兵器修理工場を開設せしむ

   (ニ)徳華洋行との提携及実権の奪取

 (十二)近き将来に於ける鉄道、自動車交通路、航空路、通信線施設の企画左の如し

   (イ)鉄道

赤峰-多倫-平地泉間

   (ロ)自動車

第一次

多倫-西蘇尼特-張北間

張北-二連間(初期徳華洋行をして当らしめ次て国際運輸に於て接収す)

第二次

多倫-阿巴嗄-西烏珠穆沁間

西蘇尼特-百霊廟-阿拉善王府

   (ハ)交通路

西烏珠穆沁-阿巴嗄-多倫間

   (ニ)航空路

第一次

西蘇尼特-百霊廟-阿拉善王府-青海の定期航空路の開設

   (ホ)通信線

主要幹線

     (1)西烏珠穆沁-阿巴嗄-多倫-張北

     (2)多倫-西蘇尼特-百霊廟

     (3)百霊廟-阿拉善王府

     (4)張北-■江-二連間の接収

     (5)張北-張家口の連絡

前記各地点にして通信所なき地点は先つ無線通信に依り連絡す

(国立公文書館:対蒙(西北)施策要領 昭和11年1月 C12120032100)

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