下関条約(口語訳、前文署名省略)
第一条
清国は朝鮮国の完全無欠なる独立自主の国であることを確認する。よって右独立自主を損害すべき朝鮮国より清国に対する貢献典礼等は将来全くこれを廃止する。
第二条
清国は左記の土地の主権並びに当該地方にある城塞、兵器製造所及び官有物を永遠に日本国に割譲する。
一 左の境界内にある奉天省南部の地
鴨緑江口より該江を遡り、安平河口に至り該河口より鳳凰城海城営口にわたり遼河口に至る折線以南の地、併せて前記の各城市を包含する。そして遼河を以って界とするところは該河の中央を以って境界とすることとする。
遼東湾東岸及び黄海北岸にあって奉天省に属する諸島嶼
二 台湾全島及びその付属諸島嶼
三 澎湖列島、即ち英国「グリニッジ」東経百十九度から百二十度まで及び北緯二十三度から二十四度までの間にある諸島嶼
第三条
前条に掲載し付属地図に示すところの境界線は、本条約批准交換後直ちに日清両国より各二名以上の境界画定委員を任命し、実地について確定するところあるべきものとする。そしてもし本条約に掲記するところの境界にして地形上又は施政上の点につき完全にならない場合には、当該境界画定委員はこれを更正することに任ずる。
第四条
清国は軍費賠償金として、庫平銀2憶両を日本国に支払うべきことを約する。右金額は都合8回に分け、初回及び2回には毎回5千万両を支払う。そして初回の払込は本条約批准交換後6か月以内に、次回の払込は本条約批准交換後12か月以内において行う。残りの金額は6箇年賦に分け、その1次は本条約批准交換後2年以内に、2次は本条約批准交換後3年以内に、3次は本条約批准交換後4年以内に、4次は本条約批准交換後5年以内に、5次は本条約批准交換後6年以内に、6次は本条約批准交換後7年以内に支払う。また、初回払込期日より以後未だ払込を終了しない額に対しては、毎年5%の利子を支払うべきものとする。
但し、清国は何時でも当該賠償金の全額あるいはその一部を前もって一時に支払うことができる。本条約批准交換後3年以内に当該賠償金の総額を完済するときは、すべての利子を免除する。もし2年半若しくは更に短期の利子を払い込んだときは、これを元金に編入する。
第五条
日本国へ割譲された地方の住民にして、割譲された地方の外に住居したいと希望する者には自由にその所有不動産を売却して退去することができる。そのため本条約批准交換の日より2年間の猶予をする。但し、右期限が過ぎたときに未だ当該地方を退去しない住民を日本国の都合により日本国臣民と看做すこととする。
第六条
日清両国間の一切の条約は、交戦のため消滅したならば清国は本条約批准交換の後速やかに全権委員を任命し、日本国全権委員と通商航海条約および陸路交通貿易に関する約定を締結すべきことを約する。そして現に清国と欧州各国との間に存在する諸条約章程をもって当該日清両国間諸条約の基礎とすべきである。また、本条約批准交換の日より当該諸条約の実施に至るまでは、清国は日本国政府、官吏、商業、航海、陸路交通、貿易、工業、船舶及び臣民に対し総て最恵国待遇を与える。
清国は上記のほか、以下の譲与を行い、そして当該譲与は本契約調印の日より6か月後有効となるものとする。
第一 清国において、現に各外国に対して開港している各市港のほかに、日本国臣民の商業、住居、工業および製造業のために、以下の市港を開く。但し、現に清国の開市場、開港場に行われているところと同一の条件で同一の特典および便益を享有すべきものとする。
一 湖北省荊州府沙市
二 四川省重慶府
三 江蘇省蘇州府
四 浙江省杭州府
日本国政府は、以上列記する所の市港いずれの所にも領事官を置く権利をあるものとする。
第二 旅客及び貨物運送のため、日本国汽船の航路を以下の場所にまで拡張する。
一 楊子江上流湖北省宜昌より四川省重慶まで
二 上海より呉淞江及運河を経由し蘇州杭州まで
日清両国において、新章程を制定するまでは、上記航路に関して適用しうるべき限りは、外国船舶清国内地水路航行に関する現章程を施行すべきである。
第三 日本国臣民が清国内地において貨品及び生産物を購買し、またはその輸入をする商品を清国内地へ運送するには当該購買品または運送品を倉入れするため何ら税金等の取り立てを納めることなく一時倉庫を借り入れる権利を有する。
第四 日本国臣民は、清国の各開市場、開港場において自由に各種の製造業に従事することができ、また所定の輸入税を払うのみで自由に各種の機械類を清国に輸入することができる。
清国における日本国臣民の製造に係る一切の貨品は各種の内国運送税、内地税賦課金等取立金に関し、また清国内地における倉入れ上の便益に関し、日本国臣民が清国へ輸入する商品と同一の取り扱いをうけ、かつ同一の特典免除を享有すべきものとする。
これらの譲与に関し、更に章程を規定することを要する場合には、これを本条に規定する所の通商航海条約中に記載すべきものとする。
第七条
現に清国版回内に在する日本国軍隊の撤回は、本条約批准交換後三か月内において行うべきとする。但し、次条の規定に従うべきものとする。
第八条
清国は本条約の規定を誠実に施行すべき担保として、日本国軍隊の一時山東省威海衛を占領することを承諾する。そして本条約に規定した軍費賠償金の初回、次回の払込を終了し通商航海条約の批准交換を終了した時にあたって清国政府にて当該賠償金の残額の元利に対して十分適当なる取り決めを立てて清国海関税をもって抵当となすことを承諾するにいたった場合、日本国はその軍隊を前記の場所から撤回すべし。若しくはまたこれに関し、十分適当なる取り決めが立たない場合には、当該賠償金の最終回の払込を終了しなければ撤回は行われない。もっとも、通商航海条約の批准交換を終了した後でなければ、軍隊の撤回は行われないものと承知しなければならない。
第九条
本条約批准交換のうえは直ちにその時現に有する所の捕虜を還付しなければならない。そして清国は日本国より斯く還付された所の捕虜を虐待若しくは処刑を行わないことを約する。
第十条
本条約批准交換の日より、交戦を停止する。
第十一条
本条約は大日本国皇帝陛下及び大清国皇帝陛下において批准されるべく、そして同批准は芝罘において明治28年5月8日(光緒21年4月14日)に交換される。
下関条約(原文:一部新字体あり)
媾和條約
大日本國皇帝陛下及大淸國皇帝陛下ハ兩國及其ノ臣民ニ平和ノ幸福ヲ囘復シ且將來紛議ノ端ヲ除クコトヲ欲シ媾和條約ヲ訂結スル爲メニ大日本國皇帝陛下ハ内閣總理大臣從二位勳一等伯爵伊藤博文外務大臣從二位勳一等子爵陸奧宗光ヲ大淸國皇帝陛下ハ太子太傅文華殿大學士北洋大臣直隸總督一等肅毅伯李鴻章二品頂戴前出使大臣李經方ヲ各其ノ全權大臣ニ任命セリ因テ各全權大臣ハ互ニ其ノ委任狀ヲ示シ其ノ良好妥當ナルヲ認メ以テ左ノ諸條款ヲ協議決定セリ
第一條
淸國ハ朝鮮國ノ完全無缺ナル獨立自主ノ國タルコトヲ確認ス因テ右獨立自主ヲ損害スヘキ朝鮮國ヨリ淸國ニ對スル貢獻典禮等ハ將來全ク之ヲ廢止スヘシ
第二條
淸國ハ左記ノ土地ノ主權竝ニ該地方ニ在ル城壘兵器製造所及官有物ヲ永遠日本國ニ割與ス
一 左ノ經界内ニ在ル奉天省南部ノ地
鴨緑江口ヨリ該江ヲ溯リ安平河口ニ至リ該河口ヨリ鳳凰城海城營口ニ亘リ遼河口ニ至ル折線以南ノ地併セテ前記ノ各城市ヲ包含ス而シテ遼河ヲ以テ界トスル處ハ該河ノ中央ヲ以テ經界トスルコトト知ルヘシ
遼東灣東岸及黄海北岸ニ在テ奉天省ニ屬スル諸島嶼
二 臺灣全島及其ノ附屬諸島嶼
三 澎湖列島即英國「グリーンウィチ」東經百十九度乃至百二十度及北緯二十三度乃至二十四度ノ間ニ在ル諸島嶼
第三條
前條ニ掲載シ附屬地圖ニ示ス所ノ經界線ハ本約批准交換後直チニ日淸兩國ヨリ各二名以上ノ境界共同劃定委員ヲ任命シ實地ニ就テ確定スル所アルヘキモノトス而シテ若本約ニ掲記スル所ノ境界ニシテ地形上又ハ施政上ノ點ニ付完全ナラサルニ於テハ該境界劃定委員ハ之ヲ更正スルコトニ任スヘシ
該境界劃定委員ハ成ルヘク速ニ其ノ任務ニ從事シ其ノ任命後一箇年以内ニ之ヲ終了スヘシ
但シ該境界劃定委員ニ於テ更定スル所アルニ當リテ其ノ更定シタル所ニ對シ日淸兩國政府ニ於テ可認スル迄ハ本約ニ掲記スル所ノ經界線ヲ維持スヘシ
第四條
淸國ハ軍費賠償金トシテ庫平銀貳億兩ヲ日本國ニ支拂フヘキコトヲ約ス右金額ハ都合八囘ニ分チ初囘及次囘ニハ毎囘五千萬兩ヲ支拂フヘシ而シテ初囘ノ拂込ハ本約批准交換後六個月以内ニ次囘ノ拂込ハ本約批准交換後十二個月以内ニ於テスヘシ殘リノ金額ハ六個年賦ニ分チ其ノ第一次ハ本約批准交換後二個年以内ニ其ノ第二次ハ本約批准交換後三個年以内ニ其ノ第三次ハ本約批准交換後四個年以内ニ其ノ第四次ハ本約批准交換後五個年以内ニ其ノ第五次ハ本約批准交換後六個年以内ニ其ノ第六次ハ本約批准交換後七個年以内ニ支拂フヘシ又初囘拂込ノ期日ヨリ以後未タ拂込ヲ了ラサル額ニ對シテハ毎年百分ノ五ノ利子ヲ支拂フヘキモノトス
但シ淸國ハ何時タリトモ該賠償金ノ全額或ハ其ノ幾分ヲ前以テ一時ニ支拂フコトヲ得ヘシ如シ本約批准交換後三個年以内ニ該賠償金ノ總額ヲ皆濟スルトキハ總テ利子ヲ免除スヘシ若夫迄ニ二個年半若ハ更ニ短期ノ利子ヲ拂込ミタルモノアルトキハ之ヲ元金ニ編入スヘシ
第五條
日本國ヘ割與セラレタル地方ノ住民ニシテ右割與セラレタル地方ノ外ニ住居セムト欲スル者ハ自由ニ其ノ所有不動産ヲ賣却シテ退去スルコトヲ得ヘシ其ノ爲メ本約批准交換ノ日ヨリ二個年間ヲ猶豫スヘシ但シ右年限ノ滿チタルトキハ未タ該地方ヲ去ラサル住民ヲ日本國ノ都合ニヨリ日本國臣民ト視爲スコトアルヘシ
日淸兩國政府ハ本約批准交換後直チニ各一名以上ノ委員ヲ臺灣省ヘ派遣シ該省ノ受渡ヲ爲スヘシ而シテ本約批准交換後二個月以内ニ右受渡ヲ完了スヘシ
第六條
日淸兩國間ノ一切ノ條約ハ交戰ノ爲メ消滅シタレハ淸國ハ本約批准交換ノ後速ニ全權委員ヲ任命シ日本國全權委員ト通商航海條約及陸路交通貿易ニ關スル約定ヲ締結スヘキコトヲ約ス而シテ現ニ淸國ト歐洲各國トノ間ニ存在スル諸條約章程ヲ以テ該日淸兩國間諸條約ノ基礎ト爲スヘシ又本約批准交換ノ日ヨリ該諸條約ノ實施ニ至ル迄ハ淸國ハ日本國政府官吏商業航海陸路交通貿易工業船舶及臣民ニ對シ總テ最惠國待遇ヲ與フヘシ
淸國ハ右ノ外左ノ讓與ヲ爲シ而シテ該讓與ハ本約調印ノ日ヨリ六個月ノ後有效ノモノトス
第一淸國ニ於テ現ニ各外國ニ向テ開キ居ル所ノ各市港ノ外ニ日本國臣民ノ商業住居工業及製造業ノ爲メニ左ノ市港ヲ開クヘシ但シ現ニ淸國ノ開市場開港場ニ行ハルル所ト同一ノ條件ニ於テ同一ノ特典及便益ヲ享有スヘキモノトス
一 湖北省荊州府沙市
二 四川省重慶府
三 江蘇省蘇州府
四 浙江省杭州府
日本國政府ハ以上列記スル所ノ市港中何レノ處ニモ領事官ヲ置クノ權利アルモノトス
第二旅客及貨物運送ノ爲メ日本國汽船ノ航路ヲ左記ノ場所ニ迄擴張スヘシ
一 楊子江上流湖北省宜昌ヨリ四川省重慶ニ至ル
二 上海ヨリ呉淞江及運河ニ入リ蘇州杭州ニ至ル
日淸兩國ニ於テ新章程ヲ妥定スル迄ハ前記航路ニ關シ適用シ得ヘキ限ハ外國船舶淸國内地水路航行ニ關スル現行章程ヲ施行スヘシ
第三日本國臣民カ淸國内地ニ於テ貨品及生産物ヲ購買シ又ハ其ノ輸入シタル商品ヲ淸國内地ヘ運送スルニハ右購買品又ハ運送品ヲ倉入スル爲メ何等ノ税金取立金ヲモ納ムルコトナク一時倉庫ヲ借入ルヽノ權利ヲ有スヘシ
第四日本國臣民ハ淸國各開市場開港場ニ於テ自由ニ各種ノ製造業ニ從事スルコトヲ得ヘク又所定ノ輸入税ヲ拂フノミニテ自由ニ各種ノ器械類ヲ淸國ヘ輸入スルコトヲ得ヘシ
淸國ニ於ケル日本臣民ノ製造ニ係ル一切ノ貨品ハ各種ノ内國運送税内地税賦課金取立金ニ關シ又淸國内地ニ於ケル倉入上ノ便益ニ關シ日本國臣民カ淸國ヘ輸入シタル商品ト同一ノ取扱ヲ受ケ且同一ノ特典免除ヲ享有スヘキモノトス
此等ノ讓與ニ關シ更ニ章程ヲ規定スルコトヲ要スル場合ニハ之ヲ本條ニ規定スル所ノ通商航海條約中ニ具載スヘキモノトス
第七條
現ニ淸國版圖内ニ在ル日本國軍隊ノ撤囘ハ本約批准交換後三個月内ニ於テスヘシ但シ次條ニ載スル所ノ規定ニ從フヘキモノトス
第八條
淸國ハ本約ノ規定ヲ誠實ニ施行スヘキ擔保トシテ日本國軍隊ノ一時山東省威海衞ヲ占領スルコトヲ承諾ス而シテ本約ニ規定シタル軍費賠償金ノ初囘次囘ノ拂込ヲ了リ通商航海條約ノ批准交換ヲ了リタル時ニ當リテ淸國政府ニテ右賠償金ノ殘額ノ元利ニ對シ充分適當ナル取極ヲ立テ淸國海關税ヲ以テ抵當ト爲スコトヲ承諾スルニ於テハ日本國ハ其ノ軍隊ヲ前記ノ場處ヨリ撤囘スヘシ若又之ニ關シ充分適當ナル取極立タサル場合ニハ該賠償金ノ最終囘ノ拂込ヲ了リタル時ニ非サレハ撤囘セサルヘシ尤通商航海條約ノ批准交換ヲ了リタル後ニ非サレハ軍隊ノ撤囘ヲ行ハサルモノト承知スヘシ
第九條
本約批准交換ノ上ハ直チニ其ノ時現ニ有ル所ノ俘虜ヲ還附スヘシ而シテ淸國ハ日本國ヨリ斯ク還附セラレタル所ノ俘虜ヲ虐待若ハ處刑セサルヘキコトヲ約ス
日本國臣民ニシテ軍事上ノ間諜若ハ犯罪者ト認メラレタルモノハ淸國ニ於テ直チニ解放スヘキコトヲ約シ淸國ハ又交戰中日本國軍隊ト種種ノ關係ヲ有シタル淸國臣民ニ對シ如何ナル處刑ヲモ爲サス又之ヲ爲サシメサルコトヲ約ス
第十條
本約批准交換ノ日ヨリ攻戰ヲ止息スヘシ
第十一條
本約ハ大日本國皇帝陛下及大淸國皇帝陛下ニ於テ批准セラルヘク而シテ右批准ハ芝罘ニ於テ明治二十八年五月八日即光緒二十一年四月十四日ニ交換セラルヘシ
右證據トシテ兩帝國全權大臣ハ茲ニ記名調印スルモノナリ
明治二十八年四月十七日即光緒二十一年三月二十三日下ノ關ニ於テ二通ヲ作ル
大日本帝國全權辨理大臣内閣總理大臣
從二位勳一等伯爵 伊藤博文 印
大日本帝國全權辨理大臣外務大臣
從二位勳一等子爵 陸奧宗光 印
大淸帝國欽差頭等全權大臣
太子太傅文華殿大學士北洋大臣
直隸總督一等肅毅伯 李鴻章 印
大淸帝國欽差全權大臣
二品頂戴前出使大臣
李經方 印
(外務省日本外交文書デジタルアーカイブ:第28巻第2冊)
コメント
コメントを投稿