新奉及吉長鉄道に関する日清協約(ひらがな化、一部新字体化)
新奉及𠮷長鐵道ニ関スル日清協約
(前文省略)
第一条 清国政府は日本国の敷設せる新民府より奉天府に至る鉄道を買収するに付ては議定の賣価日貨金壹百六拾六萬円を天津に於て正金銀行に払ひ込むべし清国政府は右鉄道を改めて自營鉄道と為し遼河以東に要する資金は南満洲鉄道会社より其一半を借入るることを承諾す
第二条 清国政府は吉林府より長春府に至る鉄道を自弁するに付ては之に要する資金の半額も亦前記会社より借入るることを承諾す
第三条 第一条及第二条に掲くる借款の条件は還清期限を除くの外総て山海関内外鉄道の借款契約を仿照して弁理す其主要事項左記の如し鉄道事務の一切の章程は山海関内外鉄路總局の現在の弁法を按照して弁理すべきものとす
甲 借款還清期限は新奉鉄道遼河以東に関しては十八箇年吉長鉄道は二十五箇年と定め期限満了以前共に全部還清を行ふを得す
乙 新奉線遼河以東の鉄道に對する南満洲鉄道会社の借款は該叚の鉄道財産及収入を以て担保となす
吉長鉄路局自籌の商股及南満洲鉄道会社よりの借款は共に該鉄道財産及収入を以て担保と為す
清国政府は借款未濟以前に於ては上記の鉄道財産及収入を以て他の借款の担保と為すを得す
清国政府は借款期限中遼河以東の鉄道及吉長鉄道建物工場車輛用地動産等を善良に經理し且つ隨時車輛を増添し運輸の須要に應するに務むべし將來吉長鉄道に在て枝線を添設し或は該鉄道を延長する場合には其建造の事は清国政府の自弁に歸すべく若し資金に不足あるときは会社に向て借入を申込むべし上記以外に清国が自已の籌款にて他に鉄道を敷設する場合には南満洲鉄道会社と関渉する所なし
丙 借款の元利は共に清国政府に於て保障す若し利子元金の支払期に到り約の如くならざるときは会社の通知により清国政府より須要の額を按して会社に代還すべく萬一右通知の後に於て清国政府に於て支払延滯に屬する元利を籌還する能はざる場合には上記の鉄道及一切の財産は右元利支払濟に至るまで会社に引渡して代て經營を行はしむ但し不足の元利少額なるときは三箇月を逾へざる範圍に於て猶豫を與ふるを得
丁 借款期限中技師長には日本人を用ふべく又鉄道事務に要する清国人不足の場合には日本人を參用すべし技師長を更迭する必要あるときは会社と協議の上にて之を行ふべきものとす右の外鉄道曾計役として日本人一名を用ふべし該日本人は須らく幹練の人物たるべく鉄道会計の各事務に於て布置督理の全責を有し其収支監督の事務は鉄路總弁と商同して弁理すべきものとす
戊 上記の各鉄道は清国政府の官路たるを以て戰時又は饑饉に際し政府の輸送する兵員糧食は共に無賃たるべし
己 上記の各鉄道の一切の収入は日本国銀行に預け入るべく其預入方法の如何に至ては借款契約訂結の際商定すべし
第四条 清国政府は現有新奉鉄道の買収後可成速に南満洲鉄道会社と遼河以東の借款に関する契約を訂正すべく又吉長鉄道に要する經費を査明する為め清国技師を派し日本技師と会同して線路踏査を行はしめ其完了後六箇月以内に於て会社と借款契約を訂立すべし
第五条 清国所弁の新奉及吉長鉄道は共に南満洲鉄道と聯絡すべく其一切の章程は津榆鉄路局及南満洲鉄道会社より別に委員を派して商訂すべし
第六条 第一条及第二条に掲くる借款の實収価格は清国が最近他国より為したる借款に照し公平に酌定すべきものとす
第七条 新奉鉄道は賣価払込後一箇月を期とし清国鉄道局派遣の委員に引渡さるべし
(以下省略)
新奉及𠮷長鐵道ニ関スル續約
(前文省略)
第一条 清国政府は新奉及吉長鉄道に関する協約(以下單に協約と稱す)第一条及ひ第二条の規定により京奉鉄道遼河以東に要する資金の半額日本貨幣三十二萬円並に吉長鉄道新設に要する資金の半額日本貨幣二百十五萬円を南満洲鉄道会社より借入るるものとす
第二条 借款の利率は年五分とす
第三条 借款の實収価格は協約第六条の規定に依り百に付九三とす
第四条 清国政府は協約第三条の規定により借款期限中京奉鉄道遼河以東線の技師長に日本人を用ゆべし而して其初に於ては現に京奉鉄道に在職する日本人技師をして之に当らしめ其の職務に関しては都て現在の弁法に照らし京奉鉄路總弁並に技師長の管轄を受くべきものとす將來之を更迭するの必要生じたるときは協約の規定により南満洲鉄道会社と協議の上之を行ひ其職務に関しては同じく前記の弁法に依るべきものとす
第五条 清国政府は京奉鉄道遼河以東線の会計事務を別に区分すること困難なりと為すを以て日本国政府は同線に会計主任として日本人を用ゆるを要せざることを承諾し借款に對する毎年の元利償還額の月割額を以て遼河以東線の毎月純収入額と看做し毎月の初日に於て清国政府より之を南満洲鉄道会社の指定する清国に在る日本国銀行に預入れ元利償還の各時期に至り其仕払に充つることに同意す而して右元利償還の方法並に銀行預入金の利率等に関しては借款契約取極の際協定すべし
清国政府は京奉鉄道全線の毎月末収支假計算書並に年末収支決算英文報告書を南満洲鉄道会社に提示すべきものとす
第六条 吉長鉄道の技師長及会計主任には協約第三条の規定により日本人を用ゆべし其任用方法は技師長は清国政府より適当の人物を選み南満洲鉄道会社に協議の上清国政府之を任命し会計主任は南満洲鉄道会社より推薦し清国政府と協議の上清国政府之を任命するものとす其更迭を要する場合に於ては協約の規定により南満洲鉄道会社と協議の上同じく前記の手続により任命を行ふものとす
第七条 借款に関する細目の取極は協約及本続約の規定に基き南満洲鉄道会社と清国郵傳部の委員との間に別に協定すべきものとす
(以下省略)
(国立公文書館:標題 新奉及吉長鉄道に関する協約 B13090910500)
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