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旅順開城規約 1905年01月02日

 旅順開城規約(ひらがな化、一部新字体化、附属書類省略)


旅順開城規約

昨日午後九時四十五分を以て本調印を終りし開城規約本文左の如し

第一条 旅順要塞及該港にある露国の陸海軍々人及義勇兵並官吏は総て之れを捕虜とす

第二条 旅順口に於ける全堡塁、砲台、艦艇船、兵器弾薬、馬匹其他一切の軍用諸材料、官舎、官有諸物件は現状の儘之を日本軍に引渡すものとす

第三条 前二カ条を承諾するに於ては其の担保として来る一月三日正午迄に椅子山、小案子山、大案子山、及び其東南一帯の高地上にある堡塁、砲台の守備を撤し日本軍に交付すべし

第四条 露国陸海軍に於て本規約調印の当時に現存せる第二条の諸物件を破壊し又は其他の方法に於て現状を変更すと認むるときは談判を廃止し日本軍は自由の行動を取るべし

第五条 在旅順口露国陸軍官憲は旅順要塞、配備図地雷水雷、其他危険物の布設図及在旅順口陸海軍編成表、陸海軍将校官職等級氏名簿、文官々職氏名簿、軍隊艦艇名簿及其乗組人員名簿、普通人民の男女人種職業員数表を調製し日本軍に交付すべし

第六条 兵器(各人の携帯兵器を含む)弾薬、軍用諸材料、官舎、官有諸物件、馬匹、艦船艇及其内部の諸物件(私有物を除く)は悉く之を現在の位置に整置すべし其受授の方法に関しては日露両軍の委員に於て規定するものとす

第七条 日本軍は露軍の勇敢なる防禦を名誉とするに依り露国陸海軍の将校及所属官吏に携剣及び直接生活に必要なる私有品の携帯を許す又た前記将校、官吏及び義勇兵にして本戦役の終局に至るまで武器を取らず如何なる方法に於ても日本軍の利益に反対する行為を為さざることを筆記宣誓するものは本国に帰還するとを承諾す陸海軍将校には各人に一名宛の従卒を随行せしむることを許す此従卒は特に宣誓解放をなす

第八条 武装を解除したる陸海軍下士兵卒及義勇兵は其製服を着用し携帯天幕及び所要の私有物件を携へ所属将校の指揮を以て日本軍の指示する集合地に至るべし但し其詳細に関しては日本軍の委員に於て之を指示す

第九条 旅順口にある露国陸海軍の衛生部員及経理部員は病傷者及俘虜の救護給養の為め日本軍に於て必要と認むる時期迄日本軍の衛生部員及経理部員指揮の下に残留して引続き勤務に服せしむべし

第十条 普通人民の処置、市の行政会計事務及之に関する書類の引継ぎ其他本規約執行に関する細則は本規約付録に於て規定す

第十一条 本規約は日露両軍に於て各一通を製し調印の時より直ちに効力を生ず


開城規約付録(省略、同資料P215~にあり)

(国立国会図書館デジタルコレクション:日露戦争大本営公報集P211~)

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