日ソ国交調整要綱案(ひらがな化、一部新字体化)
(乙号)日蘇國交調整要綱案(試案)
(昭和十五、十、四 外務省)
第一、方針
支那事変の速急終結に資し対南方施策を容易ならしむると共に差当り北方より来る脅威を除き以て大東亜共栄圏の確立を促進する為左記要領に依り蘇連との間に速に飛躍的国交調整を行ふ
第二、要綱
一、日蘇両国は新条約に依り新たなる地盤の上に(「ポーツマス」条約及基本条約を離るるの意味)友好的関係に入るものとす。
二、日蘇両国は要旨次の如き不侵略協定を締結す
(イ)両締約国は相互に領土及主権を尊重し侵略を為さざる義務を負ふ
(ロ)締約国の一方が攻撃を受けたる場合には中立を維持す
(ハ)互に締約国の一方を敵対目標とする国家群に参加せず
(ニ)満蘇及満蒙国境の紛争処理及国境確定の為委員会を設置す
(ホ)相互に相手国の秩序及安寧を危殆ならしむるか如き好意を相手国並支那及満洲国領域内に於て行はさるものとす
(ヘ)政治経済問題調整の為速に商議を開始す
(ト)条約の有効期間は十年とす
三、日蘇経済関係を新たなる立場に於て左記より調整再建す
(イ)北樺太に於ける石油及石炭に関する利権及之等物資の本邦輸入を確保するに努むるものとす
(ロ)蘇連側の要望も尊重し他方日本人の北洋漁業を安定せしむる目的を以て新たなる地盤の上に漁業協定を締結す
(ハ)日本は支那及南洋に於て蘇の希望する資源の供給に付必要なる措置を講す
(ニ)蘇連は日本と欧州との通過貿易に付出来得る限りの便宜を供与す(料金及運輸量に関し明白に規定することを期待す)
四、日満と蘇蒙の国境に非武装地帯を設定す
五、日蘇間に左記諒解の成立を期待す
(イ)蘇連は内蒙及北支三省に於ける日本の伝統的関心を承認し、日本は外蒙古及新疆に関する蘇連の伝統的関心を承認す
(ロ)蘇連は日本か招来大東亜共栄圏内の南方に進出することを容認すへく日本は蘇連か中央「アヂア」地方に進出することを容認す
(ハ)蘇連は援蒋的態度並に所為を一擲し中国共産党の抗日性を抑制す、日本は中国共産党か西北三省(甘粛、陜西、寧夏)を地盤として存続することを容認す
第三、措置要領
(一)日蘇国交調整に付ては事前日独伊間に将来蘇連を如何に処置すべきや又如何なる限度に於て其の勢力並に発展を認むべきや等に関し隔意なき話合を為し置くものとす
(二)右話合を含みて日独伊共同し或は日本単独にて蘇連に「アプローチ」す、
何れの場合に於ても本交渉に於ては独伊の西方よりの圧力を有効に利用すべきものとす
(三)本交渉は最短期間に終結せしむる目標の下に之を開始するものとす短期間の妥結成らざる場合も停屯或は決裂の形式を避くる事とす
(四)本交渉に当りては第一段として不侵略協定を妥結し次いで第二段として政治経済に関する所要の調整を考慮するものとす
(五)米蘇接近を牽制する為万全の措置を講ずるものとす
(六)国内に於ける共産主義の取締は日蘇国交調整とは別けの問題として励行するものとす
満洲国及支那に於ても右に準す
(国立公文書館:一、一般、雑/11)日蘇国交調整要綱案二対スル意見交換記録 昭和十五... B02030011300)
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