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日英通商航海条約 1894年07年16日

日英通商航海条約(原文:一部ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり)

 通商航海条約
日本國皇帝陛下及ひ大不列顛愛蘭連合王国兼印度国皇帝陛下は兩國臣民の交際を皇張増進し以て幸に両国間に存在する所の厚誼を維持せんことを欲し而して此目的を達せんには従来両国間に存在する所の条約を改正するに如かさるを確信し公正の主義と相互の利益を基礎とし其改正を完了することに決定し之が為めに日本国皇帝陛下は英国駐箚帝国匿名全権公使従二位勲一等子爵青木周蔵を大不列顛愛蘭連合王国兼印度国皇帝陛下は其外務大臣ガーター勲章の「ナイト」、ゼー、ライト、オノレーブル、ジョン、キムバーレー伯爵を各其全權委員ニ任命セリ因て各全權委員ハ互ニ委任状ヲ示シ其良好妥當ナルヲ認メ以て左ノ諸條ヲ協議決定セリ
第一條 両締約國ノ一方ノ臣民ハ他ノ一方ノ版圖内ニ到リ、旅行シ或ハ居住するも全く随意たるへく而して其身体及ひ財産に対しては完全なる保護を享受すへし
該臣民は其権利を伸張し及ひ防護するに就き内国臣民と同様に代言人弁護人及ひ代人を選択し且つ使用することを得へく而して右の外司法取扱に関する各般の事項に関して内国臣民の享有する総ての権利及ひ特典を享有すへし
居住権、旅行権及ひ各種動産の所有、遺嘱又は其他の方法に因る所の動産の相続■に合法に得るところの各種財産を如何に処分することに関し両締盟国の一方の臣民は他の一方の版図内に在て内国若くは最恵国の臣民或は人民と同様の特典、自由及ひ権利を享有し且つ此等の事項に関しては内国若くは最恵国の臣民或は人民に比して多額の税金若くは賦課金を徴収せらるることなかるへし
両締約國ノ一方ノ臣民ハ他ノ一方ノ版圖内ニ於テ良心に関し完全なる自由、及法律、勅令及規則に従て公私の礼拝を行ふの権利、並に其の宗教上の慣習に従ひ埋葬の為め設置保存せらるる所の適当便宜の地に自国人を埋葬するの権利を享有すへし
何等の名義を以てするも該臣民をして内国若は最恵国の臣民或は人民の納むる所若は納むへき所に異なるか又は之より多額の取立金若は租税を納めしむるを得す
第二条 両締盟國ノ一方ノ臣民にして他ノ一方ノ版圖内ニ於テ住居する者は陸軍、海軍、護国軍、民兵等に論なく総て強迫兵役を免かれ且其の服役の代りとして取立る所の一切の納金を免かれ又一切の強募公債及軍事上の賦歛或は捐資を免かるへし
第三条 両締盟國ノ間ニハ相互ニ通商及航海ノ自由アルヘシ
両締盟國ノ一方ノ臣民又ハ他ノ一方ノ版圖内何れの所に於ても総て正業に属する各種の生産物、製造品及貨物の卸売若は小売営業に従事するを得へし右営業に従事するに於て自信に之を為し、或は代理人を以てし、又は一人にて之を為し、或は外国人若は内国臣民と組合を結ひて之を為すも随意たるへく又必要なる家屋、製造所、倉庫、店舗及附属構造物を所有し、或は之を借受け又は使用し、且住居及商業の為めに土地を借受くることを得zmし内国臣民と同様其の国の法律、警察規則及税関規則を遵守するを要す
該臣民は他の一方の版圖内の各地、諸港及諸河にして外国通商の為め開かれ又は開かるへき場所へ船舶及貨物を以て自由に到るを得且通商及航海に関しては政府、官吏、公吏、一私人或は会社若は何等施設の名義を以てするか又は其の利益の為めに課せらるる所の税金、或は取立金は其の性質若は名称の如何を論せす内国臣民若は最恵国民或は人民の払ふ所に異なるか或は之より多額のものを払ふことなく内国臣民若は最恵国臣民或は人民と同一の取扱を受くへし但し常に各其の国の法律、勅令及規則に従ふへきものとす
第四條 両締盟國ノ一方ノ臣民か他の一方の版圖内ニ於テ住居若は商業の為めに供スル家宅、製造所、倉庫、店舗之に属する総ての附属構造物ハ侵すへからす
右家宅等へは猥に侵入捜索すへからす又帳簿書類或は簿記帳を検査點閲すへからす但し内国臣民に対し法律、勅令及規則を以て制定セル条件及定式に拠るときは此の限に在らす
第五條 大不列顛国皇帝陛下の版圖内の生産或は製造に係る物品は何れの地より日本国皇帝陛下の版圖内に輸入し又日本国皇帝陛下の版圖内の生産或は製造に係る物品は何れの地より大不列顛国皇帝陛下の版圖内に輸入するにも総て別国の生産或は製造に係る同種の物品に課する所の税に異なるか或は之より多額の税を課せらるることなかるへし又締盟国の一方の版圖内へ別国の生産或は製造に係る物品の輸入を禁止するに非されは他の一方の版圖内の生産或は製造に係る同種の物品を何れの地より輸入することをも禁止することなかるへし但し此の末段の取極は人畜或は農業に有用なる植物の安全を保護するに必要なる衛生上及其の他の禁止には適用すへからさるものとす
第六條 両締盟國ノ一方ノ版圖内より他の一方の版圖内へ輸出する一切の物品へは他の各外国へ輸出する同種物品に対して賦課し若は賦課すへき所に異なるか或は之より多額の税金又は雑費を賦課することなかるへし又両締盟國ノ一方ノ版圖内に於て他の各外国に向ひ物品の輸出を禁止するに非されは他の一方の版圖内へ同種の物品を輸出することをも禁止せさるへし
第七條 両締盟國ノ一方ノ臣民は他の一方の版圖内に在りて総ての内地通過税は免除せらるへく又倉人、奨励金、便益及税金払戻等の事項に就ては全く内国臣民と均等の取扱を享くへし
第八條 日本国皇帝陛下の版圖内の諸港へ日本国の船舶を以て適法に輸入し若は輸入せらるへき総ての物品は亦大不列顛国の船舶を以て同様に之を右諸港に輸入することを得此の場合に於ては日本国の船舶か右様の物品を輸入するとき課すへき税金或は雑費の外何等の名義を以てするも更に別種或は多額の税金雑費等を課せさるへし又大不列顛国皇帝陛下の版圖内の諸港へ大不列顛国の船舶を以て適法に輸入し若は輸入せらるへき総ての物品は亦日本国のの船舶を以て同様に之を右諸港に輸入することを得此の場合に於ては大不列顛国船舶か右様の物品を輸入するとき課すへき税金或は雑費の外何等の名義を以てするも更に別種或は多額の税金雑費等を課せさるへし右相互対等の取扱は右物品の直に原産地より到ると其の他の場所より到るとを問わす必すこれを施すものとす
輸出に関しても前項の場合と同様全く均等の取扱を施すへし故に締盟国の一方より適法に輸出シ若は輸出せらるへき物品は其の輸出の日本国船舶に依ると大不列顛国船舶に依るとに拘はらす又其の仕向先の締盟国の一港たると第三国の一港たるとを問わす締盟国の版圖内に於ては之に課するに同一の輸出税を以てし又之に許すに同一の奨励金並に税金払戻のことを以てすへし
第九條 政府、官吏、一私人、会社若は何等施設ノ名義ヲ以テするか又ハ其ノ利益ノ為ニ課セラルル所の噸税、港税、水先案内料、燈臺税、檢疫費其ノ他之と同種の税金ハ其の性質並に名義の如何に拘はらす同一の条件を以て同様の場合に於て内國船舶一般若は最惠國船舶ニ課スルモノニ非サレハ両締盟國ノ一方は其の版圖内ノ港ニ於テ之ヲ他ノ一方ノ船舶ニ課せさるへし此の如き均等の取扱は両國ノ船舶カ何レノ地ヨリ或は港より來リ又何レノ所ニ徃クものたりとも相互同一たるへきものとす
第十條 両締盟国の一方の版圖内の海港、海湾、船渠、川河或は其の他の碇泊所に於て船舶の繋留又は貨物の舩積、舩卸に関する一切の事項に就ては内国舩舶に許与せさる特典は均しく他の一方の締盟国の船舶にも許与せさるへし但し本件に関しても亦両締盟国の目的は両国の船舶に対し互に全く均等の取扱を施すに在るものとす
第十一條 両締約國ノ沿岸貿易ハ本條約に於て規定スルの限ニ在ラス各其の法律、勅令、及規則に従ひ之を規定すへきものとす然しとも日本国皇帝陛下の版圖内に於ける大不列顛国臣民又は大不列顛国皇帝陛下の版圖内に於ける日本国臣民は此の事項に関しては各右法律勅令及規則を以て他の外国臣民或は人民に許与し若は許与せらるへき諸権利を享有すへきものとす
大不列顛国皇帝陛下の版圖内に二箇以上の港へ仕向けたる荷物を外国に於て積載したる日本国船舶及日本国皇帝陛下の版圖内に二箇以上の港へ仕向けたる荷物を外国に於て積載したる大不列顛国船舶は外国貿易を許されたる仕向港の一に於て其の積荷の一部を陸揚し而して其の最初に積載したる荷物の剰余を陸揚する為め他の一港若は数港へ進航することを得へし但し常に両国の法律及税関規則に従ふへきものとす
但し日本国政府は本条約の期限間是(しんにょう+占)の通り大不列顛国船舶か帝国の現開港場に積荷を運搬することを許すことを承諾す尤大阪新潟及夷港は此の限に在らす
第十ニ條 両締盟国の一方の軍艦或は商船にして暴風又は其の他の危難に遭遇し避難の為め巳むを得す他の一方の海港に進入するものは内国船舶の払ふへき税金の外何等の税金を払ふことなく其の港に於て更に艤装を為し一切の需用品を求め再ひ航行するを得へし但し商船の船長にして其の費用を支弁する為め其の積荷の一部を売却するを要する場合には該船長は其の寄港地の規則及税目を遵守すへきものとす
両締盟国の一方の軍艦或は商船にして他の一方の沿岸に於て浅瀬に乗上け或は難破したるときは地方官より其の事件の生したる地方に在る所の総領事、領事、副領事又は代弁領事へ其の旨を通知すへし但シ若其の地方に領事館の駐在せさるときは最近地方の総領事、副領事又は代弁領事へ通知すへし
日本国皇帝陛下の領海にて難破し若は海岸に乗上けたる大不列顛国船舶の救助に関する一切の手続は日本国法律、勅令及規則に従て之を為すへく又相互の主義に基き大不列顛国皇帝陛下の領海にて難破し若は海岸に乗上けたる日本船舶に関する一切の救助の処分は大不列顛国法律、勅令及規則に従て之を為すへし
右難破若は乗上けたる船舶並に其の器具及び其の他一切の附属品及該船舶より救上けたる貨物並に商品及右等の諸物件にして海中に投棄せられたるもの又は之を売却したるときは其の収得金並に該遭難船内に発見せられたる一切の書類は右船舶の持主或は代理人より要求するときは之に引渡すへし右持主或は代理人の現場に在らさるときは内国法律に定めたる期限内に当該総領事、領事、副領事或は代弁領事より請求あれは之を引渡すへし而して右領事官、持主、或は代理人は内国舩舶難破の場合に於て払うへき所の物品保存費並に難破救助費及其ノ他の費用のみを払ふへきものとす
難破船より救上けたる貨物及商品は消費の為に通関手続を為すものに非されは一切の関税を免除すへし但し消費の為めに売捌く場合には普通の関税を納むるを要するものとす
両締盟国の一方の臣民に属する船舶にして他の一方の版圖内に於て浅瀬に乗上け或は難破したるとき其の持主、船長若は他の持主代理人不在の場合には当該総領事、領事、副領事若は代弁領事は其の自国臣民に必要の輔助を与ふる為め職権上の助力を為すを許さるへきものとす此の規定は持主、船長若は他の代理人現に其の場に在るときと雖も右様の輔助を与ふるを請求する場合には亦適用すへきものとす
第十三條 本条約に於ては日本国の国法に従ひ日本国船舶と見做さるへき一切の船舶は之を日本国船舶と見認め又大不列顛国の国法に従ひ大不列顛国船舶と見做さるへき一切の船舶は之を大不列顛国船舶と見認むへし
第十四條 両締盟国の一方の版圖内に駐在する他の一方の総領事、領事、副領事若は代弁領事は自国の脱船人を取戻す為め法律の許す所の輔助は之を地方官より受くへきものとす
但し海員か其の各自の所属国に於て脱船したるときは此の規定を適用せさるものと知るへし
第十五條 両締盟国は其の一方の通商及航海を他の一方に於て総て最恵国の基礎に置く主意を有するに因り通商及航海に関する一切の事項に関し其の一方より別国の政府、船舶、臣民或は人民に現に許与し或は将来許与すへき一切の特典、殊遇若は免除は他の一方の政府、船舶、臣民或は人民にも即時に且条件を附せすして之を許与両締盟国に於て約定す
第十六條 両締盟国の一方は他の一方の海港、都府及其ノ他の場所に総領事、領事、副領事、領事代及代弁領事を置くことを得へし但し領事官の駐在を認許するに便宜ならさる場所は此の限に在らす
然れとも右の制限は他の諸外国に対し之を適用するに非されは一方の締盟国に対して之を適用するを得さるものとす
総領事、領事、副領事、領事代及代弁領事は一切の職務を執行することを得且其の在留国に於て最恵国の領事官に現に許与し或は将来許与せらるへき一切の特典、特権及免除は総て之を享有すへきものとす
第十七條 両締盟国の一方の臣民は他の一方の版圖内に於て法律に定むる所の手続を履行するときは専売特許、商標及意匠に関し内国臣民と同一の保護を受くへし
第十八條 大不列顛国政府は同政府に関する限は左の取極に同意すへし
日本国に在る各外国人居留地は全く其の所在の日本国市区に編入し爾後日本国地方組織の一部となるへし
然る上は日本国当該官吏は之に関して其の地方施政上の責任義務を悉皆負担すへし又之と同時に右外国人居留地に属する共有資金若は財産あるときは之を右日本国官吏へ引渡すべきものとす」
尤前記外国人居留地を日本国市区に編入の場合には該居留地内にて現に因て以て財産を所持する所の現在永代借地券は有効のものと確認せらるへし而して右財産に対しては右借地券の載せたる条件の外は別に何等の条件をも附せさるへし但し借地券中に領事官とあるは総て日本国当該官吏を以て之に代ゆへきことと知るへし
外国人居留地公共の目的の為めに無借料にて既に貸与したる各地所は永代に保存せらるへし且該地所にして最初貸与したるときの目的に使用せらるる限は総ての租税及徴収金を免すへし但し土地収用権には従ふへきものとす
第十九條 本条約の規定は法律の許す限は大不列顛国皇帝陛下の殖民地並に其の海外領地に適用すへし但し左に列記する所は此の限に在らす
 印度
  加奈太領地
  ニュー、フワウンドランド
  希望峯殖民地
  ナタル
  ニュー、サウス、ウエールス
  ヴヰクトリヤ
  クヰンスランド
  タスマニヤ
  南濠太利
  西濠太利
  ニュー、ジーランド
然れとも東京駐剳大不列顛国皇帝陛下の代表者より本条約批准交換の日より二箇年内に本条約の規定を前記の殖民地若は領地の孰れへなりとも適用すへき旨を通知したるときは之を適用すへきものとす
第ニ十條 本条約は其の実施の日より両締盟国間に現存する嘉永七年八月二十三日即千八百五十四年十月十四日締結の約定慶應二年五月十三日即千八百六十六年六月二十五日締結の改税約定安政五年七月十八日即千八百五十八年八月二十六日締結の修好通商条約及之に附属する一切の諸規定に代はるへきものとす而して該契約及諸約定は右期日より総て無効に帰し随て大不列顛国か日本帝国に於て執行したる裁判権及該権に属し又は其の一部として大不列顛国臣民か享有せし所の特典、特権及免除は本条約実施の日より別に通知をなさす全然消滅に帰したるものとす而して此等の裁判管轄権は本条約実施後に於ては日本帝国裁判所に於て之を執行すへし
第ニ十一條 本条約は調印の日より少くも五箇年の後迄は実施せられさるものとす而して日本帝国政府に於て本条約を実施せんと欲する旨を大不列顛国政府に通知したる後一箇年を経るに非されは実施せられさるものとす尤此の通知は調印の日より四箇年を経たる後何時にても為すことを得へし又本条約は其の実施の日より十二箇年間効力を有するものとす
両締盟国の一方は本条約実施の日より十一箇年を経過したる後は何時たりとも本条約を終了せんと欲する旨を他の一方へ通知するの権利を有すへし而して此の通知を為したる後十二箇月を経過したるときは本条約は消滅に帰すへきものとす
第ニ十ニ條 本条約は両締盟国に於て之を批准し其の批准は本日より六箇月以内に可成速に東京に於て交換すへし
右證據トシテ各全權委員は之に記名調印するものなり
明治二十七年七月十六日倫敦に於て本書二通を作る
青木周蔵 (印)
キムバーレー (印)


 議定書
日本国皇帝陛下の政府及大不列顛国愛蘭連合王国兼印度国皇帝陛下の政府は本日調印せし通商航海条約の他に雙方に関する特別の事項を規定すること両国の利益上便宜なるを以て雙方の全権委員は左の約定に同意せり
第一 本日調印したる通商航海条約批准交換後一箇月の後は本書附属輸入税目は両締盟国間に現存する所の安政五年条約の有効なる間は其の第二十三条の規定に準拠し又右安政五年条約の無効に帰したる後は本日調印したる条約第五条及第十五条の規定に準拠し大不列顛国皇帝陛下の版圖内の生産若は製造に係る物品にして該税目に掲くるものを日本国へ輸入する場合に之を適用するものとす但し日本国政府に於て純良ならさる薬材、製薬、食物若は飲料、猥褻の印刷物、図書、書籍、紙牌、石版若は其ノ他の彫刻書、写真及其の他総て猥褻の物品、日本帝国の先輩特別、商標及版権に関する法律に違背する物品又は其の他衛生、公安若は風俗に関し危害を生すへき物品の輸入を制限し若は禁止するの権利は本議定書又は其の附属税目の為め制限せらるることなかるへきものとす
該税目に定めたる従価税は之を実行し得へしと認めらるる限は本議定書の日附より六箇月間に両国政府に締結せらるへき追加条約を以て従量税に換算すへし本議定書の日附より前六暦月間に於ける日本国税関報国に載せたる平均価格に仕入地、産出地若は製造地より陸揚港に至る迄の保険料及び運賃を加算し又手数料あるときは之をも加算したるものを以て右換算の基礎となすへし若又追加条約にして前記税目を実施する為めに定めたる期限を終る迄に実施せられさる場合には其の間は前記の税目の末尾に掲けたる規定に従ひ従価税を徴収すへし
右税目に掲けさる物品に対しては前項に記載せし期日より前項に記載せし如く各安政五年条約第二十三条及本日調印したる条約第五条及第十五条の規定に準拠し日本国にて其の時現に行はるる所の普通国定税則を適用するものとす
大不列顛国臣民か日本国に輸入する貨物及商品に対し現今日本国に於て実施する所の輸入税目は前項に記載せし各税目実施の日より無効に帰すへきものとす
尤此の外総てのことに付ては現行条約の規定は本日調印したる通商航海条約の実施せらるるに至る迄は無条件にて保続せらるへきものとす
第二 日本国政府は大不列顛国臣民に対し内国を開く迄は現行の旅券方法を拡張することに同意す即大不列顛国臣民か在東京同国公私若は日本国開港場に駐在する大不列顛国領事官よりの紹介証書を所持して出願するに於ては十二箇月以内の期限間国内何れの地へも到ることを得へき旅券を東京外務省若は開港場所所在地法長官より交附すへし但し帝国の内地に旅行する大不列顛国臣民に関する現行規定は之を保続すへきものと知るへし
第三 日本国政府は日本国に於ける大不列顛国領事裁判権の廃止に先たち工業の所有権及版図の保護に関する列国同盟条約に加入すへきことを約す
第四 若日本国に於て何時にても其の精糖の算出若は製造に対し増税を課することを必要と見做すときは其の増加せし内国税を課する間は日本国へ輸入する所の大不列顛国の精糖に対し前記内国税と同額に増加する所の関税を課することを得へきことを料締盟国に於て承諾す
但し右に関し大不列顛国の精糖は常に最恵国の算出若は製造に係る精糖と同一の取扱を享くへきものとす
第五 左に記名する所の全権委員は本議定書は本日調印したる通商航海条約と同時に両締盟国政府に提供し而して右条約批准せらるるときは本議定書に掲載する所の諸約定も別に正式に批准をようせすして亦両締盟国政府の可認せしものと看做すへきことを約す
又本議定書は前記条約の無効に帰すると同時に終了すへきことを約す
右証拠として両国全権委員は之に記名調印するものなり
明治二十七年七月十六日倫敦に於て本書二通を作る
青木周蔵 (印)
キムバーレー (印)


附属税目

以下省略
(日本公文書館)(18940716日英通商航海条約)

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 ダンバートン・オークス提案(一般的国際機構設立に関する提案)(訳文)     一般的国際機構設立に関する提案 (「ダンバートン、オークス」会議の結果「ソ」連邦、米国、英国及重慶政権に依り提案せられ千九百四十四年十月九日発表せられたるもの) (本提案の英文は千九百四十四年十月十一日附「モスコー、ニュース」より之を採り「ストックホルム」電報等に依り長短相補ひたるものなり) 「国際連合」なる名称の下に一の国際機構設立せらるべく其の憲章は左の提案を具現するに必要なる規定を掲ぐべし    第一章 目的 本機構の目的は左の如くなるべし 一、国際平和及安寧を保持すること、右目的の為平和に対する脅威の防止及除去並に侵略行為又は他の平和侵害行為の抑圧を目的とする効果的且集団的措置を執ること及平和の侵害に至るの虞ある国際紛争を平和的方法に依り調整又は解決すること 二、各国間の友好関係を発展せしめ且世界平和を強化すべき他の適当なる措置を執ること 三、各国間の経済的、社会的及他の人道上の問題の解決の為国際協力を完成すること及 四、右共同目的完成の為各国の行動を調整すべき中心たるべきこと    第二章 原則 第一章に掲げたる目的を遂行せんが為本機構及其の締盟国は以下の原則に従ひ行動すべし 一、本機構は一切の平和愛好国の主権平等の原則に其の基礎を置くものとす 二、本機構の一切の締盟国は締盟国全部に対し締盟国たるの地位に基く権利及利益を保障する為憲章に従ひ負担したる義務を履行することを約す 三、本機構の一切の締盟国は其の紛争を国際平和及安寧を危殆ならしめざるが如き平和的方法に依り解決すべきものとす 四、本機構の一切の締盟国は其の国際関係に於て本機構の目的と両立せざる如何なる方法に於ても脅威又は兵力の行使を避くるものとす 五、本機構の一切の締盟国は本機構が憲章の規定に従ひ執るべき如何なる行動に於ても之に対し有らゆる援助を与ふるものとす 六、本機構の一切の締盟国は本機構が防遏的又は強制的行動を執行中なる如何なる国家に対しても援助を与ふることを避くるものとす 本機構は、国際平和及安寧保持に必要なる限り本機構の非締盟国が右原則に従ひ行動することを確実ならしむべし    第三章 締盟国 一切の平和愛好国は本機構の締盟国たり得べし    第四章 主要機関 一、本機構は其の主要機関として左記を有すべし  イ

第二次近衛声明(東亜新秩序建設の声明) 1938年11月03日

 第二次近衛声明(東亜新秩序建設の声明)                     (昭和十三年十一月三日)  今や 陛下の御稜威に依り帝国陸海軍は、克く広東、武漢三鎮を攻略して、支那の要域を戡定したり。国民政府は既に地方の一政権に過ぎず。然れども、尚ほ同政府にして抗日容共政策を固執する限り、これが潰滅を見るまで、帝国は断じて矛を収むることなし。  帝国の冀求する所は、東亜永遠の安定を確保すべき新秩序の建設に在り。今次征戦究極の目的亦此に存す。  この新秩序の建設は日満支三国相携へ、政治、経済、文化等各般に亘り互助連環の関係を樹立するを以て根幹とし、東亜に於ける国際正義の確立、共同防共の達成、新文化の創造、経済結合の実現を期するにあり。是れ実に東亜を安定し、世界の進運に寄与する所以なり。  帝国が支那に望む所は、この東亜新秩序建設の任務を分担せんことに在り。帝国は支那国民が能く我が真意を理解し、以て帝国の協力に応へむことを期待す。固より国民政府と雖も従来の指導政策を一擲し、その人的構成を改替して更生の実を挙げ、新秩序の建設に来り参ずるに於ては敢て之を拒否するものにあらず。  帝国は列国も亦帝国の意図を正確に認識し、東亜の新情勢に適応すべきを信じて疑はず。就中、盟朋諸国従来の厚誼に対しては深くこれを多とするものなり。  惟ふに東亜に於ける新秩序の建設は、我が肇国の精神に淵源し、これを完成するは、現代日本国民に課せられたる光栄ある責務なり。帝国は必要なる国内諸般の改新を断行して、愈々国家総力の拡充を図り、万難を排して斯業の達成に邁進せざるべからず。  茲に政府は帝国不動の方針と決意とを声明す。 (国立公文書館:「近衛首相演述集」(その二)/1 第一章 「声明、告諭、訓令、訓辞」 B02030031600)