スキップしてメイン コンテンツに移動

日米通商航海条約 1894年11月22日

日米通商航海条約(原文:ひらがな、一部新字体化、一部不明文字あり)

 日米通商航海條約
日本國皇帝陛下及亞米利加合衆國大統領は兩國民の交際を皇張増進し以て幸に兩國間に存在する所の厚誼を維持せしむことを欲し而して此の目的を達せむには從來兩國に存在する所の條約を改正するに如かさるを確信し公正の主義と相互の其の改正を完了することに决定し之か為めに日本國皇帝陛下は米國駐剳帝國特命全權公使從四位勲四等栗野慎一郎を亞米利加合衆國大統領は合衆國国務大臣「ウォルター、キュー、グレシヤム」を各其の全權委員に任命せり因て各全權委員は互に其の委任状を示し其の良好妥当なるを認め以て左の諸條を協議決定せり 
第一条 両締盟国の一方の臣民或は人民は他の一方の領土内何れの所に到り、旅行し或は居住するも全く隨意たるへく而して其の身体及財産に對しては完全なる保護を享受すへし
該臣民或は人民は其の権利を伸張し及防護せむか為め自由に裁判所に訴出ることを得へく又該裁判所に於て其の権利を伸張し及防護するに付内国臣民或いは人民と同樣に代言人、弁護人及代人を選択し且使用することを得へく而して右の外司法取扱に關する各般の事項に関して内国臣民或は人民の享有する總ての權利及特典を享有すへし
住居權、旅行権及各種動産の所有、遺囑又は其の他の方法に因る所の動産の相続并に合法に得る所の各種財産を如何に處分することに關し兩締盟國の一方の臣民或は人民は他の一方の領土内に在りて内國若は最惠國の臣民或は人民と同樣の特典、自由及権利を享有シ且此等の事項に關しては内國若は最恵國ノ臣民或は人民に比して多額の税金若は賦課金を徴収せらるることなかるへし 
両締盟国の一方の臣民或は人民は他の一方の領土に於て良心に關し完全なる自由、及法律、勅令及規則に従って公私の禮拜を行ふの権利■に其の宗教上の慣習に從ひ埋葬の為め設置保存せらるる所の適当便宜の地に自国人を埋葬するの権利を享有すへし 
何等の名義を以てするも該臣民或は人民をして内国若は最恵国の臣民或は人民の納むる所若は将来納むへき所に異なるか又は之より多額の取立金若は租税を納めしむるを得す 
両締盟国の一方臣民或は人民にして他の一方の領土内に住居する者は陸軍、海軍、護国軍、民兵等に論なく総て強迫兵役を免かれ且其の服役の代りとして取立る所の一切の納金を免かれ又一切の強募公債及軍事上の賦歛、或は捐資を免かるへし 
第ニ条 両締盟國間には相互に通商及航海の自由あるへし
両締盟国の一方の臣民或は人民は他の一方の領土内何れの所に於ても總テ正業に属する各種の生産物、製造品及貨物の卸売若は小売営業に従事するを得へし右営業に従事するに於て自身に之を為し、或は代理人を以てし、又は一人にて之を為し、或は外國人若は内国臣民或は人民と組合を結ひて之を為すも随意たるへく又必要なる家屋、製造所、倉庫、店舗及び附属構造物を所有し或は之を借受け又は使用し且住居及商業の爲めに土地を借受くることを得、但し内國臣民或は人民と同樣其の國の法律、警察規則及税關規則を遵守するを要す
該臣民或は人民は一方の領土内の各地、諸港及諸河にして外国通商の為め開かれ又は開かるへき場所へ船舶及貨物を以て自由に到るを得且通商及航海に関しては政府、官吏、公吏、一私人或は会社若は何等施設の名義を以てするか又は其の利益の為めに課せらるる所の税金或は取立金は其の性質若は名称の如何を論せす内国臣民或は人民若は最惠國臣民或は人民と同一の取扱を受くへきものとす
但し本条及前條の規定は兩締盟國の各方に於て商業、労働者の移住、警察及公安に關し現に行はれ又は将来制定せらるへき法律、勅令及規則には何等の影響を及ほすことなし
第三条 両締盟國の一方の臣民或は人民か他の一方の領土内に於て住居若は商業の為めに供する家宅、製造所、倉庫、店舗及之に属する總ての附属構造物は侵すへからす
右家宅等へは猥に侵入捜索するへからす又帳簿、書類或は簿記帳を検査點閲すへからす但し内国臣民或は人民に対し法律、勅令及規則を以て制定せる条件及定式に據るときは此の限に在らす
第四條 合衆國領土内の生産或は製造二係る物品は何れの地より日本國皇帝陛下の領土内に輸入し又日本國皇帝陛下の領土の生産或は製造に係る物品を何れの地より合衆國の領土内に輸入するにも總て別國の生産或は製造に係る同種の物品に課する所の税に異なるか或は之より多額の税を課せらるることなかるへし又締盟國の一方の領土内へ別国の生産或は製造に係る同種の物品を何れの地より輸入することをも禁止することなかるへし但し此の末段の取極は人、畜或は農業に有用なる植物の安全を保護するに必要なる衛生上及其の他禁止には適用すへからさるものとす
第五条 両締盟国の一方の領土内より他の一方の領土内へ輸出する一切の物品へは他の各外国へ輸出する同種物品に対し賦課し若は賦課すへき所に異なるか或は之より多額の税金又は雑費を賦課することなかるへし又両締盟国の一方の領土内に於て他の各外国に向ひ物品の輸出を禁止するに非されは他の一方の領土内へ同種の物品を輸出することをも禁止せらるへし 
第六條 両締盟國の一方の臣民或は人民は他の一方の領土内に在りて總ての内地通關税は免除せらるへく又倉入、奨励金、便益及税金払戻等の事項に就ては全く内國臣民或は人民等の取扱を享くへし 
第七條 日本国皇帝陛下の領土内の諸港へ日本国の船舶を以て適法に輸入し若は輸入せらるへき物品は亦合衆国kの船舶を以て同様に之を右諸港に輸入することを得此の場合に於ては日本国船舶か右様の物品を輸入するとき課すへき税金或は雑費の外何等の名義を以てするも更に別種或は多額の税金雑費等を課せさるへし又合衆国の領土内の諸港へ合衆国の船舶を以て適法に輸入し若は輸入せらるへき物品は亦日本国の船舶を以て同様に之を右諸港へ輸入することを得此の場合に於ては合衆国船舶か右様の物品を輸入するとき課すへき税金或は雑費の外何等の名義を以てするも更に別種或は多額の税金雑費を課せさるへし右相互対等の取扱は右物品の直に原産地より到ると其の他の場所より到るとを問わす必す之を施すものとす
輸出に関しても前項の場合と同様全く均等の取扱を施すへし故に締盟国の一方より適法に輸出し若は輸出せらるへき物品は其の輸出の日本国船舶に依ると合衆国船舶に依るとに拘はらす又其の仕向先の締盟国の一港たると第三国の一港たるとを問わす締盟国の領土内に於ては之に課するに同一の輸出税を以てし又之に許すに同一の奨励金並に税金払戻のことを以てすへし
第八条 政府、官吏、公吏、一私人、会社若は何等施設の名義を以てするか又は其の利益の為めに課せらるる所の頓税、港税、水先案内料、燈■税、検疫費其の他之と同類の税金は其の性質並に名義の如何に拘わらす同一の条件を以て同様の場合に於て内国船舶一般若は最恵国船舶に課するものに非されは両締盟国の一方は其の領土内の港に於て之を他の一方の船舶に課せさるへし此の如き均等の取扱は両国の船舶か何れの地或は港より来り又何れの所に往くものたりとも相互同一たるへきものとす
第九条 両締盟国の一方の領土内の海港、海湾、船梁、川河或は其の他の碇泊所に於て船舶の繋留又貨物の船積、船卸に関する一切の事項に就ては内国船舶に許与せらる特典は均しく他の一方の締盟国の船舶にも許与せさるへし但し本件に関しても亦両締盟国の目的は両国の船舶に対し互に全く均等の取扱を施すに在るものとす
第十条 両締盟国の沿海貿易は本条約に於て規定するの限に在らす各其の法律、勅令及規則に従ひ之を規定すへきものとす然れとも日本国皇帝陛下の領土内に於ける合衆国人民又は合衆国の領土内に於ける日本国臣民は此の事項に関しては各右法律、勅令及規則を以て他の外国臣民或は人民に許与し若し許与せらるへき諸権利を享有するものとす
合衆国の領土内に二個以上の港へ仕向けたる荷物を外国に於て積載したる日本国船舶及日本国皇帝陛下の領土内に二個以上の港へ仕向けたる荷物を外国に於て積載したる合衆国船舶は外国貿易を許されたる仕向港の一に於て其の積荷の一部を陸揚し而して其の最初に積載したる荷物の剰余を陸揚する為め他の一港若は数港へ進航することを得へし但し常に両国の法律及税関規則に従ふへきものとす
但し日本国政府は本条約の期限間是迄の通り合衆国船舶か帝国の現開港場間に積荷を運搬することを許すことを承諾す尤大阪、新潟及び夷港は此の限に在らす
第十一条 両締盟国の一方の軍艦或は商船にして暴風又は其の他の危難に遭遇し避難の為め已むを得す他の一方の海港に進入するものは内国船舶の払ふへき税金の外何等の税金を払ふことなく其の港に於て更に艤装を為し一切の需用品を求め再ひ航行するを得へし但し商船の船長にして其の費用を支弁する為め其の積荷の一部を売却するを要する場合には該船長は其の寄港地の規則及税目を遵守すへきものとす
両締盟国の一方の軍艦或は商船にして他の一方の沿岸に於て浅瀬に乗上け或は難破したるときは地方官より其の事件の生したる地方に在る所の総領事、領事、副領事又は代弁領事へ其の旨を通知すへし但し若其の地方に領事官の駐在せさるときは最近地方の総領事、領事、副領事又は代弁領事へ通知すへし
日本国皇帝陛下の領海にて難破し若は海岸に乗上けたる合衆国船舶の救助に関する一切の手続は日本国法律、勅令及規則に従て之を為すへく又相互の主義に基き合衆国の領海にて難破し若は海岸に乗上けたる日本船籍に関する一切の救助の処分は合衆国法律に従て之を為すへし
右難破若は乗上けたる船舶並に其の器具及び其の他一切の附属品及該船舶より救上けたる貨物並に商品及右等の諸物件にして海中に投棄せられたるもの又は之を売却したるときは其の取得金、並に該遭難船内に発見せられたる一切の書類は右船舶の持主或は代理人より要求するときは之に引渡すへし右持主或は代理人の現場に在らさるときは内国法律に定めたる期限内に当該総領事、領事、副領事或は代弁領事より請求あれは之を引渡すへし而して右領事官、持主或は代理人は内国船舶難破の場合に於て払ふへき所の物品保存費並に難破救助費及其の他の費用のみを払ふへきものとす
難破船より救上けたる貨物及商品は消費の為めに通関手続を為すものに非されは一切の関税を免除すへし但し消費の為めに売捌く場合には普通の関税を納むるを要するものとす
両締盟国の一方の臣民或は人民に属する船舶にして他の一方の領土内に於て浅瀬に乗上け或は難破したるとき其の持主、船長若は持主代理人不在の場合には当該総領事、領事、副領事若は代弁領事は其の自国臣民或は人民に必要の補助を与ふる為め職権上の助力を為すを許さるへきものとす此の規定は持主、船長若は他の代理人現に其の場に在るときと雖も右様の補助を与ふるを請求する場合には亦適用すへきものとす
第十二条 本条約に於ては日本国の国法に従ひ日本国船舶と見做さるへき一切の船舶は之を日本国船舶と見認め又合衆国の国法に従ひ合衆国船舶と見做さるへき一切の船舶は之を合衆国船舶と見認むへし
第十三条 両締盟国の一方の領土内に駐在する他の一方の総領事、領事、副領事及代弁領事は自国の脱船人を取戻す為め法律の許す所の補助は之を地方官より受くへきものとす
但し海員か其の各自の所属国に於て脱船したるときは此の規定を適用せさるものと知るへし
第十四条 両締盟国は其の一方の通商及び航海を他の一方に於て総て最恵国の基礎に置く主意を有するに因り通商及航海に関する一切の事項に関し其の一方より別国の政府、船舶、臣民或は人民に現に許与し或は将来許与すへき一切の特典、殊遇若は免除は他の一方の政府、船舶、臣民或は人民にも若し別国へ無報酬に許与したるときは無報酬にて又若し条件を附して許与したるときは其れと均一の条件を附して之を許与すへきことを両締盟国に於て約定す
第十五条 両締盟国の一方は他の一方の海港、都府及其の他の場所に総領事、領事、副領事、領事代及代弁領事を置くことを得へし但し領事館の駐在を認許するに便宜ならさる場所は此の限に在らす
然れとも右の制限は他の諸外国に対し之を適用するに非されは一方の締盟国に対して之を適用するを得さるものとす
総領事、領事、副領事、領事代及代弁領事は一切の職務を執行することを得且其の在留国に於て最恵国の領事館に現に許与し或は将来許与せらるへき一切の特典、特権及免除は総て之を享有すへきものとす
第十六条 両締盟国の一方の臣民或は人民は他の一方の領土内に於て法律に定むる所の手続を履行するときは専売特許、商標及意匠に関し内国臣民或は人民と同一の保護を受くへし
第十七条 両締盟国は左の取極に同意す
日本国に在る各外国人居留地は全く其の所在の日本国市区に編入し爾後日本国地方組織の一部となるへし
然る上は日本国当該官吏は之に関して其の地方施政上の責任義務を悉皆負担すへし又之と同時に右外国人居留地に属する共有資金若は財産あるときは之を右日本国官吏へ引渡すへきものとす
尤前記外国人居留地を日本国市区に編入の場合には該居留地内にて現に因て以て財産を所持する所の現在永代借地券は有効のものと確認せらるへし而して右財産に対しては右借地券に載せたる条件の外は別に何等の条件をも附せさるへし但し借地券中に領事官とあるは総て日本国当該官吏を以てこれに代ゆへきことと知るへし
外国人居留地公共の目的の為めに無借料にて既に貸与したる各地所は永代に保存せらるへし且該地所にして最初貸与したる時の目的に使用せらるる限は総ての租税及び徴収金を免すへし但し土地収用権には従ふへきものとす
第十八条 本条約は其の実施の日より両締盟国間に現存する嘉永七年三月三日即千八百五十四年三月三十一日締結の和親条約安政五年六月十九日即千八百五十八年七月二十九日締結の修好通商条約慶応二年五月十三日即千八百六十六年六月二十五日締結の改税約書明治十一年七月二十五日即千八百七十八年七月二十五日締結の約書及之に附属する一切の諸約定に代はるへきものとす而して該条約及諸約定は右期日より総て無効に帰し随て合衆国か日本帝国に於て執行したる裁判権及該権に属し又は其の一部として合衆国人民か享有せし所の特典、特権及免除は本条約実施の日より別に通知をなさす全然消滅に帰したるものとす而して此等の裁判管轄権は本条約実施後に於ては日本帝国裁判所に於て之を執行すへし
第十九条 本条約は明治三十二年七月十七日より実施せらるへきものとす而して其の日より十二個年間効力を有するものとす
両締盟国の一方は本条約実施の日より十一箇年を経過したる後は何時たりとも本条約を終了せむと欲する旨を他の一方へ通知するの権利を有すへし而して此の通知を為したる後十二箇月を経過したるときは本条約は消滅に帰すへきものとす
第二十条 本条約は両締盟国に於て之を批准し其の批准は本条約調印後六箇月以内に可成速に東京又は華盛頓に於て交換すへし
右証拠として各全権委員は之に記名調印するものなり
明治二十七年十一月二十二日華盛頓に於て本書二通を作る
栗野慎一郎 印
ウオルター、キユー、グレシヤム 印


 議定書
日本国皇帝陛下の政府及亜米利加合衆国政府は本日調印せし通商航海条約の外に双方に関する特別の事項を規定すること両国の利益上便宜なるを以て双方の全権委員は左の約定に同意せり
第一 両締盟国に於ては本日調印したる通商航海条約批准交換後一箇月の後は合衆国人民か日本国に輸入する貨物及商品に関し現今日本国に於て実施する所の輸入税目は無効に帰すへきものとす而して右税目の無効に帰したる後は日本国に輸入する合衆国の領土の生産若は製造に係る貨物又は商品に対しては其の時現に行はるる所の日本国普通関税則を適用すへし但し目下両締盟国間に現存する嘉永七年三月三日の条約の有効なる間は其の第九条の規定に準拠し又右嘉永七年三月三日の条約の無効に帰したる後は本日調印したる条約第四条及第十四条の規定に準拠すへきものとす然れとも日本国政府に於て純良ならさる薬材、製薬、食物若は飲料、猥褻の印刷物、図書、書籍、紙牌、石版若は其の他の彫刻画、写真及その他総ての猥褻の物品、日本帝国の専売特許、商標及版権に関する法律に違背する物品又は其の他衛生、公安若は風俗に関し危害を生すへき物品の輸入を制限し若は禁止するの権利は本議定書の為め制限せらるることなかるへきものとす
第二 日本国政府は合衆国人民に対し内国を開く迄は現行の旅券方法を拡張することに同意す即合衆国人民か在東京同国公使若は日本国開港場に駐在する合衆国領事官よりの紹介証書を所持して出願するに於ては十二個月以内の期限間国内何れの地へも到ることを得へき旅券を東京外務省若は開港場所在地方長官より交付すへし但し帝国の内地に旅行する合衆国人民に関する現行規定は之を保続すへきものと知るへし
第三 本議定書は本日調印したる通商航海条約と同時に両締盟国政府に提供すへし而して右条約批准せらるるときは本議定書に掲載する所の諸約定も別に正式の批准を要せすして亦両締盟国政府の可認せしものと看做すへきことを約す又本議定書は前記条約の無効に帰すると同時に終了すへきことを約す
右証拠として各全権委員は之に記名調印するものなり
 明治二十七年十一月二十二日華盛頓に於て作る
  栗野慎一郎 印
  ウオルター、キユー、グレシヤム 印
(日本公文書館)(18941122日米通商航海条約.PDF)

コメント

このブログの人気の投稿

日清修好条規 1871年09月13日

内容見直し点:口語訳中途 修好条規(口語訳、前文署名省略) 第一条 この条約締結のあとは、大日本国と大清国は弥和誼を敦うし、天地と共に窮まり無るべし。又両国に属したる邦土も、各礼を以て相待ち、すこしも侵越する事なく永久安全を得せしむべし。 第二条 両国好を通ぜし上は、必ず相関切す。若し他国より不公及び軽藐する事有る時、其知らせを為さば、何れも互に相助け、或は中に入り、程克く取扱い、友誼を敦くすべし。 第三条 両国の政事禁令各異なれば、其政事は己国自主の権に任すべし。彼此に於て何れも代謀干預して禁じたる事を、取り行わんと請い願う事を得ず。其禁令は互に相助け、各其商民に諭し、土人を誘惑し、聊違犯あるを許さず。 第四条 両国秉権大臣を差出し、其眷属随員を召具して京師に在留し、或は長く居留し、或は時々往来し、内地各処を通行する事を得べし。其入費は何れも自分より払うべし。其地面家宅を賃借して大臣等の公館と為し、並びに行李の往来及び飛脚を仕立書状を送る等の事は、何れも不都合がないように世話しなければならない。 第五条 両国の官位何れも定品有りといえども、職を授る事各同じからず。因彼此の職掌相当する者は、応接及び交通とも均く対待の礼を用ゆ。職卑き者と上官と相見るには客礼を行い、公務を辨ずるに付ては、職掌相当の官へ照会す。其上官へ転申し直達する事を得ず。又双方礼式の出会には、各官位の名帖を用う。凡両国より差出したる官員初て任所に到着せば、印証ある書付を出し見せ、仮冒なき様の防ぎをなすべし。 第六条 今後両国を往復する公文について、清国は漢文を用い、日本国は日本文を用いて漢訳文を副えることとする。あるいはただ漢文のみを用い、その記載に従うものとする。 (これ以下まだ) 第七条 両国好みを通ぜし上は、海岸の各港に於て彼此し共に場所を指定め、商民の往来貿易を許すべし。猶別に通商章程を立て、両国の商民に永遠遵守せしむべし。 第八条 両国の開港場には、彼此何れも理事官を差置き、自国商民の取締をなすべし。凡家財、産業、公事、訴訟に干係せし事件は、都て其裁判に帰し、何れも自国の律例を按して糾辨すべし。両国商民相互の訴訟には、何れも願書体を用う。理事官は先ず理解を加え、成丈け訴訟に及ばざる様にすべし。其儀能わざる時は、地方官に掛合い双方出会し公平に裁断すべし。尤盗賊欠落等の事件は、両国の地方官より

ダンバートン・オークス提案(一般的国際機構設立に関する提案) 1944年10月09日

 ダンバートン・オークス提案(一般的国際機構設立に関する提案)(訳文)     一般的国際機構設立に関する提案 (「ダンバートン、オークス」会議の結果「ソ」連邦、米国、英国及重慶政権に依り提案せられ千九百四十四年十月九日発表せられたるもの) (本提案の英文は千九百四十四年十月十一日附「モスコー、ニュース」より之を採り「ストックホルム」電報等に依り長短相補ひたるものなり) 「国際連合」なる名称の下に一の国際機構設立せらるべく其の憲章は左の提案を具現するに必要なる規定を掲ぐべし    第一章 目的 本機構の目的は左の如くなるべし 一、国際平和及安寧を保持すること、右目的の為平和に対する脅威の防止及除去並に侵略行為又は他の平和侵害行為の抑圧を目的とする効果的且集団的措置を執ること及平和の侵害に至るの虞ある国際紛争を平和的方法に依り調整又は解決すること 二、各国間の友好関係を発展せしめ且世界平和を強化すべき他の適当なる措置を執ること 三、各国間の経済的、社会的及他の人道上の問題の解決の為国際協力を完成すること及 四、右共同目的完成の為各国の行動を調整すべき中心たるべきこと    第二章 原則 第一章に掲げたる目的を遂行せんが為本機構及其の締盟国は以下の原則に従ひ行動すべし 一、本機構は一切の平和愛好国の主権平等の原則に其の基礎を置くものとす 二、本機構の一切の締盟国は締盟国全部に対し締盟国たるの地位に基く権利及利益を保障する為憲章に従ひ負担したる義務を履行することを約す 三、本機構の一切の締盟国は其の紛争を国際平和及安寧を危殆ならしめざるが如き平和的方法に依り解決すべきものとす 四、本機構の一切の締盟国は其の国際関係に於て本機構の目的と両立せざる如何なる方法に於ても脅威又は兵力の行使を避くるものとす 五、本機構の一切の締盟国は本機構が憲章の規定に従ひ執るべき如何なる行動に於ても之に対し有らゆる援助を与ふるものとす 六、本機構の一切の締盟国は本機構が防遏的又は強制的行動を執行中なる如何なる国家に対しても援助を与ふることを避くるものとす 本機構は、国際平和及安寧保持に必要なる限り本機構の非締盟国が右原則に従ひ行動することを確実ならしむべし    第三章 締盟国 一切の平和愛好国は本機構の締盟国たり得べし    第四章 主要機関 一、本機構は其の主要機関として左記を有すべし  イ

第二次近衛声明(東亜新秩序建設の声明) 1938年11月03日

 第二次近衛声明(東亜新秩序建設の声明)                     (昭和十三年十一月三日)  今や 陛下の御稜威に依り帝国陸海軍は、克く広東、武漢三鎮を攻略して、支那の要域を戡定したり。国民政府は既に地方の一政権に過ぎず。然れども、尚ほ同政府にして抗日容共政策を固執する限り、これが潰滅を見るまで、帝国は断じて矛を収むることなし。  帝国の冀求する所は、東亜永遠の安定を確保すべき新秩序の建設に在り。今次征戦究極の目的亦此に存す。  この新秩序の建設は日満支三国相携へ、政治、経済、文化等各般に亘り互助連環の関係を樹立するを以て根幹とし、東亜に於ける国際正義の確立、共同防共の達成、新文化の創造、経済結合の実現を期するにあり。是れ実に東亜を安定し、世界の進運に寄与する所以なり。  帝国が支那に望む所は、この東亜新秩序建設の任務を分担せんことに在り。帝国は支那国民が能く我が真意を理解し、以て帝国の協力に応へむことを期待す。固より国民政府と雖も従来の指導政策を一擲し、その人的構成を改替して更生の実を挙げ、新秩序の建設に来り参ずるに於ては敢て之を拒否するものにあらず。  帝国は列国も亦帝国の意図を正確に認識し、東亜の新情勢に適応すべきを信じて疑はず。就中、盟朋諸国従来の厚誼に対しては深くこれを多とするものなり。  惟ふに東亜に於ける新秩序の建設は、我が肇国の精神に淵源し、これを完成するは、現代日本国民に課せられたる光栄ある責務なり。帝国は必要なる国内諸般の改新を断行して、愈々国家総力の拡充を図り、万難を排して斯業の達成に邁進せざるべからず。  茲に政府は帝国不動の方針と決意とを声明す。 (国立公文書館:「近衛首相演述集」(その二)/1 第一章 「声明、告諭、訓令、訓辞」 B02030031600)