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三国干渉(各国公使覚書報告) 1895年04月23日

三国干渉(原文の訳文)


 露國公使覺書報告ノ件
     林外務次官
陸奥外務大臣
佐藤外務書記官
本邦駐箚露國公使ヨリ差出シタル覚書の英訳文左ノ如シ
 露國皇帝陛下ノ政府ハ日本ヨリ淸國ニ向テ求メタル媾和條件ヲ査閱スルニ其要求ニ係ル遼東半島ヲ日本ニテ所有スルコトハ常ニ淸國ノ都ヲ危フスルノミナラズ之ト同時ニ朝鮮國ノ獨立ヲ有名無實トナスモノニシテ右ハ將來永ク極東永久ノ平和ニ對シ障害ヲ與フルモノト認ム隨テ露國政府ハ日本國皇帝陛下ノ政府ニ向テ重テ其誠實ナル友誼ヲ表センカ爲メ茲ニ日本國政府ニ勸吿スル遼東半島ヲ確然領有スルコトヲ放棄スヘキコトヲ以テス 
露國公使ハ確然ナル語詞ニ向テ特ニ重キヲ置クノ語気アリ


 独國公使覺書報告ノ件
     林外務次官
四月廿三日午後八時四十五分発
電送第三四八号
 舞 子
  陸奥外務大臣
四月廿三日午後八時四十五分発
電送第三四九号
 廣 島
  佐藤外務書記官
(伊藤伯へ)佐藤書記官ヘノ分ノミ
独逸公使ハ面会の節日本文ニテ左の通リ覚書ヲ読上ケタリ本國政府ノ訓令ニ從テ左ノ宣言ヲ致シマス
獨逸國政府カ日淸媾和ノ條件ヲ見レハ貴國ヨリ請求シタル遼東ノ所有ハ淸國ノ都府ヲシテ何時迄モ不安全ノ位地ニ置キ且朝鮮ノ獨立ヲモ水泡ニ屬サセ依テ東洋平和ノ永續ノ妨ケニナルコトデアルト認メナケレハナリマセヌ夫故ニ貴國政府カ遼東ノ永久ナル所有ヲ斷念ナサル樣ニ本政府ガ御勸吿致シマス
此ノ宣言ニ付キマシテ次ノコトヲ申上ル樣ニ云ヒ付ケラレマシタ
現今日淸事件ノ最初ヨリ本國政府カ貴國ニ對シテ其懇親ナル心ノ證據ヲ顯ハシタル唯一度ノ事デナイト存ジテ居リマス御承知ノ通リニ昨年十月七日ニモ英國政府ガ歐洲各國ニ日淸事件ニ干涉スルコトヲ申込ンダガ其節獨逸國ガ日本國ニ對シテノ懇篤ニ依テ干涉ヲ斷リマシタ夫カラ又當年三月八日ヲ以テ本公使ガ本國政府ノ命令ニ從テ貴國政府ガ夥多ノ請求ヲ爲サラナイデ成ルベク早ク媾和ヲ結ブ樣ニ御勸吿致シマシタ其時ニ申上ケマシタノハ歐洲ノ諸國ガ淸國ノ願ヒニ應ジテ干涉致スカモ計ラレマセヌト云フコトニ依テ日本國ハ若シ夥多ノ請求ヲセズシテ早速媾和條約ヲ締結ナサルナラ却テ其方ガ利益ガ有ルデアロウト云フコトデゴサイマシタ夫レニ續テ日本國若シ大陸ノ土地ノ讓與ヲ要求スレバ之レハ最モ干涉ヲ惹起スヘキ要求デアルダロウト申述マシテモ貴國デハ此ノ利己心ナキ勸吿ニ應ジマセンデゴザイマシタ 
現在ノ日淸媾和ノ條件ハ全ク度ニ過キテ歐洲諸國ノ利益上ニト並ニ譬幾分カハ少ナシト雖モ亦獨逸國ノ利益上ニモ害ガアルト認マス夫レ故ニ現今ハ本國皇帝陛下ノ政府モ倶ニ抗議ヲ提出シナケレバナリマセヌ且ツ必要ガアル場合ニハ其抗議ヲシテ有效ニナラシメルコトモアリマシヨウ三國ニ對スル戰ハ所詮日本國ニ望ミノナイコデテアルガ故ニ貴國此事件ニ付キマシテハ讓ルコトガ出來ナイコトハナカロウト存シテ居リマス尙ホ日本政府ガ名譽ヲ失フコトナクシテ今ノ地位ヨリ退ゾクコトノ途ヲ講スル爲メニ「コンフエレンス」ヲ開ク等ノコトヲ望マルレハ其旨ヲ電報ニテ本國政府へ送レト云フ內訓ヲモ受ケテ居リマス


 佛國公使覺書報告ノ件
     林外務次官
陸奥外務大臣
佐藤外務書記官
佛國公使ヨリ差出シタル覚書の英訳文左ノ如シ
 佛蘭西共和國政府ノ意見ニテハ遼東半島ヲ領有スルコトハ淸國ノ都ヲ危フシ朝鮮國ノ獨立ヲ有名無實ニ歸セシメ且ツ永ク極東ノ平和ニ對シ障害ヲ與フルモノナリトス 
佛蘭西共和國政府ハ重ネテ茲ニ日本帝國政府ニ對スル友情ヲ彰表セント欲スルカ故ニ帝國政府ニ向テ該半島ヲ確然所有スルコトヲ放棄アリ度旨友誼上ノ勸吿ヲ與フルコトハ佛國政府ノ義務ナリト思考ス 
(外務省日本外交文書デジタルアーカイブ:第28巻第2冊12 三国干渉一件P9-)

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