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ポーツマス条約(日露講和条約) 1905年09月05日

内容見直し点:追加約款は口語訳してない

ポーツマス条約(口語訳)

第一条 日本国皇帝陛下と全ロシア国皇帝陛下との間及び両国並びに両国臣民の間に将来平和及び親睦あるべし。
第二条 ロシア帝国政府は、日本国が韓国において政事上、軍事上及び経済上の卓絶なる利益を有することを承認し、日本帝国政府が韓国において必要と認める指導、保護及び監理の措置をとるにあたりこれを阻害し、またはこれに干渉しないことを約する。
両締約国は一切誤解の原因を避ける為、ロシアと韓国との国境においてロシア又は韓国の領土の安全を侵害するような何ら軍事上の措置を執らないことに同意する。
第三条 日本国及びロシア国は互いに以下の事を約する。
一 本条約に付属する追加約款第一の規定に従い、遼東半島租借権がその効力を及ぼす地域以外の満洲より全面的かつ同時に撤兵すること
二 前記地域を除くほか、現に日本国又はロシア国の軍隊において占領し又はその監理下にある満洲全部を挙げて、全面的に清国専属の行政に還付すること
ロシア帝国政府は、清国の主権を侵害し又は機会均等主義と相容れない何らの領土上の利益又は優先的若しくは専属的譲与を満洲において有しないことを声明する。
第四条 日本国及びロシア国は、清国が満洲の商工業を発達せしむるがため列国に共通する一般の措置を執るによりこれを阻害せざることを互いに約する。
第五条 ロシア帝国政府は清国政府の承諾をもって、旅順口、大連並びにその付近の領土及び領水の租借権及び当該租借権に関連し又はその一部を組成する一切の権利、特権及び譲与を日本帝国政府に移転譲渡する。ロシア帝国政府はまた前記租借権力がその効力を及ぼす地域における一切の公共営造物及び財産を日本帝国政府に移転譲渡する。
両締約国は前記規定に係る清国政府の承諾を得べきことを互いに約する。
日本帝国政府においては、前記地域におけるロシア国臣民の財産権が完全に尊重されるべきことを約する。
第六条 ロシア帝国政府は長春(寛城子)旅順口間の鉄道及びその一切の支線並びに同地方においてこれに付属する一切の権利、特権及び財産及び同地方において当該鉄道に属し又はその利益のために経営されている一切の炭坑を補償を受けることなくかつ清国政府の承諾をもって日本帝国政府に移転譲渡すべきことを約する。
両締約国は前記規定に係る清国政府の承諾を得べきことを互いに約する。
第七条 日本国及びロシア国は満洲における各自の鉄道を全く商工業の目的に限り経営し、決して軍略の目的を以ってこれを経営しないことを約する。
当該制限は、遼東半島租借権とその効力を及ぼす地域における鉄道に摘要しないことを知るべし。
第八条 日本帝国政府及びロシア帝国政府は、交通及び運輸を増進し、かつこれを便易ならしめる目的をもって満洲におけるその接続鉄道業務を規定せんがため、なるべく速やかに別約を締結すべし。
第九条 ロシア帝国政府は薩哈嗹島南部(南樺太)及びその付近における一切の島嶼における各自の領地内に堡塁その他これに類する軍事上工作物を築造しないことに互いに同意する。また両国は宗谷海峡及び韃靼海峡(間宮海峡)の自由航海を妨害するような何らの軍事上の措置を執らないことを約する。
第十条 日本国に譲与された地域の住民であるロシア国臣民については、その不動産を売却して本国に退去する自由を留保する。但し当該ロシア国臣民において譲与地域に在留すると欲するときは日本国の法律及び管轄権に服従することを条件として完全にその職業に従事し、かつ財産権を行使するにおいて支持保護されるものとする。日本国は政事上又は行政上の権能を失いたる住民に対し前記地域における居住権を撤回し、又はこれを当該地域より放逐すべき充分の自由を有する。但し、日本国は前記住民の財産権が完全に尊重されるべきことを約する。
第十一条 ロシア国は、日本海、オホーツク海及びベーリング海に接するロシア国領地の沿岸における漁業権を日本国臣民に許与せんがため日本国と協定をなすべきことを約する。
前項の約束は、前記方面においてすでにロシア国又は外国の臣民に属するところの権利に影響を及ぼさないことに双方は同意する。
第十二条 日露通商航海条約は戦争のため廃止されたるをもって日本帝国政府及びロシア帝国政府は現下の戦争以前に効力を有したる条約を基礎として新たに通商航海条約を締結するに至るまでの間、両国通商関係の基礎として相互に最恵国の地位における待遇を与える方法を採用すべきことを約する。そして輸入税及び輸出税、税関手続、通過税及び屯税並びに一方の代弁者、臣民及び船舶に対する他の一方の領土における入国の許可及び待遇はいずれも前記の方法によるものとする。
第十三条 本条約実施のあと、なるべく速やかに一切の俘虜は互いにこれを還付するものとする。日本帝国政府及びロシア帝国政府は各俘虜を引き受けるべき一名の特別委員を任命すべし。一方の政府の収容に係る一切の俘虜又は他の一方の政府の特別委員又は正当にその委任を受けたる代表者に引渡し同委員又はその代表者においてこれを受領すべくそしてその引渡し及び受領は引渡し国よりあらかじめ受領国の特別委員に通知すべき便宜の人員及び引渡し国における便宜の出入地においてこれをおこなうべし。
日本国政府及びロシア国政府は俘虜引渡し完了のあとなるべく速やかに俘虜の捕獲又は投降の日より死亡又は引渡しの時にいたるまでこれが保護休養のために書く負担したる直接費用の計算書を互いに提出すべし。同計算書交換の後ロシア国はなるべく速やかに日本国が前記の用途に支出したる実際の金額とロシア国が同様に支出したる実際の金額との差額を日本国に払い戻すべきことを約する。
第十四条 本条約は日本国皇帝陛下及び全ロシア国皇帝陛下において批准されるべきとする。当該批准はなるべく速やかにかついかなる場合においても本条約調印の日より50日以内に東京駐在フランス公使及びセントペテルブルグ駐在アメリカ合衆国大使を経て日本帝国政府及びロシア帝国政府に各これを通告すべきとする。そしてその終の通告の日より本条約は全部を通じて完全の効力を生ずるべき正式の批准交換はなるべく速やかにワシントンにおいてこれを行うべし。
第十五条 本条約は英語及びフランス語をもって各2通を作りこれに調印すべし。その各本文は完全に符号するといえどもその解釈に差異がある場合にはフランス語によるべし。
右証拠として、両国全権委員はここに本講和条約に記名調印するものである。
明治三十八年九月五日即一千九百五年八月二十三日(九月五日)「ポーツマス」(「ニュー、ハムプシャ」州)においてこれを作る
小村壽太郎
高平小五郎
セルジ、ウヰツテ
ローゼン


日露講和条約(原文)

日本國皇帝陛下及全露西亜國皇帝陛下ハ両國及其ノ人民ニ平和ノ幸福ヲ回復セムコトヲ欲シ講和條約ヲ締結スルコトニ決定シ之カ為ニ日本國皇帝陛下ハ外務大臣従三位勲一等男爵小村壽太郎閣下及亜米利加合衆國駐剳特命全權公使従三位勲一等高平小五郎閣下ヲ全露西亜國皇帝陛下ハ「プレシデント、オヴ、ゼ、コムミッチー、オヴ、ミニスタース、オヴ、ゼ、エムパイア、オヴ、ロシア」「セクレタリー、オヴ、ステート」「セルジ、ウヰッテ」閣下及亜米利加合衆國駐剳特命全權大使「マスター、オヴ、ゼ、イムピリアル、コールト、オヴ、ロシア」男爵「ローマン、ローゼン」閣下ヲ各其ノ全權委員ニ任命セリ因テ各全權委員ハ互ニ其ノ委任状ヲ示シ其ノ良好妥當ナルヲ認メ以テ左ノ諸條款ヲ協議決定セリ
 第一條
日本國皇帝陛下ト全露西亜國皇帝陛下トノ間及両國並両國臣民ノ間ニ將来平和及親睦アルヘシ
 第二條
露西亜帝國政府ハ日本國カ韓國ニ於テ政事上、軍事上及経済上ノ卓絶ナル利益ヲ有スルコトヲ承認シ日本帝國政府カ韓國ニ於テ必要ト認ムル指導、保護及監理ノ措置ヲ執ルニ方リ之ヲ阻礙シ又ハ之ニ干渉セサルコトヲ約ス
韓國ニ於ケル露西亜國臣民ハ他ノ外國ノ臣民又ハ人民ト全然同樣ニ待遇セラルヘク之ヲ換言スレハ最惠國ノ臣民又ハ人民ト同一ノ地位ニ置カルヘキモノト知ルヘシ
両締約國ハ一切誤解ノ原因ヲ避ケムカ為露韓間ノ國境ニ於テ露西亜國又ハ韓國ノ領土ノ安全ヲ侵迫スルコトアルヘキ何等ノ軍事上措置ヲ執ラサルコトニ同意ス
 第三條
日本國及露西亜國ハ互ニ左ノ事ヲ約ス
 一 本條約ニ附屬スル追加約款第一ノ規定ニ従ヒ遼東半島租借權カ其ノ效力ヲ及ホス地域以外ノ満洲ヨリ全然且同時ニ撤兵スルコト
 二 前記地域ヲ除クノ外現ニ日本國又ハ露西亜國ノ軍隊ニ於テ占領シ又ハ其ノ監理ノ下ニ在ル満洲全部ヲ擧ケテ全然清國專属ノ行政ニ還附スルコト
露西亜帝國政府ハ清國ノ主權ヲ侵害シ又ハ機會均等主義ト相容レサル何等ノ領土上利益又ハ優先的若ハ專属的讓與ヲ満洲ニ於テ有セサルコトヲ聲明ス
 第四條
日本國及露西亜國ハ清國カ満洲ノ商工業ヲ發達セシメムカ為列國ニ共通スル一般ノ措置ヲ執ルニ方リ之ヲ阻礙セサルコトヲ互ニ約ス
 第五條
露西亜帝國政府ハ清國政府ノ承諾ヲ以テ旅順口、大連並其ノ附近ノ領土及領水ノ租借權及該租借權ニ關聯シ又ハ其ノ一部ヲ組成スル一切ノ權利、特權及讓與ヲ日本帝國政府ニ移轉讓渡ス露西亜帝國政府ハ又前記租借權カ其ノ效力ヲ及ホス地域ニ於ケル一切ノ公共營造物及財産ヲ日本帝國政府ニ移轉讓渡ス
両締約國ハ前記規定ニ係ル清國政府ノ承諾ヲ得ヘキコトヲ互ニ約ス
日本帝國政府ニ於テハ前記地域ニ於ケル露西亜國臣民ノ財産權カ完全ニ尊重セラルヘキコトヲ約ス
 第六條
露西亜帝國政府ハ長春(寛城子)旅順口間ノ鐵道及其ノ一切ノ支線並同地方ニ於テ之ニ附属スル一切ノ權利、特權及財産及同地方ニ於テ該鐵道ニ属シ又ハ其ノ利益ノ為ニ經營セラルル一切ノ炭坑ヲ補償ヲ受クルコトナク且清國政府ノ承諾ヲ以テ日本帝國政府ニ移轉讓渡スヘキコトヲ約ス
両締約國ハ前記規定ニ係ル清國政府ノ承諾ヲ得ヘキコトヲ互ニ約ス
 第七條
日本國及露西亜國ハ満洲ニ於ケル各自ノ鐵道ヲ全ク商工業ノ目的ニ限リ経営シ決シテ軍略ノ目的ヲ以テ之ヲ経営セサルコトヲ約ス
該制限ハ遼東半島租借權カ其ノ效力ヲ及ホス地域ニ於ケル鐵道ニ適用セサルモノト知ルヘシ
 第八條
日本帝國政府及露西亜帝國政府ハ交通及運輸ヲ増進シ且之ヲ便易ナラシムルノ目的ヲ以テ満洲ニ於ケル其ノ接續鐵道業務ヲ規定セムカ為成ルヘク速ニ別約ヲ締結スヘシ
 第九條
露西亜帝國政府ハ薩哈嗹島南部及其ノ附近ニ於ケル一切ノ島嶼並該地方ニ於ケル一切ノ公共營造物及財産ヲ完全ナル主権ト共ニ永遠日本帝國政府ニ讓與ス其ノ讓與地域ノ北方境界ハ北緯五十度ト定ム該地域ノ正確ナル境界線ハ本條約ニ附属スル追加約款第二ノ規定ニ従ヒ之ヲ決定スヘシ
日本國及露西亜國ハ薩哈嗹島又ハ其ノ附近ノ島嶼ニ於ケル各自ノ領地内ニ堡壘其ノ他之ニ類スル軍事上工作物ヲ築造セサルコトニ互ニ同意ス又両國ハ各宗谷海峡及韃靼海峡ノ自由航海ヲ妨礙スルコトアルヘキ何等ノ軍事上措置ヲ執ラサルコトヲ約ス
 第十條
日本國ニ讓與セラレタル地域ノ住民タル露西亜國臣民ニ付テハ其ノ不動産ヲ賣却シテ本國ニ退去スルノ自由ヲ留保ス但シ該露西亜國臣民ニ於テ讓與地域ニ在留セムト欲スルトキハ日本國ノ法律及管轄權ニ服従スルコトヲ條件トシテ完全ニ其ノ職業ニ従事シ且財産權ヲ行使スルニ於テ支持保護セラルヘシ日本國ハ政事上又ハ行政上ノ權能ヲ失ヒタル住民ニ對シ前記地域ニ於ケル居住權ヲ撤回シ又ハ之ヲ該地域ヨリ放逐スヘキ充分ノ自由ヲ有ス但シ日本國ハ前記住民ノ財産權カ完全ニ尊重セラルヘキコトヲ約ス
 第十一條
露西亜國ハ日本海、「オコーツク」海及「ベーリング」海ニ瀕スル露西亜國領地ノ沿岸ニ於ケル漁業權ヲ日本國臣民ニ許與セムカ為日本國ト協定ヲナスヘキコトヲ約ス
前項ノ約束ハ前記方面ニ於テ既ニ露西亜國又ハ外國ノ臣民ニ属スル所ノ權利ニ影響ヲ及ササルコトニ雙方同意ス
 第十二條
日露通商航海條約ハ戦争ノ為廢止セラレタルヲ以テ日本帝國政府及露西亜帝國政府ハ現下ノ戦争以前ニ效力ヲ有シタル條約ヲ基礎トシテ新ニ通商航海條約ヲ締結スルニ至ルマテノ間両國通商關係ノ基礎トシテ相互ニ最惠國ノ地位ニ於ケル待遇ヲ與フルノ方法ヲ採用スヘキコトヲ約ス而シテ輸入税及輸出税、税關手續、通過税及噸税並一方ノ代辨者、臣民及船舶ニ對スル他ノ一方ノ領土ニ於ケル入國ノ許可及待遇ハ何レモ前記ノ方法ニ依ル
 第十三條
本條約實施ノ後成ルヘク速ニ一切ノ俘虜ハ互ニ之ヲ還付スヘシ日本帝國政府及露西亜帝國政府ハ各俘虜ヲ引受クヘキ一名ノ特別委員ヲ任命スヘシ一方ノ政府ノ收容ニ係ル一切ノ俘虜ハ他ノ一方ノ政府ノ特別委員又ハ正當ニ其ノ委任ヲ受ケタル代表者ニ引渡シ同委員又ハ其ノ代表者ニ於テ之ヲ受領スヘク而シテ其ノ引渡及受領ハ引渡國ヨリ豫メ受領國ノ特別委員ニ通知スヘキ便宜ノ人員及引渡國ニ於ケル便宜ノ出入地ニ於テ之ヲ行フヘシ
日本國政府及露西亜國政府ハ俘虜引渡完了ノ後成ルヘク速ニ俘虜ノ捕獲又ハ投降ノ日ヨリ死亡又ハ引渡ノ時ニ至ルマテ之カ保護給養ノ為ニ各負擔シタル直接費用ノ計算書ヲ互ニ提出スヘシ同計算書交換ノ後露西亜國ハ成ルヘク速ニ日本國カ前記ノ用途ニ支出シタル實際ノ金額ト露西亜國カ同樣ニ支出シタル實際ノ金額トノ差額ヲ日本國ニ拂戻スヘキコトヲ約ス
 第十四條
本條約ハ日本國皇帝陛下及全露西亜國皇帝陛下ニ於テ批准セラルヘシ該批准ハ成ルヘク速ニ且如何ナル場合ニ於テモ本條約調印ノ日ヨリ五十日以内ニ東京駐剳佛蘭西國公使及聖彼得堡駐剳亜米利加合衆國大使ヲ経テ日本帝國政府及露西亜帝國政府ニ各之ヲ通告スヘシ而シテ其ノ終ノ通告ノ日ヨリ本條約ハ全部ヲ通シテ完全ノ效力ヲ生スヘシ正式ノ批准交換ハ成ルヘク速ニ華盛頓ニ於テ之ヲ行フヘシ
 第十五條
本條約ハ英吉利文及佛蘭西文ヲ以テ各二通ヲ作リ之ニ調印スヘシ其ノ各本文ハ全然符合スト雖モ其ノ解釋ニ差異アル場合ニハ佛蘭西文ニ據ルヘシ
右證據トシテ両國全權委員ハ茲ニ本講和條約ニ記名調印スルモノナリ
明治三十八年九月五日即一千九百五年八月二十三日(九月五日)「ポーツマス」(「ニュー、ハムプシャ」州)ニ於テ之ヲ作ル

   小村壽太郎(記名) 印
   高平小五郎(記名) 印
   セルジ、ウヰッテ(記名) 印
   ローゼン(記名) 印


追加約款(原文)
明治三十八年(一九〇五年)九月五日「ポーツマス」ニ於テ記名
明治三十八年(一九〇五年)十月十六日公布

本日附日本國及露西亜國間講和條約第三條及第九條ノ規定ニ従ヒ下名ノ全權委員ハ左ノ追加條款ヲ締結セリ
第一 第三條ニ付
 日本帝國政府及露西亜帝國政府ハ同時ニ且講和條約ノ實施後直ニ満洲ノ地域ヨリ各其ノ軍隊ノ撤退ヲ開始スヘキコトヲ互ニ約ス而シテ講和條約實施ノ日ヨリ十八箇月ノ期間内ニ両國ノ軍隊ハ遼東半島租借地以外ノ満洲ヨリ全然撤退スヘシ
 前面陣地ヲ占領スル両國軍隊ハ最先ニ撤退スヘシ
 両締約國ハ満洲ニ於ケル各自ノ鐵道線路ヲ保護セムカ為守備兵ヲ置クノ權利ヲ留保ス該守備兵ノ數ハ一「キロメートル」毎ニ十五名ヲ超過スルコトヲ得ス而シテ日本國及露西亜國軍司令官ハ前記最大數以内ニ於テ實際ノ必要ニ顧ミ之ヲ使用セラルヘキ守備兵ノ數ヲ雙方ノ合意ヲ以テ成ルヘク少數ニ限定スヘシ
 満洲ニ於ケル日本國及露西亜國軍司令官ハ前記ノ原則ニ従ヒ撤兵ノ細目ヲ協定シ成ルヘク速ニ且如何ナル場合ニ於テモ十八箇月ヲ超ヘサル期間内ニ撤兵ヲ實行セムカ為雙方ノ合意ヲ以テ必要ナル措置ヲ執ルヘシ
第二 第九條ニ付
 両締約國ニ於テ各任命スヘキ同數ノ人員ヨリ成ル境界劃定委員ハ本條約實施後成ルヘク速ニ薩哈嗹島ニ於ケル日本國及露西亜國領地間ノ正確ナル境界ヲ永久ノ方法ヲ以テ實地ニ就キ劃定スヘシ該委員ハ地形ノ許ス限リ北緯五十度ヲ以テ境界線トナスコトヲ要ス若シ何レカノ地點ニ於テ同緯度ヨリ偏倚スルノ必要ヲ認ムルトキハ他ノ地點ニ於ケル對當ノ偏倚ニ依リテ之ヲ填補スヘシ該委員ハ讓與中ニ包含セラルル附近島嶼ノ表及明細書ヲ調製スルノ任ニ當リ且讓與地域ノ境界ヲ示ス地圖ヲ調製シ之ニ署名スヘシ該委員ノ事業ハ両締約國ノ承認ヲ経ルコトヲ要ス
前記追加約款ハ其ノ附属スル講和條約ノ批准ト共ニ批准セラレタルモノト看做サルヘシ
明治三十八年九月五日即千九百五年八月二十三日(九月五日)「ポーツマス」ニ於テ
   小村壽太郎(記名)
   高平小五郎(記名)
   セルジ、ウヰッテ(記名)
   ローゼン(記名) 
(国立公文書館:日露両国講和条約及追加約款・御署名原本・明治三十八年・条約...)

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