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ハーグ陸戦条約(陸戰ノ法規慣例ニ關スル條約) 1907年10月18日

ハーグ陸戦条約(口語訳、前文署名省略)

第一条 締約国はその陸軍軍隊に対し、本条約に付属する陸戦の法規慣例に関する規則に適合する訓令を発するようにしなければならない。
第二条 第一条に掲げる規則及び本条約の規定は交戦国が悉く本条約の当事者になるときに限り、締約国間にのみこれを適用する。
第三条 前記規則の条項に違反した交戦当事者は損害があるときは之が賠償の責任を負うべきものとする。
第四条 本条約は正式に批准されたる上、締約国間の関係においては陸戦の法規慣例に関する1899年07月29日の条約に代わるべきものとする。
第五条 本条約は、なるべく速やかに批准しなければならない。
2 批准書はハーグに寄託する。第一回の批准書寄託はこれに加わる諸国の代表者及びオランダ国政府外務大臣の署名した長所をもってこれを証明する。
3 その後の批准書寄託は、オランダ国政府に宛ててかつ批准書を添付した通告書をもってこれを為すものとする。
4 第一回の批准書寄託に関する調書、前項に掲げたる通告書及び批准書の認証謄本はオランダ国政府より外交上の手続をもって直ちにこれを第二回平和会議に招請される諸国及び本条約に加盟する他の諸国に交付しなければならない。前項に掲げたる場合においては、オランダ国政府は同時に通告書を接受した日を通知するものとする。
第六条 記名国ではない諸国は本条約に加盟することができる。
2 加盟を希望する国は書面をもってその意思をオランダ国政府に通告し、かつ加盟書を送付しこれをオランダ国政府の文庫に寄託しなければならない。
3 オランダ国政府は直ちに通告書及び加盟書の認証謄本をその他の諸国に送付し、かつ同通告書を接受した日を通知しなければならない。
第七条 本条約は、第一回の批准書寄託に加わった諸国に対しては、その寄託の調書の日付より60日の後、又その後に批准しまたは加盟する諸国に対しては、オランダ国政府が同批准書または加盟の通告を接受したときより60日の後にその効力を生じるものとする。
第八条 締約国中本条約を廃棄しようとするときは、書面をもってその旨をオランダ国政府に通告しなければならない。オランダ国政府は直ちに通告書の認証謄本を他の諸国に送付し、かつ同通告書を接受した日を通知しなければならない。
廃棄は、その通告書がオランダ国政府に到達した時より1年後、同通告をなした国に対してのみ効力を生じるものとする。
第九条 オランダ国外務省は帳簿を備え置き、第五条第三項及び第四項により為した批准書寄託の日並びに加盟(第六条第二項)又は廃棄(第八条第一項)の通告を接受した日を記入するものとする。


陸戰ノ法規慣例ニ關スル條約(一部新字体化)

一九〇七年(明四十年)十月十八日海牙ニ於テ調印
一九一一年(明四十四年)十一月六日批准
同年十二月十三日批准書来ル
一九一二年(明四十五年)一月十三日公布

独逸皇帝陛下普魯西國皇帝陛下(以下締約國元首名略)ハ平和ヲ維持シ且諸國間ノ戰争ヲ防止スルノ方法ヲ講スルト同時ニ其ノ所期ニ反シ避クルコト能ハサル事件ノ爲兵力ニ訴フルコトアルヘキ場合ニ付攻究ヲ爲スノ必要ナルコトヲ考慮シ斯ノ如キ非常ノ場合ニ於テモ尚能ク人類ノ福利ト文明ノ駸々トシテ止ムコトナキ要求トニ副ハムコトヲ希望シ之カ爲戰争ニ關スル一般ノ法規慣例ハ一層之ヲ精確ナラシムルヲ目的トシ又ハ成ルヘク戰争ノ惨害ヲ減殺スヘキ制限ヲ設クルヲ目的トシテ之ヲ修正スルノ必要ヲ認メ千八百七十四年ノ比律悉会議ノ後ニ於テ聰明仁慈ナル先見ヨリ出テタル前記ノ思想ヲ體シテ陸戰ノ慣習ヲ制定スルヲ以テ目的トスル諸條規ヲ採用シタル第一囘平和会議ノ事業ヲ或点ニ於テ補充シ且精確ニスルヲ必要ト判定セリ
締約國ノ所見ニ依レハ右條規ハ軍事上ノ必要ノ許ス限努メテ戰争ノ惨害ヲ軽減スルノ希望ヲ以テ定メラレタルモノニシテ交戰者相互間ノ關係及人民トノ關係ニ於テ交戰者ノ行動ノ一般ノ準縄タルヘキモノトス
但シ實際ニ起ル一切ノ場合ニ普ク適用スヘキ規定ハ此ノ際之ヲ協定シ置クコト能ハサリシト雖明文ナキノ故ヲ以テ規定セラレサル総テノ場合ヲ軍隊指揮者ノ擅断ニ委スルハ亦締約國ノ意思ニ非サリシナリ
一層完備シタル戰争法規ニ關スル法典ノ制定セラルルニ至ル迄ハ締約國ハ其ノ採用シタル條規ニ含マレサル場合ニ於テモ人民及交戰者カ依然文明國ノ間ニ存立スル慣習人道ノ法則及公共良心ノ要求ヨリ生スル國際法ノ原則ノ保護及支配ノ下ニ立ツコトヲ確認スルヲ以テ適當ト認ム
締約國ハ採用セラレタル規則ノ第一條及第二條ハ特ニ右ノ趣旨ヲ以テ之ヲ解スヘキモノナルコトヲ宣言ス
締約國ハ之カ爲新ナル條約ヲ締結セムコトヲ欲シ各左ノ全權委員ヲ任命セリ

(全權委員名略)

因テ各全權委員ハ其ノ良好妥當ナリト認メラレタル委任状ヲ寄託シタル後左ノ條項ヲ協定セリ

第一條 締約國ハ其ノ陸軍軍隊ニ對シ本條約ニ附屬スル陸戰ノ法規慣例ニ關スル規則ニ適合スル訓令ヲ発スヘシ
第二條 第一條ニ掲ケタル規則及本條約ノ規定ハ交戰國カ悉ク本條約ノ當事者ナルトキニ限締約國間ニノミ之ヲ適用ス
第三條 前記規則ノ條項ニ違反シタル交戰當事者ハ損害アルトキハ之カ賠償ノ責ヲ負フヘキモノトス交戰當事者ハ其ノ軍隊ヲ組成スル人員ノ一切ノ行爲ニ付責任ヲ負フ
第四條 本條約ハ正式ニ批准セラレタル上締約國間ノ關係ニ於テハ陸戰ノ法規慣例ニ關スル千八百九十九年七月二十九日ノ條約ニ代ルヘキモノトス
 千八百九十九年ノ條約ハ該條約ニ記名シタルモ本條約ヲ批准セサル諸國間ノ關係ニ於テハ依然効力ヲ有スルモノトス
第五條 本條約ハ成ルヘク速ニ批准スヘシ
  批准書ハ海牙ニ寄託ス
  第一囘ノ批准書寄託ハ之ニ加リタル諸國ノ代表者及和蘭國外務大臣ノ署名シタル調書ヲ以テ之ヲ證ス
  爾後ノ批准書寄託ハ和蘭國政府ニ宛テ且批准書ヲ添附シタル通告書ヲ以テ之ヲ爲ス
  第一囘ノ批准書寄託ニ關スル調書、前項ニ掲ケタル通告書及批准書ノ認證謄本ハ和蘭國政府ヨリ外交上ノ手續ヲ以テ直ニ之ヲ第二囘平和会議ニ招請セラレタル諸國及本條約ニ加盟スル他ノ諸國ニ交付スヘシ前項ニ掲ケタル場合ニ於テハ和蘭國政府ハ同時ニ通告書ヲ接受シタル日ヲ通知スルモノトス
第六條 記名國ニ非サル諸國ハ本條約ニ加盟スルコトヲ得
  加盟セムト欲スル國ハ書面ヲ以テ其ノ意思ヲ和蘭國政府ニ通告シ且加盟書ヲ送付シ之ヲ和蘭國政府ノ文庫ニ寄託スヘシ
  和蘭國政府ハ直ニ通告書及加盟書ノ認證謄本ヲ爾餘ノ諸國ニ送付シ且右通告書ヲ接受シタル日ヲ通知スヘシ
第七條 本條約ハ第一囘ノ批准書寄託ニ加リタル諸國ニ對シテハ其ノ寄託ノ調書ノ日附ヨリ六十日ノ後又其ノ後ニ批准シ又ハ加盟スル諸國ニ對シテハ和蘭國政府カ右批准書又ハ加盟ノ通告ヲ接受シタルトキヨリ六十日ノ後ニ其ノ効力ヲ生スルモノトス
第八條 締約國中本條約ヲ廃棄セムト欲スルモノアルトキハ書面ヲ以テ其ノ旨和蘭國政府ニ通告スヘシ和蘭國政府ハ直ニ通告書ノ認證謄本ヲ爾餘ノ諸國ニ送付シ且右通告書ヲ接受シタル日ヲ通知スヘシ
 廃棄ハ其ノ通告書カ和蘭國政府ニ到達シタルトキヨリ一年ノ後右通告ヲ爲シタル國ニ對シテノミ効力ヲ生スルモノトス
第九條 和蘭國外務省ハ帳簿ヲ備ヘ置キ第五條第三項及第四項ニ依リ爲シタル批准書寄託ノ日並加盟(第六條第二項)又ハ廃棄(第八條第一項)ノ通告ヲ接受シタル日ヲ記入スルモノトス
 各締約國ハ右帳簿ヲ閲覧シ且其ノ認證抄本ヲ請求スルコトヲ得

右證據トシテ各全權委員本條約ニ署名ス
(国立公文書館:陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約・御署名原本・明治四十五年・条約...)

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