スキップしてメイン コンテンツに移動

ノックス提案(米國政府ヨリ錦愛鐵道豫備協定成立通告竝提議ノ件) 1909年12月18日

ノックス提案(訳文、一部ひらがな化、新字体化)

米國政府ヨリ錦愛鐵道豫備協定成立通告竝提議ノ件
(訳 文)
(極秘)
 千九百九年十二月十八日
             在本邦米国大使
  小村外務大臣宛
以書翰致啓上候陳者今般錦愛鉄道の資金調達並敷設に関する予備協定成立致候に付本国政府の訓令に依り右の趣茲に及御通知候抑も本件計画は英米両国の主動に依り右様進捗し来りたるものに有之候処日本国其の他清国に於ける商業上の機会均等主義並領土保全の政策を保持する者として知られたる他の関係諸国をして適当の程度まて本件に加入せしむることに付清国の同意を得むか為め合衆国政府は何時にても進て英国と協同尽力致すへき旨を閣下に保証すへく本使は特に本国政府の訓令を受け候同時に本使は日本帝国政府か本件に加入せらるるは本国政府の歓迎する所なる旨を併て申進候
右ノ外合衆國政府ニ於テハ更ニ廣汎ニシテ關係大ナル計画ノ考慮中ニ有之候惟フニ清國ヲシテ滿洲ニ於ケル政治上ノ一切ノ權利ヲ完全ニ享有セシメ且門戸開放機會均等ノ主義ヲ實際ニ適用シテ以テ同地方ノ發達ヲ期セシムル爲ニハ適當ナル協定ニ依リ滿洲ニ於ケル一切ノ鐵道ヲ清國ノ所有ニ歸セシメ之ヲ一ノ經濟的學術的ニシテ且公平ナル經理ノ下ニ併合シ之ニ要スル資金ハ適當ノ方法ヲ以テ相當ノ割合ニ依リ加入希望ノ諸國ヨリ調達スルコト最有効ナル方法ナルヤニ被存候
右借款ノ期限ハ償還ノ確實ヲ誤マラサル程度トナシ其條件モ亦投資ヲ誘致スルニ足ルヘキ程度ニ可致而シテ重モナル關係者ハ借款償還ニ至ルマテノ期間鐵道ノ敷設竝運用ヲ監視スルノ權利ヲ保有シ關係各政府モ亦其期間材料供給ニ關シ所屬國民ノ爲恒例ノ優先權ヲ與ヘラルヘク且右優先權ハ各關係者間ニ衡平ナルヘキ基礎ノ上ニ調定セラルルコトヲ要スルハ勿論ノ義ト存候
滿洲ニ於ケル現存鐵道ニ對シ復歸權ヲ有シ又ハ特許權所有者トシテ利害關係ヲ有スル者ハ清、日、露ノ三國ナルヲ以テ本件計画ノ實行ニハ此等諸國ノ協力ヲ必要ト可致同時ニ錦愛鐵道ノ敷設ニ關スル現存契約ニ依リ特殊ノ利害ヲ有スルニ至リタル英米兩國ノ賛助協力モ亦必要ナル次第ニ有之候
合衆國政府ニ於テハ本計画カ日露兩國ニ取リテ頗ル有利ナルコトヲ認ムルモノニ有之候何トナレハ兩國ハ孰レモ誠意ヲ以テ滿洲ノ門戸開放機會均等ノ主義ヲ擁護シ且清國ニ對シ其ノ領土主權ノ確保ヲ希望セラルル次第ナルヲ以テ兩國ヲシテ商業上其ノ他ノ利益ヲ保護セムカ爲從來負擔シ來リタル義務責任並經費ヲ免レシメ同時ニ面倒且苛重ナル重荷ヲ合同列國ト共ニ公平ニ分擔スルコトトナルヘキ方法ハ兩國ニ於テ之ヲ歡迎スヘキ筈ト被存候
本國政府ニ於テハ前記計画カ露國側ニ於テ好意ヲ以テ考慮セラルヘシトノ希望ヲ懷キ同時ニ財政上ニ關スル米國人ノ加入モ亦期待シ得ヘキコトヲ信スル次第ニ有之候
萬一以上略説シタル如キ提案ニシテ全體ニ於テ實行シ得ヘカラサルモノトセハ之ニ比シテ稍々小規模ナル計画ヲ採用スルモ不可ナカルヘクト存候即ち英米兩國ハ錦愛鐵道ノ協定ニ關シ滿洲ノ商業的中立ニ異存ナキ關係諸國ヲ誘致シ各國共同ノ下ニ錦愛鐵道其ノ他商業上ノ發達ニ伴ヒ將來敷設ヲ必要トスヘキ諸鐵道ノ工事並資金調達ニ從事スルト共ニ既設鐵道ニシテ本計画ノ系統中ニ編入セラシムカ爲ニ提供セラルルモノアラハ其ノ買收ニ必要ナル資金ヲ清國ニ供給スルコトニ有之候右提案ハ幾分第一提案トハ相違致居候得共假令全部ナラストスルモ大體ニ於テ豫期ノ目的ヲ達スルニ庶幾カラムカト被存候
前記兩案ノ主義ハ尚次ノ理由ニ依ルモ充分ノ根據ヲ有スル義ニ有之即チ上記計画ノ完成ハ清國政府ト銀行業者間ニ於ケル放縱ナル直接交渉ニ依リ動モスレハ生スルコトアルヘキ紛擾ヲ避ケシメ同時ニ清國ニ於ケル物質的利益ヲ共通トナラシメ之カ爲列國ノ協力ヲ誘致シ以テ現今清國政府ノ熱心ニ考量中ナル外交及幣制ノ改革問題ヲ簡單ナラシムルニ至ルヘクト存候就テハ合衆國政府ハ日本帝國政府ニ於テ本件ノ主義ニ賛同セラレンコトヲ誠意希望致シ候
聞く所に依れは貴国政府に於ては会て南満洲鉄道に国際的性質を与へむとの趣旨にて考量せらるる所ありたる由に有之候尤も右は当時遂に実行の運に至らさりし次第なりしと雖も之より更に規模の広大なる本件計画は貴国政府に於て此際更に詮議の余地も可有之其の賛同を得むことは本使の切望に堪えさる所に候右申進旁本使は茲に重ねて貴大臣に向て敬意を表し候 敬具
(190900日本外交文書明治第42巻第1冊16.PDF)

コメント

このブログの人気の投稿

徴兵の詔(徴兵令詔書及ヒ徴兵告諭) 1872年12月28日

徴兵令詔書及び徴兵告諭(口語訳)  今回、全国募兵の件に付き、別紙の詔書の通り徴兵令が仰せ出され、その定めるところの条々、各々天皇の趣意を戴き、下々の者に至るまで遺漏なきように公布しなさい。全体として詳細は陸軍・海軍両省と打ち合わせをしなさい。この趣旨を通達する。  ただし、徴兵令および徴募期限については追って通達するべきものとする。 (別紙) 詔書の写し   私(明治天皇)が考えるに、往昔は郡県の制度により、全国の壮年の男子を募って、軍団を設置し、それによって国家を守ることは、もとより武士・農民の区別がなかった。中世以降、兵は武士に限られるようになり、兵農分離が始まって、ついに封建制度を形成するようになる。明治維新は、実に2千有余年来の一大変革であった。この際にあたり、海軍・陸軍の兵制もまた時節に従って、変更しないわけにはいかない。今日本の往昔の兵制に基づいて、海外各国の兵制を斟酌し、全国から兵を徴集する法律を定め、国家を守る基本を確立しようと思う。おまえたち、多くのあらゆる役人は手厚く、私(明治天皇)の意志を体して、広くこれを全国に説き聞かせなさい。 明治5年(壬申)11月28日  わが国古代の兵制では、国をあげて兵士とならなかったものはいなかった。有事の際は、天皇が元帥となり、青年壮年兵役に耐えられる者を募り、敵を征服すれば兵役を解き、帰郷すれば農工商人となった。もとより後世のように両刀を帯びて武士と称し、傍若無人で働かずに生活をし、甚だしい時には人を殺しても、お上が罪を問わないというようなことはなかった。  そもそも、神武天皇は珍彦を葛城の国造に任命し、以後軍団を設け衛士・防人の制度を始めて、神亀天平の時代に六府二鎮を設けて備えがなったのである。保元の乱・平治の乱以後、朝廷の軍規が緩み、軍事権は武士の手に落ち、国は封建制の時代となって、人は兵農分離とされた。さらに後世になって、朝廷の権威は失墜し、その弊害はあえていうべきものもなく甚だしいものとなった。  ところが、明治維新で諸藩が領土を朝廷に返還し、1871年(明治4)になって以前の郡県制に戻った。世襲で働かずに生活していた武士は、俸禄を減らし、刀剣を腰からはずすことを許し、士農工商の四民にようやく自由の権利を持たせようとしている。これは上下の身分差をなくし、人権を平等にしようとする方法で、とりもな...

日清修好条規 1871年09月13日

内容見直し点:口語訳中途 修好条規(口語訳、前文署名省略) 第一条 この条約締結のあとは、大日本国と大清国は弥和誼を敦うし、天地と共に窮まり無るべし。又両国に属したる邦土も、各礼を以て相待ち、すこしも侵越する事なく永久安全を得せしむべし。 第二条 両国好を通ぜし上は、必ず相関切す。若し他国より不公及び軽藐する事有る時、其知らせを為さば、何れも互に相助け、或は中に入り、程克く取扱い、友誼を敦くすべし。 第三条 両国の政事禁令各異なれば、其政事は己国自主の権に任すべし。彼此に於て何れも代謀干預して禁じたる事を、取り行わんと請い願う事を得ず。其禁令は互に相助け、各其商民に諭し、土人を誘惑し、聊違犯あるを許さず。 第四条 両国秉権大臣を差出し、其眷属随員を召具して京師に在留し、或は長く居留し、或は時々往来し、内地各処を通行する事を得べし。其入費は何れも自分より払うべし。其地面家宅を賃借して大臣等の公館と為し、並びに行李の往来及び飛脚を仕立書状を送る等の事は、何れも不都合がないように世話しなければならない。 第五条 両国の官位何れも定品有りといえども、職を授る事各同じからず。因彼此の職掌相当する者は、応接及び交通とも均く対待の礼を用ゆ。職卑き者と上官と相見るには客礼を行い、公務を辨ずるに付ては、職掌相当の官へ照会す。其上官へ転申し直達する事を得ず。又双方礼式の出会には、各官位の名帖を用う。凡両国より差出したる官員初て任所に到着せば、印証ある書付を出し見せ、仮冒なき様の防ぎをなすべし。 第六条 今後両国を往復する公文について、清国は漢文を用い、日本国は日本文を用いて漢訳文を副えることとする。あるいはただ漢文のみを用い、その記載に従うものとする。 (これ以下まだ) 第七条 両国好みを通ぜし上は、海岸の各港に於て彼此し共に場所を指定め、商民の往来貿易を許すべし。猶別に通商章程を立て、両国の商民に永遠遵守せしむべし。 第八条 両国の開港場には、彼此何れも理事官を差置き、自国商民の取締をなすべし。凡家財、産業、公事、訴訟に干係せし事件は、都て其裁判に帰し、何れも自国の律例を按して糾辨すべし。両国商民相互の訴訟には、何れも願書体を用う。理事官は先ず理解を加え、成丈け訴訟に及ばざる様にすべし。其儀能わざる時は、地方官に掛合い双方出会し公平に裁断すべし。尤盗賊欠落等の事件は、両国の地方官より...

帝国陸海軍作戦計画大綱 1945年01月25日

 帝国陸海軍作戦計画大綱(ひらがな化、一部新字体化、一部省略)  帝国陸海軍作戦計画大綱(昭和二十年一月二十日)    目 次(略)    第一 作戦方針  帝国陸海軍は機微なる世界情勢の変転に莅み重点を主敵米軍の進攻破摧に指向し随処縦深に亙り敵戦力を撃破して戦争遂行上の要域を確保し以て敵戦意を挫折し以て戦争目的の達成を図る    第二 作戦の指導大綱 一 陸海軍は戦局愈々至難なるを予期しつつ既成の戦略態勢を活用し敵の進攻を破摧し速に自主的態勢の確立に努む   右自主的態勢は今後の作戦推移を洞察し速に先つ皇土及之か防衛に緊切なる大陸要域に於て不抜の邀撃態勢を確立し敵の来攻に方りては随時之を撃破すると共に其の間状況之を許す限り反撃戦力特に精錬なる航空戦力を整備し以て積極不羈の作戦遂行に努むるを以て其の主眼とす 二 陸海軍は比島方面に来攻中の米軍主力に対し靭強なる作戦を遂行し之を撃破して極力敵戦力に痛撃を加ふると共に敵戦力の牽制抑留に努め此の間情勢の推移を洞察し之に即応して速に爾他方面に於ける作戦準備を促進す 三 陸海軍は主敵米軍の皇土要域方面に向ふ進攻特に其の優勢なる空海戦力に対し作戦準備を完整し之を撃破す   之か為比島方面より皇土南陲に来攻する敵に対し東支那海周辺に於ける作戦を主眼とし二、三月頃を目途とし同周辺要地に於ける作戦準備を速急強化す   敵の小笠原諸島来攻(硫黄島を含む)に対し極力之か防備強化に努む   又敵一部の千島方面進攻を予期し又状況に依り有力なる敵の直接本土に暴進することあるを考慮し之に対処し得るの準備に遺憾なからしむ 四 陸海軍は進攻する米軍主力に対し陸海特に航空戦力を総合発揮し敵戦力を撃破し其の進攻企図を破摧す 此の間他方面に在りては優勢なる敵空海戦力の来攻を予想しつつ主として陸上部隊を以て作戦を遂行するものとす   敵戦力の撃破は渡洋進攻の弱点を捕へ洋上に於て痛撃を加ふるを主眼とし爾後上陸せる敵に対しては補給遮断と相俟つて陸上作戦に於て其の目的を達成す 此の際火力の集団機動を重視す   尚敵機動部隊に対しては努めて不断に好機を捕捉し之を求めて漸減す 五 支那大陸方面に在りては左に準拠し主敵米軍に対する作戦を指導す (一) 支那大陸に於ける戦略態勢を速に強化し東西両正面より進攻する敵特に米軍を撃破して其の企図を破摧し皇土を中核とする大...