スキップしてメイン コンテンツに移動

第三次日英同盟(日英協約) 1911年07月13日

第三次日英同盟(口語訳)

日本及びイギリスは1905年8月12日の日英協約締結以来事態に重大な変遷があることに顧みて当該協約を改訂し、もってその変遷に適応せしむるは全局の静寧安固に資するべきことを信じ、前記協約に代わりこれと同じく

(イ)東亜及びインドの地域における全局の平和を確保すること
(ロ)清国の独立及び領土保全並びに清国における列国の商工業に対する機会均等主義を確実にし、もって清国における列国の共通利益を維持すること
(ハ)東亜及びインドの地域における両締盟国の領土権を保持し、並びに当該地域における両締盟国の特殊利益を防護することを目的とする以下の条を約定する

第一条 日本又はイギリスにおいて本協約前文に記述された権利及び利益のなかいずれか危殆に迫るものがあると認められるときは、両国政府は相互に十分にかつ隔意なく通告し、その侵迫されている権利又は利益を擁護するために執るべき措置を協同に考量しなければならない。
第二条 両締盟国の一方が、挑発することなくして一国若しくは数国より攻撃を受けるにより、又は一国若しくは数国の侵略的行動により当該締盟国において本協約前文に記述されるその領土権又は特殊利益を防護せんがために交戦するに至るときは、前記の攻撃又は侵略的行動がいずれの地において発生するを問わず他の一方の締盟国は直ちに来たりてその同盟国に援助を与え、協同戦闘に当たり、講和もまた双方合意の上においてこれをなさなければならない。
第三条 両締盟国はいずれも他の一方と協議をえずして、他国と本協約前文に記述される目的を害すべき別約をしないことを約定する。
第四条 両締盟国の一方が第三国と総括的仲裁裁判条約を締結した場合には、本協約は当該仲裁裁判条約が有効に存続する限り、上第三国と交戦するの義務を前記締盟国に負わせることはない。
第五条 両締盟国の一方が、本協約中に規定する場合に際し、他の一方に兵力的援助を与えるべき条件及び当該援助の実行方法は両締盟国陸軍当局者において協定すべく、又当該当局者は相互利害の問題に関し、相互に充分にかつ隔意なく随時協議するものとする。
第六条 本協約は、調印の日より直ちに実施し、十年間効力を有する。各十年の終了に至る十二ヶ月前に両締盟国のいずれよりも本協約を廃棄する意思を通告しないときは、本協約は両締盟国の一方が廃棄の意思を表示したる当日より一年の終了に至るまで、引き続き効力を有する。然れどももし上終了期日に至り同盟国の一方が現に交戦中のときは、本同盟は講和の成立に至るまで当然継続するものとする。
右証拠として、下名は各々の政府よりる委任を受け、本協約に署名調印するものである。
一九一一年七月十三日ロンドンにおいて本書二通を作る
グレートブリテン王国駐在日本国皇帝陛下の特命全権公使 加藤高明
グレートブリテン王国皇帝陛下の外務大臣 イー、グレー

日英協約(原文:一部新字体化)

     協約前文
日本國政府及大不列顛國政府ハ千九百五年八月十二日ノ日英協約締結以來事態ニ重大ナル變遷アリタルニ顧ミ該協約ヲ改訂シ以テ其ノ變遷ニ適應セシムルハ全局ノ静寧安固ニ資スヘキコトヲ信シ前記協約ニ代ハリ之ト同シク
(イ) 東亞及印度ノ地域ニ於ケル全局ノ平和ヲ確保スルコト
(ロ) 清帝國ノ獨立及領土保全竝清國ニ於ケル列國ノ商工業ニ對スル機會均等主義ヲ確實ニシ以テ清國ニ於ケル列國ノ共通利益ヲ維持スルコト
(ハ) 東亞及印度ノ地域ニ於ケル兩締盟國ノ領土權ヲ保持シ竝該地域ニ於ケル兩締盟國ノ特殊利益ヲ防護スルコト
ヲ目的トスル左ノ條款ヲ約定セリ
     第一條
日本國又ハ大不列顛國ニ於テ本協約前文ニ記述セル權利及利益ノ中何レカ危殆ニ迫ルモノアルヲ認ムルトキハ兩國政府ハ相互ニ充分ニ且隔意ナク通告シ其ノ侵迫セラレタル權利又ハ利益ヲ擁護セムカ爲ニ執ルヘキ措置ヲ協同ニ考量スヘシ
     第二條
兩締盟國ノ一方カ挑發スルコトナクシテ一國若ハ數國ヨリ攻撃ヲ受ケタルニ因リ又ハ一國若ハ數國ノ侵略的行動ニ因リ該締盟國ニ於テ本協約前文ニ記述セル其ノ領土權又ハ特殊利益ヲ防護セムカ爲交戰スルニ至リタルトキハ前記ノ攻撃又ハ侵略的行動カ何レノ地ニ於テ發生スルヲ問ハス他ノ一方ノ締盟國ハ直ニ來リテ其ノ同盟國ニ援助ヲ與へ協同戰鬪ニ當リ講和モ亦雙方合意ノ上ニ於テ之ヲ爲スヘシ
     第三條
兩締盟國ハ孰レモ他ノ一方ト協議ヲ經スシテ他國ト本協約前文ニ記述セル目的ヲ害スヘキ別約ヲ爲ササルヘキコトヲ約定ス
     第四條
兩締盟國ノ一方カ第三國ト總括的仲裁裁判條約ヲ締結シタル場合ニハ本協約ハ該仲裁裁判條約ノ有效ニ存續スル限右第三國ト交戰スルノ義務ヲ前記締盟國ニ負ハシムルコトナカルヘシ
     第五條
兩締盟國ノ一方カ本協約中ニ規定スル場合ニ際シ他ノ一方ニ兵力的援助ヲ與フヘキ條件及該援助ノ實行方法ハ兩締盟國陸海軍當局者ニ於テ協定スヘク又該當局者ハ相互利害ノ問題ニ關シ相互ニ充分ニ且隔意ナク隨時協議スヘシ
     第六條
本協約ハ調印ノ日ヨリ直ニ實施シ十年間效力ヲ有ス
右十年ノ終了ニ至ル十二月前ニ兩締盟國ノ孰レヨリモ本協約ヲ廢棄スルノ意思ヲ通告セサルトキハ本協約ハ兩締盟國ノ一方カ廢棄ノ意思ヲ表示シタル當日ヨリ一年ノ終了ニ至ル迄引續キ效力ヲ有ス然レトモ若右終了期日ニ至リ同盟國ノ一方カ現ニ交戰中ナルトキハ本同盟ハ講和ノ成立ニ至ル迄當然繼續スヘシ

右證據トシテ下名ハ各其ノ政府ノ委任ヲ受ケ本協約ニ署名調印ス
千九百十一年七月十三日倫敦ニ於テ本書二通ヲ作ル

     大不列顛國駐剳日本帝國皇帝陛下ノ特命全權大使  加藤高明 印
     大不列顛國皇帝陛下ノ外務大臣  イー、グレー 印
(国立公文書館:日英協約(第三次)報告ノ件)

コメント

このブログの人気の投稿

徴兵の詔(徴兵令詔書及ヒ徴兵告諭) 1872年12月28日

徴兵令詔書及び徴兵告諭(口語訳)  今回、全国募兵の件に付き、別紙の詔書の通り徴兵令が仰せ出され、その定めるところの条々、各々天皇の趣意を戴き、下々の者に至るまで遺漏なきように公布しなさい。全体として詳細は陸軍・海軍両省と打ち合わせをしなさい。この趣旨を通達する。  ただし、徴兵令および徴募期限については追って通達するべきものとする。 (別紙) 詔書の写し   私(明治天皇)が考えるに、往昔は郡県の制度により、全国の壮年の男子を募って、軍団を設置し、それによって国家を守ることは、もとより武士・農民の区別がなかった。中世以降、兵は武士に限られるようになり、兵農分離が始まって、ついに封建制度を形成するようになる。明治維新は、実に2千有余年来の一大変革であった。この際にあたり、海軍・陸軍の兵制もまた時節に従って、変更しないわけにはいかない。今日本の往昔の兵制に基づいて、海外各国の兵制を斟酌し、全国から兵を徴集する法律を定め、国家を守る基本を確立しようと思う。おまえたち、多くのあらゆる役人は手厚く、私(明治天皇)の意志を体して、広くこれを全国に説き聞かせなさい。 明治5年(壬申)11月28日  わが国古代の兵制では、国をあげて兵士とならなかったものはいなかった。有事の際は、天皇が元帥となり、青年壮年兵役に耐えられる者を募り、敵を征服すれば兵役を解き、帰郷すれば農工商人となった。もとより後世のように両刀を帯びて武士と称し、傍若無人で働かずに生活をし、甚だしい時には人を殺しても、お上が罪を問わないというようなことはなかった。  そもそも、神武天皇は珍彦を葛城の国造に任命し、以後軍団を設け衛士・防人の制度を始めて、神亀天平の時代に六府二鎮を設けて備えがなったのである。保元の乱・平治の乱以後、朝廷の軍規が緩み、軍事権は武士の手に落ち、国は封建制の時代となって、人は兵農分離とされた。さらに後世になって、朝廷の権威は失墜し、その弊害はあえていうべきものもなく甚だしいものとなった。  ところが、明治維新で諸藩が領土を朝廷に返還し、1871年(明治4)になって以前の郡県制に戻った。世襲で働かずに生活していた武士は、俸禄を減らし、刀剣を腰からはずすことを許し、士農工商の四民にようやく自由の権利を持たせようとしている。これは上下の身分差をなくし、人権を平等にしようとする方法で、とりもな...

日清修好条規 1871年09月13日

内容見直し点:口語訳中途 修好条規(口語訳、前文署名省略) 第一条 この条約締結のあとは、大日本国と大清国は弥和誼を敦うし、天地と共に窮まり無るべし。又両国に属したる邦土も、各礼を以て相待ち、すこしも侵越する事なく永久安全を得せしむべし。 第二条 両国好を通ぜし上は、必ず相関切す。若し他国より不公及び軽藐する事有る時、其知らせを為さば、何れも互に相助け、或は中に入り、程克く取扱い、友誼を敦くすべし。 第三条 両国の政事禁令各異なれば、其政事は己国自主の権に任すべし。彼此に於て何れも代謀干預して禁じたる事を、取り行わんと請い願う事を得ず。其禁令は互に相助け、各其商民に諭し、土人を誘惑し、聊違犯あるを許さず。 第四条 両国秉権大臣を差出し、其眷属随員を召具して京師に在留し、或は長く居留し、或は時々往来し、内地各処を通行する事を得べし。其入費は何れも自分より払うべし。其地面家宅を賃借して大臣等の公館と為し、並びに行李の往来及び飛脚を仕立書状を送る等の事は、何れも不都合がないように世話しなければならない。 第五条 両国の官位何れも定品有りといえども、職を授る事各同じからず。因彼此の職掌相当する者は、応接及び交通とも均く対待の礼を用ゆ。職卑き者と上官と相見るには客礼を行い、公務を辨ずるに付ては、職掌相当の官へ照会す。其上官へ転申し直達する事を得ず。又双方礼式の出会には、各官位の名帖を用う。凡両国より差出したる官員初て任所に到着せば、印証ある書付を出し見せ、仮冒なき様の防ぎをなすべし。 第六条 今後両国を往復する公文について、清国は漢文を用い、日本国は日本文を用いて漢訳文を副えることとする。あるいはただ漢文のみを用い、その記載に従うものとする。 (これ以下まだ) 第七条 両国好みを通ぜし上は、海岸の各港に於て彼此し共に場所を指定め、商民の往来貿易を許すべし。猶別に通商章程を立て、両国の商民に永遠遵守せしむべし。 第八条 両国の開港場には、彼此何れも理事官を差置き、自国商民の取締をなすべし。凡家財、産業、公事、訴訟に干係せし事件は、都て其裁判に帰し、何れも自国の律例を按して糾辨すべし。両国商民相互の訴訟には、何れも願書体を用う。理事官は先ず理解を加え、成丈け訴訟に及ばざる様にすべし。其儀能わざる時は、地方官に掛合い双方出会し公平に裁断すべし。尤盗賊欠落等の事件は、両国の地方官より...

帝国陸海軍作戦計画大綱 1945年01月25日

 帝国陸海軍作戦計画大綱(ひらがな化、一部新字体化、一部省略)  帝国陸海軍作戦計画大綱(昭和二十年一月二十日)    目 次(略)    第一 作戦方針  帝国陸海軍は機微なる世界情勢の変転に莅み重点を主敵米軍の進攻破摧に指向し随処縦深に亙り敵戦力を撃破して戦争遂行上の要域を確保し以て敵戦意を挫折し以て戦争目的の達成を図る    第二 作戦の指導大綱 一 陸海軍は戦局愈々至難なるを予期しつつ既成の戦略態勢を活用し敵の進攻を破摧し速に自主的態勢の確立に努む   右自主的態勢は今後の作戦推移を洞察し速に先つ皇土及之か防衛に緊切なる大陸要域に於て不抜の邀撃態勢を確立し敵の来攻に方りては随時之を撃破すると共に其の間状況之を許す限り反撃戦力特に精錬なる航空戦力を整備し以て積極不羈の作戦遂行に努むるを以て其の主眼とす 二 陸海軍は比島方面に来攻中の米軍主力に対し靭強なる作戦を遂行し之を撃破して極力敵戦力に痛撃を加ふると共に敵戦力の牽制抑留に努め此の間情勢の推移を洞察し之に即応して速に爾他方面に於ける作戦準備を促進す 三 陸海軍は主敵米軍の皇土要域方面に向ふ進攻特に其の優勢なる空海戦力に対し作戦準備を完整し之を撃破す   之か為比島方面より皇土南陲に来攻する敵に対し東支那海周辺に於ける作戦を主眼とし二、三月頃を目途とし同周辺要地に於ける作戦準備を速急強化す   敵の小笠原諸島来攻(硫黄島を含む)に対し極力之か防備強化に努む   又敵一部の千島方面進攻を予期し又状況に依り有力なる敵の直接本土に暴進することあるを考慮し之に対処し得るの準備に遺憾なからしむ 四 陸海軍は進攻する米軍主力に対し陸海特に航空戦力を総合発揮し敵戦力を撃破し其の進攻企図を破摧す 此の間他方面に在りては優勢なる敵空海戦力の来攻を予想しつつ主として陸上部隊を以て作戦を遂行するものとす   敵戦力の撃破は渡洋進攻の弱点を捕へ洋上に於て痛撃を加ふるを主眼とし爾後上陸せる敵に対しては補給遮断と相俟つて陸上作戦に於て其の目的を達成す 此の際火力の集団機動を重視す   尚敵機動部隊に対しては努めて不断に好機を捕捉し之を求めて漸減す 五 支那大陸方面に在りては左に準拠し主敵米軍に対する作戦を指導す (一) 支那大陸に於ける戦略態勢を速に強化し東西両正面より進攻する敵特に米軍を撃破して其の企図を破摧し皇土を中核とする大...