太平洋方面に於ける島嶼たる属地及び島嶼たる領地に関する四国条約(口語訳)
アメリカ、イギリス、フランス及び日本は、一般の平和を確保しかつ太平洋方面におけるその島嶼たる属地及び島嶼たる領地に関するその権利を維持する目的をもってこれがため条約を締結することを決し、左の如くその全權委員を任命する
(人名略)
右各委員は互いにその全権委任状を示し、これが良好妥当であることを認めたのち、左のように協定した
第一条 締約国は、互いに太平洋方面におけるその島嶼である属地及び島嶼である領地に関するその権利を尊重すべきことを約する
締約国の何れかの間に太平洋問題に起因し、かつ前記の権利に関する争議を生じ外交手段によって満足な解決を得ることはできない。かつその間に幸いに現存する円満なる強調に影響を及ぼす虞れがある場合においては、右締約国は共同会議のため他の締約国を招請し、当該事件全部を考量調整の目的をもってその議に付さなければならない
第二条 前記の権利が、別国の侵略的行為により脅威を受ける場合においては、締約国は右特殊事態の急に対応するため、共同に又は各別に執るべき最も有効な措置に関し了解を達するために充分にかつ隔意なく互いに交渉することとする
第三条 本条約は実施の時より十年間効力を有し、かつ右期間満了後は十二ヶ月前の予告をもってこれを終了せしめる 各締約国の権利の留保のもとに引続きその効力を有する
第四条 本条約は締約国の憲法上の手続に従い、なるべく速やかに批准されるべく、かつワシントンにおいて行われるべき批准書寄託の時より実施されなければならない。1911年7月13日ロンドンにおいて締結されたイギリス及日本間ノ協約はこれと同時に終了するものとする。合衆國政府は批准書寄託の調書の認証謄本を各署名国に送付することとする
本条約はフランス語及びイギリス語をもって本文とし、合衆国政府の記録に寄託保存されるべく、その認証謄本は同政府これを各署名国に送付することとする
右証拠として前記各全権委員は本条約に署名する
1921年12月13日ワシントン市においてこれを作成する
(署名略)
本日アメリカ、イギリス、フランス及日本間の条約署名するに当たり、各署名国の了解及び意向はようになることをここに声明する
一 本条約は太平洋における委任統治諸島にこれを適用する。ただし、本条約の締結はこれをもってアメリカが右委任統治に対し同意を与えたものと認めることはできず、かつアメリカと当該受任国との間に右委任統治諸島に関する協定の締結を妨げるものでなない
二 第一条第二項に掲げる争議は国際法の原則により、専ら当該国の国内法権に属する問題を含むものと解してはならない
アメリカ、イギリス、フランス及び日本国は、1921年12月13日ワシントンにおいて署名した四国条約の追加として、各その全権委員をして左の条項を約定した
前記条約に使用された「島嶼たる属地及び領地」なる語はこれを日本国に適用することについては、単に樺太(すなわちサハリン島の南部)、台湾及び澎湖列島並びに日本国の委任統治の下にある諸島のみを包含すべきものとする
本協定は、前記条約追加としてこれと同一の効力を有する
1921年12月13日の前記条約の第四条(批准に関する規定)は本協定にこれを適用する
本条約はフランス語及びイギリス語をもって本文とし、合衆国政府の記録に寄託保存されるべく、その認証謄本は同政府これを各署名国に送付することとする
四カ国条約(原文)
條約第三號
亞米利加合衆國、英帝國、佛蘭西國及日本國ハ
一般ノ平和ヲ確保シ且太平洋方面ニ於ケル其ノ島嶼タル屬地及島嶼タル領地ニ關スル其ノ權利ヲ維持スルノ目的ヲ以テ
之カ爲條約ヲ締結スルコトニ決シ左ノ如ク其ノ全權委員ヲ任命セリ
亞米利加合衆國大統領
合衆國人民 「チァールズ、エヴァンス、ヒューズ」
同 「ヘンリー、カボット、ロッジ」
同 「オスカー、ダブリュー、アンダウッド」
同 「エリヒュー、ルート」
大不列顚愛蘭聯合王國及大不列顚海外領土皇帝印度皇帝陛下
樞密院議長國會議員「アーサー、ジェームス、バルフォア」
海軍大臣男爵「リー、オヴ、フェアラム」
亞米利加合衆國駐箚特命全權大使「サー、オークランド、キァンプル、ゲデス」
加奈陀
「ロバート、レアド、ボーデン」
濠太利聯邦
國防大臣「ジョージ、フォスター、ピアス」
新西蘭
新西蘭最高法院判事「サー、ジョン、ウィリアム、サルモンド」
南阿弗利加聯邦
國會議員「アーサー、ジェームス、バルフォア」
印 度
印度参議院議員「ヴァリングマン、サンカラナラヤナ、スリニヴァサ、サストリ」
佛蘭西共和國大統領
前内閣議長下院議員「ルネ、ヴィヴィアニ」
殖民大臣下院議員「アルベール、サロー」
亞米利加合衆國駐箚特命全權大使「ジュール、ジー、ジュスラン」
日本國皇帝陛下
海軍大臣男爵加藤友三郎
亞米利加合衆國駐箚特命全權大使男爵幣原喜重郎
公爵徳川家達
外務次官埴原正直
右各委員ハ互ニ其ノ全權委任状ヲ示シ之カ良好妥當ナルヲ認メタル後左ノ如ク協定セリ
第一條
締約國ハ互ニ太平洋方面ニ於ケル其ノ島嶼タル屬地及島嶼タル領地ニ關スル其ノ權利ヲ尊重スヘキコトヲ約ス
締約國ハ何レカノ間ニ太平洋問題ニ起因シ且前記ノ權利ニ關スル争議ヲ生シ外交手段ニ依リテ滿足ナル解決ヲ得ルコト能ハス且其ノ間ニ幸ニ現存スル圓滿ナル協調ニ影響ヲ及ホスノ虞アル場合ニ於テハ右締約國ハ共同會議ノ爲他ノ締約國ヲ招請シ當該事件全部ヲ考量調整ノ目的ヲ以テ其ノ議ニ付スヘシ
第二條
前記ノ權利カ別國ノ侵略的行爲ニ依リ脅威セラルルニ於テハ締約國ハ右特殊事態ノ急ニ應スル爲共同ニ又ハ各別ニ執ルヘキ最有効ナル措置ニ關シ了解ヲ遂ケムカ爲充分ニ且隔意ナク互ニ交渉スヘシ
第三條
本條約ハ實施ノ時ヨリ十年間効力ヲ有シ右期間滿了後ハ十二月前ノ豫告ヲ以テ之ヲ終了セシムル各締約國ノ權利ノ留保ノ下ニ引續キ其ノ効力ヲ有ス
第四條
本條約ハ締約國ノ憲法上ノ手續ニ從ヒ成ルヘク速ニ批准セラルヘク且華盛頓ニ於テ行ハルヘキ批准書寄託ノ時ヨリ實施セラルヘシ千九百十一年七月十三日倫敦ニ於テ締結セラレタル大不列顚國及日本國間ノ協約ハ之ト同時ニ終了スルモノトス合衆國政府ハ批准書寄託ノ調書ト認證謄本ヲ各署名國ニ送付スヘシ
本條約ハ佛蘭西語及英吉利語ヲ以テ本文トシ合衆國政府ノ記録ニ寄託保存セラルヘク其ノ認證謄本ハ同政府之ヲ各署名國ニ送付スヘシ
右證據トシテ前記各全權委員ハ本條約ニ署名ス
千九百二十一年十二月十三日華盛頓市ニ於テ之ヲ作成ス
チァールス、エヴァンス、ヒューズ (印)
ヘンリー、カボット、ロッジ (印)
オスカー、ダブリュー、アンダウッド (印)
エリヒュー、ルート (印)
アーサー、ジェームス、バルフォア (印)
リー、オヴ、フェアラム (印)
エー、シー、ゲデス (印)
アール、エル、ボーデン (印)
ジー、エフ、ピアス (印)
ジョン、ダブリュー、サルモンド (印)
アーサー、ジェームス、バルフォア (印)
ヴィー、エス、スリニヴァサ、サストリ (印)
ルネ、ヴィヴィアニ (印)
アー、サロー (印)
ジュスラン (印)
加藤友三郎 (印)
幣原喜重郎 (印)
徳川家達 (印)
埴原正直 (印)
本日亞米利加合衆國、英帝國、佛蘭西國及日本國間ノ條約ニ署名スルニ當リ各署名國ノ了解及意嚮ハ左ノ如クナルコトヲ茲ニ聲明ス
一 本條約ハ太平洋ニ於ケル委任統治諸島ニ之ヲ適用ス但シ本條約ノ締結ハ之ヲ以テ亞米利加合衆國カ右委任統治ニ對シ同意ヲ與ヘタルモノト認ムルコトヲ得ス且亞米利加合衆國ト當該受任國トノ間ニ右委任統治諸島ニ關スル協定ノ締結ヲ妨クルモノニ非ス
二 第一條第二項ニ掲クル爭議ハ國際法ノ原則ニ依リ專ラ當該國ノ國内法權ニ屬スル問題ヲ含ムモノト解スヘカラス
千九百二十一年十二月十三日「ディストリクト、オヴ、コロンビア」華盛頓
(署名省略)
亞米利加合衆國、英帝國、佛蘭西國及日本國ハ千九百二十一年十二月十三日華盛頓ニ於テ署名シタル四國條約ノ追加トシテ各其ノ全權委員ヲシテ左ノ條項ヲ約定セシメタリ
前記條約ニ使用セラレタル「島嶼タル屬地及島嶼タル領地」ナル語ハ之ヲ日本國ニ適用スルニ付テハ單ニ樺太(即チ薩哈嗹島ノ南部)、臺灣及澎湖列島竝日本國ノ委任統治ノ下ニ在ル諸島ノミヲ包含スヘキモノトス
本協定ハ前記條約ノ追加トシテ之ト同一ノ效力ヲ有ス
千九百二十一年十二月十三日ノ前記條約中批准ニ關スル第四條ノ規定ハ本協定ニ之ヲ適用ス本協定ハ佛蘭西語及英吉利語ヲ以テ本文トシ合衆國政府ノ記録ニ寄託保存セラルヘク其ノ認證謄本ハ同政府之ヲ各締約國ニ送付スヘシ
右證據トシテ前記各全權委員ハ本條約ニ署名ス
千九百二十二年二月六日華盛頓市ニ於テ之ヲ作成ス
(署名省略)
(国立公文書館:太平洋方面ニ於ケル島嶼タル属地及島嶼タル領地ニ関スル四国条...)
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