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九カ国条約(支那ニ關スル九國條約) 1922年02月06日

九カ国条約(口語訳、一部省略)

第一条 支那国以外の締約国は、左の通り約定する。
(1)支那の主権、独立並びに領土的及び行政的保全を尊重すること
(2)支那が自ら有力かつ安固なる政府を確立維持するため、最も完全にしてかつ最も障害なき機会をこれに供与すること
(3)支那の領土を通して、一切の国民の商業及び工業に対する機会均等主義を有効に樹立維持するため、各々尽力すること
(4)友好国の臣民又は人民の権利を減殺すべき特別の権利又は特権を求めるため、支那に於ける情勢を利用すること及び右友好国の安寧に害のある行動を是認することを差控えること
第二条 締約国は、第一条に記載する原則に違反し、又はこれを害するようないかなる条約、協定、取極め又は了解を相互の間に、又は各別にあるいは協同して他の一国又は数ヵ国との間に締結しないことを約定する
第三条 一切の国民の商業及び工業に対し、支那に於ける門戸開放、または機会均等の主義を一層有効に適用する目的をもって支那国以外の締約国は左を要求させるような、又は各自国民の左を要求することを支持させないことを約定する
(イ)支那のいずれかの特定地域において、商業上又は経済上の発展に関し自己利益のため一般的優越権利を設定するに至ること
(ロ)支那において適法な商業若しくは工業を営む権利、又は公共企業をその種類の如何を問わず支那国政府若しくは地方官憲と共同経営する権利を他国の国民より奪うような独占権又は優先権或いはその範囲、期間又は地理的限界の関係上機会均等主義の実際上適用を無効にするものと認められるような独占権又は優先権
本条の前記規定は特定の商業上、工業上若しくは金融業上の企業の経営、又は発明及び研究の奨励に必要な財産又は権利の取得を禁ずるものと解釈しないものとする 
支那国は本条約の当事国であるか否かを問わず、一切の外国の政府及び国民より経済上の権利及び特権に関する出願を処理するについて、本条の前記規定に記載する主義に遵由しないことを約する
第四条 締約国は各自国民相互間の協定にして支那領土の特定地方において勢力範囲を創設しようとし、又は相互間に独占的機会を享有することを定めるとするものを支持しないことを約定する
第五条 支那国は支那における全鉄道を通じて、如何なる種類の不公平なる差別をも行い、又はこれを許容しないことを約定する。殊に旅客の国籍、その出発国や到達国、貨物の原産地や所有者、その積出国や仕向国又は前記の旅客または貨物が、支那鉄道により輸送される前または後においてこれを運搬する船舶その他の輸送機関の国籍や所有者の如何により、料金又は便宜につき直接間接に何らの差別を設けてはならない 支那国以外の締約国は前記鉄道中自国民カ特許条件、特殊協定その他に基づき管理をなしうる地位にある者に関し、前項と同趣旨の義務を負担しなければならない
第六条 支那国以外の締約国は、支那国の参加しない戦争において、支那国の中立国としての権利を完全に尊重することを約定し、支那国は中立国である場合に、中立の義務を遵守することを声明する
第七条 締約国はそのいずれかの一国が本条約規定の適用問題を包含し、かつ右適用問題の討議を行うことを望むと認められる事態が発生したときは、いつでも関係締結国間に充分にして、かつ隔意のない交渉をなすべきことを約定する
第八条 本条約に署名される諸国にして署名国の承認した政府を有し、かつ支那国を条約関係を有するものは、本条約に加入すべきことを招請されることとする。右目的のため合衆国政府は非署名国に必要な通牒をなし、かつその受領した回答を締約国に通告する。別国の加入は、合衆国政府が右の通告を受領した時より効力を生じる
第九条 本条約は締結国により、各自の憲法上の手続に従ひ批准されるように、かつ批准書全部の寄託の日より実施することとする。右の寄託はなるべく速やかにワシントンにおいて之を行うものとする。合衆国政府は批准書寄託の認証謄本を他の締約国に送付することとする
本条約はフランス語及びイギリス語の本文をもって共に正文とし、合衆国政府の記録に寄託保存されるようにその認証謄本は同政府より他の各締約国にこれを送付することとする


支那ニ關スル九國條約(原文:一部ひらがな、新字体化)

 支那に関する九国条約批准の件
右謹て上奏し恭しく
聖断を仰き併せて枢密院の議に付せられむことを請う
 大正十一年四月二十三日
    内閣総理大臣子爵高橋是清
(一部省略)

 第一条
支那国以外ノ締約国ハ左ノ通約定ス
 (一) 支那ノ主権、独立並領土的及行政的保全ヲ尊重スルコト
 (二) 支那カ自ラ有力且安固ナル政府ヲ確立維持スル為最完全ニシテ且最障礙ナキ機会ヲ之ニ供与スルコト
 (三) 支那ノ領土ヲ通シテ一切ノ国民ノ商業及工業ニ対スル機会均等主義ヲ有効ニ樹立維持スル為各盡力スルコト
 (四) 友好国ノ臣民又ハ人民ノ権利ヲ減殺スヘキ特別ノ権利又ハ特権ヲ求ムル為支那ニ於ケル情勢ヲ利用スルコトヲ及右友好国ノ安寧ニ害アル行動ヲ是認スルコトヲ差控フルコト
 第二条
締約国ハ第一条ニ記載スル原則ニ違背シ又ハ之ヲ害スヘキ如何ナル条約、協定、取極又ハ了解ヲモ相互ノ間ニ又ハ各別ニ若ハ協同シテ他ノ一国又ハ数国トノ間ニ締結セサルヘキコトヲ約定ス
 第三条
一切ノ国民ノ商業及工業ニ対シ支那ニ於ケル門戸開放又ハ機会均等ノ主義ヲ一層有効ニ適用スルノ目的ヲ以テ支那国以外ノ締約国ハ左ヲ要求セサルへク又各自国民ノ左ヲ要求スルコトヲ支持セサルヘキコトヲ約定ス
 (イ) 支那ノ何レカノ特定地域ニ於テ商業上又ハ経済上ノ発展ニ関シ自己ノ利益ノ為一般的優越権利ヲ設定スルニ至ルコトアルヘキ取極
 (ロ) 支那ニ於テ適法ナル商業若ハ工業ヲ営ムノ権利又ハ公共企業ヲ其ノ種類ノ如何ヲ問ハス支那国政府若ハ地方官憲ト共同経営スルノ権利ヲ他国ノ国民ヨリ奪フカ如キ独占権又ハ優先権或ハ其ノ範囲、期間又ハ地理的限界ノ関係上機会均等主義ノ実際的適用ヲ無効ニ帰セシムルモノト認メラルルカ如キ独占権又ハ優先権
本条ノ前記規定ハ特定ノ商業上、工業上若ハ金融業上ノ企業ノ経営又ハ発明及研究ノ奨励ニ必要ナルヘキ財産又ハ権利ノ取得ヲ禁スルモノト解釈スヘカラサルモノトス
支那国ハ本条約ノ当事国タルト否トヲ問ハス一切ノ外国ノ政府及国民ヨリノ経済上ノ権利及特権ニ関スル出願ヲ処理スルニ付本条ノ前記規定ニ記載スル主義ニ遵由スヘキコトヲ約ス
 第四条
締約国ハ各自国民相互間ノ協定ニシテ支那領土ノ特定地方ニ於テ勢力範囲ヲ創設セムトシ又ハ相互間ニ独占的機会ヲ享有スルコトヲ定メムトスルモノヲ支持セサルコトヲ約定ス
 第五条
支那国ハ支那ニ於ケル全鉄道ヲ通シ如何ナル種類ノ不公平ナル差別ヲモ行ヒ又ハ之ヲ許容セサルヘキコトヲ約定ス殊ニ旅客ノ国籍、其ノ出発国若ハ到達国、貨物ノ原産地若ハ所有者、其ノ積出国若ハ仕向国又ハ前記ノ旅客若ハ貨物カ支那鉄道ニ依リ輸送セラルル前若ハ後ニ於テ之ヲ運搬スル船舶其ノ他ノ輸送機関ノ国籍若ハ所有者ノ如何ニ依リ料金又ハ便宜ニ付直接間接ニ何等ノ差別ヲ設ケサルベシ
支那国以外ノ締約国ハ前記鉄道中自国又ハ自国民カ特許条件、特殊協定其ノ他ニ基キ管理ヲ為シ得ル地位ニ在ルモノニ関シ前項ト同趣旨ノ義務ヲ負担スヘシ
 第六条
支那国以外ノ締約国ハ支那国ノ参加セサル戦争ニ於テ支那国ノ中立国トシテノ権利ヲ完全ニ尊重スルコトヲ約定シ支那国ハ中立国タル場合ニ中立ノ義務ヲ遵守スルコトヲ声明ス
 第七条
締約国ハ其ノ何レカノ一国カ本条約規定ノ適用問題ヲ包含シ且右適用問題ノ討議ヲ為スヲ望マント認ムル事態発生シタルトキハ何時ニテモ関係締結国間ニ充分ニシテ且隔意ナキ交渉ヲ為スヘキコトヲ約定ス
 第八条
本条約ニ署名セサル諸国ニシテ署名国ノ承認シタル政府ヲ有シ且支那国ト条約関係ヲ有スルモノハ本条約ニ加入スヘキコトヲ招請セラルヘシ右目的ノ為合衆国政府ハ非署名国ニ必要ナル通牒ヲ為シ且其ノ受領シタル回答ハ之ヲ締約国ニ通告スヘシ別国ノ加入ハ合衆国政府カ右ノ通告ヲ受領シタル時ヨリ効力ヲ生スヘシ
 第九条
本条約ハ締結国ニ依リ各自ノ憲法上ノ手続ニ従ヒ批准セラルヘク且批准書全部ノ寄託ノ日ヨリ実施セラルヘシ右ノ寄託ハ成ルヘク速ニ華盛頓ニ於テ之ヲ行フヘシ合衆国政府ハ批准書寄託ノ認証謄本ヲ他ノ締約国ニ送付スヘシ
本条約ハ仏蘭西語及英吉利語ノ本文ヲ以テ共ニ正文トシ合衆国政府ノ記録ニ寄託保存セラルヘク其ノ認証謄本ハ同政府ヨリ他ノ各締約国ニ之ヲ送付スヘシ

右証拠として前記各全権委員は本条約に署名す

千九百二十二年二月六日華盛頓市に於て之を作成す
(署名省略)
(国立公文書館:支那ニ関スル九国条約・御署名原本・大正十四年・条約第八号)(19220206支那に関する九国条約.PDF)

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