スキップしてメイン コンテンツに移動

満蒙問題処理方針要綱 1932年03月12日

満蒙問題処理方針要綱(口語訳)

一、満蒙については、帝国の支援の下に当該地域を政治、経済、国防、交通、通信等諸般の関係において帝国存立の重要な要素である性能を顕現するようにすることを期する。
二、満蒙は支那本部政権より分離独立する一政権の統治支配地域となっている現状に鑑みて、逐次一国家として実質を具有するようにこれを誘導する。
三、現下における満蒙の治安維持は主に帝国が行う。将来における満蒙の治安維持及び満鉄以外の鉄道保護は主として新国家の警察または警察的軍隊をもって行う。この目的のため、これらの新国家における治安維持機関の建設及び刷新を図ることとし、特に邦人がこれらの(機関の)指導的地位となるようにする。
四、満蒙の地をもって帝国の対ロシア及び対支那の国防の第一線とし、外部からの撹乱はこれを許さない。これらの目的のため満州に駐在する帝国陸軍の兵力をこれに適応できるよう増軍し、又必要な海軍施設を作る必要がある。新国家における正規陸軍の存在は許さない。
五、満蒙における我が権益の回復及び拡充は新国家を相手として行う。
六、以上の点の実行に当たっては、国際法及び国際条約に抵触しないように努め、就中満蒙政権問題に関する措置は九カ国条約等の関係上、できる限り新国家側が自主的に行っているような形式にすることが望ましい。
七、満蒙に関する帝国の政策遂行のため、速やかに統制機関の設置が必要である。但し差し当たっては現状維持とする。


昭和七年三月十二日 閣議決定
 満蒙問題処理方針要綱
一、満蒙ニ付テハ帝国ノ支援ノ下ニ該地ヲ政治、経済、国防、交通、通信等諸般ノ関係ニ於テ帝国存立ノ重要要素タルノ性能ヲ顕現スルモノタラシメムコトヲ期ス
二、満蒙ハ支那本部政権ヨリ分離独立セル一政権ノ統治支配地域トナレル現状ニ鑑ミ逐次一国家タルノ実質ヲ具有スル様之ヲ誘導ス
三、現下ニ於ケル満蒙ノ治安維持ハ主トシテ帝国之ニ任ス将来ニ於ケル満蒙ノ治安維持及満鉄以外ノ鉄道保護ハ主トシテ新国家ノ警察乃至警察的軍隊ヲシテ之ニ当ラシム右目的ノ為之等新国家側治安維持機関ノ建設刷新ヲ図ラシメ特ニ邦人ヲ之カ指導的骨幹タラシム
四、満蒙ノ地ヲ以テ帝国ノ対露対支国防ノ第一線トシ外部ヨリノ撹乱ハ之ヲ許サス右目的ノ為メ駐満帝国陸軍ノ兵力ヲ之ニ適応スル如ク増加シ又必要ナル海軍施設ヲナスヘシ新国家正規陸軍ハ之カ存在ヲ許サス
五、満蒙ニ於ケル我権益ノ回復拡充ハ新国家ヲ相手トシテ之ヲ行フ
六、以上各般ノ施措実行ニ当リテハ努メテ国際法乃至国際条約抵触ヲ避ケ就中満蒙政権問題ニ関スル施措ハ九国条約等ノ関係上出来得ル限リ新国家側ノ自主的発意ニ基クカ如キ形式ニ依ルヲ可トス
七、満蒙ニ関スル帝国ノ政策遂行ノ為メ速ニ統制機関ノ設置ヲ要ス但シ差当リ現状ヲ維持ス
(国立国会図書館:https://rnavi.ndl.go.jp/politics/entry/bib00058.php)
(日本外交文書満洲事変第2巻第1冊 P442)

コメント

このブログの人気の投稿

徴兵の詔(徴兵令詔書及ヒ徴兵告諭) 1872年12月28日

徴兵令詔書及び徴兵告諭(口語訳)  今回、全国募兵の件に付き、別紙の詔書の通り徴兵令が仰せ出され、その定めるところの条々、各々天皇の趣意を戴き、下々の者に至るまで遺漏なきように公布しなさい。全体として詳細は陸軍・海軍両省と打ち合わせをしなさい。この趣旨を通達する。  ただし、徴兵令および徴募期限については追って通達するべきものとする。 (別紙) 詔書の写し   私(明治天皇)が考えるに、往昔は郡県の制度により、全国の壮年の男子を募って、軍団を設置し、それによって国家を守ることは、もとより武士・農民の区別がなかった。中世以降、兵は武士に限られるようになり、兵農分離が始まって、ついに封建制度を形成するようになる。明治維新は、実に2千有余年来の一大変革であった。この際にあたり、海軍・陸軍の兵制もまた時節に従って、変更しないわけにはいかない。今日本の往昔の兵制に基づいて、海外各国の兵制を斟酌し、全国から兵を徴集する法律を定め、国家を守る基本を確立しようと思う。おまえたち、多くのあらゆる役人は手厚く、私(明治天皇)の意志を体して、広くこれを全国に説き聞かせなさい。 明治5年(壬申)11月28日  わが国古代の兵制では、国をあげて兵士とならなかったものはいなかった。有事の際は、天皇が元帥となり、青年壮年兵役に耐えられる者を募り、敵を征服すれば兵役を解き、帰郷すれば農工商人となった。もとより後世のように両刀を帯びて武士と称し、傍若無人で働かずに生活をし、甚だしい時には人を殺しても、お上が罪を問わないというようなことはなかった。  そもそも、神武天皇は珍彦を葛城の国造に任命し、以後軍団を設け衛士・防人の制度を始めて、神亀天平の時代に六府二鎮を設けて備えがなったのである。保元の乱・平治の乱以後、朝廷の軍規が緩み、軍事権は武士の手に落ち、国は封建制の時代となって、人は兵農分離とされた。さらに後世になって、朝廷の権威は失墜し、その弊害はあえていうべきものもなく甚だしいものとなった。  ところが、明治維新で諸藩が領土を朝廷に返還し、1871年(明治4)になって以前の郡県制に戻った。世襲で働かずに生活していた武士は、俸禄を減らし、刀剣を腰からはずすことを許し、士農工商の四民にようやく自由の権利を持たせようとしている。これは上下の身分差をなくし、人権を平等にしようとする方法で、とりもな...

日清修好条規 1871年09月13日

内容見直し点:口語訳中途 修好条規(口語訳、前文署名省略) 第一条 この条約締結のあとは、大日本国と大清国は弥和誼を敦うし、天地と共に窮まり無るべし。又両国に属したる邦土も、各礼を以て相待ち、すこしも侵越する事なく永久安全を得せしむべし。 第二条 両国好を通ぜし上は、必ず相関切す。若し他国より不公及び軽藐する事有る時、其知らせを為さば、何れも互に相助け、或は中に入り、程克く取扱い、友誼を敦くすべし。 第三条 両国の政事禁令各異なれば、其政事は己国自主の権に任すべし。彼此に於て何れも代謀干預して禁じたる事を、取り行わんと請い願う事を得ず。其禁令は互に相助け、各其商民に諭し、土人を誘惑し、聊違犯あるを許さず。 第四条 両国秉権大臣を差出し、其眷属随員を召具して京師に在留し、或は長く居留し、或は時々往来し、内地各処を通行する事を得べし。其入費は何れも自分より払うべし。其地面家宅を賃借して大臣等の公館と為し、並びに行李の往来及び飛脚を仕立書状を送る等の事は、何れも不都合がないように世話しなければならない。 第五条 両国の官位何れも定品有りといえども、職を授る事各同じからず。因彼此の職掌相当する者は、応接及び交通とも均く対待の礼を用ゆ。職卑き者と上官と相見るには客礼を行い、公務を辨ずるに付ては、職掌相当の官へ照会す。其上官へ転申し直達する事を得ず。又双方礼式の出会には、各官位の名帖を用う。凡両国より差出したる官員初て任所に到着せば、印証ある書付を出し見せ、仮冒なき様の防ぎをなすべし。 第六条 今後両国を往復する公文について、清国は漢文を用い、日本国は日本文を用いて漢訳文を副えることとする。あるいはただ漢文のみを用い、その記載に従うものとする。 (これ以下まだ) 第七条 両国好みを通ぜし上は、海岸の各港に於て彼此し共に場所を指定め、商民の往来貿易を許すべし。猶別に通商章程を立て、両国の商民に永遠遵守せしむべし。 第八条 両国の開港場には、彼此何れも理事官を差置き、自国商民の取締をなすべし。凡家財、産業、公事、訴訟に干係せし事件は、都て其裁判に帰し、何れも自国の律例を按して糾辨すべし。両国商民相互の訴訟には、何れも願書体を用う。理事官は先ず理解を加え、成丈け訴訟に及ばざる様にすべし。其儀能わざる時は、地方官に掛合い双方出会し公平に裁断すべし。尤盗賊欠落等の事件は、両国の地方官より...

帝国陸海軍作戦計画大綱 1945年01月25日

 帝国陸海軍作戦計画大綱(ひらがな化、一部新字体化、一部省略)  帝国陸海軍作戦計画大綱(昭和二十年一月二十日)    目 次(略)    第一 作戦方針  帝国陸海軍は機微なる世界情勢の変転に莅み重点を主敵米軍の進攻破摧に指向し随処縦深に亙り敵戦力を撃破して戦争遂行上の要域を確保し以て敵戦意を挫折し以て戦争目的の達成を図る    第二 作戦の指導大綱 一 陸海軍は戦局愈々至難なるを予期しつつ既成の戦略態勢を活用し敵の進攻を破摧し速に自主的態勢の確立に努む   右自主的態勢は今後の作戦推移を洞察し速に先つ皇土及之か防衛に緊切なる大陸要域に於て不抜の邀撃態勢を確立し敵の来攻に方りては随時之を撃破すると共に其の間状況之を許す限り反撃戦力特に精錬なる航空戦力を整備し以て積極不羈の作戦遂行に努むるを以て其の主眼とす 二 陸海軍は比島方面に来攻中の米軍主力に対し靭強なる作戦を遂行し之を撃破して極力敵戦力に痛撃を加ふると共に敵戦力の牽制抑留に努め此の間情勢の推移を洞察し之に即応して速に爾他方面に於ける作戦準備を促進す 三 陸海軍は主敵米軍の皇土要域方面に向ふ進攻特に其の優勢なる空海戦力に対し作戦準備を完整し之を撃破す   之か為比島方面より皇土南陲に来攻する敵に対し東支那海周辺に於ける作戦を主眼とし二、三月頃を目途とし同周辺要地に於ける作戦準備を速急強化す   敵の小笠原諸島来攻(硫黄島を含む)に対し極力之か防備強化に努む   又敵一部の千島方面進攻を予期し又状況に依り有力なる敵の直接本土に暴進することあるを考慮し之に対処し得るの準備に遺憾なからしむ 四 陸海軍は進攻する米軍主力に対し陸海特に航空戦力を総合発揮し敵戦力を撃破し其の進攻企図を破摧す 此の間他方面に在りては優勢なる敵空海戦力の来攻を予想しつつ主として陸上部隊を以て作戦を遂行するものとす   敵戦力の撃破は渡洋進攻の弱点を捕へ洋上に於て痛撃を加ふるを主眼とし爾後上陸せる敵に対しては補給遮断と相俟つて陸上作戦に於て其の目的を達成す 此の際火力の集団機動を重視す   尚敵機動部隊に対しては努めて不断に好機を捕捉し之を求めて漸減す 五 支那大陸方面に在りては左に準拠し主敵米軍に対する作戦を指導す (一) 支那大陸に於ける戦略態勢を速に強化し東西両正面より進攻する敵特に米軍を撃破して其の企図を破摧し皇土を中核とする大...