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満洲国指導方針要綱 1933年08月08日

満洲国指導方針要綱(原文:ひらがな、一部新字体化)

                     昭和八年八月八日
                     閣議決定
     満洲国指導方針要綱
       方   針
大日本帝国の満洲国指導は日満議定書の精神に基き満洲国をして大日本帝国と不可分的関係を有する独立国家として進歩発展せしむることを以て其の根本方針と為す
       要   綱
一、帝国の満洲国指導は力めて満洲国の社会的特性に順応し其の独立の体面と旧来の慣習とを尊重しつつ民族協和と安居楽業とを実現せしめ以て上下官民に光明と安心とを与へ万民喜んて建国の大業完成に邁進する如くするものとす固より此の間帝国の指導的威力の絶えさる潜在的躍動を保続するを要す
二、満洲国の国家根本組織、国防、治安及外交に関する事項、日満経済運営上特に重要なる基礎的事項並に国礎確立に関する重大内政事項に就ては積極的に之を指導するも爾余の点に就ては満洲国要路の自由活動に委するものとす
三、満洲国に対する指導は現制に於ける関東軍司令官兼在満帝国大使の内面的統轄の下に主として日系官吏を通して実質的に之を行はしむるものとす
 日系官吏は満洲国運営の中核たるへきを以て之か簡抜推挙を適正ならしめ之に本指導方針を徹底せしむるに付万遺憾なきを期すると共に特に此等日系官吏の活動の中心を得しめ其の統制に便する為総務庁中心の現制を維持せしむるものとす
四、満洲国は立憲君主制を究極の目標とするも当分は現制を維持し正式憲法は慎重熟議の上之を制定せしむるものとす
 満洲国に於ける政党其他の政治的団体は当分之を存在せしめさることを期するものとす
五、満洲国の行政は極端なる中央集権を排し成し得る限り地方自治の伝統を尊重し之と中央集権との調和に努めしめ各般制度の改革は漸を以て進ましむるものとす
六、満洲国の陸海軍備は国内の治安維持上必要なる限度に之を止めしむると雖も隣接国に対し必要なる防禦的設備、艦船等は所要に応し逐次之か整備に努めしむるものとす
七、満洲国の治安維持に就てに同国成立の特殊性と同国内外の事情とに鑑み特に査察機関を整備せしめ関東軍と連繋の上内外各種の国家破壊運動を未然に防遏することに努めしむるものとす尚治安に関しては満洲民族の特性たる自警能力の利用に遺憾なきを期するを要す
八、満洲国の外交政策は東洋の平和を確保し大義を宇内に顕揚せんとする帝国の外交政策に依拠し之と同一歩調にあらしむるものとす
 門戸開放機会均等の原則を保持せしむるも其の適用は主として国防上の要求に制約せられさる事項に之を限定せしむるものとす
九、満洲国の経済政策は帝国の対世界的経済力発展の根基を確立し併せて満洲国の経済力を強化する為日満両国経済を合理的に融合することを目標とし且国民生活の向上と衡平とを保障する如く策定するものとす
一〇、満洲国の経済開発は日満共存共栄を精神とし其の帝国国防上の要求に制約せらるるものは之を帝国の実権下に置くも其他のものは満洲国の実権下に於て適宜内外人の公正自由なる経済活動に依らしむるものとす
一一、満洲国に於ける交通及通信は国防及治安維持と特に緊密なる関係を有するを以て帝国政府の実権下に於て出来得る限り速に諸施設の統一的整備発達を期せしむるものとす
一二、満洲国の財政は国民負担の適正を考慮しつつ速に之を確立せしむると共に帝国駐満軍費を分担するの責を果さしむるものとす
 帝国政府関係の対支固定借款中満洲国に関係ある部分の利用乃至回収に就ては満洲国の財政其他の事情を考慮し其の処置を講するものとす
一三、満洲国民の教化に就ては同国民をして同国の帝国に対する不可分的関係を自覚せしむると共に東洋平和確保の特殊使命を有することの自尊心及五族協和の理想を涵養せしむることを主眼とし且労作教育に力点を注き実業教育を振興せしむるものとす
一四、満洲国の司法に関しては特に同国の国民性と習俗とを尊重し速に法制の整備及組織の充実を図り遍く遵法の美風を養成せしむると共に対外的信用の確立を期し以て治外法権の漸進的撤廃を実現することに努めしむるものとす
 備 考
  本件満洲国指導方針要鋼に基く具体的方策決定に関しては従来通り必要に応し対満蒙実行策案審議委員会 対満金融審議委員会又は日満産業統制委員会の議を経其の特に重要なるものに付ては閣議決定を経るものとす
(国立公文書館:満洲国指導方針要綱 昭和8年8月8日)

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内容見直し点:口語訳中途 修好条規(口語訳、前文署名省略) 第一条 この条約締結のあとは、大日本国と大清国は弥和誼を敦うし、天地と共に窮まり無るべし。又両国に属したる邦土も、各礼を以て相待ち、すこしも侵越する事なく永久安全を得せしむべし。 第二条 両国好を通ぜし上は、必ず相関切す。若し他国より不公及び軽藐する事有る時、其知らせを為さば、何れも互に相助け、或は中に入り、程克く取扱い、友誼を敦くすべし。 第三条 両国の政事禁令各異なれば、其政事は己国自主の権に任すべし。彼此に於て何れも代謀干預して禁じたる事を、取り行わんと請い願う事を得ず。其禁令は互に相助け、各其商民に諭し、土人を誘惑し、聊違犯あるを許さず。 第四条 両国秉権大臣を差出し、其眷属随員を召具して京師に在留し、或は長く居留し、或は時々往来し、内地各処を通行する事を得べし。其入費は何れも自分より払うべし。其地面家宅を賃借して大臣等の公館と為し、並びに行李の往来及び飛脚を仕立書状を送る等の事は、何れも不都合がないように世話しなければならない。 第五条 両国の官位何れも定品有りといえども、職を授る事各同じからず。因彼此の職掌相当する者は、応接及び交通とも均く対待の礼を用ゆ。職卑き者と上官と相見るには客礼を行い、公務を辨ずるに付ては、職掌相当の官へ照会す。其上官へ転申し直達する事を得ず。又双方礼式の出会には、各官位の名帖を用う。凡両国より差出したる官員初て任所に到着せば、印証ある書付を出し見せ、仮冒なき様の防ぎをなすべし。 第六条 今後両国を往復する公文について、清国は漢文を用い、日本国は日本文を用いて漢訳文を副えることとする。あるいはただ漢文のみを用い、その記載に従うものとする。 (これ以下まだ) 第七条 両国好みを通ぜし上は、海岸の各港に於て彼此し共に場所を指定め、商民の往来貿易を許すべし。猶別に通商章程を立て、両国の商民に永遠遵守せしむべし。 第八条 両国の開港場には、彼此何れも理事官を差置き、自国商民の取締をなすべし。凡家財、産業、公事、訴訟に干係せし事件は、都て其裁判に帰し、何れも自国の律例を按して糾辨すべし。両国商民相互の訴訟には、何れも願書体を用う。理事官は先ず理解を加え、成丈け訴訟に及ばざる様にすべし。其儀能わざる時は、地方官に掛合い双方出会し公平に裁断すべし。尤盗賊欠落等の事件は、両国の地方官より

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