対仏印泰施策要綱(原文:ひらがな、一部新字体化)
對佛印、泰施策要綱
昭和十六年一月三十日
大本営政府連絡会議決定
第一 目 的
大東亜共栄圏建設の途上に於て帝国の当面する仏印、泰に対する施策の目的は帝国の自存自衛の為仏印及泰に対し軍事、政治、経済に亘り緊密不離の結合を設定するに在り
第二 方 針
一、帝国は速に仏印及泰に対する施策を強化し目的の貫徹を期す之か為所要の威圧を加へ已むを得されは仏印に対し武力を行使す
二、本施策は英、米の策謀を排し敏速に之を強行して成るへく速に目的を概成す
第三 要 領
一、帝国は失地問題処理を目標とする仏印、泰間紛争の居中調停を強行し之を契機として帝国の仏印、泰両地域に於ける指導的地位を確立する如く施策す
二、泰に対しては成るへく速に日、泰協定を締結し仏国に対しては経済交渉の速決を図ると共に機を見て日、仏印間結合関係を増進すへき一般的協力並仏印、泰間紛争防止の保障及日、仏印間通商交通擁護を目的とする軍事的協力に関する協定を締結す
右協定に於て充足せらるへき帝国の政治的及軍事的要求左の如し
イ、仏国をして仏印に関し第三国と一切の形に於ける政治的軍事的協力をなささることを約せしむ
ロ、仏印特定地域に於ける航空基地及港湾施設の設定又は使用並之か維持の為所要機関の設置
ハ、帝国軍隊の居住、行動に関する特別なる便宜供与
三、政戦両略の妙用を期する為速に所要の作戦準備を整ふると共に武力行使の時機は予め機を失せす之を定む
四、交渉の経過に応し適時威圧を増大し目的の達成に勉む
右威圧行動に対し仏印か武力を以て抵抗せは当該部隊は武力を行使するも之を強行す
五、仏国か紛争解決に応せさる場合には仏印に対し武力行使を予定し其発動は別に決定せらるヽものとす
協定締結を拒否する場合に於ける武力行使は予め之か準備を為すも其発動は当時の情勢に依り決定す
右武力行使は仏国をして我要求に聴従せしむるを以て限度とし武力行使後に於ても極力仏印の治安維持、政治経済等は仏印当局をして当らしむるに勉む
六、泰にして我要求を拒否する場合に於ては日、泰協定の内容を変更し又は威圧を加ふる等極力我要求を容認せしむるに勉め如何なる場合に於ても泰をして英、米側に赴かしめさる如く施策す
七、本施策に応する如く帝国の輿論を統一すると共に徒に英、米を対象とする南方問題を激化せしめ無用の摩擦を生せさるに留意す
(国立公文書館:対仏印、泰施策要綱 大本営政府連絡会議決定 昭和16年1月30日)
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