対独伊ソ交渉案要綱(原文:かたかな、一部新字体化)
対独、伊、蘇交渉案要綱
昭和十六年二月三日 連絡会議決定
一、ソ連をして所謂「リッベントロップ」腹案を受諾せしめ右に依り同国をして英国打倒につき日、独、伊の制作に同調せしむると共に日、ソ国交の調整を期す
二、日、ソ国交調製条件は大体左記に拠る
(一)独逸の仲介に依り北樺太を売却せしむ
若しソ連か右に不同意の際は北樺太利権を有償放棄する代りに向ふ五ケ年間二百五十万頓の石油供給を約さしむ尤も之か為要すれは我方に於て北樺太に於ける原油増産を援助するものとす
右両者の何れに依るへきかは事態如何に依り決定す
(二)帝国はソ連の新疆外蒙に於ける地位を了承しソ連は帝国の北支蒙疆に於ける地位を了承す新疆外蒙とソ連との関係はソ、支間に於て取極めしむるものとす
(三)ソ連をして援蒋行為を放棄せしむ
(四)満、ソ、外蒙間に速かに国境画定及紛争処理委員会を設置す
(五)漁業交渉は建川提案(委員会案)に依り妥結に導く尤も漁業権は日、ソ国交調整上必要なれは放棄して差し支えなし
(六)日、独通商の為相当数量の貨物輸送に必要なる配車を為し且運賃の割引を約せしむ
三、帝国は大東亜共栄圏地帯に対し政治的指導者の地位を占め秩序維持の責任を負う
右地帯居住民族は独立を維持せしめ又は独立せしめるを原則とするも現に英、仏、蘭、葡等の属領たる地方にして独立の能力なき民族に付いては各其の能力に応し出来得る限りの自治を許与し我に於て其統治指導の責に任す
経済的には帝国は右地帯内に於ける国防資源に付優先的地位を留保するも其他の一般的通商企業に付いては他の経済圏と相互的に門戸開放機会均等主義を適用す
四、世界を大東亜圏、欧州圏(「アフリカ」を含む)米州圏、ソ連圏(印度、「イラン」を含む)の四大圏とし(英国には豪洲及「ニュージーランド」を残し概ね和蘭待遇とす)帝国は戦後の講和会議に於て之か実現を主張す
五、日本は極力米国の参戦を不可能ならしむる趣旨を以てする行動施策に付独逸当局との諒解を遂け置くこととす
六、独、伊特に独はソ連を牽制し万一日満両国を攻撃するか如き場合には独、伊は直ちにソ連を攻撃す
七、日本か欧州戦争に参加する場合には独、伊等味方諸国間に単独不講和協定を締結す
八、支那全面和平の促進に就きては尚独と懇談を遂く
九、松岡外相は渡欧の上独、伊、ソ各国政府と交渉し前記要領に貫徹に努力し要すれは条約を締結す
「リッベントロップ」腹案内容
日、独、伊を一方とし「ソ」連邦を他方とする取極を作成し
一、「ソ」連は戦争防止、平和の迅速回復の意味に於て三国条約の趣旨に同調することを表明し
二、「ソ」連は欧亜の新秩序に付夫々独、伊及日の指導的地位を承認し三国側は「ソ」連の領土尊重を約し
三、三国及「ソ」連は各々他方を敵とする国家を援助し又は斯の如き国家群に加はらさることを約す
右の外日、独、伊、「ソ」何れも将来の勢力範囲として日本には南洋、「ソ」連には「イラン」印度方面、独ニハ中央「アフリカ」、伊には北「アフリカ」を容認する旨の秘密了解を遂く
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