対南方施策要綱(原文:ひらがな、一部新字体化)
昭和十六年六月六日 大本営陸海軍部決定
一、大東亜共栄圏建設の途上に於て帝国の当面する対南方施策の目的は帝国の自存自衛の為速に総合国防力を拡充するに在り
之が為
(一)帝国と佛印、泰間に軍事、政治、経済に亘り緊密不離の結合関係を設定す
(二)帝国蘭印間に緊密なる経済関係を確立す
(三)帝国と其の他の南方諸邦間に於ては正常の通商関係を維持するに努む
二、帝国は外交的施策に方り右目的の貫徹を期するを本則とす
特に速やかに佛印、泰との間に軍事的結合関係を設定す
三、前号施策遂行に方り下記事態発生し之か打開の方策なきに於ては帝国は自存自衛の為武力を行使す
右の場合に於ける武力行使の目的、目標、時機、方法等に関しては当時の欧州戦局の展開並対「ソ」情勢を勘案し機を失せす別に定む
(一)英、米、蘭等の対日禁輸により帝国の自存を脅威せられたる場合
(二)米国か単独若くは英、蘭、支等と協同し帝国に対する包囲態勢を逐次加重し帝国国防上忍ひ得さるに至りたる場合
四、欧州戦争に於いて英本国の崩壊確実と予察せらるるに至らは本施策特に対蘭印外交措置を更に強化し目的達成に努む
五、帝国国内戦時体制の刷新は昭和十五年七月決定「基本国策要綱」に遵ひ速に実施するものとす
附一、佛印、泰に対する施策は昭和十六年二月一日御裁可の「対佛印、泰施策要綱」に拠るものとす
二、昭和十五年七月決定の「世界情勢の推移に伴ふ時局処理要綱」中支那事変の処理未た終わらさる場合に於ける南方施策に関する事項は本施策要綱に拠るものとす
三、支那事変処理完了せる場合、或は世界情勢著しく急変したる場合に於ける対南方施策は其の際更に別途決定せらるるものとす
(国立公文書館:8、対南方施策要綱 昭和16年6月6日)
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