対「ソ」外交交渉要綱(原文:ひらがな、一部新字体化)
対「ソ」外交交渉要綱
昭和二〇、 四、二九
方 針
帝国は飽迄対米英戦争を完遂する為日「ソ」戦回避を絶対の条件とし東亜問題に関し日「ソ」支の結合を強化し止むを得さるも大東亜戦争間「ソ」の対日厳正中立を目標とし徹底せる施策の下速かに対「ソ」交渉を行ふ
此の間情勢の推移に依り戦争終末に導入することあるを予期す
要 領
一、本施策は飽く迄対米戦を完遂するを本旨とし之か為帝国並満支の犠牲に於て「ソ」を我方に誘引し為し得る限り支那大陸に於ける米英「ソ」の確執を激成するを主眼とす
二、対「ソ」交渉に当り我方の提案すへき腹案要旨左の如し
米英の世界侵略就中東亜に於ける野望に対し日「ソ」支は善隣友好互助提携相互不侵略の原則の下強固に結合し以て相互の繁栄を図るを目的とし帝国は「ソ」連邦に対し左記を確約す
1.満洲国に於ける居住営業の自由
2.支那に於ける「ソ」連勢力特に延安政権の拡大強化要すれは其の希望する地域より日本軍の撤退
3.南方占拠地域に於ける戦後所望する権益の譲渡
4.満洲国及外蒙古共和国は本施策に同調すること
支那に於ける交渉の対照は延安政権とするも差支なきこと
之か為要すれは国民政府を解消せしむ
三、「ソ」にして前項交渉に当り強硬に要求するに於ては左記を容認することあり
1.北鉄の譲渡
2.漁業条約の破棄
3.満洲国、満鉄、遼東半島、南樺太朝鮮等につきては解消若くは譲渡することあるも当時情勢に依り之を定む
四、対「ソ」交渉に当り其の仲介若くは恫喝に依り世界終戦への導入を強要せられたる場合に於ては之に応することあるを予期す、其の場合に於ける条件は別に定むるも概ね前項諸項に準し極力帝国の地位を有利ならしむるに努む
五、世界情勢の転換就中独崩壊後に於ける欧州処理を中心とする米英「ソ」の確執激化せるの機に投し対「ソ」施策の急速なる進展を図るものとす
註
本施策は外務大臣自ら赴「ソ」し若くは特派使節を派遣して乾坤一擲の断を下さんとするに在り
(国立公文書館:昭和20年4月29日 対「ソ」外交交渉要綱)
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