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軍需工業動員法 1918年04月16日

軍需工業動員法(原文:一部ひらがな、一部新字体化)

法律第三十八号
   軍需工業動員法
第一条 本法に於て軍需品と称するは左の各号に掲くるものを謂フ
 一 兵器、艦艇、航空機、弾薬並軍用器具機械及物品
 二 軍用に供し得ヘキ船舶、海陸聯絡輸送設備、鉄道軌道及其の附属設備其の他の輸送用物件
 三 軍用に供し得ヘキ燃料、被服及糧秣
 四 軍用に供し得ヘキ衛生材料及獣医材料
 五 軍用に供し得ヘキ通信用物件
 六 前各号に掲くるものの生産又は修理に要する材料、原料、器具機械、設備及建築材料
 七 前各号に掲くるものを除クの外勅令を以て指定する軍用に供し得ヘキ物件
第二条 政府は戦時に際し軍需品の生産又は修理の為必要あるときは左の各号に掲くる工場及事業場並其の附属設備の全部又は一部を管理し、使用し又は収用することを得
 一 軍需品の生産又は修理を為す工場及事業場
 二 前号に掲くる工場及事業場に要する原料若は燃料を生産し又は電力若は動力を発生する工場及事業場
 三 前各号に掲くる工場に転用することを得る工場
第三条 政府は戦時に際し軍需品の生産、修理又は貯蔵の為必要あるときは土地並家屋倉庫其の他の工作物及其の附属設備の全部又は一部を管理し、使用し又は収用することを得
 政府は戦時に際し必要あるときは第一条第二号に掲くる物件の全部又は一部を管理することを得
第四条 前二条の場合に於て政府は従業者を供用セしむることを得
第五条 前三条の規定に依る処分に因り生したる損害は政府之を補償す
第六条 政府は戦時に際し軍需品又は第二条第二号の原料若は燃料の譲渡、使用、消費、所持、移動若は輸出入に関し必要ナる命令を為すことを得
第七条 戦時に際し第一条に掲くる物件にして徴発令中に規定ナキものを使用又は収用セむとするときは徴発令の規定を準用す
第八条 政府は戦時に際し兵役に在る者を徴兵令に拘ラす勅令の定むる所に依り召集して軍事輸送機関又は第二条の規定に依り政府の管理する工場若は事業場の業務に従事セしむることを得
 前項の規定は第二条各号に掲くる工場又は事業場にして国の経営に係るものに関し之を準用す
第九条 政府は戦時に際し勅令の定むる所に依り兵役に在ラさる者を徴用して前条に掲くる業務に従事セしむることを得
第十条 第二条又は第三条の規定に依り収用したる工場、事業場、土地又は家屋其の他の工作物及其の附属設備不用に帰したる場合に於て収用したる時ヨり五年内に払下くるときは旧所有者又は其の承継人に於て優先に之を買受くることを得
第十一条 政府は軍事上必要あるときは第二条各号に掲くる工場若は事業場を有する者又は其の管理者に対し其の事業に使用する設備、器具機械、従業者若は材料原料器具機械の供給者又は生産発生若は修理の能力若は数量其の他事業の状況に付必要と認むる事項の報告を命することを得
第十二条 政府は軍事上必要あるときは鉄道、軌道、船舶、海陸聯絡輸送設備其の他の輸送用物件の所有者又は管理者に対し車輌、軌条、船舶又は海陸聯絡輸送設備の数量、構造、輸送能力、従業者其の他必要と認むる事項の報告を命することを得
第十三条 政府は軍事上必要あるときは軍需品又は第二条第二号の原料若は燃料の取引又は保管を業とする者に対し其の取引の相手方、取引又は保管の数量、保管の設備其の他事業の状況に付必要と認むる事項の報告を命することを得
第十四条 政府は軍事上必要あるときは勅令の定むる所に依り第二条各号に掲くる工場若は事業場を有する者又は前条に掲くる者にして一定の資格あるものに対し予算の範囲内に於て一定の利益を保証し又は奨励金を下付することを得此の場合に於て政府は其の者に対し軍需品の生産、修理若は貯蔵を為さしめ又は軍事上必要ナる設備を為さしむることを得
 政府は前項の規定に依り利益保証又は奨励金下付を受くる事業を監督し又は之カ為必要ナる命令若は処分を為すことを得
第十五条 第五条の規定に依る補償金及前条の利益保証又は奨励金の算定並第十条の規定に依る払下価額は軍需評議会の決議を経て之を定む
 軍需評議会に関する規程は勅令を以て之を定む
第十六条 当該官吏又は吏員は第十一条乃至第十三条の規定に依り報告を命し得る事項調査の為又は第十四条の規定に依る監督若は処分を為す為必要ナる場所に立入り、検査を為し、調査資料の提供を求め又は従業者に対し質問を為すことを得
第十七条 工業的発明に係る物又は方法に関し予め政府の承認を得たる事項又は設備に付ては報告を命し、検査を為し、調査資料の提供を求め又は従業者に対し質問を為すことを得す
第十八条 利益保証又は奨励金を受くる事業を承継する者は本法若は本法に基キて発する命令之に依りて為す処分又は利益保証若は奨励金下付に附したる条件に依る前者の権利義務を承継す
第十九条 左の各号の一に該当する者は三年以下の懲役又は三千円以下の罰金に処す
 一 第二条又は第三条の規定に依る管理、使用又は収用を拒ミたる者
 二 第四条の規定に依る供用を拒ミたる者
 三 第六条の規定に依る命令に違反したる者
第二十条 第十四条第一項の規定に依る命令に違反したる者は二年以下の懲役又は二千円以下の罰金に処す
 戦時に際し前項の罪を犯したるとき罰前条に同し
第二十一条 左の各号の一に該当する者は一年以下の懲役又は千円以下の罰金に処す
 一 第八条の規定に依る召集に応セす又は同条の規定に依る業務に従事することを拒ミたる者
 二 第九条の規定に依る徴用に応セす又は同条の規定に依る業務に従事することを拒ミたる者
 三 第十一条乃至第十三条の規定に依り命セラレたる報告を為さす又は虚偽の報告を為したる者
 四 第十四条第二項の規定に依る命令に違反したる者
 五 第十六条の規定に依る当該官吏又は吏員の職務の執行を拒ミ妨ケ若は忌避し、調査資料の提供を為さす若は虚偽の調査資料を提供し又は質問に対し虚偽の陳述を為したる者
第二十二条 当該官吏若は吏員又は其の職に在りたる者本法に依る職務に依り知得したる事業上の秘密を漏洩し又は窃用したるときは二年以下の懲役又は二千円以下の罰金に処す当該官吏又は吏員第十七条の規定に違反したるとき亦同し
 職務上前項の秘密を知得したる他の公務員又は公務員たりし者其の秘密を漏洩し又は窃用したるとき罰前項に同し
(国立公文書館:軍需工業動員法・御署名原本・大正七年・法律第三十八号) 

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