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臨時資金調整法 1937年09月09日

臨時資金調整法(原文:ひらがな、一部新字体化)

法律第八十六号
   臨時資金調整法
第一条 本法は支那事変に関連し物費及費金の需給の適合に資する為国内資金の使用を調整するを目的とす
第二条 銀行、信託会社、保險会社、産業組合中央金庫、商工組合中央金庫及北海道府県を区域とする信用組合連合会(以下金融機関と総称す)は事業に属する設備の新設、擴張若は改良に関する資金の貸付を為し又は有価証券の応募、引受若は募集の取扱を為さんとするときは命令の定る所に依り政府の許可を受くべし金融機関に非ずして有価証劵の引受又は募集の取扱を業とする者(以下之を証券引受業者と称す)有価証券の応募、引受又は募集の取扱を為さんとするとき亦同じ
第三条 金融機関又は証券引受業者前条の貸付又は有価証券の応募、引受若は募集の取扱に関し本法の目的に従ひ政府の適当と認むる方法に依り自治的に調整を為すものなるときは之に対し命令の定むる所に依り前条の規定を適用せざることを得
第四条 命令の定むる会社の設立は政府の認可を受くるに非ざれば其の効力を生ぜず会社の資本増加、合併又は目的変更にして命令の定むるものに付亦同じ
 命令の定むる会社左の各号の一に該当する場合に於ては政府の許可を受くべし
 一 第二回以後の株金の払込を為さしめんとするとき
 二 株金の払込、社債の募集又は金融機関よりの借入に依らずして命令の定むる限度を超ゆる事業設備の新設、拡張又は改良を為さんとするとき
 三 他人をして引受又は募集の取扱を為さしめずして社債を募集せんとするとき
第五条 政府は命令の定むる所に依り第二条又は前条の許可又は認可に関する事務を日本銀行をして取扱はしむ
 前項の事務の取扱に要する経費は日本銀行の負担とす
 第一項の場合に於て当該事務に従事する日本銀行職員は之を法令に依り公務に従事する職員と看做す
第六条 日本興業銀行は五億円を限り日本興業銀行法第十二条の規定に依る制限を超えて債券を発行することを得
 日本興業銀行は其の債券借換の為債券を発行する場合に於ては前項の制恨に依らざることを得
 日本興業銀行法第十六条の規定は之を適用せず
 政府は第一項の規定に依り発行する債券に付命令の定むる所に依り額面金額五億円を限り其の元本の償還及利息の支払を保証することを得 
第七条 金資金は金資金特別会計法第四条の規定に依るの外之を興業債券に運用することを得
第八条 命令の定むる時局に緊要なる事業を営む会社は事業拡張の場合に於て命令の定むる所に依り政府の認可を受け其の事業に屬する設備の費用に充つる為株金全額払込前と雖も其の資本を増加することを得
第九条 命令の定むる時局に緊要なる事業を営む会社は命令の定むる所に依り政府の認可を受け其の事業に属する設備の費用に充つる為商法第二百条の規定に依る制限を超えて社債を募集することを得但し社債の総額は払込みたる株金額の二倍を超ゆることを得ず
 最終の貸借対照表に依り会社に現存する財産が払込みたる株金額に満たざるときは前項の規定を適用せず
 第一項の規定に依り募集する社債に付ては担保付社債信託法に依る物上担保を付することを要す
第十条 政府は第八条の規定に依り資本を増加したる会社又は前条の規定に依り社債を募集したる会社に対し其の業務及会計に関し監督上必要なる命令を発し又は処分を為すことを得
第十一条 資金使用の調整に関し重要なる事項を調査審議する為臨時資金調整委員会を置く
 臨時資金調整委員会に関する規程は勅令を以て之を定む
第十二条 第二条、第四条、第八条又は第九条第一項の規定に依る許可又は認可に関する処分にして事案の重要なるものに付ては臨時資金審査委員会の議を経ベし
 臨時資金審査委員会に関する規程は勅令を以て之を定む
第十三条 政府は日本勧業銀行をして收入金二億円に逹する迄貯蓄債券を発行せしむることを得
 貯蓄債券は無記名とし券面金額を二十円以下とす
第十四条 貯蓄債券は発行の翌年より三十五年内に毎年二回以上抽籤を以て之を償還すベし
 貯蓄債券を償還する場合には売出価格の百五十倍以内の割増金を付与することを得其の方法及金額は主務大臣之を定む
 前項の割増金は主務大臣の定むる価格に依り国債証券を以て交付することを得
第十五条 復興貯蓄債権法第三条、第五条、第六条、第七条第一項及第八条竝に日本勧業銀行法第三十五条の二、第三十五条の三、第四十条及第四十二条の規定は貯蓄債券に之を準用す
第十六条 政府は資金の状況を調査する為必要ありと認むるときは命令の定むる所に依り左の各号に掲ぐる事項に関し関係者より報告を徴し又は帳簿其の他の検査を為すことを得
 一 資金の需給及移動に関する事項
 二 有価証券に関する事項
 三 国際収支に関する事項
 四 事業の資金計畫に関する事項
第十七条 左の各号の一に該当する者は五千円以下の罰金に処す
 一 第二条の規定に違反し許可を受けずして資金の貸付を為し又は有価証劵の応募、引受若は募集の取扱を為したる者
 二 第四条第二項の規定に違反し許可を受けずして株金払込の催告、設備の新設、拡張若は改良又は社債の募集を為したる者
第十八条 左の各号の一に該当する者は五百円以下の罰金に処す
 一 第十条の規定に依る命令又は処分に違反したる者
 二 第十六条の規定に違反し報告を為さず、虚偽の報告を為し又は検査を拒み、妨げ忌避したる者
 三 本法又は本法に基きて発する命令に依り政府に提出すベき許可又は認可の申請書其の他の書類に虚偽の記載を為したる者
第十九条 法人の代表者又は法人若は人の代理人、使用人其の他の従業者が其の法人又は人の業務に関して前二条の違反行為を為したるときは行為者を罰するの外其の法人又は人に対し亦前二条の罰金刑を科す
第二十条 当該官吏、委員若は第五条第三項に規定する日本銀行職員又は其の職に在りたる者本法に依る職務執行に関し知得たる法人又は人の業務上の秘密を漏洩し又は竊用したるときは千円以下の罰金に処す
第二十一条 本法を朝鮮、台湾又は樺太に施行する場合に於て必要あるときは勅令を以て特別の定を為すことを得
   附 則
本法施行の期日は各条に付勅令を以て之を定む
本法は第十四条及第十五条を除き支那事変終了後一年内に之を廃止するものとす
(国立公文書館:臨時資金調整法(勅令第四百九十二号及第五百二十六号参看)・...)

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