日華協議記録(原文:ひらがな、一部新字体化)
日華協議記録
昭和十三年十一月二十日、日本側影佐禎昭、今井武夫の両名は中国側高宗武、梅思平の両名と左記の如き内容を協議成立せり
左 記
第一 日華両国は共産主義を排撃すると共に侵略的諸勢力より東亜を解放し東亜新秩序建設の共同理想を実現せんが為め相互に公正なる関係に於いて軍事、政治、経済、文化、教育等の諸関係を律し善隣友好、共同防共、経済提携の実を挙げ強固に結合す之が為左記条件を決定す
第一条 日華防共協定を締結す
其内容は日独伊防共協定に準じて相互協力を律し且日本軍の防共駐屯を認め内蒙地方を防協特殊地域となす
第二条 中国は満洲国を承認す
第三条 中国は日本人に中国内地に於ける居住、営業の自由を承認し日本は在華治外法権の撤廃を許容す
又日本は在華租界の返還をも考慮す
第四条 日華経済提携は互恵平等の原則に立ち密に経済合作の実を挙げて日本の優先権を認め特に華北資源の開発利用に関しては日本に特別の便利を供与す
第五条 中国は事変の為生じたる在華日本居留民の損害を補償するを要するも日本は戦費の賠償を要求せず
第六条 協約以外の日本軍は日華両国の平和克復後即時撤退を開始す
但し中国内地の治安恢復と共に二年以内に完全に撤兵を完了し中国は本期間に治安の確立を保証し且駐兵地点は相方会議の上之を決定す
第二 日本政府に於て右時局解決条件を発表せば汪精衛氏等中国側同志は直に蒋介石との絶縁を闡明し且東亜新秩序建設の為め日華提携竝反共政策を声明すると共に機を見て新政府を樹立す
昭和十三年十一月二十日
日本側 影佐禎昭
今井武夫
中国側 高宗武
梅思平
日華協議記録諒解事項
一、第一条の防共駐屯は内蒙及連絡線確保の為平津地方に駐兵するものとす
又其駐兵期間は日華防共協定有効期間とす
二、第四条の優先権とは列国との同一条件の場合に日本に優先権を供与するの意とす
三、日本は事変の為め生じたる難民の救済に協力す
昭和十三年十一月二十日
日本側
中国側
日華秘密協議記録
日華両国は東亜新秩序を建設し善隣として強固に結合せんが為め今後左記諸条件の実行を為す
第一条 日華両国は東洋の新秩序建設の為め相互に親日親華教育竝政策を実施す
第二条 日華両国は蘇連邦に対し共同の宣伝機関を設置し且つ軍事攻守同盟条約を締結し平時に在りては相互に情報を交換し内蒙竝其連絡線確保の為め必要なる地域には日本軍を新彊には中国軍を駐屯して協力し戦時に在りては共同作戦を実行す
第三条 日華両国は共同して東洋の半植民地的地位より漸次開放し日本は中国を援助して一切の不平等条約を撤廃せしむ之が為め協力して所要の処置を講ずるものとす
第四条 日華両国は東洋の経済復興を目的として経済的に合作し其の具体的弁法は別に研究す
尚経済合作は中国以外の南洋等に於ても同一主義を以て合作す
第五条 右条項実施の為め日華両国は必要なる委員会を置く
第六条 日華両国は成るべく亜細亜に於ける日華両国以外の諸国を本協定に加盟するに努む
昭和十三年十一月二十日
(国立公文書館:其2 日華協議記録)
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