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阿片吸食防止に関する協定 1931年11月27日

 阿片吸食防止に関する協定(訳文、ひらがな、一部新字体化)


条約第六号

    協定

(前文省略)

   第一条

阿片の小売及分配は政府の店舗即ち政府に依り所有せられ且管理せらるる店舗に於て又は地方的事情が政府の店舗の開設を困難ならしむる場合には政府に依り特に指名せられ且一定の給与を受くるのみにして売上に対する手数料を受けざる者に依り政府の監視の下に管理せらるる店舗に於てのみ行はるべし

前項の規定は吸食者の特許及吸食許可量の制度にして同等の若は一層有効なる保障を与ふるものが実施中なるとき又は専売局に依り管理せらるる販売所が厳に暫定的の措置として存続する間は之を適用せざることを得

   第二条

一 二十一歳未満の者は阿片を吸食すること及吸食所に入ることを禁止せらるべし

二 二十一歳未満の者を誘引して阿片を吸食せしめ、阿片吸食所に入らしめ若は阿片を取得せしめたる者又は二十一歳未満の者の右行為を幇助したる者は罪を犯すことと為るべく右罪に対しては監禁刑を含む厳重なる刑罰が規定せらるべし

   第三条

締約国は既に一般に実施せられ居る阿片煙膏の現金のみに依る販売の慣行に法律上の根拠を与ふることを約す

   第四条

阿片煙膏の製造の取締を一層厳重ならしむる為政府の独占事業は同一国の他の領域に於ける政府の独占事業の工場より阿片煙膏の供給を受くることを得べし

   第五条

本協定は阿片煙膏の使用が一時的に許容せらるる締約国の極東の属地又は領域(租借地又は保護領を含む)にのみ適用せらる

締約国は批准の際に其の本協定の受諾が其の保護権のみを行使する地域を包含せざることを宣言するを得べく又右に依り除外せられたる保護領に関し国際連盟事務総長に寄託せらるる加入の通告の方法に依り其の後に於て加入することを得事務総長は右加入を直に他の一切の締約国に通告すべし

   第六条

本協定は仏蘭西語及英吉利語の本文を以て共に正文とし批准せらるべし

批准書は成るべく速に国際連盟事務総長に寄託せらるべし

本協定は一切の締約国に依り批准せらるる迄実施せられざるべし其の実施の日は国際連盟事務総長に依る最後の批准書の受領後九十日目たるべし

本協定は其の実施の日に於て国際連盟事務総長に依り登録せらるべし

   第七条

締約国の一が本協定を廃棄せんと欲するときは右廃棄は国際連盟事務総長に書面を以て通告せらるべし事務総長は直に右通告の謄本を他の一切の締約国に送付し通告受領の日を之に通知すべし

廃棄は之を通告したる締約国に関してのみ且其の通告が事務総長に到達したる後一年にして効力を生ずべし

(以下、署名等省略)


阿片吸食防止に関する協定(原文)


                            AGREEMENT.

(前文省略)

                                 Article Ⅰ.

 The retail sale and distribution of opium shall take place only from Government shops-that is, shops owned and managed by the Government, or, where the local circumstances make the establishment of a Government shop difficult, from shops managed, under Government supervision, by persons appointed by the Government for that purpose and remunerated by a fixed payment only and not by a commission on sales.

 The foregoing frpvision need not be applied if a system of licensing and rationing of smokers is in force, which affords equivanent or more effective guarantees, or during the continuance, as a strictly temporary measure, of selling-establishments controlled by the Monopoly.

                                 Article Ⅱ.

 1. Persons under twenty-one years of age shall be prohibited from smoking opium and from entering any smokingestablishment.

 2. Any person inducing a person under twenty-one years of age to smoke opium or to enter an opium-smoking establishment or to procure opium, or facilitating any such act on the part of such a person, shall be guilty of an offence, for which severe penalties, including a term of imprisonment, shall be provided.

                                 Article Ⅲ.

 The High Contracting Parties agree to give a legal basis to the practice, already generally in operation, of selling prepared opium for cash only.

                                 Article Ⅳ.

 For the purpose of rendering stricter the control of the manufacture of prepared opium, it shall be permissible for a Government Monopoly to be supplied with prepared opium from the factory of a Government Monopoly in another territory of the same Power.

                                 Article Ⅴ.

 The present Agreement applies only to the Far-Eastern possessions or territories of the High Contracting Parties, including leased or protected territories, in which the use of prepared opium is temporarily authorised.

 At the moment of ratification any High Contracting Party may declare that its acceptance of the Agreement does not include any territory over which it exercises only a protectorate; and may accede subsequently, in respect of any protectorate thus excluded, by means of a notification of accession deposited with the Secretary-General of the League of Nations who shall forthwith notify the accession to all the other High Contracting Parties.

                                 Article Ⅵ.

 The present Agreement, of which the French and English texts are both authentic, shall be subject to ratification.

 The instruments of ratification shall be deposited with the Secretary-General of the League of Nations as soon as possible.

 The Agreement shall not come into force until it has been ratified by all the High Contracting Parties. The date of its coming into force shall be the ninetieth day after the receipt by the Secretary-General of the League of Nations of the last ratification.

 The Agreement shall be registered by the Secretary-General of the League of Nations upon the day of its coming into force.

                                 Article Ⅶ.

 If one of the High Contracting Parties should wish to denounce the present Agreement, the denunciation shall be notified in writing to the Secretary-General of the League of Nations, who will immediately communicate a copy of the notification to all the other High Contracting Parties, informing them of the date on which it was received.

 The denunciation shall take effect only as regards the High Contracting Party which notified it, and one year after the notification thereof has reached the Secretary-General.

(以下、署名等省略)

(国立公文書館:阿片吸食防止ニ関スル協定・御署名原本・昭和十二年・条約第六号

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