食糧管理法(一部省略、ひらがな化、一部新字体化)
法律第四十号
食糧管理法
第一条 本法は国民食糧の確保及国民経済の安定を図る為食糧を管理し其の需給及価格の調整並に配給の統制を行ふことを目的とす
第二条 本法に於て主要食糧とは米穀、大麦、裸麦、小麦其の他勅令を以て定むる食糧を謂ふ
第三条 米穀、大麦、裸麦又は小麦(以下米麦と称す)の生産者又は土地に付権利を有し小作料として之を受くる者は命令の定むる所に依り其の生産し又は小作料として受けたる米麦にして命令を以て定むるものを政府に売渡すべし
前項の場合に於ける政府の買入の価格は勅令の定むる所に依り生産費及物価其の他の経済事情を参酌して之を定む
第四条 政府は其の買入れたる米麦を食糧営団又は政府の指定する者に売渡すものとす
前項の場合に於ける政府の売渡の価格は勅令の定むる所に依り家計費及物価其の他の経済事情を参酌して之を定む
第五条 政府は必要ありと認むるときは米麦以外の主要食糧の買入又は売渡を為すことを得
前項の場合に於ける政府の買入又は売渡の価格は時価に準拠して之を定む
第六条 政府は必要ありと認むるときは主要食糧の輸入若は移入を目的とする買入又は輸出若は移出を目的とする売渡を為すことを得
前項の場合に於ける政府の買入又は売渡の価格は政府之を定む
第七条 政府は勅令の定むる所に依り主要食糧の貸付又は交付を為すことを得
政府は必要ありと認むるときは主要食糧の貯蔵、交換、加工又は製造を為すことを得
第八条 第五条第一項の者は同項の規定に依り其の者が政府に売渡すべき米麦に付勅令の定むる所に依り検査を受くべし但し勅令を以て定むる場合は此の限に在らず
政府は必要ありと認むるときは前項の検査の外勅令の定むる所に依り主要食糧に付検査を受くべきことを命ずることを得
第九条 政府は特に必要ありと認むるときは勅令の定むる所に依り主要食糧の配給、加工、製造、譲渡其の他の処分、使用、消費、保管及移動に関し必要なる命令を為すことを得
第十条 政府は特に必要ありと認むるときは勅令の定むる所に依り主要食糧の価格、加工賃又は製造の料金に関し必要なる命令を為すことを得
第十一条 米麦の輸出若は移出又は輸入若は移入は勅令に別段の定ある場合を除くの外政府の許可を受くるに非ざれば之を為すことを得ず
前項の規定に依り政府の許可を受け米麦を輸入又は移入したる者は命令の定むる所に依り其の輸入又は移入したる米麦にして命令を以て定むるものを政府に売渡すべし
前項の場合に於ける政府の買入の価格は政府之を定む
政府は特に必要ありと認むるときは勅令の定むる所に依り期間を指定し米麦以外の主要食糧の輸出若は移出又は輸入若は移入を禁止又は制限することを得
第十二条 政府は必要ありと認むるときは勅令の定むる所に依り期間を指定し主要食糧の輸入税を増減又は免除することを得
第十三条 主要食糧の生産費、生産高、現在高及移動の調査、家計費の調査其の他主要食糧の管理を行ふ為必要なる調査に関し必要なる事項は命令を以て之を定む
政府は命令の定むる所に依り前項の調査を行ふ為必要なる報告を徴し又は当該官吏若は吏員をして必要なる場所に臨検し業務の状況若は帳簿書類其の他の物件を検査せしむることを得
第十四条 食糧営団は法人とし政府之を監督す
食糧営団は中央食糧営団及地方食糧営団とす
食糧営団に非ざる者は食糧営団又は之に類似する名称を用ふることを得ず
第十五条 中央食糧営団は政府の定むる食糧配給計画に基き主要食糧を配給すると共に政府の指定する食糧を貯蔵する為必要なる事業を行ふことを目的とす
中央食糧営団は主たる事務所を東京市に置く
中央食糧営団は政府の認可を受け必要の地に従たる事務所を設置することを得
第十六条 中央食糧営団の資本金は一億円とし之を二百万口に分ち一口の出資金額を五十円とす但し資本金は政府の認可を受け之を増加することを得
政府は五千万円を限り中央食糧営団に出資すべし
政府の引受けたる出資の出資金払込は其の他の出資の出資金払込と之を異にすることを得
第十七条 中央食糧営団は定款を以て出資者の資格を制限することを得
第十八条 中央食糧営団に総裁副総裁各一人、理事五人以上、監事三人以上及評議員若干人を置き政府之を命ず
第十九条 中央食糧営団は左の事業を行ふものとす
一 主要食糧の買入
二 地方食糧営団又は政府の指定する者に対する主要食糧の売渡
三 政府の指定する食糧の貯蔵
四 政府の指定する主要食糧の加工、製造及保管
五 前各号の事業に附帯する事業
六 前各号の外中央食糧営団の目的達成上必要なる事業
中央食糧営団前項第五号又は第六号の事業を行はんとするときは政府の認可を受くべし
中央食糧営団は政府の認可を受くるに非ざれば其の事業の全部又は一部を廃止し又は休止することを得ず
第二十条 政府は中央食糧営団に対し主要食糧の配給上必要なる事業を行ふべきことを命じ其の他業務に関し公益上必要なる命令を為すことを得
第二十一条 中央食糧営団は政府の許可を受け其の寄託を受けたる物に付倉荷証券を発行することを得
商業組合法第三条の六第二項第三項、第三条の七、第三条の八第一項第二項本文及第三条の九の規定は前項の倉荷証券に付之を準用す但し同法第三条の七、第三条の八第一項及第三条の九中商業組合倉庫証券とあるは食糧営団倉庫証券とす
第二十二条 中央食糧営団は払込資本金額の五倍を限り食糧営団債券を発行することを得
政府は食糧営団債券の元利支払を保証することを得
第二十三条 中央食糧営団は販売の目的を以て買入るる者に主要食糧を売渡すときは命令の定むる所に依り政府の認可を受け其の主要食糧の販売に関し必要なる事項を指示することを得
政府は主要食糧の配給上特に必要ありと認むるときは前項の者に対し同項の指示に従ふべきことを命ずることを得
第二十四条 中央食糧営団の解散及精算に関し必要なる事項は勅令を以て之を定む
第二十五条 地方食糧営団は地方長官(樺太庁長官を含む以下同じ)の定むる食糧配給計画に基き地方的に主要食糧を配給すると共に地方長官の指定する食糧を貯蔵する為必要なる事業を行ふことを目的とす
地方食糧営団の名称、資本金及主たる事務所の所在地は政府之を定む
地方食糧営団の名称には其の主たる事務所の所在する道府県の名(樺太に在りては樺太)を冠す
政府は樺太に地方食糧営団を設立せしむる場合に於ては八百万円を限り之に出資することを得
前項の規定に依る出資は樺太庁特別会計の歳出とし之に因り取得したる出資証券は同会計の所属物件とす
第十六条第三項の規定は第四項の規定に依る出資の出資金払込に之を準用す
第二十六条 中央食糧営団は政府の認可を受け地方食糧営団に出資することを得
第十六条第三項の規定は前項の規定に依る出資の出資金払込に之を準用す
第二十七条 地方食糧営団に理事長一人、理事三人以上、監事二人以上及評議員若干人を置き地方長官を命ず
第二十八条 地方食糧営団は左の事業を行ふものとす
一 主要食糧の買入及売渡
二 地方長官の指定する食糧の貯蔵
三 地方長官の指定する主要食糧の加工及製造
四 前各号の事業に附帯する事業
五 前各号の外地方長官の指定する主要食糧の保管其の他地方食糧営団の目的達成上必要なる事業
地方食糧営団前項第四号又は第五号の事業を行はんとするときは地方長官の認可を受くべし
第二十九条 第十五条第三項、第十七条、第十九条第三項、第二十条、第二十一条、第二十三条及第二十四条の規定は地方食糧営団に付之を準用す
第三十条 (農地開発法準用の規定、省略)
第三十一条 (罰則規定、以下第四十二条まで省略)
第三十二条
第三十三条
第三十四条
第三十五条
第三十六条
第三十七条
第三十八条
第三十九条
第四十条
第四十一条
第四十二条
第四十三条 本法の一部は勅令の定むる所に依り之を樺太に適用せざることを得
樺太に於て本法を適用するに付必要なる事項に関しては勅令を以て特例を設くることを得
附 則
第四十四条 本法施行の期日は各規定に付勅令を以て之を定む
第四十五条 左に掲ぐる法律は之を廃止す
一 農産物検査法
二 米穀統制法
三 米穀自治管理法
四 米穀配給統制法
五 籾共同貯蔵助成法
六 政府所有米穀特別処理法
七 昭和九年法律第五十二号
八 昭和十二年法律第九十号
前項に掲ぐる法律廃止前当該法律の罰則を適用すべかりし行為に付ては仍従前の例に依る
第一項に掲ぐる法律の廃止に関し必要なる規定は勅令を以て之を定む
第四十六条 政府は設立委員を命じ中央食糧営団の設立に関する事務を処理せしむ
第四十七条 設立委員は定款を作成し政府の認可を受くべし
政府は前項の認可を為したるときは第十九条第一項に掲ぐる事業と同種の事業を行ふ株式会社、商業組合、商業組合連合会、工業組合又は工業組合連合会にして勅令を以て定むるものに対し其の解散を命ずることを得
前項の命令を受けたる法人は中央食糧営団成立の時解散するものとし其の権利義務は中央食糧営団之を承継す此の場合に於ては他の法令中解散及清算に関する規定は之を其の法人に適用せず
第四十八条 前条第一項の認可ありたるときは設立委員は政府の引受けたる出資及勅令の定むる所に依り政府の認可を受け同条第二項の命令に係る法人の株式又は出資に引当てたる出資を控除したる残余の出資に付出資者を募集すべし
政府は前項の認可を為さんとするときは食糧配給事業評価委員会の議を経べし
食糧配給事業評価委員会に関する規程は勅令を以て之を定む
第四十九条 設立委員は出資者の募集を終りたるときは出資申込書を政府に提出し其の検査を受くべし
設立委員は前項の検査を受けたる後遅滞なく出資第一回の払込を為さしむべし
出資第一回の払込完了したるときは出資者の総会を招集すべし
前項の総会終結したるときは設立委員は遅滞なく其の事務を中央食糧営団総裁に引渡すべし
総裁前項の事務の引渡を受けたるときは総裁、副総裁、理事及監事の全員は主たる事務所の所在地に於て設立の登記を為すべし
中央食糧営団は設立の登記を為すに因りて成立す
第五十条 本法に規定するものの外中央食糧営団の設立及第四十七条第二項の命令に係る法人の解散に関し必要なる事項は勅令を以て之を定む
第五十一条 前五条の規定は地方食糧営団に付之を準用す但し第四十七条第二項中第十九条第一項とあるは第二十八条第一項とす
第五十二条 第四十七条第三項の規定に依り解散したる商業組合又は商業組合連合会の発行したる倉荷証券あるときは之を当該商業組合又は商業組合連合会の権利義務を承継したる食糧営団の発行したる倉荷証券と看做す
第五十三条 (関連法令の改正、以下第五十六条まで省略)
第五十四条
第五十五条
第五十六条
第五十七条 第十四条第三項の規定施行の際現に食糧営団又は之に類似する名称を使用する者は同項の規定施行後六月以内に其の名称を変更することを要す
第四十二条の規定は前項の期間内之を同項の者に適用せず
(国立公文書館:食糧管理法・御署名原本・昭和十七年・法律第四〇号)
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