戦時金融金庫法(ひらがな、一部新字体化、一部省略)
法律第三十二号
戦時金融金庫法
第一章 総則
第一条 戦時金融金庫は戦時に際し生産拡充及産業再編成等の為必要なる資金にして他の金融機関等より供給を受くること困難なるものを供給し併せて有価証券の市価安定を図ることを目的とす
戦時金融金庫は法人とす
第二条 戦時金融金庫は主たる事務所を東京市に置く
戦時金融金庫は主務大臣の認可を受け必要の地に従たる事務所を設置し又は銀行其の他主務大臣の指定する者をして業務の一部を取扱はしむることを得
第三条 戦時金融金庫の資本金は三億円とし之を三百万口に分ち一口の出資金額を百円とす
但し資本金は主務大臣の認可を受け之を増加することを得
第四条 戦時金融金庫は出資に対し出資証券を発行す
出資証券に関し必要なる事項は勅令を以て之を定む
第五条 政府は二億円を限り戦時金融金庫に出資することを得
前項の出資は国債証券を交付して之を為すことを得
前項の規定に依り交付する国債証券の交付価格は時価を参酌して大蔵大臣之を定む
第六条 戦時金融金庫の出資者の責任は其の出資額を限度とす
出資者は戦時金融金庫に払込むべき出資額に付相殺を以て之に対抗することを得ず
第七条 出資者は戦時金融金庫の承認を経て其の持分を譲渡すことを得
第八条 払込を怠りたる出資者に対し戦時金融金庫が一月以上の相当の期間を定め払込の請求を為したるに拘らず出資者が払込を為さざるときは戦時金融金庫は主務大臣の認可を受け其の出資者の持分を処分することを得
戦時金融金庫は持分の処分に依りて得たる金額より滞納金額及定款を以て定むる違約金の額を控除したる金額を従前の出資者に払戻すことを要す
持分の処分に依りて得たる金額が滞納金額に満たざる場合に於ては戦時金融金庫は従前の出資者に対し不足額の弁済を請求することを得
前三項の規定は戦時金融金庫が損害賠償及定款を以て定むる違約金の請求を為すことを妨げず
出資者が第一項の期間内に払込を為さざるときは戦時金融金庫は其の出資者に対し二週間内に出資証券を戦時金融金庫に提出すべき旨を通知することを要す此の場合に於て提出なき出資証券は其の効力を失ふ
前項の場合に於ては戦時金融金庫は遅滞なく失効したる出資証券の番号並に其の出資者の氏名及住所を公告することを要す
第九条 戦時金融金庫は定款を以て左の事項を規定すべし
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 資本金額及資産に関する事項
五 役員に関する事項
六 業務及其の執行に関する事項
七 戦時金融債券の発行に関する事項
八 会計に関する事項
九 公告の方法
定款の変更は主務大臣の認可を受くるに非ざれば其の効力を生ぜず
第十条 戦時金融金庫は勅令の定むる所に依り登記を為すことを要す
前項の規定に依り登記すべき事項は登記の後に非ざれば之を以て第三者に対抗することを得ず
第十一条 戦時金融金庫に付解散を必要とする事由発生したる場合に於て其の処置に関しては別に法律を以て之を定む
第十二条 戦時金融金庫に非ざる者は戦時金融金庫又は之に類似する名称を用ふることを得ず
第二章 職員
第十三条 戦時金融金庫に役員として総裁副総裁各一人、理事五人以上、監事二人以上及評議員若干人を置く
第十四条 総裁は戦時金融金庫を代表し其の業務を総理す
副総裁は定款の定むる所に依り戦時金融金庫を代表し総裁を補佐して戦時金融金庫の業務を掌理し総裁事故あるときは其の職務を代理し総裁欠員のときは其の職務を行ふ
理事は定款の定むる所に依り戦時金融金庫を代表し総裁及副総裁を補佐して戦時金融金庫の業務を掌理し総裁及副総裁共に事故あるときは其の職務を代理し総裁及副総裁共に欠員のときは其の職務を行ふ
監事は戦時金融金庫の業務を監査す
評議員は戦時金融金庫の業務に関する重要事項に付総裁の諮問に応じ又は総裁に対し意見を述ぶることを得
総裁は主務大臣の定むる事項に付ては評議員に諮問することを要す
第十五条 総裁、副総裁、理事、監事及評議員は政府之を命ず
総裁、副総裁及理事の任期は四年、監事及評議員の任期は二年とす
第十六条 総裁、副総裁及理事は定款の定むる所に依り従たる事務所の業務に関し一切の裁判上又は裁判外の行為を為す権限を有する代理人を選任することを得
第十七条 総裁、副総裁及理事は他の職業に従事することを得ず但し主務大臣の認可を受けたるときは此の限に在らず
第十八条 戦時金融金庫の職員は之を法令に依り公務に従事する職員と看做す
第三章 業務
第十九条 戦時金融金庫は左の業務を行ふ
一 国家緊要産業を営む者又は政府の方針に基き未動遊休設備(産業設備にして未完成又は遊休の状態に在るものを謂ふ)を保有し、重要物資を貯蔵し若は事業の整備を為す者に対する出資
二 前号に掲ぐる者に対する資金の融通
三 第一号に掲ぐる者の為にする債務の引受又は保証
四 第一号に掲ぐる者の発行する社債(特別の法令に依り設立せられたる法人にして会社に非ざるものの発行する債券を含む)の応募又は引受
五 市価安定の為にする有価証券の売買及保有
六 前各号の業務に付帯する業務
戦時金融金庫は主務大臣の認可を受け前項の業務の外戦時金融金庫の目的達成上必要なる業務を行ふことを得
第四章 戦時金融債券
第二十条 戦時金融金庫は払込資本金額の十倍を限り戦時金融債券を発行することを得
第二十一条 戦時金融債券は額面金額五十円以上とし無記名利札付とす但し応募者又は所有者の請求に依り記名式と為すことを得
戦時金融債券は割引の方法を以て之を発行することを得
第二十二条 戦時金融金庫は戦時金融債券借換の為一時第二十条の制限に依らず戦時金融債券を発行することを得
前項の規定に依り戦時金融債券を発行したるときは発行後一月内に其の発行額面金額に相当する旧戦時金融債券を償還すべし
第二十三条 政府は戦時金融債券の元本の償還及利息の支払を保証することを得
第二十四条 戦時金融金庫に於て戦時金融債券を発行せんとするときは主務大臣の認可を受くべし
第二十五条 戦時金融債券の消滅時効は元本に在りては十五年、利息に在りては五年を以て完成す
第二十六条 所得税及有価証券移転税法中国債以外の公債に関する規定は戦時金融債券に之を準用す
第二十七条 本章に規定するものを除くの外戦時金融債券に関し必要なる事項は勅令を以て之を定む
第五章 会計及補助
第二十八条 戦時金融金庫の事業年度は四月より翌年三月迄とす
第二十九条 戦時金融金庫は設立の時及毎事業年度の初に於て財産目録、貸借対照表及損益計算書を作成し定款と共に之を各事務所に備置くことを要す
第三十条 戦時金融金庫は左の方法に依るの外業務上の余裕金を運用することを得ず
一 国債又は地方債の取得
二 大蔵省預金部若は銀行への預金又は郵便貯金
第三十一条 戦時金融金庫剰余金の処分を為さんとするときは主務大臣の認可を受くべし
第三十二条 戦時金融金庫は主務大臣の定むる所に依り剰余金中より準備金の積立を為すべし
第三十三条 戦時金融金庫の毎事業年度に於ける配当し得べき剰余金額が政府以外の出資者の払込出資金額に対し年百分の五の割合に達せざるとき(剰余金額なきとき及損失を生じたるときを含む)は政府は之に達せしむべき金額を補給すべし
毎事業年度に於ける配当し得べき剰余金額が政府以外の出資者の払込出資金額に対し年百分の五の割合を超過するときは其の超過金額は先づ之を前項の規定に依る補給金の償還に充つべし
前条の準備金中損失の填補又は配当準備の為積立てたる金額は後事業年度に於ける第一項の規定に依る補給金の計算に付ては之を配当し得べき剰余金と看做す
第三十四条 戦時金融金庫は毎事業年度に於ける配当し得べき剰余金額(前条第二項の規定に依り償還に充つべき金額あるときは之を控除したる残額とす以下同じ)が政府以外の出資者の払込出資金額に対し年百分の五の割合を超過せざるときは政府の出資に対し剰余金の配当を為すことを要せず
戦時金融金庫は毎事業年度に於ける配当し得べき剰余金額が払込出資金額に対し年百分の五の割合に達せざる場合に於て政府以外の出資者の払込出資金額に対し年百分の五の割合を超過するときは其の超過金額を政府に配当すべし
第三十五条 第十九条第一項第一号又は第四号の規定に依る出資又は社債(特別の法令に依り設立せられたる法人にして会社に非ざるものの発行する債券を含む以下本条に於て同じ)の保有より生ずる戦時金融金庫の甲種の配当利子所得には命令の定むる所に依り分類所得税を課せず戦時金融金庫が同条第二項の規定に依り出資又は社債の保有を為す場合に於て之より生ずる甲種の配当利子所得に付亦同じ
第三十六条 戦時金融金庫が第三十三条第一項の規定に依り受くる補給金は命令の定むる所に依り法人税法に依る所得、営業税法に依る純益及臨時利得税法に依る利益の計算上之を益金に算入せず
第六章 監督
第三十七条 戦時金融金庫は主務大臣之を監督す
(以下、一部省略)
第三十八条
第三十九条
第四十条
第四十一条
第四十二条
第四十三条
第七章 雑則
第四十四条
第四十五条
第八章 罰則
第四十六条
第四十七条
第四十八条
第四十九条
附 則
第五十条
第五十一条
第五十二条
第五十三条
第五十四条
第五十五条
第五十六条
第五十七条
第五十八条
第五十九条
第六十条
第六十一条
第六十二条
第六十三条
第六十四条
(国立公文書館:戦時金融金庫法・御署名原本・昭和十七年・法律第三二号)
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