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金融統制団体令 1942年04月17日

 金融統制団体令(一部省略、ひらがな化、一部新字体化)


勅令第四百四十号

金融統制團體令

   第一章 総則

第一条 国家総動員法第十八条の規定に基く金融事業(有価証券に関する事業を含む以下同じ)の統制を目的とする団体に付ては本令の定むる所に依る

第二条 本令に依る団体は全国金融統制会、業態別統制会、統制組合及地方金融協議会とす

 全国金融統制会は全国金融統制会なる名称を用ふべし

 業態別統制会、統制組合又は地方金融協議会は其の名称中に各統制会、統制組合又は金融協議会なる文字を用ふべし但し主務大臣の認可を受けたるときは此の限に在らず

   第二章 全国金融統制会

第三条 全国金融統制会は国民経済の総力を最も有効に発揮せしむる為金融事業の機能の総合的発揮を図るに必要なる指導統制を行ひ且金融に関する国策の立案及遂行に協力することを目的とす

第四条 全国金融統制会は其の目的を達する為左に掲ぐる事業を行ふ

 一 金融に関する政府の計画に対する参画

 二 金融事業を営む者の行ふ資金の吸収及運用に関する指導統制

 三 金融事業の整備の促進

 四 金融事業の機能の増進

 五 金融事業と産業との関係の緊密化の促進

 六 金融事業に関する調査及研究

 七 前各号に掲ぐるものの外全国金融統制会の目的を達するに必要なる事業

 全国金融統制会は前項の事業の外命令の定むる所に依り業態別統制会の会員に非ざる統制組合にして命令を以て定むるもの及地方金融協議会の事業の指導統制を行ふ

第五条 全国金融統制会の会員たる資格を有する者は左に掲ぐる者とす

 一 日本銀行

 二 業態別統制会

 三 前二号に掲ぐる者の外金融事業を営む者にして主務大臣の指定するもの

第六条 主務大臣全国金融統制会を設立せしめんとするときは命令の定むる所に依り前条の規定に依り会員たる資格を有する者に対し全国金融統制会の設立を命ずべし

 前項の規定に依る全国金融統制会の設立の命令ありたるときは命令の定むる所に依り創立総会を開き之に諮りて定款其の他全国金融統制会の設立に必要なる事項を定め主務大臣の認可を受くべし

第七条 全国金融統制会の定款には左に掲ぐる事項を記載すべし

 一 目的

 二 名称

 三 事務所の所在地

 四 会員に関する規定

 五 事業及其の執行に関する規定

 六 役員に関する規定

 七 会議に関する規定

 八 経理に関する規定

第八条 全国金融統制会は第六条第二項の認可ありたる時又は国家総動員法第十八条第三項の規定に依り定款の作成ありたる時成立す

 前項の場合に於ては主務大臣は全国金融統制会成立の旨及定款を告示すべし

第九条 全国金融統制会成立したるときは其の会員たる資格を有する者は総て全国金融統制会の会員とす

第十条 全国金融統制会には会長一人並に理事、監事及評議員各若干人を置くべし

 全国金融統制会には前項の役員の外定款に定むる所に依り副会長二人以内又は理事長一人を置くことを得

第十一条 会長は全国金融統制会を代表し金融事業の指導統制其の他の会務を総理す

 副会長は会長を補佐し予め会長の定むる順位に依り会長事故あるときは其の職務を代理し会長欠員のときは其の職務を行ふ

 理事長は会長及副会長を補佐し会務を掌理し会長及副会長共に事故あるときは会長の職務を代理し会長及副会長共に欠員のときは会長の職務を行ふ

 理事は会長、副会長及理事長を補佐し会務を掌理し予め会長の定むる順位に依り会長、副会長及理事長共に事故あるときは会長の職務を代理し会長、副会長及理事長共に欠員のときは会長の職務を行ふ

 監事は全国金融統制会の経理の状況を監査す

 評議員は会長の諮問に対し答申し又は会長に対し意見を具申す

第十二条 会長は日本銀行総裁を以て之に充つ

 副会長、理事長、理事及監事は金融事業に関し経験ある者及学識ある者の中より主務大臣之を命ず

 評議員は金融事業又は産業に関し経験ある者及学識ある者の中より主務大臣之を命ず

 主務大臣第二項の規定に依り副会長、理事長又は理事を任命したるときは其の旨を告示すべし

第十三条 副会長、理事長及理事の任期は三年、監事及評議員の任期は二年とす

第十四条 副会長、理事長及理事は主務大臣の認可を受くるに非ざれば他の職務又は商業に従事することを得ず但し日本銀行の職員たることを妨げず

第十五条 全国金融統制会は金融事業に関する事項に付主務大臣に建議することを得

 全国金融統制会は主務大臣の諮問に対し答申すべし

第十六条 全国金融統制会は命令の定むる所に依り其の会員、業態別統制会の会員、業態別統制会の会員たる統制組合の組合員、第四条第二項の命令を以て定むる統制組合又は地方金融協議会に対し、金融事業に関する事項の調査を為す為必要なる資料の提出を求むることを得

 前項の規定に依り資料の提出を求められたる者は遅滞なく之を提出すべし

第十七条 全国金融統制会は定款の定むる所に依り其の会員に対し賦課金を課することを得

第十八条 全国金融統制会は定款の定むる所に依り定款又は統制規程に違反したる会員に対し過怠金を課することを得

第十九条 賦課金又は過怠金を滞納する者ある場合に於て全国金融統制会の請求あるときは市町村は市町村税の例に依り之を処分す此の場合に於て全国金融統制会は其の徴収金額の百分の四を市町村に交付すべし

 前項中町村とあるは町村制を施行せざる地に在りては之に準ずべきものとす

 第一項の規定に依る徴収金の先取特権の順位は市町村其の他之に準ずべきものの徴収金に次ぎ其の時効に付ては市町村税の例に依る

第二十条 全国金融統制会は其の会員の事業に関する統制規程を設定すべし

第二十一条 定款の変更並に統制規程の設定及変更は主務大臣の認可を受くるに非ざれば其の効力を生ぜず

 主務大臣前項の認可を為したるときは其の旨を告示すべし

第二十二条 全国金融統制会の会員は全国金融統制会の統制規程に依るべし

第二十三条 全国金融統制会は主務大臣の命令ありたるとき又は其の事業の遂行上必要ありと認むる場合に於て主務大臣の認可を受けたるときは其の会員、業態別統制会の会員又は業態別統制会の会員たる統制組合の組合員の業務又は財産の状況を検査することを得

 全国金融統制会の会員、業態別統制会の会員又は業態別統制会の会員たる統制組合の組合員は前項の規定に依る検査を拒み、妨げ又は忌避することを得ず

 全国金融統制会は第一項の規定に依り検査を行ふ役員又は使用人をして其の身分を示す証票を携帯せしむべし

第二十四条 全国金融統制会は主務大臣の命令ありたるとき又は其の事業の遂行上必要ありと認むる場合に於て主務大臣の認可を受けたるときは業態別統制会に対し其の会員若は其の会員たる統制組合の組合員の業務若は財産の状況を検査し又は其の会員たる統制組合をして当該統制組合の組合員の業務若は財産の状況を検査せしめ其の結果を報告すべきことを命ずることを得

 前条第二項及第三項の規定は業態別統制会又は統制組合が前項の規定に依り検査を行ふ場合に之を準用す

第二十五条 全国金融統制会は主務大臣の命令ありたるとき又は第四条第二項の命令を以て定むる統制組合の事業を指導統制する為必要ありと認むる場合に於て主務大臣の認可を受けたるときは当該統制組合の業務若は財産の状況を検査し又は当該統制組合に対し其の組合員の業務若は財産の状況を検査し其の結果を報告すべきことを命ずることを得

 第二十三条第二項及第三項の規定は全国金融統制会又は統制組合が前項の規定に依り検査を行ふ場合に之を準用す

第二十六条 全国金融統制会は主務大臣の命令ありたるとき又は地方金融協議会の事業を指導統制する為必要ありと認むる場合に於て主務大臣の認可を受けたるときは地方金融協議会の業務又は財産の状況を検査することを得

 第二十三条第二項及第三項の規定は前項の場合に之を準用す

第二十七条 通常総会は毎年一回会長之を招集す

 会長必要ありと認むるときは何時にても臨時総会を招集することを得

第二十八条 左に掲ぐる事項は総会に諮り会長之を決す

 一 定款の変更

 二 収支予算

 三 賦課金の賦課徴収方法

第二十九条 会長は毎年総会に全国金融統制会の事業の状況を報告し監事をして経理の状況を報告せしむべし

第三十条 主務大臣必要ありと認むるときは国家総動員法第三十一条の規定に依り全国金融統制会より其の事業に関し報告を徴し又は当該官吏をして其の事務所に臨検し業務若は経理の状況を検査せしむることを得

 前項の規定に依り当該官吏をして臨検検査せしむる場合に於ては其の身分を示す証票を携帯せしむべし

第三十一条 主務大臣は全国金融統制会に対し金融事業に関する事項の調査を命ずることを得

第三十二条 主務大臣金融事業の統制上必要ありと認むるときは全国金融統制会に対し必要なる事業の施行を命じ又は定款の変更其の他必要なる事項を命ずることを得

第三十三条 主務大臣は全国金融統制会に対し業務又は経理に関し監督上必要なる命令を発し又は処分を為すことを得

 主務大臣必要ありと認むるときは監事をして監査の結果を報告せしむることを得

第三十四条 主務大臣は副会長、理事長、理事又は評議員の行為が法令又は法令に基きて為す処分に違反したるとき、公益を害したるとき其の他全国金融統制会の事業の運営上副会長、理事長、理事又は評議員を不適当なりと認むるときは之を解任することを得

 主務大臣は監事の行為が法令若は法令に基きて為す処分に違反したるとき又は公益を害したるときは之を解任することを得

 主務大臣第一項の規定に依り副会長、理事長又は理事を解任したるときは其の旨を告示すべし

第三十五条 全国金融統制会は主務大臣の命令に因りて解散す

 主務大臣前項の命令を為したるときは其の旨を告示すべし

   第三章 業態別統制会

第三十六条 業態別統制会は国民経済の総力を最も有効に発揮せしむる為当該金融事業の機能の一般的発揮を図るに必要なる指導統制を行ひ且当該金融事業に関する国策の遂行に協力することを目的とす

第三十七条 業態別統制会は金融事業の業態別に之を設立す

第三十八条 業態別統制会は其の目的を達する為左に掲ぐる事業を行ふ

 一 当該金融事業を営む者の行ふ資金の吸収及運用に関する指導統制

 二 当該金融事業の整備の促進

 三 当該金融事業の機能の増進

 四 当該金融事業と産業との関係の緊密化の促進

 五 当該金融事業に関する調査及研究

 六 前各号に掲ぐるものの外業態別統制会の目的を達するに必要なる事業

第三十九条 業態別統制会の会員たる資格を有する者は左に掲ぐる者にして主務大臣の指定するものとす

 一 当該金融事業を営む者

 二 当該金融事業を営む者を以て組織する統制組合

第四十条 業態別統制会には理事長一人並に理事、監事及評議員各若干人を置くべし

 業態別統制会には前項の役員の外定款の定むる所に依り副理事長一人を置くことを得

第四十一条 理事長は命令を以て定むる場合を除くの外銓衡委員の推薦したる者の中より主務大臣之を命ず

 前項の銓衡委員は当該金融事業に関し経験ある者及学識ある者の中より主務大臣之を命ず

 副理事長、理事及評議員は当該金融事業に関し経験ある者及学識ある者の中より理事長之を命ず

 監事は命令の定むる所により評議員之を選任す

 第三項の規定に依る副理事長、理事又は評議員の任命は主務大臣の認可を受くるに非ざれば其の効力を生ぜず

 主務大臣第一項の規定に依る任命又は前項の規定に依る副理事長若は理事の任命の認可を為したるときは其の旨を告示すべし

第四十二条 (理事長等に関する規定、以下四十六条まで省略)

第四十三条 

第四十四条 

第四十五条 

第四十六条 

   第四章 統制組合

第四十七条 統制組合は国民経済の総力を最も有効に発揮せしむる為一定地区内に於ける当該金融事業の機能の一体的発揮を図るに必要なる指導統制を行ひ且当該金融事業に関する国策の遂行に協力することを目的とす

第四十八条 統制組合は一定地区に於て金融事業の業態別に之を設立す

 前項の地区は主務大臣之を指定す

第四十九条 統制組合は其の目的を達する為左に掲ぐる事業を行ふ

 一 当該金融事業を営む者が当該地区内に於て行ふ資金の吸収及運用に関する指導統制

 二 当該地区内に於ける当該金融事業の整備の促進

 三 当該地区内に於ける当該金融事業の機能の増進

 四 当該地区内に於ける当該金融事業と産業との関係の緊密化の促進

 五 当該地区内に於ける当該金融事業に関する調査及研究

 六 前各号に掲ぐるものの外統制組合の目的を達するに必要なる事業

第五十条 統制組合の組合員たる資格を有する者は当該地区内に於て当該金融事業を営む者にして主務大臣の指定するものとす

第五十一条 統制組合の定款には左に掲ぐる事項を記載すべし

 一 目的

 二 名称

 三 地区

 四 事務所の所在地

 五 組合員に関する規定

 六 事業及其の執行に関する規定

 七 役員に関する規定

 八 会議に関する規定

 九 経理に関する規定

第五十二条 統制組合には理事長一人並に理事、監事及評議員各若干人を置くべし

 理事長は当該金融事業に関し経験ある者及学識ある者の中より当該統制組合の所属する業態別統制会の理事長之を命ず当該統制組合の所属する業態別統制会なきときは当該金融事業に関し経験ある者及学識ある者の中より主務大臣之を命ず

 前項前段の規定に依る理事長の任命は主務大臣の認可を受くるに非ざれば其の効力を生ぜず

 第十一条第一項第四項乃至第六項、第四十二条第一項乃至第三項及第四十五条第一項第二項の規定は理事長、理事、監事及評議員に、第四十一条第三項乃至第五項の規定は理事、監事及評議員に之を準用す

第五十三条 業態別統制会の理事長は当該業態別統制会の会員たる統制組合の理事長の行為が法令又は法令に基きて為す行政官庁の処分に違反したるとき、公益を害したるとき其の他当該統制組合の事業の運営上当該理事長を不適当なりと認むるときは之を解任することを得

 前項の解任は主務大臣の認可を受くるに非ざれば其の効力を生ぜず

第五十四条 統制組合は定款の定むる所に依り総会に代るべき総代会を設くることを得

 第二十七条乃至第二十九条の規定は前項の総代会に之を準用す

第五十五条 第四条第二項の命令を以て定むる統制組合は全国金融統制会の行ふ統制に従ふべし

第五十六条 統制組合に付ては命令の定むる所に依り登記を為すことを要す

 前項の規定に依り登記すべき事項は登記の後に非ざれば之を以て第三者に対抗することを得ず

第五十七条 第六条、第八条(定款の告示に関する部分を除く)、第九条、第十五条、第十七条乃至第二十二条(第二十一条中定款変更の認可の告示に関する部分を除く)、第二十七条乃至第三十三条、第三十五条第一項及第四十四条の規定は統制組合に之を準用す

   第五章 地方金融協議会

第五十八条 地方金融協議会は国民経済の総力を最も有効に発揮せしむる為一定地区内に於ける金融事業相互間の連絡調整を図るに必要なる指導統制を行ひ且金融事業に関する国策の遂行に協力することを目的とす

第五十九条 地方金融協議会は一定地区に於て之を設立す

 前項の地区は主務大臣之を指定す

第六十条 地方金融協議会は其の目的を達する為左に掲ぐる事業を行ふ

 一 金融事業を営む者が当該地区内に於て行ふ資金の吸収及運用に関する指導統制

 二 当該地区内に於ける金融事業の整備の促進

 三 当該地区内に於ける金融事業の機能の増進

 四 前各号に掲ぐるものの外地方金融協議会の目的を達するに必要なる事業

第六十一条 地方金融協議会の会員たる資格を有する者は左に掲ぐる者にして主務大臣の指定するものとす

 一 当該地区内に於て金融事業を営む者

 二 当該地区内に於て金融事業を営む者を以て組織する統制組合

第六十二条 地方金融協議会には理事長一人並に理事、監事及評議員各若干人を置くべし

 理事長は金融事業に関し経験ある者及学識ある者の中より主務大臣之を命ず

 第十一条第一項第四項乃至第六項、第四十二条第一項乃至第三項及第四十五条第一項第二項の規定は理事長、理事、監事及評議員に、第四十一条第三項乃至第五項の規定は理事、監事及評議員に之を準用す

第六十三条 地方金融協議会には定款の定むる所に依り顧問若干人を置くことを得

第六十四条 第六条、第八条(定款の告示に関する部分を除く)、第九条、第十五条、第十七条乃至第二十二条(第二十一条中定款変更の認可の告示に関する部分を除く)、第二十七条乃至第三十三条、第三十五条第一項、第四十四条、第五十一条及第五十四条乃至第五十六条の規定は地方金融協議会に之を準用す

   第六章 雑則

第六十五条 (主として台湾や朝鮮等による読み替えの規定、以下第六十九条まで省略)

第六十六条 

第六十七条 

第六十八条 

第六十九条

(国立公文書館:金融統制団体令・御署名原本・昭和十七年・勅令第四四〇号)

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