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小作調停法 1924年07月22日

 小作調停法(ひらがな化、一部新字体化)


法律第十八号

   小作調停法

第一条 小作料其の他小作関係に付争議を生したるときは当事者は争議の目的たる土地の所在地を管轄する地方裁判所に調停の申立を為すことを得

 当事者は合意を以て争議の目的たる土地の所在地を管轄する区裁判所に調停の申立を為すことを得

第二条 当事者不当の目的を以て濫に調停の申立を為したりと認むるときは裁判所は其の申立を却下することを得

第三条 調停の申立は争議の目的たる土地の所在地の市町村長又は郡長を経て之を為すことを得

第四条 前条の規定に依る調停の申立ありたるときは市町村長又は郡長は遅滞なく申立に関する書類を裁判所に送付し且町村長に在りては郡長に、郡長に在りては町村長に申立ありたる旨の通知を為すことを要す

 争議の目的たる土地か数郡市町村に亙る場合に於ては調停の申立を受けたる市町村長又は郡長は遅滞なく関係市町村長及郡長に前項の通知を為すことを要す

第五条 裁判所直接に調停の申立を受けたるときは遅滞なく之を争議の目的たる土地の所在地の市町村長及郡長に通知することを要す但し第八条第一項の規定に依り事件を移送する場合は此の限に在らす

第六条 調停の申立は争議の実情を明にして之を為すへし

第七条 調停の申立は書面又は口頭を以て之を為すことを得

 口頭を以て申立を為す場合に於ては市町村長、郡長又は裁判所書記其の調書を作ることを要す

第八条 争議の目的たる土地か数箇の裁判所の管轄区域内に存する場合に於て調停の申立を受けたる地方裁判所又は区裁判所相当と認むるときは決定を以て事件を他の管轄地方裁判所又は管轄区裁判所に移送することを得管轄権なき裁判所か調停の申立を受けたるとき亦同し

 前項の決定に対しては不服を申立つることを得す

 第一項の場合に於て事件の移送を受けたる裁判所は遅滞なく争議の目的たる土地の所在地の市町村長及郡長に其の旨の通知を為すことを要す

第九条 調停の申立を受理したる事件に付訴訟か繁属するときは調停の終了に至る迄訴訟手続を中止す

第十条 裁判所調停の申立を受理したるときは調停委員会を開くことを要す但し争議の実情に鑑み之を開かすして調停を為すことを得

 当事者の申立あるときは前項但書の規定に拘らす裁判所は調停委員会を開くことを要す

第十一条 裁判所事情に依り適当なる者ありと認むるときは前条の規定に拘らす之をして勧解を為さしむることを得

第十二条 当事者多数なる場合に於ては其の全部又は一部を代表して調停に関する一切の行為を為さしむる為総代を選任することを得

 裁判所前項の規定に依る総代なき場合に於て必要ありと認むるときは総代の選任を命することを得

 総代は当事者中より之を選任することを要す

第十三条 総代の選任は書面を以て之を証することを要す

 総代の解任は之を裁判所に届出つるに非されは其の効なし

第十四条 裁判所は期日を定め当事者又は総代を呼出すことを要す

 前項の呼出を受けたる当事者又は総代は正当の事由なくして出頭を拒むことを得す

第十五条 調停の結果に付利害関係を有する者は裁判所の許可を受け調停に参加することを得

 裁判所は調停の結果に付利害関係を有する者の参加を求むることを得

第十六条 当事者、総代及利害関係人は自身出頭することを要す但し特別の事情ある場合に於ては裁判所の許可を受け代理人をして出頭せしめ又は補佐人を同伴することを得

 裁判所は何時にても前項の許可を取消すことを得

第十七条 争議の目的たる土地の所在地又は当事者の住所地の市町村長又は郡長は裁判所に対し事件の経過に付陳述を為すことを得

第十八条 裁判所必要ありと認むるときは小作官、前条の市町村長又は郡長其の他適当と認むる者に対し意見を求むることを得

第十九条 小作官は期日に出席して又は期日外に於て裁判所に対し意見を述ふることを得

第二十条 裁判所必要ありと認むるときは事実の調査を小作官に嘱託することを得

第二十一条 裁判所に於ける調停手続は之を公開せす但し裁判所は相当と認むる者の傍聴を許すことを得

第二十二条 裁判所は費用を要する行為に付当事者の一方又は双方をして其の費用を予納せしむることを得

第二十三条 裁判所に対する申立其の他の申述は書面又は口頭を以て之を為すことを得

 口頭を以て申述を為す場合に於ては裁判所書記其の調書を作ることを要す

第二十四条 裁判所の調停に付ては裁判所書記其の調書を作ることを要す

第二十五条 裁判所は調停前調停の為必要と認むる措置を為すことを得

第二十六条 裁判所の調停条項中に費用の負担に関する定を為ささるときは各当事者は其の支出したる費用を自を負担す

第二十七条 調停は裁判上の和解と同一の効力を有す

第二十八条 調停委員会は調停主任一人及調停委員二人以上を以て之を組織す

第二十九条 調停主任は判事の中より毎年予め地方裁判所長之を指定す

 調停委員は調停に適当なる者に就き地方裁判所長の選任したる者の中より各事件に付調停主任之を指定す但し当事者か合意を以て選定したる者あるとき又は地方裁判所長の選任したる者に就き当事者双方か各別に選定したる者あるときは其の者の中より先つ之を指定することを要す

 前項の規定に依り指定せられたる者は正当の事由なくして之を辞することを得す

第三十条 調停主任は争議の実情に鑑み適当と認むる場所に於て調停委員会を開くことを要す

第三十一条 調停委員会に於ける調停手続は調停主任之を指揮す

第三十二条 調停委員会の決議は調停委員の過半数の意見に依る可否同数なるときは調停主任の決する所に依る

第三十三条 調停委員会の評議は之を秘密とす

第三十四条 第十一条乃至第二十六条の規定は調停委員会の調停手続に之を準用す

第三十五条 調停委員会は当事者、総代又は利害関係人の陳述を聴き且必要と認むるときは証拠調を為すことを得

 調停委員会は調停主任をして証拠調を為さしめ又は之を区裁判所に嘱託することを得

 証拠調に付ては民事訴訟法を準用す

 承認及鑑定人の受くへき旅費、日当及止宿料に付ては民事訴訟費用法を準用す

第三十六条 期日に於て調停成らさるときは調停委員会は適当と認むる調停条項を定むることを得

 前項の規定に依り調停条項を定めたる場合に於ては調停委員会は其の調書の正本を当事者、総代あるときは総代に送付し且当事者又は総代か其の送付を受けたる後一月内に異議を述へさるときは調停に同意したるものと看做す旨の通知を為すことを要す

 当事者又は総代か前項の正本の送付を受けたる後一月内に調停委員会に異議を述へさるときは調停に同意したるものと看做す

 調停委員会は申立に因り前項の期間を伸長することを得期間の伸長は之を相手方、総代あるときは総代に通知することを要す

 当事者又は総代か調停条項に対し異議を述へたるときは調停委員会は其の旨を相手方、総代あるときは総代に通知することを要す

第三十七条 調停委員会第二条に規定する事由ありと認むるときは調停を為ささることを得

第三十八条 調停成りたるとき又は第三十六条第三項の規定に依り調停に同意したるものと看做されたるときは裁判所は調停主任の報告を聴き調停の認否に付決定を為すことを要す

 調停認可の決定に対しては不服を申立つることを得す

 調停不認可の決定に対しては当事者又は総代は民事訴訟法に従ひ即時抗告を為すことを得

第三十九条 裁判所は調停か著しく公正ならすと認むる場合に非されは調停不認可の決定を為すことを得す

第四十条 調停委員会を開きたる場合に於ては調停は認可決定ありたるときに限り裁判上の和解と同一の効力を有す

第四十一条 裁判所調停認可の決定を総代に告知したる場合に於ては調停条項を争議の目的たる土地の所在地の市役所又は町村役場の掲示場に掲示することを要す

第四十二条 調停委員会必要ありと認むるときは調停の経過を公表することを得

第四十三条 調停事件終了したるときは裁判所は其の結果を争議の目的たる土地の所在地の市町村長及郡長に通知することを要す

第四十四条 当事者又は利害関係人は手数料を納付して記録の閲覧若は謄写又は其の正本、謄本、抄本若は事件に関する証明書の付与を裁判所書記に求むることを得但し当事者か事件の繁属中記録の閲覧又は謄写を為す場合に於ては手数料を納付することを要せす

第四十五条 調停委員及第十一条又は第三十四条の規定に依り勧解を為したる者には旅費、日当及止宿料を給す

第四十六条 第四十四条の手数料並前条の旅費、日当及止宿料の額は勅令を以て之を定む

第四十七条 本法中郡とあるは北海道に於ては北海道庁支庁管轄区域、郡長とあるは北海道に於ては北海道庁支庁長、島司を置きたる島嶼に於ては島司とす

 本法中町村、町村長又は町村役場とあるは町村制を施行せさる地に於ては町村、町村長又は町村役場に準するものとす

第四十八条 第三十四条の規定に依る呼出を受けたる者正当の事由なくして出頭せさるときは調停事件の繁属する裁判所は調停委員会の意見を聴き五拾円以下の過料に処することを得

 非訟事件手続法第二百七条及第二百八条の規定は前項の過料に付之を準用す

第四十九条 調停委員又は調停委員たりし者故なく評議の顛末又は調停主任、調停委員の意見若は其の多少の数を漏泄したるときは千円以下の罰金に処す

   附 則

 本法施行の期日は勅令を以て之を定む

 本法は勅令を以て指定する地区に之を施行せす

(国立公文書館:小作調停法・御署名原本・大正十三年・法律第十八号 A03021488600)

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