煙草専売法(ひらがな化、一部新字体化、一部省略)
法律第十四号
煙草專賣法
第一条 煙草の製造は政府に専属す
第二条 煙草は政府及政府の命を受けたる者に非されは之を輸入することを得す
第三条 煙草は政府の許可を受けたる者に非されは之を耕作することを得す
第四条 煙草耕作者の収穫したる葉煙草は政府之を収納す
第五条 煙草の耕作区域は政府之を定む
第六条 政府は毎年耕作すへき煙草の種類、耕作段別及葉煙草の賠償価格を定め予め之を公示す
第七条 煙草を耕作せむとする者は毎年煙草苗床の位置及坪数、煙草耕作地の位置及段別、煙草の種類、本数、乾燥場及蔵置場を定め政府に申請し許可を受くへし其の之を変更し又は耕作を廃止せむとするとき亦同し
第八条 相続に因るの外煙草の耕作を承継せむとするときは政府の許可を受くへし
相続に因り煙草の耕作を承継したるときは政府に届出へし
第九条 煙草耕作者に非されは煙草苗を育成することを得す
煙草苗の譲渡及譲受は命令の定むる所に依り政府の許可を受くへし
第十条 煙草耕作者は政府の定むる方法及手続に依り其の耕作を完成する義務を負ふ
第十一条 政府は収穫前に於て葉煙草の収穫量目又は葉数を査定す
前項査定の場合に於ては煙草耕作者は之に立会ふへし若し立会はさるととは其の査定に対し異議を申立つることを得す
第十二条 煙草耕作者前条の量目又は葉数の査定に不服なるときは即時異議の申立を為すことを得
異議の申立ありたるときは命令の定むる所に依り二人以上の鑑定人を選定し其の意見を徴し政府之を決定す
異議申立人の主張に係る葉煙草の量目又は葉数と前項決定額との差か前条の査定額と前項決定額との差より大なるときは鑑定に関する費用は異議申立人の負担とす
第十三条 煙草耕作者は政府の許可を受くるに非されは第十一条の査定前に於て葉煙草を採取し又は幹根を抜除することを得す第十二条に依り異議の申立を為したる者其の決定前に於て亦同し
第十四条 煙草耕作者一番葉の収穫を終りたるときは直に其の幹根を抜除し其の幹に附著する葉煙草は之を廃棄すへし
種子の採取又は二番葉の収穫を為さむとする者は政府の許可を受くへし
前項の場合に於て採取又は収穫を終りたるときは第一項の処置を為すへし
第十五条 煙草耕作者の収穫したる葉煙草は乾燥調理の後政府に納付すへし
納付の期日及場所は政府之を定む
煙草耕作者の収穫したる葉煙草にして政府の収納に適せさるものは政府の承認を経て之を廃棄すへし
第十六条 煙草耕作者の納付したる葉煙草は鑑定人をして之を鑑定せしめ其の等級に依り賠償金を交付す
煙草耕作者前項の鑑定に不服なるときは再鑑定を求むることを得但し賠償金の請求を為したるときは此の限に在らす
再鑑定申立人の主張に係る葉煙草の等級と再鑑定等級との差か第一項の鑑定等級と再鑑定等級との差より大なるときは再鑑定に関する費用は其の申立人の負担とす
再鑑定に関する規定は命令を以て之を定む
第十七条 煙草耕作者正当の事由なくして政府の査定若は決定したる量目又は葉数以上の葉煙草を納付せさるときは政府は其の不足額に対し第十八条第二項の規定に準して算定したる金額の三倍以下を納付せしむることを得
第十八条 煙草耕作者私に耕作段別を減少し又は耕作を廃止したるときは政府は其の減作地又は廃作地に生産すへき葉煙草の価格に相当する金額を納付せしむることを得
前項葉煙草の価格は其の年に於ける近傍類似煙草耕作地の葉煙草生産額及之に対する賠償金額を標準とし之を算定す
第十九条 煙草耕作者其の耕作段別を減少し又は耕作を廃止したる場合に於て其の耕作を承継する者なきときは政府は其の現存する煙草又は煙草苗を廃棄せしむることを得
第二十条 煙草耕作者の葉煙草は其の耕作地、乾燥場、蔵置場又は其の収納官署の外他に之を運送することを得す
政府は必要と認むるときは葉煙草運送の通路及時間を指定することを得
第二十一条 公共団体又は私人に於て試作場を特設し煙草の試作を為さむとするときは命令の定むる所に依り政府の許可を受くへし
前項の試作に関しては第四条、第七条、第九条、第十五条、第十六条第一項及第十九条の規定を準用す
第二十二条 製造煙草は政府又は政府の指定したる煙草元売捌人若は煙草小売人に非されは之を販売することを得す
煙草売捌人及煙草の販売に関する規定は命令を以て之を定む
第二十三条 煙草小売人は政府の定めたる価格を以てするに非されは製造煙草を消費者に販売することを得す
第二十四条 煙草売捌人は政府の封緘を施したる製造煙草の包裹を開披し若は之を改装し又は包裹の破損したる製造煙草を販売することを得す
第二十五条 輸出の為葉煙草又は製造煙草の売渡を請求する者あるときは政府は特に定めたる価格を以て之を売渡すことを得
前項煙草の売渡を受けたる者は命令の定むる所に依り帳簿を調製し其の営業に関する事項を記載すへし
輸出に供する煙草を製造せむとする者の為政府は一定の地域に於て煙草自由倉庫を設置し又は其の設置を特許することを得
煙草自由倉庫及其の特許に関する規定は命令を以て之を定む
第二十六条 前条に依り輸出の為葉煙草又は製造煙草を買受けたる者は政府の指定したる期間内に輸出免状に外国仕向港に陸揚を為したることを証すへき書類を添へ政府に差出すへし
正当の事由なくして前項の免状及書類を差出ささるときは政府は葉煙草に付ては第二十九条製造煙草に付ては第三十条の規定に依り相当金額を納付せしむ
第二十七条 輸出の為政府より買受けたる葉煙草又は製造煙草は輸出前之を他に譲渡し又は消費することを得す但し其の使用に適せさるに至りたるものは政府の許可を受けて之を廃棄することを得
第二十八条 輸出の為政府より買受けたる葉煙草又は製造煙草の輸出を廃止したるとき又は買受の日より一箇月を過き之を輸出せさるときは其の使用に適するものに限り政府之を収納し其の他は之を廃棄せしむ
前項の収納を為すときは鑑定人をして鑑定せしめ償金を交付す但し其の賠償金は第二十五条に依る売渡価格に超過することを得す
第二十九条 本法の規定に依り輸出し、廃棄し及収納せられたる葉煙草並現在葉煙草の総量目か政府より買受けたる葉煙草の総量目に比し正当の事由なくして不足したるときは政府は輸出者をして其の不足額に対し第二十五条の売渡価格に相当する金額の四倍以下を納付せしむ
第三十条 本法の規定に依り輸出し、廃棄し及収納せられたる製造煙草並現在製造煙草の総量目か政府より買受けたる製造煙草の総量目に比し正当の事由なくして不足したるときは政府は輸出者をして其の不足額に対し第二十三条の売渡価格と第二十五条の売渡価格との差額に相当する金額の二倍以下を納付せしむ
第三十一条 政府は標本に供するものに限り葉煙草を交付し又は煙草の輸入を許可することを得
標本に供する煙草は政府の許可を受け標本として他に譲渡し又は試験の用に供し又は廃棄するの外之を処分することを得す
第三十二条 健康上若は習慣上欠くへからさる製造煙草は自用に供するものに限り自用者に於て政府の許可を受け之を輸入することを得
第三十三条 輸出の為買受けたる煙草は政府の許可を受けたる場所に非されは之を蔵置することを得す
第三十四条 何人と雖本法に於て認めたる場合の外葉煙草、政府の証票を附せさる製造煙草又は煙草製造専用の器具機械及巻紙を所持し、譲渡し若は譲受くることを得す
前項の物件は本法に依り没収する場合の外政府に於て之を処分す
第三十五条 何人と雖営業の目的を以て煙草に代用すへき物品を製造し又は販売することを得す
第三十六条 煙草製造専用の器具機械及巻紙は政府の許可を受けたる者に非されは之を製作し、販売し又は蔵置することを得す
第三十七条 煙草耕作者、試作者又は煙草製造専用の器具機械及巻紙の製作者、販売者若は蔵置者本法又は本法に基きて発する命令に違反したるときは政府は耕作、試作、蔵置又は営業の許可を取消すことを得
第三十八条 政府は煙草の苗床、耕作地、試作地、乾燥場、蔵置場又は煙草苗、煙草若は煙草製造器具機械及巻紙の所在と認むる場所又は煙草苗、煙草若は煙草製造器具機械及巻紙を検査し又は監督上必要の処分を為すことを得
当該官吏は前項の検査に際し必要と認むるときは関係人をして之に立会はしむることを得
第三十九条 行政執行の手続に依り費用を納付せしむる場合に於て義務者に交付すへき金額あるときは之を差引することを得
第四十条 本法の規定に依り納付せしむへき金額の徴収に関しては国税徴収法の規定を準用することを得
第四十一条 (罰則、第六十七条まで省略)
第四十二条
第四十三条
第四十四条
第四十五条
第四十六条
第四十七条
第四十八条
第四十九条
第五十条
第五十一条
第五十二条
第五十三条
第五十四条
第五十五条
第五十六条
第五十七条
第五十八条
第五十九条
第六十条
第六十一条
第六十二条
第六十三条
第六十四条
第六十五条
第六十六条
第六十七条
附 則
第六十八条(以下第八十九条まで省略)
(国立公文書館:煙草専売法・御署名原本・明治三十七年・法律第十四号 A03020588100)
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