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日ソ漁業条約 1928年01月23日

 日ソ漁業条約(ひらがな化、一部新字体化、附属文書省略)


   日本國「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦間漁業條約

(前文省略)

      第一条

「ソヴィエト」社会主義共和国連邦は河川及入江を除き日本海、「オホーツク」海及「ベーリング」海に於ける「ソヴィエト」社会主義共和国連邦の属地の沿岸に於て膃肭獣及臘虎を除きたる一切の種類の魚類及水産物を捕獲し、採取し及加工するの権利を本条約の規定に従ひ日本国臣民に許与す右例外に含まるる入江は本条約附属議定書(甲)第一条に之を列挙す

      第二条

日本国臣民は魚類及水産物の捕獲、採取及加工の目的を以て特に指定せられたる海上及陸地に亙る漁区に於て之に従事すること自由たるべし右漁区の貸付は競売に依りて之を為し日本国臣民と「ソヴィエト」社会主義共和国連邦人民との間に何等の差別を設くることなかるへし

尤も前項に対する例外として両締約国政府の合意ありたる漁区は競売に依らずして之を貸付することを得るものとす

漁区の競売は毎年二月「ヴラヂヴォストック」に於て行はるべく又之が為指定せられたる日及場所並に売却せらるべき各種の漁区の貸付に関する必要なる細目は競売の少くとも二月前に於て「ヴラヂヴォストック」駐在日本国領事館に正式に通告せらるべし

競落者なき漁区に付ては該漁区は前回の競売後十五日以内に且五日より早からずして再び競売に付せらるべし

鯨及鱈並に特定の漁区内に於て捕獲し又は採取すること能はざる一切の魚類及水産物の捕獲は特別の免許状を具ふる航海船に搭乗せる日本国臣民に許さるべし

      第三条

本条約第二条の規定に従ひ漁区の貸付を受けたる日本国臣民は該漁区の限界内に於て岸地を自由に使用するの権利を有すべし右日本国臣民は該岸地に於て自己の漁船及漁網に必要なる修繕を行ひ、之を岸に引上げ並に自己の捕獲物及採集物を陸揚し、加工し及貯蔵することを得べく又之が為該岸地に建物、倉庫、小屋及乾燥場を建て又は之を移転すること自由たるべし

      第四条

漁業に関して徴せらるべき税金、課金及手数料に付ては日本国臣民は左の条件に従ふべく又如何なる場合に於ても「ソヴィエト」社会主義共和国連邦の人民に与へらるる所に比し不利益なる待遇を受くることなかるべし

 (一) 漁業権を有する日本国臣民に課せらるべき営業税の額は右日本国臣民が捕獲し、採取し又は加工したる魚類及水産物の漁場に於ける価格の百分の三を超ゆることなかるべし

 (二) 右日本国臣民は営業税並に本条約附属議定書(甲)第九条に掲ぐる税金、課金及手数料を除くの外一切の種類の税金、課金及手数料を免除せらるべし

 (三) 営業税並に他の税金、課金及手数料の支払は両政府間の特別取極に依り之を処理することを得

 (四) 日本国に住所を有し且日本国臣民に貸付せられたる漁場に於て季節的労働に従事する日本人たる被使用者の所得に対しては何等の税金又は課金を徴することなかるべし

      第五条

「ソヴィエト」社会主義共和国連邦は「ソヴィエト」社会主義共和国連邦の極東水域に於て捕獲せられ又は採取せられたる魚類及水産物に対しては該魚類及水産物が製造工程を経たると否とに拘らず「ソヴィエト」社会主義共和国連邦より日本国に輸出せらるべきものとなるときは何等の税金を徴することなかるべし

      第六条

本条約第一条に特定せらるる地方に於て魚類及水産物の捕獲、採取及加工に従事する日本国臣民の被使用者の国籍に付ては何等の制限を設くることなかるべし

      第七条

魚類及水産物の加工方法に付ては「ソヴィエト」社会主義共和国連邦は本条約第一条に特定せらるる地方に於て漁業権を取得したる日本国臣民に対しては該地方に於て漁業権を取得したる「ソヴィエト」社会主義共和国連邦人民が免除せらるる何れの制限をも加へざることを約す

      第八条

漁業権を取得したる日本国臣民は「ソヴィエト」社会主義共和国連邦の権限ある領事館が日本国に於て発給したる航海証書及日本国官憲が発給したる健全証書を具ふる航海船を日本国より自己の漁場へ、自己の一の漁場より他の漁場へ及自己の漁場より日本国への直航の用に供することを得又右船舶は搭載せる魚類及水産物にして「ソヴィエト」社会主義共和国連邦の極東水域に於て捕獲せられ又は採取せられたるものの第三国への輸出に要する手続に従ふに於ては漁場より直接右第三国へ航行することを得

前記船舶は漁業に必要なる人及物件並に捕獲物及採集物を課金及税金を徴せらるることなく運搬すること自由たるべし

漁業権を取得したる日本国臣民は自己の漁区又は本条約第二条末項に掲ぐる免許状を具ふる船舶の間に於て前記の人、物件、捕獲物及採取物を陸上岸に沿ひ又は海上漁船に搭載して課金及税金を徴せらるることなく運搬することを得

本条の規定は各自別別の漁区又は免許状を有する者が共同して一の船舶又は漁船を使用する場合にも均しく適用せらるべし

本条の規定は貸付期間の満了したる漁区内に在る残留財産の他の漁区又は日本国への移転に適用せらるべし

前記の船舶及漁船は他の一切の点に付ては沿岸貿易に関し制定せられ又は制定せらるることあるべき「ソヴィエト」社会主義共和国連邦の法令に従ふべし

      第九条

漁業権を取得したる日本国臣民は日本国臣民が捕獲し又は採取したる魚類及水産物を何等の輸出免許を要せずして日本国に自由に輸出することを得又右日本国臣民は右魚類及水産物を之が輸出に要する手続に従ひ第三国に輸出することを得

「ソヴィエト」社会主義共和国連邦の国営若は他の企業又は人民より購入したる魚類及水産物の輸出に付ては右日本国臣民は之が輸出に要する手続に従ふべし

右日本国臣民は専ら自己の漁業の為及自己又は自己の被使用者の為に使用することを目的とする必需品を何等の輸入免許を要せずして輸入すること自由たるべし

前記貨物の輸入に対しては何等の税金及課金を徴することなかるべし右貨物及其の数量は毎年適当なる時期に於て権限ある地方官憲が「ソヴィエト」社会主義共和国連邦の中央官憲の承認を経て作成すべき品目表中に明記せらるべし

      第十条

漁業権を取得したる日本国臣民及其の被被用者にして「ソヴィエト」社会主義共和国連邦人民に非ざるものの入国、滞在、移転及出国に関して「ソヴィエト」社会主義共和国連邦の官憲に依り制定せられ又は制定せらるることあるべき簡易規則を本条約第一条に特定せらるる地方に適用すべし他の一切の場合に於ては日本国臣民は外国人の「ソヴィエト」社会主義共和国連邦への入国、之に於ける滞在及之よりの出国に関し制定せられ又は制定せらるることあるべき法令及規則に従ふべし

前記地方に於て漁業権を取得したる日本臣民及「ソヴィエト」社会主義共和国連邦人民は魚類の養殖、魚類及水産物の保護、之に密接の関係ある産業の取締並に漁業に関する他の一切の事項に関し制定せられ又は制定せらるることあるべき法律、規則及命令に付均等の地歩に置かるべし

「ソヴィエト」社会主義共和国連邦の極東水域に於ける漁業に適用せらるべき法律及規則にして新に制定せられたるものは之が施行の少くとも三月前に日本国政府に通知せらるべく「ソヴィエト」社会主義共和国連邦の地方官憲に依り新に発せられたる右と同一性質の命令は之が施行の少くとも二月前に「ハバロフスク」駐在日本国領事館に通知せらるべし

      第十一条 

日本国臣民は本条約第一条に特定せらるる地方の限界外に在る自己借受の陸上地区に於て魚類及水産物の加工に従事すること自由たるべし但し制定せられ又は制定せらるることあるべき法律、規則及命令にして「ソヴィエト」社会主義共和国連邦内の一切の外国人に適用せらるべきものに常に従ふべし

      第十二条

日本国政府は「ソヴィエト」社会主義共和国連邦政府が本条約に依り日本国臣民に漁業権を許与したることに鑑み「ソヴィエト」社会主義共和国連邦の極東水域に於て捕獲せられ又は採取せられたる魚類及水産物に対して該魚類及水産物が製造工程を経たると否とに拘らず何等の輸入税を課せざることを約す

      第十三条

日本人たる被使用者は日本国に居住し、日本国に於て雇傭せられ及季節的漁業の労働に従ひたる後日本国に帰還するものなること、其の慣行及習俗は日本人に特有のものなること、日本国及漁場間の無賃往復並に全雇傭期間中の無料給食を許与せらること、正規の賃銀以外に捕獲物及採取物の配当を与へらるること並に医療及他の救恤手段の無料施設あることを認むるに因り「ソヴィエト」社会主義共和国連邦は制定せられ又は制定せらるることあるべき労働の保護及規律に関する其の法令及規則を本条約の規定に依り日本国臣民に貸付せられたる漁場に於ける日本人たる被使用者の労働に適用するに当り前記事実に適合せしむることを約す

      第十四条

本条約に於て特に規定せられざるも本条約第一条に特定せらるる地方に於ける漁業に関する事項に付ては日本国臣民は右地方に於て漁業権を取得したる「ソヴィエト」社会主義共和国連邦人民に与へらるる所と同一の待遇を受くるの権利を有すべし

      第十五条

本条約は八年間引続き効力を有すべく且右期間の終に於て修正又は更新せらるべく爾後本条約は毎十二年の終に於て修正又は更新せらるべし

締約国の一方は本条約の終了の十二月前に於て本条約を修正するの希望を他方に通告することを得右修正の為の商議は右十二月以内に結了せらるべし

締約国の何れも右修正の為の通告を為さざるときは本条約は更に十二年間引続き効力を有すべし

      第十六条

本条約は批准せらるべく又其の批准書は成るべく速に且如何なる場合に於ても之が署名後四月より後るることなく東京に於て交換せらるべし

(以下署名等省略)


議定書(甲)

(以下省略)


議定書(乙)

(以下省略)


議定書(丙)

(以下省略)


最終議定書

(以下省略)


第一附属書

(以下省略)


第二附属書

(以下省略)


交換公文

(以下省略)


会議録

(以下省略)

(外務省 日本外交文書デジタルコレクション昭和期Ⅰ第2部 第3巻 六 付録 日ソ漁業条約および付属文書(PDF))

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