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日英通商航海条約 1911年04月03日

 日英通商航海条約(ひらがな化、一部新字体化、附属文等省略)


条約第二号

(前文省略)

    第一条

両締約国の一方の臣民は他の一方の版図内に到り、旅行し又は居住することに付完全なる自由を有すへく而して其の国法に遵由するに於ては

 一 旅行及住居に関する一切の事項に付総て内国臣民と同一の基礎に置かるへく

 二 商業及製造業を営み又自ら行ふと代理人に由るとを問はす且単独にて行ふと外国人或は内国臣民との組合を以てするとに論なく適法なる商業の目的物たる各種商品を取扱ふことに付内国臣民と同等の権利を享有すへく

 三 産業、生業、職業及修学研究を行ふことに関する一切の事項に付総て最恵国の臣民又は人民と同一の基礎に置かるへく

 四 内国臣民と同一の方法を以て必要なる家屋、製造所、倉庫、店舗及附属構造物を所有又は賃借して之を使用し且住居、商業、産業其の他適法なる目的の為土地を賃借することを得へく

 五 国法に依り別国の臣民又は人民か取得占有することを得又は得ることあるへき各種の動産及不動産を相互の条件に依り且常に該国法の定むる条件及制限に反せさる限り取得占有するの完全なる自由を享有し内国臣民に対して制定せられ又は制定せらるることあるへき所と同一の条件に依り売買、交換、贈与、婚姻、遺言其の他の方法に因り之を処分することを得へく又其の財産の売得金及総て其の動産を国法に従ひて輸出するの自由を享有し外国人たるの故を以て之か為同様の場合に内国臣民の負担する所と異なるか或は之より多額なる税金を課せらるることなかるへく

 六 其の身体及財産に対して常に完全なる保護及保障を享受し其の請求及権利を主張擁護せむか為自由且容易に裁判所其の他の官庁に申出つることを得且内国臣民と均しく右裁判所及官庁に於て自己を代理せしめむか為代言人及弁護士を選択使用するの完全なる自由を享有し其の他司法に関する一切の事項に付一般に内国臣民と同一の権利及特権を享有すへく

 七 内国臣民又は最恵国の臣民若は人民の納付し又は納付することあるへき所と異なるか或は之より多額なる何等の租税、手数料、課金又は貢納を徴収せらるることなかるへく

 八 又保税庫入に関する便益、奨励金及戻税に関する一切の事項に付内国臣民と全く均等なる待遇を享受すへし

    第二条

両締約国の一方の臣民は他の一方の版図内に於て陸軍、海軍、護国軍又は民兵の何れたるを問はす総ての強制兵役を免れ且服役の代として課せらるる一切の貢納を免れ又強募公債及軍用徴発又は取立金に付ては不動産の所有者、賃借者又は使用者として内国臣民と均しく課せらるるものを除くの外亦一切之を免るへし

前記の事項に関し締約国の一方の臣民は他の一方の版図内に於て最恵国の臣民又は人民に与へられ又は与へらるることあるへき所に比し不利益なる待遇を与へらるることなかるへし

    第三条

両締約国の一方の臣民か他の一方の版図内に於て有する家宅、倉庫、製造所及店舗並一切の附属構造物にして適法の目的に使用せらるるものは侵すへからす右建物又は附属構築物に付ては内国臣民に対する法定の条件及方式に依るの外臨検捜索を為し又は帳簿、書類若は計算書を検査點閲することを得す

    第四条

両締約国の一方は他の一方の港、都市其の他の場所に総領事、領事、副領事及領事事務官を置くことを得但し右領事館の駐在を認可するに便ならさる場所に付ては此の限に在らす尤も此の制限は一切の他国に対しても亦均しく之を加ふるに非されは一方の締約国に対して之を加ふることを得す

右総領事、領事、副領事及領事事務官は駐在国政府より認可状其の他相当の証認状を得たるときは其の職務を執行し且最恵国領事館に認許せられ又は認許せらるることあるへき特権、特典及免除を享有するの権利を有すへし認可状其の他の証認状を発給したる政府は其の裁量を以て之を取消す権利を有す但し其の取消を為すに付ては之を正当と認めたる理由を説明すへし

    第五条

両締約国の一方の臣民か他の一方の版図内に於て死亡したる場合に死亡者の本国法に依り相続財産を収受管理する権利を有する者其の地に在らさるときは死亡者所属国の当該領事官は必要なる手続を履行したる上右死亡者財産所在地の国法の定むる方法及制限に依り該相続財産を保管管理することを得

締約国の一方の臣民か他の一方の版図外に於て死亡したるも該版図内に財産を所有せる場合に相続財産を収受管理するの権利を有する者右財産所在地に在らさるときは亦前項の規定を準用す

死亡者の相続財産の管理に関する一切の事項に付締約国の一方か別国の領事官に現に許与し又は今後許与することあるへき権利、特権、恩典又は免除は締約国の他の一方の領事官に即時且無条件にて之を及ほすへきものとす

    第六条

両締約国版図の間には相互に通商及航海の自由あるへし締約国の一方の臣民は他の一方の版図内に於て外国通商の為に開かれ又は開かるることあるへき一切の場所、港及河川に船舶及貨物を以て自由に到ることを得而して到達国の国法に遵由するに於ては通商及航海に関する事項に付内国臣民の享有し又は享有することあるへき所と同一の権利、特権、自由、恩典、特典及免除を享有すへし

    第七条

両締約国の一方の版図内の生産又は製造に係る物品は他の一方の版図内に輸入せらるるに当り其の何れの地より到るを問はす別国の製産に係る同様の物品に適用せらるる最低率の関税を課せらるへし

締約国の一方の版図内の生産又は製造に係る物品は他の一方の版図内に輸入せらるるに当り其の何れの地より到るを問はす別国の生産又は製造に係る同様の物品の輸入に対して均しく適用せられさる何等の禁止又は制限を加へらるることなかるへし但し人畜又は農業上有用なる植物の安全を保障するの必要に基きたる衛生上其の他の禁止は此の限に在らす

    第八条

連合王国の生産又は製造に係る物品にして本条約附属税表第一号に列記するものは日本国に輸入せらるるに当り該税表に定むる所より多額の関税を課せらるることなかるへし

日本国の生産又は製造に係る物品にして本条約附属税表第二号に列記するものは連合王国に輸入せらるるに当り関税を課せらるることなかるへし

但し本条約実施の日より一年を経過したる後何時たりとも両締約国の一方か該税表中に修正を加へむことを希望するときは其の希望を他の一方に通告することを得右通告ありたる上は本件の為商議直に開始せらるへく通告の日より六月以内に商議満足に結了せさるときは通告を与へたる締約国は本条廃棄の為六月の予告を一月以内に与ふることを得而して右予告期間の終了と同時に本条は其の効力を失うへく之か為本条約の他の規定に影響を及ほすことなし

    第九条

両締約国の一方の版図内の生産又は製造に係る物品にして他の一方の版図に輸出せらるるものは其の輸出に当り別国に輸出せらるる同様の物品に対し徴収する所と異なるか或は之より多額なる課金を徴収せらるることなかるへし又如何なる物品たりとも締約国の一方の版図より他の一方の版図に輸出せらるるに対し同様の物品か別国に輸出せらるるに対して均しく適用せられさる何等の禁止又は制限を加へらるることなかるへし

    第十条

両締約国の一方の版図内の生産又は製造に係る物品にして他の一方の国法に従ひ其の版図内を通過するものは直過すると又は通過中荷卸及庫入の後更に荷積せらるるとを問はす互に一切の通過税を課せらるることなかるへし

    第十一条

国家、地方官庁又は自治体の利益の為課せらるる内国税にして両締約国の一方の版図内に於ける物品の生産、製造又は消費に影響し又は影響することあるへきものは何等の理由を以てするも他の一方の版図内の生産又は製造に係る物品に対し同様の内国品に対するよりも多額なるか或は重き負担たることを得す

締約国の一方の版図内の生産又は製造に係る物品にして庫入又は通過の目的を以て他の一方の版図内に輸入せらるるものは内国税を課せらるることなかるへし

    第十二条

両締約国の一方の臣民たる商工業者及該国の版図内に於て住所を有し其の業を営む商工業者は他の一方の版図内に於て本人自ら又は旅商を用ひて物品を買入れ見本携帯又は不携帯にて注文を取集むることを得而して右商工業者及其の用ふる旅商は買入を為し又は注文を取集むるに当り課税及便益に関して最恵国待遇を享受すへし

前期の目的を以て見本として輸入せらるる物品は其の再輸出せらるへきこと又は法定期間内に再輸出せられさる場合に成規の関税の納付せらるへきことを確実ならしめむか為に制定せられたる税関法規手続を履行するときは各締約国に於て一時無税輸入を許可せられるへし但し此の特権は物品の数量又は価格に徴し見本と認むること能はさるもの又は其の性質上再輸出の際校合すること能はさるものには之を与ふることなし見本か無税輸入を許可せらるへきものたると否とを決定するは何れの場合に於ても輸入地当該官庁の権内に専属す

    第十三条

前条記載の見本に対し其の輸出の際両締約国の一方の税関か施したる記号、極印又は印章は右見本の詳細なる説明を記載し該税関の発給せる公の査証を有する目録と共に其の見本品たることを証明するものとして且該目録列記のものたることを確認するか為必要なる外右見本をして検査を免れしむるものとして互に他の一方の税関官吏より承認せらるへし但し其の特に必要と認むる場合には更に記号を該見本に施すことを得

    第十四条

商業会議所其の他締約国版図内に於ける公認の営業組合及商業組合にして之か為権限を付与せられたるものは旅商の要することあるへき証明書の発給権限を有するものとして互に承認せらるへし

    第十五条

両締約国の一方の国法に従ひて既に設立せられ又は今後設立せらるへき商工業及金融業に関する有限責任其の他の会社及組合にして該国版図内に於て登記せられたるものは他の一方の版図内に於て其の国法に違反せさる限り権利を行使し且原告又は被告として裁判所に出頭することを得

    第十六条

各締約国は適法に輸入し又は輸出せらるることを得る一切の商品の輸入又は輸出及其の版図より又は版図への旅客の運輸を他の一方の船舶に認許すへし右船舶、其の貨物及旅客は内国船舶、其の貨物及旅客と同一の特権を享有し之に課せらるる所と異なるか或は之より多額なる税金又は課金を課せらるることなかるへし

    第十七条

締約国の港湾、船梁及碇泊所に於ける船舶の繋留及貨物の積卸に関する一切の事項に付ても亦締約国に於て両国の船舶を全く均等に待遇するの意思なるに因り締約国の孰れの一方たりとも他の一方の船舶に対して同様の場合に均しく許与せさる何等の特権又は便益を自国船舶に許与することなかるへし

    第十八条

日本国の国法に従ひ日本船舶と認めらるる一切の船舶又大不列顛国の国法に従ひ大不列顛と認めらるる一切の船舶は本条約の目的に於て日本船舶又は大不列顛船舶と認めらるへし

    第十九条

政府、官公吏、私人、団体又は各種営造物の名義を以て又は其の利益の為に課せらるる噸税、港税、水先案内料、燈台税、検疫費其の他名称の如何に拘らす之に類似する税金又は課金は同様の場合に同一の条件を以て均しく内国船舶一般に又は最恵国船舶に課するものに非されは締約国の一方の港に於て之を他の一方の船舶に課することなし右均等の待遇は各締約国の船舶か何れの地より来り又何れの地に往くを問はす相互に之を実行すへし

    第二十条

両締約国の一方の定期郵便運送の任務に当る船舶は他の一方の領水内に於て同様の最恵国船舶に許与せらるる特別の便益、特権及免除を享有すへし

    第二十一条

両締約国の沿岸貿易は本条約の規定する限に在らす日本国及連合王国各自の国法の定むる所に依る但し締約国の一方の臣民及船舶は本件に関し他の一方の版図内に於て最恵国待遇を享受すへきものとす

尤も日本船舶及大不列顛船舶は外国より積載し来りたる旅客又は貨物の全部又は一部を陸揚せむか為或は外国を目的地とする旅客又は貨物の全部又は一部を積載せむか為一の港より他の港に航行することを得

又締約国の一方の沿岸貿易か内国船舶に全然留保せらるる場合に他の一方の船舶にして右留保せられたる沿岸貿易の区域外に在る地との貿易に従事するものは該区域外の地より来り又は之に到るへき通し切符を所持する旅客又は通し船荷証券を有する商品を前期締約国の一方の二港間に運輸することを禁止せられさるへく且右運輸に従事するに当り該船舶及其の貨物は総て本条約の規定する特権を享有すへきものとす

    第二十二条

両締約国の一方の国籍を有する船舶にして他の一方の領水内に在るものの船員脱船したるとき脱船者回収の為該船舶所属国の当該領事館に於て一切之に関する費用の償還せらるへきことを保障して請求したる場合には地方官庁は国法の許す限り其の権内に在る各般の援助を与ふることを要す

右の規定は脱船地の国の臣民に関しては之を適用せさるものとす

    第二十三条

両締約国の一方の船舶にして暴風又は偶然の事故の為已むを得す他の一方の港に避難するものは其の地に於て修繕を為し一切の需要品を求めて出港することを得へく同様の場合に内国船舶の納付する所と異なる何等の税金を徴収せらるることなし但し商船の船長か費用を支弁する為其の商品の一部を処分するの必要を認めたるときは寄港地の規則及税法に遵由することを要す

締約国の一方の船舶か他の一方の沿岸に於て擱座し又は難破したるときは該船舶、其の一切の部分、備付品、附属品並該船舶より救上けられ若は海中に投下せられたる一切の貨物及商品又は此等物品中売却せられたるものある場合の収得金は右擱座又は難破したる船舶内に発見せられたる一切の書類と共に所有者又は其の代理人より要求あり次第之を引渡すへし右所有者又は代理人現場に在らさるときは難破又は擱座の場所を管轄区域内に包含する日本国又は大不列顛国領事官より国内法の定むる期間内に請求あり次第之を引渡すへし而して右領事官、所有者又は代理人は財産保存の為要したる費用の外内国船舶か難破又は擱座せる同様の場合に於て支弁すへき救護費其の他の費用のみを支弁すへし

締約国は又救上けられたる商品か内国消費の為に引取られさる限り関税を徴収せさるへきことを約定す

船舶か暴風の為打寄せられ、擱座し又は難破したる場合に所有者又は船長其の他所有者の代理人不在なるか又は現場に在るも其の請求あるときは当該国の領事官は自国民に必要なる援助を与へむか為関与することを得へし

    第二十四条

両締約国は各締約国の通商、航海及工業を総て最恵国の基礎に置くの意思なるに因り通商、航海及工業に関する一切の事項に付其の一方か別国の船舶又は臣民若は人民に現に許与し又は今後許与することあるへき一切の恩典、特権又は免除を即時且無条件にて他の一方の船舶又は臣民に及ほすことに同意す

    第二十五条

本条約の規定は各締約国か専ら国境の内外各側に於ける一定地帯内の国境貿易を便ならしめむか為接壌国に許与する関税上の殊遇、締約国の内国民漁業の産物に許与せらるる待遇又は日本国に近接する外国領水内に於て捕獲採取せられたる魚類其の他の水産物に関し日本国か許与する関税上の殊遇には之を適用せす

    第二十六条

本条約の規定は批准書交換の日より二年以内に大不列顛国皇帝陛下の海外の領土、殖民地、属地又は保護領の何れかの為大不列顛国皇帝陛下の東京駐箚代表者より加入の通告を為すに非されは右領土、殖民地、属地又は保護領の何れにも適用せらるることなし

    第二十七条

本条約は批准を要す其の批准書は成るへく速に東京に於て交換すへし本条約は千九百十一年七月十七日より実施し千九百二十三年七月十六日迄効力を有す右期間満了の十二月前に両締約国の孰れよりも本条約を消滅せしむるの意思を他の一方に通告せさるときは本条約は締約国の一方か其の廃棄を声明したる日より一年の期間の満了に至る迄引続き効力を有す

尤も第二十六条の規定に依り本条約の適用せらるるに至りたる大不列顛国の領土、殖民地、属地及び保護領に関しては其の箇箇に付各締約国は何時にても十二月の予告を以て本条約を終了せしむるの権利を有す

大不列顛国の領土、殖民地、属地及保護領に関する本条及前条の規定は「サイプラス」島にも亦適用せらるるものとす

右証拠として各全権委員之に署名調印す

 千九百十一年四月三日倫敦に於て本書二通を作る

(署名調印省略)


    附属税表

     第一号

(省略)

(国立公文書館:御署名原本・明治四十四年・条約第二号・日英通商航海条約 御署名原本・明治四十四年・条約第二号・日英通商航海条約)

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