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日本国及印度間通商関係に関する条約 1934年07月12日

 日本国及印度間通商関係に関する条約(ひらがな化、一部新字体化、附属書あり)


日本國及印度間通商關係ニ關スル條約

条約第四号

(前文省略)

   第一条

本条約の適用せらるる領域は日本国皇帝陛下に在りては皇帝陛下に属し又は其の管治する一切の地域及属地(右の領域は以下之を日本国と称す)とし「グレート、ブリテン」、「アイルランド」及「グレート、ブリテン」海外領土皇帝印度皇帝陛下に在りては英領印度及皇帝陛下との条約又は其の他に依り本条約の規定に関し英領印度と同一の地歩に置かるべき印度内の諸邦(右の領域は以下之を印度と称す)とす

   第二条

締約国の一方の領域に於て産出せられ又は製造せられたる物品は何れの地より到るを問はず他方の領域への輸入に当り別国に於て産出せられ又は製造せられたる同様の物品に課せらるる所と異るか又は之より高き税金又は課金を課せらるることなかるべし

   第三条

本条約の規定する所如何に拘らず印度政府は日本国に於て産出せられ又は製造せられたる物品の印度への輸入に当り別国に於て産出せられ又は製造せられたる同様の物品に課せらるる所と異るか又は之より高き特別関税を印度政府が千九百三十三年十二月三十一日後に於ける間対「ルピー」の為替価値の変動の影響を是正するに必要なりと認むる率にて課し又は随時之が変更を為すの権利を有すべし但し右率が少くとも五週間実施せられたる後に非ざれば之が変更を為さざるものとす

右特別関税を課し若は変更する場合又は日本国政府に依り之が変更を要求せらるる場合には印度政府は日本国に於て産出せられ又は製造せられたる物品の輸出価格を騰貴せしむべき一切の関係要因に付充分の考慮を払ふべく且右関税の率は之を日本国に於て産出せられ又は製造せられたる物品にして印度に輸入せられたるものの税金込価格に及ぼす円対「ルピー」の為替価値の変動の影響を是正するに必要なる程度に止むべし

相互的に日本政府は印度に於て産出せられ又は製造せられたる物品の日本国への輸入に当り別国に於て産出せられ又は製造せられたる同様の物品に課せらるる所と異なるか又は之より高き特別関税を日本国政府が「ルピー」対円の為替価値の変動の影響を是正するに必要なりと認むる率にて課し又は随時之が変更を為すの権利を有すべし但し右権利は「ルピー」対円の為替価値が七十三銭二厘未満に非ざる限り日本国政府に発生することなく又右率が少くとも五週間実施せられたる後に非ざれば之が変更を為さざるものとす

右特別関税を課し若は変更する場合又は印度政府に依り之が変更を要求せらるる場合には日本国政府は印度に於て産出せられ又は製造せられたる物品の輸出価格を騰貴せしむべき一切の関係要因に付充分の考慮を払ふべく且右関税の率は之を印度に於て産出せられ又は製造せられたる物品にして日本国に輸入せられたるものの税金込価格に及ぼす七十三銭二厘未満に於ける「ルピー」の為替価値の変動の影響を是正するに必要なる程度に止むべし

   第四条

締約国は日本国政府及印度政府に各自の利益の保護の為必要なる関税変更を為すの権利を留保し何れかの一方の国の関税変更が相当の程度に於て他方の貿易上の利益に悪影響を及ぼすことと為る場合には両国政府が悪影響を受けたる国の政府の要求に基き能ふ限り両国の利益を調和せしむる目的を以て直に商議を開始すべきことを約す

   第五条

本条約は批准せらるべし批准書は成るべく速に「ロンドン」に於て交換せらるべし締約国の一方の批准書の完成せられたる日は外交手続に依り他方に通知せらるべく本条約は批准書交換に先ち本条に依り要求せらるる両通知中後の通知が為されたる日より実施せらるべし

   第六条

本条約は千九百三十七年三月三十一日に至る迄引続き効力を有すべし

締約国の何れの一方も本条約を失効せしむるの意志を右の日の六月前に他方に通告せざる場合には本条約は締約国の何れかの一方が他方に之が失効に付ての通告を為したる日より六月の期間の満了に至る迄引続き効力を有すべし

(以下署名等省略)


     議定書

日本国及印度間の通商関係に関する条約に本日署名するに当り下名は之が為正当の委任を受け日本綿布の印度への輸入に関し左の如く協定せり

   第一条

本議定書の適用上

「棉花年度」なる用語は一月一日に始まる一年を意味す

「綿布年度」なる用語は四月一日に始まる一年を意味す

 或綿布年度と右綿布年度の始まる時の棉花年度とは「対応」するものと称せらる又

「ヤード」なる用語は長さのヤードを意味す

   第二条

日本国に於て製造せられたる綿布の印度への輸入に当り課せらるべき関税は左の率を超えざるべし

(イ) 生無地 従価五割又は毎ポンド五「アンナ」四分の一の何れか高き方

(ロ) 其の他 従価五割

将来印度政府が生無地以外の綿布に従量税を課することに決したる場合同政府は日本国の製造品たる右綿布に毎ポンド五「アンナ」四分の一を超ゆる従量税を課せざるべし

   第三条

(一) 一棉花年度に於て棉花百万俵が印度より日本国に輸出せらるるときは対応綿布年度に於て日本国より印度に輸出せられ得べき綿布数量は基準割当量三億二千五百万ヤードたるべし

(二) 一棉花年度に於ける印度より日本国への棉花の輸出が百万俵未満なるときは対応綿布年度に対する綿布の割当量は基準割当量より不足数量毎一万俵に付又は五千俵を超ゆる其の残余数量に付二百万ヤード丈け減じたるものたるべし

(三) 一棉花年度に於ける印度より日本国への棉花の輸出が百万俵を超ゆるときは対応綿布年度に対する綿布の割当量は基準割当量を超過数量毎一万俵に付又は五千俵を超ゆる其の残余数量に付百五十万ヤード丈け増加したるものたるべし

 尤も綿布の割当量は如何なる場合に於ても一綿布年度に対し四億ヤードを超えざるべし

(四) 一棉花年度に於ける印度より日本国への棉花の輸出が百五十万俵を超ゆるときは超過数量は次期棉花年度に対応する綿布年度に対する綿布の割当量決定上右の次期棉花年度に於て印度より日本国に輸出せらるる棉花数量に加へらるべし

(五) 本条並に第四条、第五条、第六条及第七条に依る計算上輸入せられたる上再輸出せられたる一切の棉花及棉布は除外せらるべし

   第四条

(一) 一綿布年度の前半期中に日本国より印度に輸出せられ得べき綿布の割当量は二億ヤードたるべし

 尤も一綿布年度の前半期に於て日本国より印度への綿布の輸出が右綿布年度の全年に対する割当量を超ゆるときは次期綿布年度の前半期に対する割当量は二億ヤードより右の超過数量丈け減じたるものたるべし

(二) 一綿布年度の後半期中に日本国より印度に輸出せられ得べき綿布の割当量は右年度に対する年割当量より二億ヤード丈け減じたるものたるべし

 尤も一綿布年度の前半期に於て日本国より印度に輸出せられたる数量が二億ヤードを第五条に依り増減したるものに達せざるときは右綿布年度の後半期に対する割当量は二千万ヤードを超えざる数量迄の当該不足数量を含むべし

   第五条

前記諸条の規定する所如何に拘らず

(イ) 一綿布年度に於て右年度に対する割当量に達せざる数量が日本国より印度に輸出せらるるときは二千万ヤードを超えざる数量迄の当該不足数量は次期綿布年度の前半期に於て右前半期に対する割当量の外に輸出せられ得べく又

(ロ) 本議定書の失効する時の綿布年度を除くの外一綿布年度に於て綿布二千万ヤードを超えざる数量は右年度に対する割当量の外に日本国より印度に輸出せられ得べし尤も右の超過数量は次期綿布年度の前半期に対する割当量より控除せらるべし

   第六条

本議定書が綿布年度の始期以外の時に於て効力を発生するときは本議定書の適用上最初の棉花年度は千九百三十四年一月一日に又最初の綿布年度は千九百三十四年四月一日に始まるものと看做さるべし

   第七条

(一) 本議定書の適用上綿布は左の四品種に区分せらるべし

 (イ) 生無地

 (ロ) 縁付生地

 (ハ) 晒(白)地

 (ニ) 色(捺染、無地染又は糸染)地

又一綿布年度に対する割当量は右四品種間に於て左の如き割当分量より成る細別割当量に区分せらるべし

   生無地               四割五分

   縁付生地              一割三分

   晒(白)地                八分

  色(捺染、無地染又は糸染)地     三割四分

尚(二)に規定せらるる所を除くの外一綿布年度に於ける各品種の綿布の輸出は右割当分量に限らるべし

(二) 一の細別割当量より他の細別割当量への移譲は左の条件に従ひ之を為すことを得

 (イ) 何れの綿布年度に対する割当量も之が為増加せられざるべきこと

 (ロ) 縁付生地に対する細別割当量又は晒(白)地に対する細別割当量より移譲せらるべき数量は当該細別割当量の二割を超えざるべく其の他の細別割当量より移譲せらるべき数量は当該細別割当量の一割を超えざるべきこと及

 (ハ) 縁付生地に対する細別割当量又は晒(白)地に対する細別割当量は当該細別割当量の二割より多くは増加せられざるべく其の他の細別割当量は当該細別割当量の一割より多くは増加せられざるべきこと

(三) 本条の原則は第五条に依り年割当量を超えて日本国より印度に輸出せらるる綿布数量に対しても恰かも右数量が年割当量なるが如くに適用せらるべし

   第八条

本議定書は本日付の日本国及印度間の通商関係に関する条約第二条又は第三条に依る締約国の権利に影響を及ぼすものと認められざるべし

   第九条

本議定書は本日付の日本国及印度間の通商関係に関する条約と同時に実施せられ且千九百三十七年三月三十一日に至る迄引続き効力を有すべし

(署名等省略)

(日本公文書館:日本国及印度間通商関係ニ関スル条約・御署名原本・昭和九年・条... A03021970400) 

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