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十一月五日御前会議決定「帝国国策遂行要領」に関連する対外措置 1941年11月13日

十一月五日御前会議決定「帝国国策遂行要領」に関連する対外措置(原文:ひらがな、新字体化)

  十一月五日 御前会議決定「帝国国策遂行要領」ニ関聯スル対外措置
                         昭和一六、一一、一三
                         連絡会議決定
一、対独伊
 日米交渉決裂し戦争不可避と認められたる際(大体十一月二十五日以後と想定す)には遅滞なく独(伊)に対し帝国は近く準備成り次第英米に対し開戦するの意向なる旨を通報し右準備の一部なりしとて左記事項に付必要なる交渉を行ふものとす
 一、独(伊)の対米戦争参加
 二、単独不講和
  備考 独逸側より対「ソ」参戦の要求ありたる場合には差当り参戦せさる旨を以て応酬す但し之か為独側の対米参戦の時期か遅るるか如き事態生するも已むを得す
一、対 英
 対米交渉の結果たる了解事項中英国に関係ある事項を英国をして受諾せしめ且之に積極的に協力せしむる様速に直接又は米を通し措置し置くものとす
 右以外企図隠匿の見地に於て特別の外交措置を行ふこと無し
一、対蘭印
 我企図秘匿欺騙に資するため成るへく速かに従来交渉継続の形式に於て帝国に対する所要物資の供給を主眼とする外交交渉を逐次開始す
一、対「ソ」
 概ね昭和十六年八月四日大本営政府連絡会議決定に係る対「ソ」外交交渉要綱第一項に準拠して交渉を続行す
一、対 泰
 1.進駐開始直前左記を要求し迅速に之を承認せしむ
  泰にして帝国の要求に応せさる場合に於ても軍隊は予定の如く進駐す、但し日泰間武力的衝突は之を局限するに努む
     左   記
   イ、帝国軍隊の通過並に之に伴ふ諸般の便宜供与
   ロ、帝国軍隊の通過に伴ふ日泰軍隊の衝突回避措置の即時実行
   ハ、泰の希望によりては共同防衛協定の締結
  (註)本交渉開始前に於ける対泰態度は従来と特別の変化なからしめ特に開戦企図の秘匿に万全の考慮を払ふものとす
 2.進駐後速かに概ね左の諸件に関し具体的に現地に於て取極を行ふ
   イ、帝国軍隊の通過及駐屯に関する事項
   ロ、軍用施設の供用及新設増強
   ハ、所要の交通通信機関及工場施設等の供用
   ニ、通過並に駐屯軍隊に対する宿営、給養等
   ホ、所要軍費の借款
備考 第一、第二項の交渉に当りては昭和十六年二月一日大本営政府連絡会議決定の対仏印泰施策要綱に準拠し泰の主権及領土の尊重を確約し尚泰の態度によりては将来「ビルマ」若くは馬来の一部を割譲すべき事を考慮すへき旨を仄かし以て交渉を有利ならしむ
一、対 支
 出来得る限り消耗を避け以て長期世界戦に対処すへき帝国総合戦力の確保及将来兵力減少の場合等を念頭に置き左の通り措置するものとす
 1.在支米英武力を一掃す
 2.在支敵性租界(北京公使館区域を含む)及敵性重要権益(海関、鉱山等)を我実権下に把握す但し我国の人的並に物的負担を成るへく軽からしむる様留意するものとす
  (註)共同租界及北京公使館区域は敵性武力を一掃して我実権下に收むるも友好国権益をも混入するを以て接収等の形式をらさるものとす
 3.前諸項の発動は我企図を暴露せさる為我対米英開戦後とす
 4.重慶に対する交戦権の発動は特に宣言等の形式を以てすることなく対米英開戦を以て事実上其実効を收むるものとす
 5.在支敵国系権益中国民政府に関係あるものも必要に応し差当り我方実権下に把握するものとし之か調整は別に措置す
 6.占領地内に於ける支那側要人の活動を出来得る限り誘導促進し日支協力の下に民心の把握に力め以て可能なる地域より漸次局部和平を実現せしむ
 7.対支経済関係に於ては物資獲得に重点を置き之か為現行諸制限に合理的調整を加ふるものとす
(国立公文書館:十一月五日御前会議決定「帝国国策遂行要領」ニ関連スル対外措置)

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