大東亜戦争完遂の為の対支処理根本方針に基く具体的方策(原文:ひらがな、新字体化)
大東亞戰爭完遂ノ爲ノ對支處理根本方針ニ基ク具體的方策
昭和十七年十二月十八日
大本営政府連絡会議決定
第一、戦争協力確保の為の日華間基本取極
国民政府参戦を機とし国民政府の戦争協力を確保し真に更新支那と一体戦争完遂に邁進する為該政府との間に基本的取極を締結す
第二、国民政府の政治力強化
国民政府の政治力を強化する為差当り左の措置を講す
一、国民政府の財政強化
イ、国民政府をして自ら其の財政を強化する為有らゆる方策を講せしむるものとし特に該政府治下の治安を確立し経済力の伸張を図らしむ
ロ、帝国は右国民政府財政自疆方策に対し援助を与ふるものとし特に治外法権等に基く課税に関する我方特権に付調整を加ふると共に国民政府の関税、転口税及統税等の税率其の他の合理的改正並に儲備券の価値維持等に付所要の援助を与ふ
二、国民政府の地方政府に対する関係調整
極力地方的特殊性を調整し国民政府の地方政府に対する指導を強化せしむ此の際特に中央地方相互間に無用の摩擦、感情的相剋なからしむるのみならす進て融和的雰囲気を醸成せしめ中央地方共に更新支那の構成分子として協心戮力戦争完遂に邁進せしむ
之か為帝国は差当り日華基本条約及附属諸取極に反せさる範囲に於て左の通措置す
イ、帝国は省政府以下の各地方政府人事に関しては支那側の自由処置に任し之に干渉せさること
ロ、省政府以下の施政に関する日本側の指導乃至要求は作戦警備に関するものに限定するを本則とし爾他の行政部面にありては広く支那側に任せ支那側の責任と創意とを活用し其の自発的活動に依る政治力強化及積極的対日協力を促進すること
ハ、帝国は支那側上級政府の下級政府に対する政令の貫徹を助長するものとし末梢に於ける干渉に依り支那側施政の中絶分断するか如きことなからしむること
ニ、華北政務委員会と中央政府との権限関係に付ては日華基本条約附属交換公文(甲)に基き所要の調整整理を図らしむると共に勉めて両者間の空気を融和せしめ且相互の経済的関連性を一層密ならしむること
ホ、蒙疆に関しては華北との間に相互の経済的関連性特に密ならしむること
ヘ、武漢及厦門に関しては広東に準し為し得る限り国民政府の政治力を浸透せしむること
ト、海南島に関しては現状に従ひ日華基本条約附属秘密交換公文(甲)を斟酌し所要の調整を行ふこと
三、租界還付及北京公使館区域
国民政府参戦を機とし帝国の専管租界還付並に上海共同租界、厦門共同租界及北京公使館区域移管の為国民政府との間に所要の取極を締結すると共に関係第三国に対し同調方適時斡旋す
四、治外法権撤廃
国民政府の参戦を機とし治外法権撤廃に関する具体案を審議作成せしむる目的を以て日華専門委員会を設置する為国民政府との間に所要の取極を締結す
五、在支敵産処理
在支敵産処理は既定方針に依るものとし国民政府との間に所要の取極を為す
第三、経済施策
差当り支那に於ける物資の獲得及統制並に支那側の対日経済協力促進に関し左の措置を講す
一、帝国の戦争完遂上必要とする物資の取得を増大し軍の自活を確保し併せて民生の維持に資する為占拠地域内に於ける緊要国防物資の重点的且効率的取得並に敵方物資の積極的獲得を図る
之か為特に物資統制を合理化すると共に物資買上価格の適正化を図る
尚前線に在りては対敵経済圧迫を考慮し戦争必需物資の対敵流出を阻止す但し之か為占拠地域内の物資交流を阻害することなし
本施策実行に当りても支那側の責任と創意とを活用し国民政府の政治力強化に資す
二、支那側官民の積極的なる経済活動及対日協力を促進し併せて国民政府政治力強化に資する為
(イ)日支合弁の支那法人をして名実共に支那側の監督下に置き其の資本、人的構成、免税特権其の他に付根本的調整を加ふ
(ロ)一般物資の生産及配給に当りても日本側の独占を避け支那側をして参加均霑せしむ
第四、爾他の具体的方策
爾他の具体的方策は所要に応し別に之を定む
(国立公文書館:昭和17年12月18日 別紙第3 大東亜戦争完遂の為の対支処理根本方針・・・)
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