スキップしてメイン コンテンツに移動

集会及政社法 1890年07月25日

集会及政社法(一部ひらがな、一部新字体化)

法律第五十三号
   集會及政社法
第一条 此の法律に於て政談集会と称ふるは何等の名義を以てするに拘らす政治に関る事項を講談論議する為公衆を会同するものを謂ふ政社と称ふるは何等の名義を以てするに拘らす政治に関る事項を目的として団体を組成するものを謂ふ
第二条 政談集会には発起人を定むへし
 政談集会を開くときは発起人より開会四十八時以前に会場所在地の管轄警察官署に届出へし
 前項の届出ありたるときは讐察官署は直に其の領収証を交付すへし
 届書には集会の場所年月日時並に発起人及講談論議者の氏名住所年齢を記載し発起人署名捺印すへし
 届書に記載したる時刻より三時間を過きて開会せさるときは届出の効を失ふものとす
第三条 日本臣民にして公権を有する成年の男子にあらされは政談集会の発起人たることを得す
第四条 現役及召集中に係る豫備後備の陸海軍軍人警察官官立公立私立学校の教員学生生徒未成年者及女子は政談集会に会同することを得す
 法律を以て組織したる議会の議員選挙準備の為に開く所の集会は投票の日より前三十日間は選挙権を行ふへき者及被選挙権を有する者に限り本条の制限に依るを要せす
第五条 政談集会に於ては外国人をして講談論議者たらしむことを得す
第六条 政談集会は屋外に於て開くことを得す
第七条 凡そ屋外に於て公衆を会同し又は多衆運動せんとするときは発起人より四十八時以前に会同すへき場所年月日時及其の通過すへき路線を管轄警察官署に届出て認可を受くへし但し祭葬講社学生生徒の体育運動及其の他慣例の許す所に係るものは此の限にあらす
 警察官署は前項の届出に於て安寧秩序に妨害ありと認むるときは認可を拒むことを得
 警察官署は安寧秩序に妨害ありと認むるときは何等の場合に拘らす屋外の集会又は多衆運動を禁止することを得
第八条 帝国議会開会より閉会に至るの間は議院を距る三里以内に於て屋外の集会又は多衆運動をなすことを得す但し第七条第一項但書の場合は本条に於ても之を適用す
第九条 警察官署は制服を著したる警察官を派遣し政談集会に臨監せしむることを得
 発起人は臨監警察官に其の求むる所の席を供すへく集会に関する事項に付尋問あるとき何事たりとも之に開答すへし
 政談集会にあらさるも安寧秩序を妨害するの虞ありと認むる集会には第一項の臨監を為すことを得
第十条 凡そ集会には戎器又は兇器を携帯して会同することを得す但し制規に依り戎器の携帯する者は此の限にあらす
第十一条 凡そ集会に於て罪犯を曲庇し又は刑律に触れたる者若は刑事裁判中の者を救護し又は賞恤し又は犯罪を教唆するの談論をなすことを得す
第十二条 会場に於て故らに喧擾を為し又は狂暴に渉る者あるときは警察官は之を制止し其の命に従はさるときは会場外に退出せしむることを得
第十三条 警察官は左の場合に於て集会の解散を命することを得
 一 集会の成立此の条例に背きたるとき
 二 第十一条を犯したるとき又は安寧秩序に妨害ありと認むるとき
   此の場合に於ては全会を散解せすして単に其の一人の講談論議を停止することを得
 三 讐察官の臨監を拒み又は其の求むる所の席を供せす又は其の尋問に答へさるとき
 四 会衆騒擾に渉り警察官之を制止するも鎮静せさるとき
 五 第四条第十条の違犯者多数にして警察官より退場を命するも其の命に従はさるとき
第十四条 第二条の届出を為さすして政談集会を開きたるときは発起人を十円以上百円以下の罰金に処す其の会場を貸与したる者亦同し
第十五条 第二条の届出を為すも實を以てせさるときは発起人罰前条に同し
第十六条 第三条を犯したる者及第四条に背き会同したる者及其の之を制止せさる発起人は二円以上二十円以下の罰金に処す
 第五条を犯したる発起人は罰前項に同し
 政談集会に会同することを得さる者を勧誘して会同せしめたる発起人は本条第一項の例に照して一等を加ふ
第十七条 第六条を犯したる発起人及講談論議者は十一日以上六月以下の軽禁錮又は五円以上五十円以下の罰金に処す
第十八条 第七条に背きたるときは発起人及教唆人を十円以上百円以下の罰金に処す
第十九条 第八条に背きたるときは発起人及教唆人を十一日以上六月以下の軽禁錮又は十円以上百円以下の罰企に処す
第二十条 第十条を犯したる者は十一日以上六月以下の軽禁錮に処す其の之を制止せさる発起人亦同し
第二十一条 第十一条を犯したる者は一月以上六月以下の軽禁錮又は二十円以上二百円以下の罰金に処す
第二十二条 警察官より解散を命せられたる後仍退散せさる者又は退出を命せられたる後仍退出せさる者は十一日以上六月以下の軽禁錮又は二円以上二十円以下の罰金に処す
第二十三条 政社には役員を置くへし
 政社は組成後三日以内に其の役員より社名社則事務所役員及社員名簿を其の事務所所在地の管轄警察官署に届出へし其の届出の事項に変更ありたるとき亦同し
 前項の屆出ありたるときは警察官署は直に其の領収証を交付すへし
 役員は其の政社に関る事項に付警察官より尋問あるとき何事たりとも之に開答すへし
第二十四条 政社にして政談集会を開くときは第二条の手続を為すへし但し講談論議者及会場を予定して定期に集会するものは之を初会の開会四十八時以前に届出るときは爾後の例会は届出を要せす其の届出の事項に変更ありたるときは仍第二条の手続に依るへし
第二十五条 現役及召集中に係る予備後備の陸海軍軍人警察官官立公立私立学校の教員学生生徒未成年者女子及公権を有せさる男子は政社に加入することを得す
第二十六条 政社に於ては外国人をして加入せしむることを得す
第二十七条 政社は標章及旗幟を用いることを得す
第二十八条 政社は委員若は文書を発して公衆を誘導し又は支社を置き若は他の政社と連結通信することを得す
第二十九条 政社に於ては法律を以て組織したる議会の議員に対して其の発言及表決に付議会外に於て責任を負はしむるの制規を設くることを得す
第三十条 凡そ結社にして安寧秩序に妨害ありと認むるときは内務大臣は之を禁止することを得若し禁止の命に従はすして仍結社するの実ある者は二月以上二年以下の軽禁錮又は二十円以上二百円以下の罰金に処す
第三十一条 第二十三条に背き政社の届出を為ささるとき又は警察官の尋問に答へさるときは其の役員を十円以上百円以下の罰金に処す
 第二十三条の届出を為すも実を以てせさるとき又は尋問を受けて詐偽の答を為すときは前項の例に照して一等を加ふ
第三十二条 第二十五条に背き入社したる者及入社せしめたる役員は二円以上二十円以下の罰金に処す
 第二十六条を犯したる役員は罰前項に同し
第三十三条 第二十七条に背き標章旗幟を用いたる者及其の政社の役員は二円以上二十円以下の罰金に処す
第三十四条 第二十八条を犯したるときは其の役員及委員を一月以上一年以下の軽禁錮又は五円以上五十円以下の罰金に処す
第三十五条 集会の発起人又は結社の役員たるの実ある者は一人又は数人又は何等の名義を以てするに拘らす総て発起人又は役員の責に任す
第三十六条 此の法律を犯したる者は数罪倶発の例を用いす
第三十七条 此の法律に関する公訴の期満免除は六月とす
第三十八条 法律命令に定むる所の集会は此の法律に依るの限にあらす
(集会及政社法・御署名原本・明治二十三年・法律第五十三号)

コメント

このブログの人気の投稿

徴兵の詔(徴兵令詔書及ヒ徴兵告諭) 1872年12月28日

徴兵令詔書及び徴兵告諭(口語訳)  今回、全国募兵の件に付き、別紙の詔書の通り徴兵令が仰せ出され、その定めるところの条々、各々天皇の趣意を戴き、下々の者に至るまで遺漏なきように公布しなさい。全体として詳細は陸軍・海軍両省と打ち合わせをしなさい。この趣旨を通達する。  ただし、徴兵令および徴募期限については追って通達するべきものとする。 (別紙) 詔書の写し   私(明治天皇)が考えるに、往昔は郡県の制度により、全国の壮年の男子を募って、軍団を設置し、それによって国家を守ることは、もとより武士・農民の区別がなかった。中世以降、兵は武士に限られるようになり、兵農分離が始まって、ついに封建制度を形成するようになる。明治維新は、実に2千有余年来の一大変革であった。この際にあたり、海軍・陸軍の兵制もまた時節に従って、変更しないわけにはいかない。今日本の往昔の兵制に基づいて、海外各国の兵制を斟酌し、全国から兵を徴集する法律を定め、国家を守る基本を確立しようと思う。おまえたち、多くのあらゆる役人は手厚く、私(明治天皇)の意志を体して、広くこれを全国に説き聞かせなさい。 明治5年(壬申)11月28日  わが国古代の兵制では、国をあげて兵士とならなかったものはいなかった。有事の際は、天皇が元帥となり、青年壮年兵役に耐えられる者を募り、敵を征服すれば兵役を解き、帰郷すれば農工商人となった。もとより後世のように両刀を帯びて武士と称し、傍若無人で働かずに生活をし、甚だしい時には人を殺しても、お上が罪を問わないというようなことはなかった。  そもそも、神武天皇は珍彦を葛城の国造に任命し、以後軍団を設け衛士・防人の制度を始めて、神亀天平の時代に六府二鎮を設けて備えがなったのである。保元の乱・平治の乱以後、朝廷の軍規が緩み、軍事権は武士の手に落ち、国は封建制の時代となって、人は兵農分離とされた。さらに後世になって、朝廷の権威は失墜し、その弊害はあえていうべきものもなく甚だしいものとなった。  ところが、明治維新で諸藩が領土を朝廷に返還し、1871年(明治4)になって以前の郡県制に戻った。世襲で働かずに生活していた武士は、俸禄を減らし、刀剣を腰からはずすことを許し、士農工商の四民にようやく自由の権利を持たせようとしている。これは上下の身分差をなくし、人権を平等にしようとする方法で、とりもな...

日清修好条規 1871年09月13日

内容見直し点:口語訳中途 修好条規(口語訳、前文署名省略) 第一条 この条約締結のあとは、大日本国と大清国は弥和誼を敦うし、天地と共に窮まり無るべし。又両国に属したる邦土も、各礼を以て相待ち、すこしも侵越する事なく永久安全を得せしむべし。 第二条 両国好を通ぜし上は、必ず相関切す。若し他国より不公及び軽藐する事有る時、其知らせを為さば、何れも互に相助け、或は中に入り、程克く取扱い、友誼を敦くすべし。 第三条 両国の政事禁令各異なれば、其政事は己国自主の権に任すべし。彼此に於て何れも代謀干預して禁じたる事を、取り行わんと請い願う事を得ず。其禁令は互に相助け、各其商民に諭し、土人を誘惑し、聊違犯あるを許さず。 第四条 両国秉権大臣を差出し、其眷属随員を召具して京師に在留し、或は長く居留し、或は時々往来し、内地各処を通行する事を得べし。其入費は何れも自分より払うべし。其地面家宅を賃借して大臣等の公館と為し、並びに行李の往来及び飛脚を仕立書状を送る等の事は、何れも不都合がないように世話しなければならない。 第五条 両国の官位何れも定品有りといえども、職を授る事各同じからず。因彼此の職掌相当する者は、応接及び交通とも均く対待の礼を用ゆ。職卑き者と上官と相見るには客礼を行い、公務を辨ずるに付ては、職掌相当の官へ照会す。其上官へ転申し直達する事を得ず。又双方礼式の出会には、各官位の名帖を用う。凡両国より差出したる官員初て任所に到着せば、印証ある書付を出し見せ、仮冒なき様の防ぎをなすべし。 第六条 今後両国を往復する公文について、清国は漢文を用い、日本国は日本文を用いて漢訳文を副えることとする。あるいはただ漢文のみを用い、その記載に従うものとする。 (これ以下まだ) 第七条 両国好みを通ぜし上は、海岸の各港に於て彼此し共に場所を指定め、商民の往来貿易を許すべし。猶別に通商章程を立て、両国の商民に永遠遵守せしむべし。 第八条 両国の開港場には、彼此何れも理事官を差置き、自国商民の取締をなすべし。凡家財、産業、公事、訴訟に干係せし事件は、都て其裁判に帰し、何れも自国の律例を按して糾辨すべし。両国商民相互の訴訟には、何れも願書体を用う。理事官は先ず理解を加え、成丈け訴訟に及ばざる様にすべし。其儀能わざる時は、地方官に掛合い双方出会し公平に裁断すべし。尤盗賊欠落等の事件は、両国の地方官より...

帝国陸海軍作戦計画大綱 1945年01月25日

 帝国陸海軍作戦計画大綱(ひらがな化、一部新字体化、一部省略)  帝国陸海軍作戦計画大綱(昭和二十年一月二十日)    目 次(略)    第一 作戦方針  帝国陸海軍は機微なる世界情勢の変転に莅み重点を主敵米軍の進攻破摧に指向し随処縦深に亙り敵戦力を撃破して戦争遂行上の要域を確保し以て敵戦意を挫折し以て戦争目的の達成を図る    第二 作戦の指導大綱 一 陸海軍は戦局愈々至難なるを予期しつつ既成の戦略態勢を活用し敵の進攻を破摧し速に自主的態勢の確立に努む   右自主的態勢は今後の作戦推移を洞察し速に先つ皇土及之か防衛に緊切なる大陸要域に於て不抜の邀撃態勢を確立し敵の来攻に方りては随時之を撃破すると共に其の間状況之を許す限り反撃戦力特に精錬なる航空戦力を整備し以て積極不羈の作戦遂行に努むるを以て其の主眼とす 二 陸海軍は比島方面に来攻中の米軍主力に対し靭強なる作戦を遂行し之を撃破して極力敵戦力に痛撃を加ふると共に敵戦力の牽制抑留に努め此の間情勢の推移を洞察し之に即応して速に爾他方面に於ける作戦準備を促進す 三 陸海軍は主敵米軍の皇土要域方面に向ふ進攻特に其の優勢なる空海戦力に対し作戦準備を完整し之を撃破す   之か為比島方面より皇土南陲に来攻する敵に対し東支那海周辺に於ける作戦を主眼とし二、三月頃を目途とし同周辺要地に於ける作戦準備を速急強化す   敵の小笠原諸島来攻(硫黄島を含む)に対し極力之か防備強化に努む   又敵一部の千島方面進攻を予期し又状況に依り有力なる敵の直接本土に暴進することあるを考慮し之に対処し得るの準備に遺憾なからしむ 四 陸海軍は進攻する米軍主力に対し陸海特に航空戦力を総合発揮し敵戦力を撃破し其の進攻企図を破摧す 此の間他方面に在りては優勢なる敵空海戦力の来攻を予想しつつ主として陸上部隊を以て作戦を遂行するものとす   敵戦力の撃破は渡洋進攻の弱点を捕へ洋上に於て痛撃を加ふるを主眼とし爾後上陸せる敵に対しては補給遮断と相俟つて陸上作戦に於て其の目的を達成す 此の際火力の集団機動を重視す   尚敵機動部隊に対しては努めて不断に好機を捕捉し之を求めて漸減す 五 支那大陸方面に在りては左に準拠し主敵米軍に対する作戦を指導す (一) 支那大陸に於ける戦略態勢を速に強化し東西両正面より進攻する敵特に米軍を撃破して其の企図を破摧し皇土を中核とする大...