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国民学校令(小学校令改正の件) 1941年02月28日

小学校令改正の件(原文:ひらがな、一部新字体化)

勅令第百四十八号
国民学校令
   第一章 目的
第一条 国民学校は皇国の道に則りて初等普通教育を施し国民の基礎的錬成を為すを以て目的とす
   第二章 課程及編制
第二条 国民学校に初等科及高等科を置く但し土地の情況に依り初等科又は高等科のみを置くことを得
第三条 初等科の修業年限は六年とし高等科の修業年限は二年とす
第四条 国民学校の教科は初等科及高等科を通じ国民科、理数科、体錬科及芸能科とし高等科に在りては実業科を加ふ
 国民科は之を分ちて修身、国語、国史及地理の科目とす
 理数科は之を分ちて算数及理科の科目とす
 体錬科は之を分ちて体操及武道の科目とす但し女児に付ては武道を欠くことを得
 芸能科は之を分ちて音楽、習字、図画及工作の科目とし初等科の女児に付ては裁縫の科目を、高等科の女児に付ては家事及裁縫の科目を加ふ
 実業科は之を分ちて農業、工業、商業又は水産の科目とす
 前五項に掲ぐる科目の外高等科に於ては外国語其の他必要なる科目を設くることを得
第五条 国民学校には高等科を修了したる者の為に特修科を置くことを得其の修業年限は一年とす
 特修科を設置し又は廃止せんとするときは市町村、市町村学校組合又は町村学校組合に於て地方長官の認可を受くべし
 特修科に関する規程は文部大臣之を定む
第六条 国民学校の教科用図書は文部省に於て著作権を有するものたるべし但し郷土に関する図書、歌詞、楽譜等に関し文部大臣に於て別段の規定を設けたる場合は此の限に在らず
第七条 国民学校の教則及編制に関する規程は文部大臣之を定む
   第三章 就学
第八条 保護者(児童に対し親権を行ふ者、親権を行ふ者なきときは後見人又は後見人の職務を行ふ者を謂ふ以下同じ)は児童の満六歳に達したる日の翌日以後に於ける最初の学年の始より満十四歳に達したる日の属する学年の終迄之を国民学校に就学せしむるの義務を負ふ
第九条 前条の規定に依り就学せしめらるべき児童(学齢児童と称す以下同じ)の瘋癲白痴又は不具癈疾の為之を就学せしむること能はずと認むるときは市町村長は地方長官の認可を受け前条に規定する保護者の義務を免除することを得
 学齢児童の病弱又は発育不完全其の他已むを得ざる事由に因り就学時期に於て之を就学せしむること能はずと認むるときは市町村長は其の就学を猶予することを得此の場合に於ては直に其の旨地方長官に報告すべし
第十条 第二十八条の規定に依り国民学校設置の義務を免ぜられたる区域内の学齢児童の保護者は第八条に規定する保護者の義務を免除せられたるものとす
第十一条 学齢児童国民学校以外の学校に於て国民学校の課程と同等以上と認むる課程を修むるときは第八条に規定する保護者の義務の履行に関しては其の期間国民学校に就学するものと看做す
 前項の課程の認定に関する規程は文部大臣之を定む
第十二条 学齢児童を使用する者は其の使用に依りて児童の就学を妨ぐることを得ず
第十三条 国民学校長は伝染病に罹り若は其の虞ある児童又は性行不良にして他の児童の教育に妨ありと認むる児童の国民学校に出席するを停止することを得
第十四条 児童にして其の年齢就学の始期に達せざるものは之を国民学校に入学せしむることを得ず
   第四章 職員
第十五条 国民学校には学校長及訓導を置くべし
 国民学校には教頭、養護訓導及准訓導を置くことを得
第十六条 学校長及教頭は其の学校の訓導の中より之を補す
 学校長は地方長官の命を承け校務を掌理し所属職員を監督す
 教頭は学校長を輔佐し校務を掌る
第十七条 訓導及養護訓導は判任官の待遇とす但し学校長又は教頭たる訓導は奏任官の待遇と為すことを得
 訓導は学校長の命を承け児童の教育を掌る
 養護訓導は学校長の命を承け児童の養護を掌る
 准訓導は学校長の命を承け訓導の職務を助く
第十八条 訓導及准訓導は国民学校教員免許状を有する者たるべし
 養護訓導は女子にして国民学校養護訓導免許状を有するものたるべし
 教員免許状は師範学校を卒業し又は訓導若は准訓導の検定に合格したる者に地方長官之を授与す
 養護訓導免許状は養護訓導の検定に合格したる者に地方長官之を授与す
 前二項の検定を施行する為道府県に国民学校教員検定委員会を置く
 国民学校教員検定委員会に関する規程は別に之を定む
 教員免許状及養護訓導免許状其の他検定に関する規程は文部大臣之を定む
第十九条 特別の事情あるときは地方長官は国民学校教員免許状を有せざる者をして准訓導の職務を行はしむることを得
第二十条 国民学校職員は教育上必要ありと認むるときは児童に懲戒を加ふることを得但し体罰を加ふることを得ず
第二十一条 国民学校教員免許状を有する者左の各号の一に該当するときは教員免許状は其の効力を失ふ
 一 禁錮以上の刑に処せられたるとき
 二 破産の宣告を受けたるとき
 教員免許状を有する者不正の行為其の他教員たるべき体面を汚辱するの行為ありて其の情状重しと認むるときは文部大臣又は地方長官に於て其の教員免許状を褫奪す
 前二項の規定は国民学校養護訓導免許状を有する者に之を準用す
第二十二条 地方長官に於て行ひたる国民学校教員免許状又は国民学校養護訓導免許状の褫奪の処分を受けたる者其の処分に不服あるときは文部大臣に訴願することを得
第二十三条 准訓導及第十九条の規定に依り准訓導の職務を行ふ者に関する規程は文部大臣之を定む
   第五章 設置
第二十四条 市町村は其の区域内の学齢児童を就学せしむるに必要なる国民学校を設置すべし
第二十五条 地方長官は町村が左の各号の一に該当すと認むるときは国民学校設置の為其の町村と他の市町村との学校組合を設くべし
 一 町村の資力が国民学校の経費の負担に堪ヘざるとき
 二 町村に於て学齢児童の数一国民学校を構成するに足らず又は適度の通学路程内に於て一国民学校を構成するに足るべき数を得ること能はざるとき
 地方長官は市町村の一部にして前項第二号の事情あるものが其の市町村の国民学校に対し適度の通学路程内に在らずと認むるとき亦前項の例に依るべし
 前二項の規定に依り地方長官に於て市町村学校組合又は町村学校組合を設けんとするときは組合規約を定め関係市町村の意見を聞くべし組合規約を変更し組合市町村の数を増減し又は組合を解かんとするとき亦同じ
第二十六条 地方長官は一市町村が国民学校を設置するに比し著しく優等なる国民学校を設置し得べしと認むるときは国民学校設置の為市町村学校組合又は町村学校組合を設くることを得
 前条第三項の規定は前項の場合に之を準用す
第二十七条 地方長官は町村に付第二十五条第一項第二号の事情ありと認むるときは国民学校の設置に代ヘ其の町村をして学齢児童の全部又は一部の教育事務を他の市町村、市町村学校組合又は町村学校組合に委託せしむることを得
 地方長官は市町村、市町村学校組合又は町村学校組合の一部にして第二十五条第一項第二号の事情あるものが其の市町村、市町村学校組合又は町村学校組合の国民学校に対し適度の通学路程内に在らずと認むるとき亦前項の例に依ることを得
 前二項の規定に依り地方長官に於て児童教育事務を委託せしめ又は其の委託を止めしめんとするときは関係市町村、市町村学校組合及町村学校組合の意見を聞くべし
第二十八条 地方長官は町村に付第二十五条第一項第一号の事情あるも同項及第三十四条の規定に依ることを得ずと認むるときは其の町村をして国民学校設置の義務を免れしむることを得
 地方長官は町村に付第二十五条第一項第二号の事情あるも同項、第二十七条第一項及第三十四条の規定に依ることを得ずと認むるときは其の町村をして其の全部又は一部に関し国民学校設置の義務を免れしむることを得
 地方長官は市町村、市町村学校組合又は町村学校組合の一部に付第二十五条第二項又は第二十七条第二項の事情あるも同項及第三十四条の規定に依ることを得ずと認むるときは其の市町村、市町村学校組合又は町村学校組合をして其の一部に関し国民学校設置の義務を免れしむることを得
第二十九条 国民学校の校数及位置は地方長官に於て市町村、市町村学校組合又は町村学校組合の意見を聞き之を定むべし
   第六章 設備
第三十条 国民学校に於ては校舎、校地、校具及体操場を備ふべし
第三十一条 校舎、校地、校具及体操場は国民学校の目的以外に之を使用することを得ず但し非常変災の場合又は教育、兵事、産業、衛生、慈善等の目的の為特別の必要ある場合は此の限に在らず
第三十二条 国民学校の設置に関する規程は文部大臣に於て定むる準則に基き地方長官之を定む
   第七章 経費負担及授業料
第三十三条 国民学校の経費は特別の規定ある場合を除くの外市町村、市町村学校組合又は町村学校組合の負担とす児童教育事務委託に関する経費に付亦同じ
第三十四条 地方長官に於て左の各号の一に該当すと認むるときは北海道地方費又は府県は町村又は町村学校組合に相当の補助を与ふべし
 一 町村に付第二十五条第一項第一号の事情あるも同項の規定に依ることを得ざるとき
 二 町村学校組合の資力が国民学校の経費の負担に堪ヘざるとき又は市町村学校組合若は町村学校組合の一部たる町村の資力が其の学校組合費の分担に堪ヘざるとき
 三 町村又は町村学校組合の資力が児童教育事務委託に関する経費の負担に堪ヘざるとき
 地方長官前項の規定に依る認定を為さんとするときは北海道参事会又は府県参事会の意見を聞くべし
第三十五条 訓導、養護訓導及准訓導の検定並に国民学校教員免許状及国民学校養護訓導免許状に関する経費は北海道地方費又は府県の負担とす
第三十六条 国民学校に於ては授業料を徴収することを得ず但し特修科に付ては此の限に在らず
 特別の事情あるときは地方長官の認可を受け国民学校に於て授業料を徴収することを得
 授業料は市町村、市町村学校組合又は町村学校組合の収入とす
 授業料に関する規程は文部大臣之を定む
   第八章 管理及監督
第三十七条 市町村長、市町村学校組合管理者又は町村学校組合管理者は市町村、市町村学校組合又は町村学校組合に属する国の国民学校に関する教育事務を管掌し国民学校を管理す
第三十八条 市町村、市町村学校組合及町村学校組合は国民学校に関する教育事務の為市制第八十三条若は町村制第六十九条の規定又は其の準用規定に依り学務委員を置くべし此の場合に於ては市町村会、市町村学校組合会又は町村学校組合会の議決に依ることを要せず
 学務委員には国民学校職員を加ふべし
 委員中国民学校職員より出づる者は市町村長、市町村学校組合管理者又は町村学校組合管理者之を任免す
第三十九条 学務委員の職務其の他に関する規程は文部大臣之を定む
第四十条 国民学校職員の執行する国の国民学校に関する教育事務は地方長官之を監督す
   第九章 雑則
第四十一条 町村組合にして其の町村の事務の全部又は役場事務を共同処理するものは之を一町村、其の組合吏員は之を町村吏員、其の組合会は之を町村会と看做す
第四十二条 町村制を施行せざる地域に於ては本令中町村、町村組合、町村吏員、町村組合吏員、町村会及町村組合会に関する規定は其の地域に於ける此等に準ずべきものに之を適用す
 第三十八条第一項中町村制第六十九条とあるは前項の地域に於ては北海道一級町村制第一条又は北海道二級町村制第七十二条とす
 第一項の地域に於て本令に依り難き事項に関しては文部大臣の定むる所に依る
第四十三条 市町村は其の負担を以て国民学校に類する各種学校を設置することを得
 市町村又は町村は其の協議に依り市町村学校組合又は町村学校組合を設け国民学校に類する各種学校を設置することを得
第四十四条 前条の国民学校に類する各種学校の設置及廃止は地方長官の認可を受くべし
 国民学校に類する各種学校に関する規程は文部大臣之を定む
第四十五条 国民学校に非ざる学校は国民学校と称することを得ず但し官立又は道府県立の学校に於て国民学校の課程に相当する課程を履修せしむる部分に関しては此の限に在らず
   附 則
第四十六条 本令は昭和十六年四月一日より之を施行す但し昭和六年四月一日以前に出生したる児童を就学せしむべき期間に付ては第八条の規定に拘らず仍従前の例に依る
第四十七条 市町村立小学校長及教員名称及待遇、市制町村制を施行せさる地方の小学教育規程及明治二十七年勅令第十一号は之を廃止す
第四十八条 本令施行の際現に存する市町村立の尋常小学校、高等小学校及尋常高等小学校は夫々本令に依る初等科のみを置く国民学校、高等科のみを置く国民学校並に初等科及高等科を置く国民学校とす
第四十九条 本令施行の際現に存する市町村立の高等小学校及尋常高等小学校高等科の第三学年は本令に依る特修科とす
第五十条 尋常小学校を卒業したる者、高等小学校第一学年を修了したる者及修業年限二箇年の高等小学校を卒業し又は修業年限三箇年の高等小学校第二学年を修了したる者は夫々之を国民学校初等科を修了したる者、国民学校高等科第一学年を修了したる者及国民学校高等科を修了したる者と看做す
第五十一条 本令施行の際現に存する小学校令第十四条第二項の規定又は其の準用規定に依り設けたる市町村学校組合及町村学校組合は之を本令に依り設けたるものと看做す
第五十二条 本令施行の際現に存する私立小学校は之を私立学校令に依り設立せられたるものと看做す
 本令施行の際現に学齢児童が前項の学校にして其の課程に付第十一条の規定に依る認定なきものに就学するときは第八条に規定する保護者の義務の履行に関しては其の期間国民学校に就学するものと看做す
第五十三条 本令施行の際現に存する小学校に類する各種学校にして私人の費用を以て設置せるものは之を私立学校令に依り設立せられたるものと看做す
第五十四条 本令施行前に授与したる小学校教員免許状は之を第十八条第三項の規定に依り授与したる国民学校教員免許状と看做す
第五十五条 本令施行の際現に奏任官の待遇を受くる市町村立小学校長を兼ねしめられたる市町村立小学校訓導の職に在る者別に辞令を発せられざるときは国民学校訓導に同待遇俸給を以て任ぜられたるものとす
 本令施行の際現に市町村立小学校訓導の職に在る者(前項の規定に該当する者を除く)別に辞令を発せられざるときは国民学校訓導に同俸給を以て任ぜられたるものとす
 本令施行の際現に奏任官の待遇を受くる市町村立小学校長を兼ねしめられたる市町村立小学校訓導にして休職中のもの別に辞令を発せられざるときは休職の侭国民学校訓導に同待遇俸給を以て任ぜられたるものとし当該休職に付ては仍従前の例に依る
 本令施行の際現に市町村立小学校訓導にして休職中のもの(前項の規定に該当する者を除く)別に辞令を発せられざるときは休職の侭国民学校訓導に同俸給を以て任ぜられたるものとし当該休職に付ては仍従前の例に依る
第五十六条 本令施行の際現に小学校令第四十八条第一項の規定に依り減俸中の者又は同条第二項の規定に依り業務停止中の者の当該減俸又は業務停止に付ては仍従前の例に依る
 本令施行前小学校令第四十八条の規定に依り懲戒又は業務停止の処分を為すべかりし行為に付ては仍従前の例に依る
第五十七条 小学校令第五十条の規定に依る免職若は業務停止又は免許状褫奪の処分に対する訴願に付ては仍従前の例に依る
第五十八条 町村制を施行せざる地域に於て本令施行の際現に学務委員の職に在る者は之を本令に依る学務委員と看做す
(国立公文書館:小学校令改正の件・御署名原本・昭和十六年・勅令第一四八号)

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