南方作戦構想陸軍案(原文:ひらがな、一部新字体化)
南方作戦構想陸軍案 一六・八・一三
第一 方針
昭和十六年十二月上旬、奇襲的に作戦を開始し遅くも十七年五月以前に於て香港、馬来、「シンガポール」、比島、「グァム」、英領「ボルネオ」、蘭印の攻略を完成す
爾後の作戦は状況に依るも努めて戦面の拡大を避け先つ自給態勢の確立を図る
第二 開戦準備
一 速に南部仏印に於ける軍事基地の施設を完成すると共に泰国との間の軍事協力を強化し対馬来作戦に遺憾なからしむ
二 従来の支那事変用徴傭船舶六〇万屯に加へ新たに南方作戦用として一五〇万屯を徴傭す(関特演関係は解傭す)
三 遅くとも九月中旬より所要兵力の動員集中を開始し十一月末迄に概ね南部仏印、海南島、台湾、小笠原の線に戦略展開を終る
第三 作戦実施
一 十二月X日左記地域に対し一斉に作戦を開始す 要綱左の如し
1 南支軍は予て準備せる所に基き第三十八師団を基幹とする部隊を以て香港を攻略す
2 南海支隊(歩兵三大隊、砲兵一大隊基幹)は小笠原島より行動を起し海軍に協力してX日グァム島を攻略す
3 丁作戦軍(近衛、第五、第十八師団基幹)は航空作戦開始と共に第五師団を主体とする先遣兵団を以てX日「シンゴラ」及「コタバル」附近に上陸し馬来半島を南進する近衛師団と共に速に「シンガポール」に向ひ作戦す
第十八師団は状況の進展と共に南部又は北部馬来半島に上陸せしむ
本作戦の為陸軍航空兵力及海軍航空兵力の主力を協力せしめ戦況の進捗と共に海軍航空の主力を比島方面に転用す
4 丙作戦軍(第十六及第四十八師団基幹)は先つ先遣隊を以て「ルソン」島内「アパリ」、「ビガン」、「ラオアグ」の基地に奇襲上陸せしめ丁作戦軍の作戦進捗を待って海軍航空の主力及陸軍航空の一部の協力により第十六師団を以て「ラモン」湾又は「バタンガス」湾より 第四十八師団を以て「リンガエン」湾より 同時に上陸し速に「マニラ」を攻略す 作戦一段落と共に第四十八師団を集結し戊作戦の為蘭印への転進を準備す
5 一支隊(第十八師団より抽出するものとし歩兵三大隊、砲兵一中隊基幹)をして好機に乗し英領「ボルネオ」を攻略す
6 戊作戦軍(第二及第四八師団基幹)は馬来及比島作戦概成の後行動を起し第二師団を以て西部爪哇に 第四十八師団を以て東部爪哇に上陸し先つ速に爪哇島を攻略す
主力の作戦開始に先立ち比島作戦の進捗に伴ひ先遣支隊をして「ダバオ」を経て「タラカン」、「バリクパパン」、「バンジエルマシン」等「ボルネオ」島東岸及南岸の要地を奪取し爪哇攻略を準備す
主力の爪哇上陸に先立ち空挺部隊を以て「スマトラ」島「パレンバン」を占領し油源を確保す
7 右作戦間仏印に対しては近衛師団の交代として一部兵力を派遣し治安の維持に当らしむ
8 支那方面は概ね武漢三鎮南北の線迄戦面を収縮して前任務を続行せしむ
但し作戦開始と共に敵性租界を接収し南京政権を強化す
9 満洲方面よりは航空の主力及相当数の地上部隊を抽出する結果努めて静謐を保たしむるも苟くも敵に乗せられさるを期す
(戦史叢書020大本営陸軍部<2>-昭和十六年十二月まで- P385-)
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