学童疎開の促進に関する件(ひらがな、一部新字体化)
學童疎開ノ促進ニ関スル件
学童疎開促進要綱別紙の通■出す
右閣議を■ふ
昭和十九年六月二十八日
学童疎開促進要綱案
防空上の必要に鑑み一般疎開の促進を図るの外特に国民学校初等科児童(以下学童と称す)の疎開を左記に依り強度に促進するものとす
記
一、学童の疎開は縁故疎開に依るを原則とし学童を含む世帯の全部若は一部の疎開又は親戚其の他縁故者ある学童の単身疎開を一層強力に勧奨するものとす
二、縁故疎開に依り難き帝都の学童に付ては左の帝都学童集団疎開実施要領に依り勧奨に依る集団疎開を実施するものとす他の疎開区域に於ても各区域の実情を加味しつつ概ね之に準じ措置するものとす
三、本件の実施に当りては疎開、受入両者の間に於て共同防衛の精神に基く有機一体的の協力を為すものとす
四、地方庁は疎開者の的確なる数及疎開先を予め農商省に通知するものとす
帝都学童集団疎開実施要領
第一、 集団疎開せしむべき学童の範囲
区部の国民学校初等科三年以上六年迄の児童にして親戚縁故先等に疎開し難きものとし保護者の申請に基き計画的に之を定むるものとす
第二、 疎開先
疎開先は差当り関東地方(神奈川県を除く)及其の近接県とす
第三、 疎開先の宿舎
一、宿舎は受入地方に於ける余裕ある旅館、集会所、寺院、教会所、錬成所、別荘等を借上げ之に充て集団的に収容するものとす
二、都の教職員も学童と共に共同生活を行ふものとす
三、寝具、食器其の他の身廻品は最小限度に於て携行せしむるものとす
第四、 疎開先の教育
一、疎開先の教育は必要なる教職員を都より附随せしめ疎開先国民学校又は宿舎等に於て之を行ふものとす
二、疎開先の地元国民学校は教育上必要なる協力援助を為すものとす
三、疎開先に於ては地元との緊密なる連絡の下に学童をして適当なる勤労作業に従事せしむるものとす
四、宿舎に於ける学童の生活指導は都の教職員之に当るものとす
五、疎開先に於ける学童の養護及医療に関しては充分準備を為し支障なきを期するものとす
第五、 物資の配給
疎開先に於ける食糧、燃料其の他の生活必需物資に付ては農商省其の他関係省に於て所要量を用途を指定し特別に配給を為すものとす
第六、 輸送
本件実施に伴ふ輸送に関しては他の輸送に優先し特別の措置を講ずるものとす
第七、 経費の負担
一、本件実施に伴ふ経費は保護者に於て児童の生活費の一部として月十円を負担するの外凡て都の負担とす
尚前項の負担を為し得ずと認めらるるものに付ては特別の措置を講ず
二、国庫は都の負担する経費に対し其の八割を補助するものとす
第八、 其の他
一、本件実施に伴ひ出来得る限り残存学級の整理統合を行ふものとす
二、本件実施に当りては都に於て疎開先の地元府県、市町村と緊密なる連絡を図るものとす
(国立公文書館:学童疎開ノ促進ニ関スル件ヲ定ム)
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