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労働争議調停法 1926年04月08日

 労働争議調停法(ひらがな、一部新字体化)


法律第五十七号

   勞働爭議調停法

第一条 左に掲くる事業に於て労働争議発生したるときは行政官庁は当事者の請求に依り調停委員会を開設することを得当事者の請求なき場合と雖行政官庁に於て必要ありと認めたるとき亦同し

 一 蒸気、電気其の他の動力を使用する鉄道、軌道又は船舶に依り公衆の需要に応する運輸事業

 二 公衆の用に供する郵便、電信又は電話の事業

 三 公衆の需要に応する水道、電気又は瓦斯供給の事業

 四 第一号乃至第三号の事業に電気を供給する事業にして其の休止か第一号乃至第三号の事業の進行を著しく阻害するもの

 五 其の他公衆の日常生活に直接関係ある事業にして勅令を以て定むるもの

 六 陸軍又は海軍の直営に係る兵器艦船の製造修理の事業にして勅令を以て定むるもの

 前項に掲くる以外の事業に於て労働争議発生したるときは行政官庁は当事者双方の請求に依り調停委員会を開設することを得

第二条 調停委員会を開設せむとするときは行政官庁は当事者双方に之を通知すヘし

第三条 調停委員会は九人の委員を以て之を組織す委員の中六人は労働争議の当事者をして各同数を選定せしめ他の三人は当事者の選定したる委員をして争議に直接利害関係を有せさる者に就き選定せしめ行政官庁之を嘱託す

 前項の規定に依り嘱託せられたる委員は正当の理由なくして之を辞することを得す

第四条 労働争議の当事者第二条の規定に依る通知を受けたるときは三日内に前条第一項の規定に依り其の選定したる委員を行政官庁に届出つることを要す

 当事者前項の規定に依る届出を為ささるときは行政官庁は当事者に代り委員を選定す此の委員は当事者の選定したるものと看做す

 前二項の規定に依る手続終りたるときは行政官庁は直に前条第一項の規定に依り当事者の選定したる委員に於て選定すヘき委員の選定を要求すヘし此の場合に於ては当事者の選定したる委員は四日内に之を選定し行政官庁に届出つることを要す

 前項の規定に依る届出なきときは行政官庁は当事者の選定したる委員に代り前項の規定に依り選定すヘき委員を選定す此の委員は当事者の選定したる委員に於て選定したるものと看做す

第五条 委員中欠員を生したるときは前二条の手続に準し之を補充す

第六条 委員定りたるときは行政官庁は直に調停委員会を招集し之を開会すヘし

第七条 調停委員会に議長及其の代理者を置く議長及其の代理者は当事者の選定に係る委員に於て選定したる委員の互選に依り投票の多数を得たる者を以て之に充つ多数を得たる者なきときは抽籖に依る

第八条 調停委員会は労働争議の解決に必要なる調査審理を為し其の調停を為すものとす

第九条 調停委員会は開会の日より十五日内に調停手続を結了することを要す

 前項の期間は当事者の選定したる委員全員の同意ありたるときは之を延長することを得

第十条 調停委員会は議長又は其の代理者及各当事者の選定したる委員各二名以上出席するに非されは会議を開くことを得す

第十一条 調停委員会の議事は本法中別段の規定ある場合を除くの外過半数を以て決す可否同数なるときは議長の決する所に依る

第十二条 調停委員会の議事は之を公開せす

 行政官庁は調停委員会の承認を得て当該官吏をして会議に臨席せしむることを得

第十三条 調停委員会は調停に必要なる範囲に於て当事者又は其の代表者其の他利害関係人又は参考人に対し出席説明を求め又は説明書類の提示を求むることを得

第十四条 調停委員会は調停に必要なる範囲に於て委員をして作業所其の他争議の関係場所に立入り、作業若は設備を視察し又は関係者に質問せしむることを得但し軍事上秘密を要する場所に付ては此の限に在らす

第十五条 委員又は委員たりし者は故なく前二条の場合に知得たる秘密を漏洩することを得す

第十六条 第九条に規定する調停手続の結了の場所に於ては調停委員会は其の顛末を行政官庁に報告することを要す

 前項の場合に於て労働争議解決するに至らさりしときは調停委員会は其の報告に委員会の決議せる争議調停案及之に関する少数意見を表示することを要す

第十七条 行政官庁は前条の規定に依る報告の要旨を公表すヘし但し労働争議解決したる場合に於て当事者一方の選定したる委員全員か予め反対の意思を表示したるときは此の限に在らす

第十八条 委員及第十三条に規定する者は勅令の定むる所に依り費用の弁償を受くることを得

第十九条 第一条第一項に掲くる事業に於ける労働争議に関し第二条の規定に依る通知ありたるときは現に其の争議に関係ある使用者及労働者並其の属する使用者団体及労働者団体の役員及事務員以外の者は第九条に規定する調停手続の結了に至る迄左に掲くる目的を以て其の争議に関係ある使用者又は労働者を誘惑若は煽動することを得す

 一 使用者をして労働争議に関し作業所を閉鎖し、作業を中止し、雇傭関係を破毀し又は労務継続の申込を拒絶せしむること

 二 労働者の集団をして労働争議に関し労務を中止し、作業の進行を阻害し、雇傭関係を破毀し又は雇傭継続の申込を拒絶せしむること

第二十条 故なく第十三条に規定する出席説明又は説明書類の提示を為ささる者は五十円以下の過料に処す

 非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条の規定は前項の過料に之を準用す

第二十一条 左の各号の一に該当する者は二百円以下の罰金に処す

 一 第十三条の場合に於て虚偽の説明を為したる者

 二 故なく第十四条の規定に依る立入、視察を拒み若は之を妨け又は質問に対し答弁を為さす若は虚偽の陳述を為したる者

 三 第十五条の規定に違反したる者

第二十二条 第十九条の規定に違反したる者は三月以下の禁錮又は二百円以下の罰金に処す

   附 則

本法施行の期日は勅令を以て之を定む

(国立公文書館:御署名原本・大正十五年・法律第五七号・労働争議調停法(勅令第百九十七号参看) A03021588900)

(参考:https://geolog.mydns.jp/www.geocities.jp/nakanolib/hou/ht15-57.html)

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