配電統制令(ひらがな化、一部新字体化、一部省略)
勅令第八百三十二号
配電統制令
第一条 国家総動員法第十六条の二の規定に基く電気供給事業設備の出資等に関する命令、同法第十六条の三の規定に基く電気供給事業の譲渡又は電気供給事業を営む会社の合併若は解散に関する命令、同法第十八条の規定に基く配電事業の統制の為にする経営を目的とする株式会社(以下配電株式会社と称す)の設立に関する命令及配電株式会社に関する事項、同法第十八条の二の規定に基く電気供給事業を譲渡し又は電気供給事業設備を出資したる者の負担する債務の承継及其の担保の処理に関する事項、同法第十八条の三の規定に基く電気供給事業の譲渡、電気供給事業設備の出資又は配電株式会社に付ての課税標準の計算に関する特例の設定又は租税の減免並に同法第十九条の規定に基く配電株式会社の電気料金に関する命令に付ては本令の定むる所に依る
第二条 逓信大臣は電気供給事業を営む者に対し配電株式会社の設立を命ずることを得
前項の命令に於ては配電株式会社と為るべきこと又は電気供給事業設備を出資すべきことを命ずることを得
第三条 逓信大臣前条の命令を為す場合に於ては当該事業者に対し左の事項を記載したる命令書を交付すべし
一 設立すべき配電株式会社の商号及配電区域
二 配電株式会社と為るべき株式会社の商号
三 電気供給事業設備を出資すべき者の名称
四 出資すべき電気供給事業設備の範囲
五 配電株式会社を設立すべき期限
六 其の他必要と認むる事項
逓信大臣前条の命令を為したるときは前項第一号乃至第五号に掲ぐる事項を公告すべし
第四条 第二条の命令を受けたる者(以下受命者と称す)にして配電株式会社と為るべきことを命ぜられたる株式会社(以下指定会社と称す)は本令に依り配電株式会社と為ることを得
指定会社以外の受命者は配電株式会社設立の為他の法令に拘らず当該事業に属する電気供給事業設備の出資を為すことを得
第五条 受命者は設立委員を選任し逓信大臣の認可を受くべし設立委員は配電株式会社の設立に関する事務を処理すべし
逓信大臣は前項の事務に関し監督上必要なる命令を為すことを得
第六条 設立委員は左の事項を記載したる書面を作り受命者の承認を得ることを要す
一 配電株式会社の商号、資本の総額、一株の金額及本店の所在地
二 配電株式会社と為るべき株式会社の商号
三 配電株式会社の発行すべき株式の種類、数及払込金額並に指定会社の株主に対する株式の割当に関する事項
四 指定会社の株主に支払を為すべき金額を定めたるときは其の規定
五 第二条の命令に基き出資をなす者の名称、出資の目的たる財産、其の価格及之に対して与ふる株式の種類及数
六 配電株式会社の成立後に譲受くることを約したる財産、其の価格及譲渡人の名称
七 配電株式会社を設立すべき時期
八 各受命者に於て承認を為すべき期日
九 其の他必要と認むる事項
前項の承認は受命者が株式会社なる場合に於ては商法第三百四十三条に定むる決議に依ることを要す此の場合に於て前項の書面の要領は同法第二百三十二条に定むる通知及公告に之を記載することを要す
設立委員第一項の承認を得たるときは逓信大臣の認可を受くべし
逓信大臣前項の認可を為さんとするときは第一項第三号乃至第五号に掲ぐる事項に付ては電力評価審査委員会の議を経べし
設立委員は第三項の認可ありたるときは遅滞なく其の旨を受命者に通知すべし
第七条 商法第四百十六条第三項及第四項の規定は配電株式会社設立の場合に之を準用す但し同条第三項に於て準用する同法第三百七十七条第一項但書及第三百七十八条第一項但書(同法第三百七十九条第二項に於て準用する場合を含む)中三月とあるは一月とす
第八条 (設立委員等組織に関する規定、十五条まで省略)
第九条
第十条
第十一条
第十二条
第十三条
第十四条
第十五条
第十六条 指定会社は配電株式会社の成立に因り之に吸収せらるるものとし指定会社の権利義務(指定会社が其の電気供給事業設備に付電気事業法に依る許可又は認可に基き有する権利義務及河川、湖若は沼の使用又は道路其の他土地の占用若は使用に関し行政庁の許可、承認其の他の処分に基き有する権利義務を含む)は配電株式会社に於て之を承継す
第二条の命令に基き配電株式会社に出資せらるる電気供給事業設備に付当該受命者が電気事業法に依る許可又は認可に基き有する権利義務、河川、湖若は沼の使用又は道路其の他土地の占用若は使用に関し有する権利義務及電気供給契約に基き有する権利義務は配電株式会社成立したるときは命令の定むる所に依り配電株式会社之を承継す
第十七条 第二条の命令に基き設備の出資ありたる場合及前条の場合に於ける登記に関し必要なる事項は命令を以て之を定む
第十八条 受命者第三条第一項の命令書の交付を受けたる後出資の目的たる事業設備若は指定会社の事業設備の現状を変更し又は之を譲渡し若は所有権以外の権利の目的と為さんとするときは命令の定むる所に依り行政官庁の認可を受くべし
第十九条 第十六条第一項の場合に於ける指定会社より配電株式会社への有価証券の移転に付ては有価証券移転税を免除す
第二十条 会社が第二条の命令に基き配電株式会社に出資を為したるときは其の出資に対し与へられたる株式の価額に関し出資を為したる営業年度に於ける法人税法に依る所得、営業税法に依る純益及臨時利得税法に依る利益の計算に付命令を以て特例を設くることを得
第二十一条 商法第百六十七条、第百八十一条及第百八十五条の規定は配電株式会社の設立には之を適用せず
第二十二条 本令に規定するものを除くの外配電株式会社の設立に関し必要なる事項は命令を以て之を定む
第二十三条 第二条の命令に基き出資を為したる為解散したる会社の清算に関し必要なる事項は命令を以て之を定む
第二十四条 配電株式会社は一定区域内に於ける配電事業の統制の為配電事業を営むことを目的とする株式会社とす
配電株式会社は逓信大臣の命令に依り又は其の認可を受け前項に定むるものの外附帯事業を営むことを得
第二十五条 配電株式会社の株式は記名式とし政府、公共団体、帝国臣民又は帝国法人にして社員、株主若は業務を執行する役員の半数以上、資本の半額以上若は議決権の過半数が外国人若は外国法人に属せざるものに限り之を所有することを得
第二十六条 逓信大臣は電気供給事業を営む者に対し配電株式会社への合併、事業の譲渡又は電気供給事業設備の出資を命ずることを得此の場合に於て逓信大臣は当該合併、譲渡又は出資の相手方たる配電株式会社に対し必要なる事項を命ずることを得
前項の場合に於ける合併条件又は譲渡価格、出資価格其の他の事項は当事者間の協議に依る協議調はざるときは逓信大臣之を裁定す
前項の協議は逓信大臣の認可を受くるに非ざれば其の効力を生ぜず
逓信大臣前二項の裁定又は認可を為さんとするときは電力評価審査委員会の議を経べし
第四条第二項、第十六条第二項、第十七条、第十八条、第二十条及第二十三条の規定は第一項の場合に之を準用す
前五項に定むるものの外裁定並に之に依る合併、譲渡及出資に関し必要なる事項は命令を以て之を定む
第二十七条 商法第三百五十三条及第三百五十五条第二項の規定は前条第一項後段の命令に基く配電株式会社の資本増加には之を適用せず
第二十八条 配電株式会社に役員として社長、副社長、理事及監事を置く
第二十九条 社長は配電株式会社を代表し其の業務を総理す
副社長は社長事故あるときは其の職務を代理し社長欠員のときは其の職務を行ふ
副社長及理事は社長を補佐し定款の定むる所に従ひ配電株式会社の業務を分掌し又は之に参与す
監事は配電株式会社の業務を監査す
第三十条 配電株式会社の社長、副社長、理事及監事は第十四条に規定する場合を除くの外株主総会に於て之を選任し逓信大臣の認可を受くるものとす
社長及副社長の任期は四年、理事の任期は三年、監事の任期は二年とす
第三十一条 電気事業を監督する官庁の官吏たりし者は其の職を退きたる後五年間配電株式会社の役員と為り又は其の給与を受くる事務に従事することを得ず但し逓信大臣に於て特に必要ありと認めたるときは此の限に在らず
第三十二条 配電株式会社の社長、副社長及業務を分掌する理事は他の職務又は商業に従事することを得ず但し逓信大臣の認可を受けたるときは此の限に在らず
第三十三条 配電株式会社左の事項に付登記を受くる場合に於ては其の登録税の額は左の額とす但し登録税法に依り算出したる登録税の額が左の額より少きときは其の額に依る
一 設立 金銭出資に依る払込株金額の千分の五と金銭以外の財産の出資に依る払込株金額の千分の一との合計額
二 第二十六条第一項の規定に依る出資に因る資本の増加
増資払込株金額の千分の一
三 第二条第二項、第六条第一項第六号又は第二十六条第一項の規定に依る出資、譲受又は譲渡に基く不動産に関する権利の取得
不動産の価格の千分の三
配電株式会社が設立の登記を受くるときは其の払込株金額中指定会社の払込株金額に相当する部分に付ては登録税を免除す
配電株式会社が第十六条第一項の規定に依り指定会社より不動産に関する権利を承継する場合に於ける其の取得に付登記を受くるとき亦前項に同じ
第三十四条 配電株式会社は命令の定むる所に依り其の成立の日より十年を超えざる期間第二条第二項又は第二十六条第一項の規定に依る出資又は譲渡を為したる者に対し一定金額を支払ふべし
配電株式会社に対しては命令の定むる所に依り其の成立の日より十年を超えざる期間其の所得に対する法人税を軽減す
第三十五条 配電株式会社は商法に規定する制限を超えて社債を募集することを得但し社債の総額は払込みたる株金額の三倍を超ゆることを得ず
第三十六条 逓信大臣は配電株式会社の業務を監督す
第三十七条 逓信大臣は配電株式会社の電気料金其の他電気の供給に関する重要事項を決定す
第三十八条 配電株式会社社債を募集せんとするときは逓信大臣の認可を受くべし
第三十九条 配電株式会社の定款の変更、利益金の処分、合併及解散の決定は逓信大臣の認可を受くるに非ざれば其の効力を生ぜず
第四十条 配電株式会社は命令の定むる所に依り事業計画を定め逓信大臣の認可を受くべし之を変更せんとするとき亦同じ
第四十一条 配電株式会社は命令の定むる所に依り逓信大臣の認可を受くるに非ざれば事業設備を譲渡し又は所有権以外の権利の目的と為すことを得ず事業設備の取得に付亦同じ
第四十二条 逓信大臣は配電株式会社の業務に関し監督上又は公益上必要なる命令を為すことを得
第四十三条 逓信大臣は配電株式会社の決議が法令、法令に基きて為す処分若は定款に違反したるとき又は公益を害し若は害するの虞あるときは其の決議を取消すことを得
逓信大臣は配電株式会社の役員の行為が法令、法令に基きて為す処分又は定款に違反したるとき、公益を害したるとき其の他役員を不適当なりと認むるときは之を解任することを得
第四十四条 逓信大臣は国家総動員法第三十一条の規定に依り配電株式会社の業務、第二条の規定に依る設立若は出資又は第二十六条第一項の規定に依る合併、譲渡若は出資に関し必要なる報告を徴し又は当該官吏をして必要なる場所に臨検し業務の状況若は帳簿書類其の他の物件を検査せしむることを得
前項の規定に依り当該官吏をして臨検検査せしむる場合に於ては其の身分を示す証票を携帯せしむべし
第四十五条 工場財団、鉄道財団又は軌道財団に属するものは第二条第二項若は第二十六条第一項の規定に依る出資若は譲渡又は第十六条第二項の規定に依る承継に因り配電株式会社に移転したる後と雖も仍原財団に属するものとす
前項の場合に於ける登記又は登録に関し必要なる事項は命令を以て之を定む
第四十六条 第二条又は第二十六条第一項の命令に基き抵当権の目的たる設備を出資し又は其の設備の属する事業を譲渡したる者は第四十七条第一項の規定に依り債務の承継ありたる場合を除くの外配電株式会社が抵当権の実行に因り受くることあるべき損失の補償に充つる為命令の定むる所に依り相当の担保を供託すべし
配電株式会社は前項の規定に依り供託せられたるものの上に質権を有す
第四十七条 逓信大臣は第二条又は第二十六条第一項の規定に依り設備の出資又は事業の譲渡を命じたる場合に於て当該出資者又は譲渡者をして其の現に負担する債務を引続き負担せしめ置くことを適当ならずと認むるときは命令の定むる所に依り配電株式会社をして当該債務の全部又は一部を承継せしむることを得
前項の場合に於ける承継価格其の他の承継に関する条件は配電株式会社及当該出資者又は譲渡者の協議に依る協議調はざるときは逓信大臣之を裁定す
前項の協議は逓信大臣の認可を受くるに非ざれば其の効力を生ぜず
第二十六条第四項の規定は前二項の裁定又は認可を為す場合に之を準用す
配電株式会社が其の成立又は増資の日に第一項の規定に依り出資者の債務を承継する場合に於ては当該出資者に対して為す株式の割当は出資設備の価格より債務の承継価格を控除したる金額に依る
第四十八条 配電株式会社は命令の定むるものを除くの外第二条又は第二十六条第一項の命令に基き移転したる設備を担保とする債務又は前条第一項の規定に依り承継したる債務に関し原契約上課せられたる負担及制限を承継す
第四十九条 第二条又は第二十六条第一項の命令に基き設備を出資し又は事業を譲渡したる者は本令に依る資産に関しての変動を理由として其の負担する債務の期限前の元利支払其の他の請求を為す者ありたる場合に於て之に応ずることを得ず
前項の規定は配電株式会社が第四十七条第一項の規定に依り債務を承継したる場合に配電株式会社に之を準用す
附 則
本令は公布の日より之を施行す
(国立公文書館:配電統制令・御署名原本・昭和十六年・勅令第八三二号)
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