土肥原・秦徳純協定(ひらがな化、一部新字体化)
土肥原特務機関長提出の要求事項を秦徳純が全面承諾について
第二一四号
往電第二一一号に関し
二十七日秦徳純より土肥原少将に提出せる文書回答の内容大要左の如し
一、張北事件に関し遺憾の意を表し責任者を免職す
二、日支国交に不良の影響を及ほすと認めらるる機関を察哈爾省より撤退す
三、日本側の察哈爾省内に於ける正当なる行為を尊重す
四、昌平延慶大林堡を経て長城に至る線以東の地域及獨石口北側より長城に沿ひ張家口北側を経て張北県南側に至る線以北の地域より宋哲元軍を撤退せしめ撤退後の治安は保安隊をして当らしむ
五、以上の撤退は六月二十三日より二週間以内に撤収を完了す
以上回答の内容は極秘に附せられ度き軍側の希望に付右様御含あり度し
察哈爾省における日本側の正当な行為を尊重するとの承諾事項に関し具体的内容を土肥原・秦間で口頭約束について
第二二〇号
往電第二一四号に関し
土肥原の本官に対する内話に依れは支那側承諾事項第三項(日本側の察哈爾省に於ける正当なる行為を尊重す)の解釈として土肥原秦徳純間に口頭を以て約束せる支那側の承諾事項主要なるもの左の如し
一、察哈爾省に於て飛行場及無線電信設置を許すこと
二、山東、山西移民の察哈爾入境を阻止すること(同移民か蒙古人の産業を圧迫するを救ふ為)
三、張家口の徳華洋行の事業を漸次立ち行かさる様仕向くること(同洋行を通して同方面に進出せる赤露の関係を一掃する為)
四、察哈爾省に日本人を軍事又は政治顧問に傭聘すること(差当り松井中佐を無給にて名誉軍事顧問にすることに打合済み)
五、内蒙に於ける我方の徳王に対する工作の如きものを阻止せさること
右に付土肥原に語る所に依れは今回の交渉は特に非戦区域と為さざるも同区域と同様察哈爾にも一種の緩衝的平和境を設けんとする趣旨に基くものにして右協定に際し秦徳純並に蕭振瀛は関東軍代表たる土肥原に対し極めて恭順の態度にて漸次日本側の要求に副ふ意嚮なるを以て充分の協力を得度き旨を懇請し土肥原に於ても其の態度に付満足し居る模様なり
本件は全然土肥原の本官に対する友誼上内話せる次第に付絶対部外に漏れさる様ご注意を請ふ
(外務省 日本外交文書デジタルコレクション https://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/shiryo/archives/pdfs/showaki214v1_11.pdf P22)
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