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昭和十三年秋季以降対支処理方策 1938年12月06日

 昭和十三年秋季以降対支処理方策(ひらがな化、一部新自体化)


   昭和十三年秋季以降対支処理方策

                昭和十三年十二月六日

                陸軍省部決定

   方 針

 漢口広東の攻略を以て武力行使に一期を劃し爾後自主的に新支那の建設を指導し殊に躁急を戒む 之か為当分の内其基礎作業たる治安の恢復を第一義として爾他諸施策をして之に適応せしむ

 残存抗日勢力の潰滅工作は依然之を続行するも主として厳然たる軍の存在を背景とする謀略及政略の運営に俟つ

   要 領

一 特に重大なる必要の発生せさる限り占領地域拡大を企図することなく之か安定確保を主とする治安地域と抗日勢力潰滅施策を主とする作戦地域とに分つ

二 治安地域は概ね包頭より下流黄河、新黄河、廬州、蕪湖、杭州を連ぬる線以東にして漸を追ふて全地域の安定を期すへく差し当り迅速に治安を確立すへき要域は概ね左の如くにして該要域は次期国際転機に至るも之か確保を予定し此処に国防上の諸建設を行ふへき範域なりとす

  北部河北省

  包頭以東の蒙疆地方

  正太線以北の山西省殊に太原平地

  山東省の要部(膠済沿線地方)

  上海、南京、杭州三角地帯

  右治安地域就中其要域には速かに治安恢復の目的を達する為十分なる兵力を固定配置し且努めて長期自給の態勢をとらしむ

  右要域の外連絡の為主要交通線(津浦線、京漠線北段、同蒲線等)は之を確保す

三 前項以外の占拠地域は作戦地域にして武漢及広東地方に夫々一軍を配置し政戦略上抗日勢力制圧の根拠たらしめ蝟集攻撃し来る敵に対しては適時反撃を加へて其戦力を消耗せしむるも不用意なる戦面の拡大を求めて小競合を行ふことを戒しむ 之か為配置する兵力は彼我の情勢に即し必要の最少限度に止む

四 在支兵力は之を前二条の趣旨に合する如く逐次整理改編し若くは新設部隊と交代帰還せしめ逐次長期持久の態勢に転移せしむるものとし明十四年中には之か基礎態勢の概成を計る

  次期国際転機に備ふる為駐屯兵力並現地消耗は各般に亘り之か節減に努む

五 戦略殊に政略上の要点に対し執拗なる航空作戦を継続すると共に海上封鎖等に依り残存せる対外連絡線殊に武器輸入路の遮断に努む

六 謀略的諸施策を強化して逐次新興政権の助成、緩衝地帯の設定並抗日勢力の圧縮を図る

七 親日政権の育成殊に之か統一に関しては逐次に堅実なる発展を遂けしむるを主眼となす 之か為占拠地域に対する政策的処理は治安第一を当面の目標とする地方分権政治を基調とし各地の実情に適応する如く局部的安定を促進せしめ逐次所要範囲の実質的統一に到達せしむるものとす

八 対支経済は取敢えす応急対策を以て総動員並軍の急需充足、治安に関連せる局地民生の恢復並之に伴ふ交通の改善を図るを主とし永久的産業建設は主として治安地域の要域に於て概ね既定方針に基き漸次之か実行を期し又作戦地域内に於ては特別なるものの外は商取引並其附帯事業程度に止むるを本旨とす

九 以上の外は既定方針に拠る

(戦史叢書第008巻大本営陸軍部<1>昭和15年5月まで P298~P299)

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