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日中関税協定 1930年05月06日

 日中関税協定(ひらがな化、新字体化)


日本帝國ト支那共和國トノ間ニ締結セラレタル協定 

(前文省略) 

     第一条

日本国及支那国の政府は日本国の領域内及支那国の領域内に於ける物品の輸入及輸出に対する税率、戻税、通過税竝に噸税に関する一切の事項が夫々日本国及支那国の法令に依り専ら規律せらるべきことを約す 

     第二条

日本国及支那国の政府は物品の輸入及輸出に対し適用せらるる関税、戻税、通過税及他の一切の同様の内国課金に関し、噸税に関し竝に右に関する一切の事項に関し自国民又は他の何れかの外国の政府及其の国民に与ヘられ又は与ヘらるべき所に比し不利益ならざる待遇を互に他方に対し及他方の国の国民に対し相互に許与すべし

日本国又は支那国の領域内に於て生産せられ又は製造せられたる物品にして他方の領域内に輸入せらるるものは其の何れの地より到るを問はず輸入税、戻税、通過税及他の一切の同様の内国課金に関し竝に右に関する一切の事項に関し他の何れかの外国に於て生産せられ又は製造せられたる同様の物品に与ヘられ又は与へらるべき所に比し不利益ならざる待遇を受くべし 

日本国又は支那国の領域内に於て生産せられ又は製造せられたる物品にして他方の領域に輸出せらるるものは輸出税、戻税、通過税及他の一切の同様の内国課金に関し竝に右に関する一切の事項に関し同一の領域内に於て生産せられ又は製造せられたる同様の物品にして他の何れかの外国に輸出せらるるものに与ヘられ又は与ヘらるべき所に比し不利益ならざる待遇を受くべし

噸税及之に関する一切の事項に付ては日本国及支那国の船舶は各地方の領域内に於て他の何れかの外国の船舶に与ヘられ又は与ヘらるべき所に比し不利益ならざる待遇を受くべし 

     第三条

前記諸条及本協定附属交換公文に揭げらるる規定は日本帝国と支那共和国との間に成るべく速に商議せられ且締結せらるべき通商航海条約に包含せられ且其の一部を構成すべし 

     第四条

本協定の日本語、支那語及英吉利語の本文は慎重に比較せられ且照合せられたり但し右本文間に意義の相違ある場合に於ては英吉利語の本文に表示せらるる意義に據るべし 

     第五条

本協定は其の署名の日の後十日目より実施せらるべし 

(署名等省略)

  


第一附属書 


    協定税率ニ關スル交換公文 

      昭和五年(一九三〇年)五月六日南京に於て 

      昭和五年(一九三〇年)五月七日告示 

     帝国臨時代理公使より外交部長宛往翰

以書翰啓上致候陳者閣下及本使が本日署名したる協定に関し本使は日本国政府が左の如く了解することを陳述するの光栄を有し候

一 前記協定の実施の日より起算し支那国政府は本翰の附属表第一部の第一、第二及第三項目の下に課せらるる税率を三年間又右附属表第一部の第四項目の下に課せられるる税率を一年間日本国の領域内に於て生産せられ又は製造せられたる右諸項目に属する物品にして支那国の領域内に輸入せらるるものに対し右夫々の期間内課せらるる輸入税の最高率として維持すべきこと但し支那国政府が税率の引上に関し右附属表に於て為したる留保に従ふべきものとす 

二 日本国政府は前記協定の実施の日より三年間は本翰の附属表第二部の三項目の下に課せらるる税率を支那国の領域内に於て生産せられ又は製造せられたる右諸項目に属する物品にして日本国の領域内に輸入せらるるものに対し右期間内課せらるる輸入税の最高率として維持すべきこと

本使は閣下に於て前記了解を確認せらるるを得ば幸甚の至に存じ候 

本使は茲に重て閣下に向て敬意を表し候 敬具 

 昭和五年(千九百三十年)五月六日南京に於て 

                 重   光   葵 

 支那共和国国民政府外交部長 王 正 廷 閣 下 


       表 

     第 一 部 

項目 

番号  品  名      千九百二十九年の支那国 

              輸入税表に於ける番号 

一  綿製品      一乃至一〇、一二乃至一四、二二 

            乃至二四、二六乃至三二、三七、 

            三八、四〇、四三、四六、四七、五一、 

            五三、五八、五九 

二  漁獲物及海産物  一九六 乃至 一九九、二〇二、 

            二〇五、二〇六、二一三、二一六 

            二一七、二一八、二三一 

三  小麥粉      二八〇 

四  雜品       三〇二、五六七、五六八、六〇三 

            乃至六〇五(イ)、六一二、六四七、 

            六五二(ロ)、六六六(ロ)、六七七(ハ)、 

            六八五、七〇六、七〇九(ヘ)、七〇九(ト) 

            七一〇、七一五 

本表第一部に揭げらるる番号は千九百二十九年支那国輸入税表に於ける該当番号の下に揭げらるると同一の物品を示す但し左記番号は其の下に列記せらるる物品のみを示す

六五二(ロ) 護謨製の短靴及長靴竝に全部又は一部護謨にて作られたる履物

六六六(ロ) 掛置時計及一単位に組立てられたる「ムーヴメント」(一打に付価格四十海関兩を超えざるもの) 

六七七(ハ) 海狸毛又は毛以外の材料にて作られたる「フェルト」製の帽子(一打に付価格十五海関兩を超ざるもの) 

七〇六 魔法罎及同部分品(一打に付価格十五海関兩を超えざるもの) 

七〇九(ヘ) 電氣機械及同部分品

七一〇 玩具及遊戯品 

七一五 車輛 別号に揭げられさる「ヴェロシピード」(例ヘば自転車等、一箇に付価格四十海関両を超えざるもの)

本表第一部に揭げらるる物品に対する税率は前記税表に於ける該当番号の下に記載せらるる税率と同一たるべし但し側線を附せられざる番号に属する物品に対する税率に関しては支那国政府は前記税率を従価二分五厘を超えざる範囲内に於て引上ぐるの權利を留保するものとす従量税率に付ては右に規定せらるる引上は前記税表に於ける税率が決定せられたる原課税価格を一律に又は千九百二十八年に税率改訂委員会に依り採択せられたる課税価格を一律に基礎として行はるべし

支那国政府は輸入関税以外に輸入綿織糸(番号第五十一)に対し消費税を課するの權利を留保す


     第 二 部

項目 

番号 品  名   現行日本国輸入税 

          表に於ける番号 

 一 夏布     二九九、五(幅四十八センチメートルを超ヘたるものを除く) 

           丙の一、イの一乃至イの四 

           丙の二、イの一乃至イの四 

 二 絹織物    三〇三、三の甲、イ及ロ 

 三 刺繡布    三〇八(手工品に限る) 


本表第二部に揭げらるる番号は別に明記なき限り現に実施中の日本国輸入税表に於ける該当番号の下に揭げらるると同一の物品を示す

本表第二部の第一項目に揭げらるる物品に対する税率は現に実施中の日本国輸入税表に於ける該当番号の下に記載せらるる税率と同一たるべく又本表第二部の第二及第三項目に揭げらるる物品に対する税率は贅澤品等の輸入税に関する法律に依り現に課せらるる税率に比し三割を減ぜらるべし


第二附属書 

 鮮滿陸境特惠関税ノ廢止ニ關スル交換公文 

      昭和五年(一九三〇年)五月六日南京に於て 

      昭和五年(一九三〇年)五月七日吿示 

  帝国臨時代理公使より外交部長宛來翰 

以書翰啓上致候陳者本使は本日付の左記貴翰を受領するの光栄を有し候

支那国と日本国との間に本日署名せられたる協定に関し本部長は右協定の実施後四月の期間の滿了と同時に、支那国と日本国との間の陸境を通過して輸入せられ又は輸出せらるる物品に対し従來課せられたる支那国関税輕減率が廢止せらるべく且輕減せられざる関税率が右物品に対し適用せらるべしとの本部長の了解を貴下に於て日本国政府の為に確認せられんことを要求するの光栄を有し候

本使は前記了解が正確なることを日本国政府の為に確認するの光栄を有し候

本使は茲に重て閣下に向て敬意を表し候 敬具

 昭和五年(千九百三十年)五月六日南京に於て

                 重   光   葵

 支那共和国国民政府外交部長 王 正 廷 閣 下


第三附属書

 釐金等ノ廢止ニ關スル交換公文

      昭和五年(一九三〇年)五月六日南京に於て 

      昭和五年(一九三〇年)五月七日吿示 

    帝国臨時代理公使より外交部長宛往翰 

以書翰啓上致候陳者本使は支那国政府が支那国に於ける通商の促進の障害たる釐金、常関税、沿岸貿易税及通過税竝に他の同様の課金の如き一切の租税及課金を成るべく速に廢止するの意嚮を有する旨の陳述が関税率の問題に関する閣下と本使との間の商議中に於て為されたることに付閣下の注意を喚起するの光栄を有し候

本使は支那国政府の前記意嚮を実行する為支那国政府に依り如何なる措置が執られたるか又は執らるべきかに付閣下に於て本使に通吿せらるるを得ば幸甚の至に存じ候 

本使は茲に重て閣下に向て敬意を表し候 敬具 

 昭和五年(千九百三十年)五月六日南京に於て

                 重   光   葵

支那共和国国民政府外交部長 王 正 廷 閣下


第四附属書

 債務整理ニ關スル交換公文

      昭和五年(一九三〇年)五月六日南京に於て 

      昭和五年(一九三〇年)五月七日吿示

   帝国臨時代理公使より外交部長宛往翰 

以書翰啓上致候陳者本使は日本国債権者に支払はるべき支那国の無担保及不確実担保の債務の多数且多額なるに鑑み右債務の迅速なる整理が極て望ましきものなりと認めらるる旨を陳述するの光栄を有し右目的の為債権者の代表者の会議が支那国政府に依り最近の期日に於て招集せらるべきこと本国政府に依り提言せられ候

本使は支那国政府に依り如何なる措置が前記整理を実施する為執られたるか又は執らるべきかに付閣下に於て本使に通知せらるるを得ば幸甚の至に存じ候

本使は茲に重て閣下に向て敬意を表し候 敬具

 昭和五年(千九百三十年)五月六日南京に於て 

                 重   光   葵

支那共和国国民政府外交部長 王 正 廷 閣下 

(参考:政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所 https://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/pw/19300507.T1J.html) 

(Source:日本外交文書昭和5年対中国関係 四 日中関税協定関係 P322~ PDFファイル59P)

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