スキップしてメイン コンテンツに移動

満洲事変に関する政府第二次声明 1931年10月26日

満洲事変に関する政府第二次声明(ひらがな化、一部新字体化)


 滿洲事變ニ關スル政府第二次聲明

十月二十六日


一、十月二十二日連盟理事会に提出せられたる帝国政府の満鉄附属地内帰還問題並日華直接交涉開始問題に関する決議案に対し日本理事は数項に互る修正案を提出し十月二十四日採決の結果右修正案並決議案は孰れも全会一致を得すして不成立に了れり

二、今次の満洲事変は全く中国軍憲の挑発的行動に起因せること帝国政府の累次宣明せる所にして帝国軍の少数部隊か目下尙満鉄附属地外数けの地点に駐まるは帝国臣民の生命財產の保護の為萬已むを得さるに出てたるものなり固より之か為に帝国か紛争解決条件を中国に強制するの手段となり得へきものに非す兵力的威圧を以て中国との交涉に臨まむとするか如きは毫も帝国政府の予想せさる所なり

三、帝国政府は夙に日華関係の大局を考察し其の密接複雜なる政治的並経済的関係を構成する各種の分子中帝国の国民的生存に関する権益は絶対に之か変改を許ささるの決意を示し既に各般の機会に於て此の趣旨を言明せり不幸にして近時中国に於ける所謂国権回復の運動漸次極端に奔り且排日の思想は諸学校の敎科書中公然鼓吹せられて根底既に深く今や条約又は歷史を無視して帝国の国民的生存に関する権益さへ著々破壞せむとするの傾向歷然たるものあり此の際帝国政府に於て単に中国政府の保障に倚頼し軍隊の全部満鉄附属地内帰還を行ふか如きは事態を更に悪化せしめ帝国臣民の安全を危険に暴露するものにして多年の歷史並中国現下の国情は明かに其の危険の実在を証す

四、従て帝国政府は在満帝国臣民の安全を確保せむか為には先つ両国の国民的反感及疑惑を除くの方法を講するの外なきを認め之に必要なる基礎的大綱を中国政府と会商するの用意ある旨十月九日外務大臣の在東京中国公使宛公文中に言明し連盟理事会にも之を通報せり帝国政府は時局拾収の途か一に以上の見地に基くへきことを確信し理事会の討議に当りて終始一貫之を主張せり其の会商せむとする大綱として帝国政府の考慮する所は(1)相互的侵略政策及行動の否認、(2)中国領土保全の尊重、(3)相互に通商の自由を妨害し及国際的憎悪の念を煽動する組織的運動の徹底的取締、(4)満洲の各地に於ける帝国臣民の一切の平和的業務に対する有効なる保護及(5)満洲に於ける帝国の条約上の権益尊重に関するものなり帝国政府は右各項か全然国際連盟の目的及精神に合致し極東平和の根帯を成すへき当然の原則なるを以て固より世界公論の支持を得へきことを疑はす連盟理事会に於て帝国代表者か之を議題とせさりしは其の性質上日華直接交涉の問題たるへきものと認めたるか為なり

五、熟ら日華両国の前途を考ふるに今日の急務は双方協力して速に時局の拾収を図り以て共存共栄の大道に步を進むるに在り帝国政府は前顕両国間に於ける平常関係確立の基礎的大綱協定問題並軍隊の満鉄附属地内帰還問題に関し中国政府と商議を開始するの用意を有するに於て今尙渝はる所なし

(Source:日本外交年表竝主要文書下巻,外務省P185-186、https://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/pw/19311026.O1J.html)

コメント

このブログの人気の投稿

徴兵の詔(徴兵令詔書及ヒ徴兵告諭) 1872年12月28日

徴兵令詔書及び徴兵告諭(口語訳)  今回、全国募兵の件に付き、別紙の詔書の通り徴兵令が仰せ出され、その定めるところの条々、各々天皇の趣意を戴き、下々の者に至るまで遺漏なきように公布しなさい。全体として詳細は陸軍・海軍両省と打ち合わせをしなさい。この趣旨を通達する。  ただし、徴兵令および徴募期限については追って通達するべきものとする。 (別紙) 詔書の写し   私(明治天皇)が考えるに、往昔は郡県の制度により、全国の壮年の男子を募って、軍団を設置し、それによって国家を守ることは、もとより武士・農民の区別がなかった。中世以降、兵は武士に限られるようになり、兵農分離が始まって、ついに封建制度を形成するようになる。明治維新は、実に2千有余年来の一大変革であった。この際にあたり、海軍・陸軍の兵制もまた時節に従って、変更しないわけにはいかない。今日本の往昔の兵制に基づいて、海外各国の兵制を斟酌し、全国から兵を徴集する法律を定め、国家を守る基本を確立しようと思う。おまえたち、多くのあらゆる役人は手厚く、私(明治天皇)の意志を体して、広くこれを全国に説き聞かせなさい。 明治5年(壬申)11月28日  わが国古代の兵制では、国をあげて兵士とならなかったものはいなかった。有事の際は、天皇が元帥となり、青年壮年兵役に耐えられる者を募り、敵を征服すれば兵役を解き、帰郷すれば農工商人となった。もとより後世のように両刀を帯びて武士と称し、傍若無人で働かずに生活をし、甚だしい時には人を殺しても、お上が罪を問わないというようなことはなかった。  そもそも、神武天皇は珍彦を葛城の国造に任命し、以後軍団を設け衛士・防人の制度を始めて、神亀天平の時代に六府二鎮を設けて備えがなったのである。保元の乱・平治の乱以後、朝廷の軍規が緩み、軍事権は武士の手に落ち、国は封建制の時代となって、人は兵農分離とされた。さらに後世になって、朝廷の権威は失墜し、その弊害はあえていうべきものもなく甚だしいものとなった。  ところが、明治維新で諸藩が領土を朝廷に返還し、1871年(明治4)になって以前の郡県制に戻った。世襲で働かずに生活していた武士は、俸禄を減らし、刀剣を腰からはずすことを許し、士農工商の四民にようやく自由の権利を持たせようとしている。これは上下の身分差をなくし、人権を平等にしようとする方法で、とりもな...

日清修好条規 1871年09月13日

内容見直し点:口語訳中途 修好条規(口語訳、前文署名省略) 第一条 この条約締結のあとは、大日本国と大清国は弥和誼を敦うし、天地と共に窮まり無るべし。又両国に属したる邦土も、各礼を以て相待ち、すこしも侵越する事なく永久安全を得せしむべし。 第二条 両国好を通ぜし上は、必ず相関切す。若し他国より不公及び軽藐する事有る時、其知らせを為さば、何れも互に相助け、或は中に入り、程克く取扱い、友誼を敦くすべし。 第三条 両国の政事禁令各異なれば、其政事は己国自主の権に任すべし。彼此に於て何れも代謀干預して禁じたる事を、取り行わんと請い願う事を得ず。其禁令は互に相助け、各其商民に諭し、土人を誘惑し、聊違犯あるを許さず。 第四条 両国秉権大臣を差出し、其眷属随員を召具して京師に在留し、或は長く居留し、或は時々往来し、内地各処を通行する事を得べし。其入費は何れも自分より払うべし。其地面家宅を賃借して大臣等の公館と為し、並びに行李の往来及び飛脚を仕立書状を送る等の事は、何れも不都合がないように世話しなければならない。 第五条 両国の官位何れも定品有りといえども、職を授る事各同じからず。因彼此の職掌相当する者は、応接及び交通とも均く対待の礼を用ゆ。職卑き者と上官と相見るには客礼を行い、公務を辨ずるに付ては、職掌相当の官へ照会す。其上官へ転申し直達する事を得ず。又双方礼式の出会には、各官位の名帖を用う。凡両国より差出したる官員初て任所に到着せば、印証ある書付を出し見せ、仮冒なき様の防ぎをなすべし。 第六条 今後両国を往復する公文について、清国は漢文を用い、日本国は日本文を用いて漢訳文を副えることとする。あるいはただ漢文のみを用い、その記載に従うものとする。 (これ以下まだ) 第七条 両国好みを通ぜし上は、海岸の各港に於て彼此し共に場所を指定め、商民の往来貿易を許すべし。猶別に通商章程を立て、両国の商民に永遠遵守せしむべし。 第八条 両国の開港場には、彼此何れも理事官を差置き、自国商民の取締をなすべし。凡家財、産業、公事、訴訟に干係せし事件は、都て其裁判に帰し、何れも自国の律例を按して糾辨すべし。両国商民相互の訴訟には、何れも願書体を用う。理事官は先ず理解を加え、成丈け訴訟に及ばざる様にすべし。其儀能わざる時は、地方官に掛合い双方出会し公平に裁断すべし。尤盗賊欠落等の事件は、両国の地方官より...

帝国陸海軍作戦計画大綱 1945年01月25日

 帝国陸海軍作戦計画大綱(ひらがな化、一部新字体化、一部省略)  帝国陸海軍作戦計画大綱(昭和二十年一月二十日)    目 次(略)    第一 作戦方針  帝国陸海軍は機微なる世界情勢の変転に莅み重点を主敵米軍の進攻破摧に指向し随処縦深に亙り敵戦力を撃破して戦争遂行上の要域を確保し以て敵戦意を挫折し以て戦争目的の達成を図る    第二 作戦の指導大綱 一 陸海軍は戦局愈々至難なるを予期しつつ既成の戦略態勢を活用し敵の進攻を破摧し速に自主的態勢の確立に努む   右自主的態勢は今後の作戦推移を洞察し速に先つ皇土及之か防衛に緊切なる大陸要域に於て不抜の邀撃態勢を確立し敵の来攻に方りては随時之を撃破すると共に其の間状況之を許す限り反撃戦力特に精錬なる航空戦力を整備し以て積極不羈の作戦遂行に努むるを以て其の主眼とす 二 陸海軍は比島方面に来攻中の米軍主力に対し靭強なる作戦を遂行し之を撃破して極力敵戦力に痛撃を加ふると共に敵戦力の牽制抑留に努め此の間情勢の推移を洞察し之に即応して速に爾他方面に於ける作戦準備を促進す 三 陸海軍は主敵米軍の皇土要域方面に向ふ進攻特に其の優勢なる空海戦力に対し作戦準備を完整し之を撃破す   之か為比島方面より皇土南陲に来攻する敵に対し東支那海周辺に於ける作戦を主眼とし二、三月頃を目途とし同周辺要地に於ける作戦準備を速急強化す   敵の小笠原諸島来攻(硫黄島を含む)に対し極力之か防備強化に努む   又敵一部の千島方面進攻を予期し又状況に依り有力なる敵の直接本土に暴進することあるを考慮し之に対処し得るの準備に遺憾なからしむ 四 陸海軍は進攻する米軍主力に対し陸海特に航空戦力を総合発揮し敵戦力を撃破し其の進攻企図を破摧す 此の間他方面に在りては優勢なる敵空海戦力の来攻を予想しつつ主として陸上部隊を以て作戦を遂行するものとす   敵戦力の撃破は渡洋進攻の弱点を捕へ洋上に於て痛撃を加ふるを主眼とし爾後上陸せる敵に対しては補給遮断と相俟つて陸上作戦に於て其の目的を達成す 此の際火力の集団機動を重視す   尚敵機動部隊に対しては努めて不断に好機を捕捉し之を求めて漸減す 五 支那大陸方面に在りては左に準拠し主敵米軍に対する作戦を指導す (一) 支那大陸に於ける戦略態勢を速に強化し東西両正面より進攻する敵特に米軍を撃破して其の企図を破摧し皇土を中核とする大...